カテゴリー: 社会保険

  • 従業員が離婚したときの手続き

    社会保険の手続き

    氏(姓)の変更があったときは、「健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届」が必要です。健康保険被保険者証を添付しなければならないので前のものを返却してもらいます。

    住所変更がある場合も、氏の変更と同様に「健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届」を使います。添付書類は必要ありません。

    離婚することで配偶者や子どもが被扶養者から外れる場合は「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出します。健康保険被保険者証を添付しなければならないので前のものを返却してもらいます。

    家族手当の減少や通勤手当の変更で、標準月額報酬が2等級以上変更になった場合は、「月額変更届」が必要です。

    マイナンバーとの関連

    離婚により氏名や住所が変わったとき、マイナンバーと基礎年金番号が結びついている被保険者であれば、原則、年金機構に対する氏名変更及び住所変更に関する届出は不要です。

    マイナンバーと基礎年金番号が紐付いているかどうかは、日本年金機構から届く「マイナンバー未収録者一覧」で確認することができます。

    マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない被保険者や、マイナンバーを有していない海外居住者、短期在留外国人が氏名や住所を変更した場合は、届出が必要です。

    また、社会保険の氏名変更届が不要なのは、マイナンバーと基礎年金番号をひもづけた「被保険者」です。「被扶養者」が氏名を変更したときは、これまでと同様に「健康保険 被扶養者(異動)届」を提出しなければいけません。

    雇用保険の手続き

    以前は、姓の変更があったときは、「雇用保険被保険者氏名変更届」をハローワークへ提出する必要がありましたが、⽒名変更届は、2020年5月31日をもって廃⽌されました。ただし、まったく手続きが必要ないのではなく、別の手続きが発生したときに、その届出とあわせて氏名変更も届け出るようになったということです。

    住所については、雇用保険ではもともと住所を管理していないため、変更になっても手続きは不要です。

    給与計算の手続き

    扶養家族の変更があれば、家族手当を変更する必要があります。

    住所の変更があれば、通勤手当を変更する必要があります。

    氏(姓)の変更があれば、給与の振込先口座を変更する必要があります。

    年末調整で寡婦控除もしくは寡夫控除が受けられる場合があります。年末調整の際の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で手続きすることを説明しましょう。

    社内で使用する氏名

    氏(姓)の変更があれば、名刺や社員証、名札等を変更する必要があります。

    変更が必要な事項は、会社によって異なると思われます。事前に変更事項を整理してチェックリストを作っておくと便利です。

    なお、氏(姓)の変更があっても、希望があれば社内でこれまでの姓を続けて使えるように配慮する会社が多いようです。

    関連記事:従業員の氏名が変わったときの手続き

    チェックリスト例

    □ 離婚した戸籍上の日を確認する
    □ 離婚後の氏(姓)を確認し、変更があれば届けてもらう
    □ 離婚後の被扶養者を確認し、変更があれば届けてもらう
    □ 寡婦控除について説明する
    □ 住所変更の有無を確認し、変更があれば届けてもらう
    □ 通勤手当の変更に伴う届が必要であれば届けてもらう
    □ 健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届を提出する
    □ 健康保険被扶養者(異動)届を提出する
    □ 月額変更届を提出する
    □ 雇用保険被保険者氏名変更届を提出する
    □ 新しい社員証を交付する
    □ 新しい名刺を交付する
    □ 新しい名札を交付する


    会社事務入門社会保険の手続き変更があったときの社会保険手続き>このページ

  • 役員や家族等の社会保険は加入条件に注意が必要です

    法人の役員の場合

    法人の役員に対しては「4分の3以上」の要件が適用されません。

    法人の場合は、実務的には常勤・非常勤の区別で加入の可否を判断するのが一般的です。社長を含めて、常勤の役員であれば社会保険に加入させます。

    しかし、厳密に言えば、「常勤だから」加入させるということではなく、あくまでも実態によって判断することになっています。

    日本年金機構の回答

    日本年金機構の過去の疑義照会回答に次のようにあります。以下、要約です。

    質問
    定期的に出勤していなければ被保険者になれないか

    回答
    一つの判断要素にはなるが、それだけでは被保険者資格が無いとは言えない

    理由
    事業所に定期的に出勤している場合は、「法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものである」との判断の要素にはなりますが、本来法人の代表者としての職務は事業所に出勤したうえでの労務の提供に限定されるものではないことから、定期的な出勤がないことだけをもって被保険者資格がないという判断にはならないと考えます。

    質問
    役員報酬が低ければ被保険者になれないか

    回答
    一つの判断要素にはなるが、それだけでは被保険者資格が無いとは言えない

    理由
    昭和24年7月28日保発第74号通知で「役員であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする」とされていますが、一方、「役員については、ご照会の事例のように経営状況に応じて、給料を下げる例は多く、このような場合は今後支払われる見込みがあり、一時的であると考えられるため、低報酬金額をもって資格喪失させることは妥当でない」ことから、総合的な判断が必要であり、最低金額を設定し、その金額を下回る場合は、被保険者資格がないとするのは妥当ではありません。

    以上のように、形だけ非常勤にしたり、役員報酬を少なくして他の収入に切り替えたりするなどのごまかしを含む措置をすれば後々問題が生じることになりかねません。注意が必要です。

    個人事業主の場合

    個人事業の場合は、適用事業所であっても事業主は加入できません。

    家族従業員の場合

    事業主と同居している家族がその仕事に専従している場合は、その家族従業員は個人事業主と一体と考えられることから社会保険の被保険者にはなれないのが原則です。

    一方、同居の親族以外の従業員もいる場合、その同居の親族の働き方が「労働者と認められる場合」、いわゆる「労働者性」があれば、適用を受けることが可能です。

    労働者性の条件は以下のようなものです。

    1 事業主の指揮命令に従っている。
    2 就労実態が他の労働者と同様で、賃金もこれに応じて支払われている。
     ア 始業、終業、労働時間や休日が他の従業員と同様である
     イ 賃金の決定や計算等が他の従業員と同様である
    3 取締役等事業主と利益を一にしていない。

    同居の親族、家事使用人の扱い

    労働保険の扱い

    雇用保険や労災保険の扱いは、社会保険とは少し違います。

    役員や家族の労働保険は加入条件に注意が必要です


    会社事務入門社会保険の手続き採用時の社会保険手続き>このページ

  • 社会保険の任意適用事業所

    強制適用ではない事業所

    社会保険(健康保険と厚生年金保険)は、法人(株式会社、合同会社、社会福祉法人等)の事業所であれば全ての事業所が加入しなければなりません。個人が営む事業でも5人以上雇用してれば強制適用になります。

    例外として、個人が営む、法定16種以外の事業所は社会保険の強制適用を受けません。

    次の事業所です。

    1.農林、水産、畜産などの第一次産業の事業所
    2.旅館、料理店、飲食店、映画館、理容業などの事業所
    3.弁護士、税理士、社会保険労務士などの事業所
    4.神社、寺院などの宗教関係の事業所

    以上の事業所は、個人事業であれば何人雇用していても社会保険の強制適用を受けません。

    ただし、上記3の士業については2022年10月からは、適用業種に加えられます。適用の対象となる士業は、弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、海事代理人、税理士、社会保険労務士、弁理士です。

    任意で適用を受けることができる

    強制適用事業所に該当しなければ加入する義務はありませんが、あえて社会保険に加入したい場合は、任意適用事業所の認可を受けて健康保険・厚生年金保険の適用事業所となることができます。

    この申請をするには、被保険者になることが予定される従業員の2分の1以上の同意が必要です。この2分の1の判定にあたっては事業主本人は従業員数にカウントしません。

    認可されると、従業員は、反対した人も含めて全員被保険者になります。

    なお、2分の1以上の希望があったとしても任意適用の認可申請をするかどうかは事業主の判断に任されています。労災保険や雇用保険の扱いとは違うところです。

    適用事業所になると、保険給付や保険料などは、強制適用事業所と同じ扱いになります。

    任意適用事業所の場合、健康保険のみ、厚生年金保険のみのどちらか一つの制度のみ加入することもできます。

    適用事業所になっても、個人事業の場合は、事業主は社会保険に加入できません。国民年金と国民健康保険のままです。

    任意適用の手続き

    従業員の2分の1以上の希望(同意)があり、事業主が社会保険への加入を判断したときに、健康保険・厚生年金保険任意適用申請書と、新規適用届を所轄年金事務所に提出します。

    同意書は、反対した従業員も含めて全員の住所氏名を記載します。その上で、反対した従業員の欄の「同意の認印」欄に斜線を引きます。

    添付書類は、同意書以外は、新規適用と同様です。

    下記のページは、日本年金機構ホームページの任意適用についてのページです。任意適用申請書の書式と記載例、同意書の書式をダウンロードできます。

    脱退の手続き

    任意適用事業所の場合は、被保険者の4分の3以上の人が適用事業所の取消に同意した場合には、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受け適用事業所を脱退することができます。

    この場合も、4分の3以上の希望があったとしても事業主が取消する必要がないと判断すれば取消の認可申請をする必要はありません。

    労働保険の任意適用事業

    労働保険(労災保険と雇用保険)にも加入が免除される事業があります。

    労災保険と雇用保険の暫定任意適用事業


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  • 会社の代表者変更の手続き

    株式会社の代表取締役が交代した際は、社内外でさまざまな手続きが必要です。主な手続きは以下の通りです。

    登記関係

    代表取締役が交代したら、2週間以内に法務局での登記申請が必要です。代表取締役以外の役員(取締役、監査役など)が交代した場合も同様に登記が必要です。

    決定機関

    • 取締役会設置会社の場合: 取締役会で代表取締役を選定する決議が必要です。
    • 取締役会のない会社の場合:
      • 定款に定めがない場合は、株主総会で代表取締役を選定します。
      • 定款に取締役の互選の定めがある場合は、互選で代表取締役を決定します。

    注意点

    代表取締役は、会社の取締役の中から選ばれます。そのため、現在取締役ではない方が代表取締役になる場合は、まず株主総会で取締役に選任される必要があります。その後に、改めて代表取締役に選定される流れになります。

    書類提出

    決定後、登記申請に必要な書類を準備し、会社の所在地を管轄する法務局へ提出します。

    「選任」と「選定」の使い分け

    一般的に、「選任」は不特定多数の中から特定の役職に就ける行為(例:株主総会で取締役を選任する)を指し、「選定」は特定の範囲の中から特定の役職に就ける行為(例:取締役の中から代表取締役を選定する)を指します。

    社会保険関係

    会社の代表者が変更になった場合、健康保険・厚生年金保険については「事業所関係変更届」の提出が必要です。

    • 提出先: 会社の所在地を管轄する年金事務所
    • 提出期限: 対象となる事象が発生してから5日以内

    注意点

    • 協会けんぽ加入の事業所: 年金事務所への届け出をすれば、協会けんぽへの届け出は不要です。
    • 健康保険組合加入の事業所: 健康保険組合と年金事務所の双方に届け出が必要です。

    労働保険関係

    労災保険と雇用保険は、それぞれ別の手続きが必要です。

    労災保険

    労働保険名称、所在地等変更届」を提出します。

    • 提出先: 会社の所在地を管轄する労働基準監督署
    • 提出期限: 変更の事象が発生した日の翌日から10日以内

    雇用保険

    事業主事業所各種変更届」を提出します。

    • 提出先: 会社の所在地を管轄するハローワーク
    • 提出期限: 変更の事象が発生した日の翌日から10日以内

    税務関係

    税務署と地方自治体にも変更の届け出が必要です。

    国税

    納税地を管轄する税務署に「異動事項に関する届出」を提出し、代表者名の変更を届け出ます。

    地方税

    都道府県税事務所市区町村に「法人異動届」を提出します。

    その他の変更届・連絡

    代表者名が使用されている様々な関係機関や取引先へ連絡・届け出が必要です。

    • 顧客・仕入先・外注先: 新代表者の就任を連絡し、今後の取引について案内します。
    • 加入している外部団体等: 必要に応じて変更手続きを行います。
    • 取引している金融機関: 銀行口座の名義変更など、金融機関ごとの手続きを確認し、行います。
    • 取引している生命保険会社、損害保険会社等: 契約内容によっては名義変更が必要な場合があります。
    • 賃貸の場合: 不動産管理会社に連絡し、必要に応じて賃貸借契約の名義変更などを行います。
    • 契約している電話会社、電気・ガス・水道等の各種公共料金: 契約者名の変更が必要な場合があります。
    • 社有車がある場合: 運輸支局で所有者情報の変更手続きを行います。
    • 各種許認可を受けている行政機関: 許認可の種類によっては、代表者変更の届け出が必要な場合があります。

    社内手続き等

    社内書類等も代表者名の変更に伴う修正が必要です。

    • 自社ウェブサイトやパンフレットの代表者名の変更
    • その他、代表者名が入っている印刷物(名刺、封筒、社判など)の変更
    • 社内規定や就業規則などの改定(代表者に関する記述がある場合)
    • 代表者印の変更(必要に応じて)

    これらの手続きは多岐にわたりますので、変更が発生したら速やかに、漏れなく対応を進めることが重要です。不明な点があれば、それぞれの管轄機関や専門家(司法書士、税理士、社会保険労務士など)に相談することをおすすめします。


    会社事務入門変更があったときの社会保険手続き変更があったときの雇用保険手続き会社の設立と変更と解散>このページ

  • 会社の所在地変更の手続き

    引っ越しなどで会社の所在地が変更になったときの届出について解説します。一般的な会社の場合の例です。許認可や届出による事業を営んでいる場合は、その全てに変更の届け出をする必要があります。

    登記関係

    会社の本店所在地も登記されているなので、本店を移転した場合には、本店移転登記の手続きが必要です。会社の本店を移転した場合には移転した日から2週間以内に、法務局で変更登記(本店移転登記)の手続きをしなければなりません。

    関連記事:会社の本店住所を変更する場合は「本店移転登記」が必要です

    社会保険関係

    「健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」に必要書類を添付の上、日本年金機構へ提出します。

    事実発生から5日以内です。

    事務センター(事業所の所在地を管轄する年金事務所)へ、電子申請、郵送、窓口持参で提出します。

    同一の年金事務所管内で所在地等が変更になるときも届けが必要です。所在地がこれまでの年金事務所が管轄する地域外になるときは、変更前の事業所の所在地を管轄する年金事務所に届けるだけです。改めて変更後の事業所の所在地を管轄する年金事務所へ届出する必要はありません。

    変更届によって事業所の記号・番号が変更になったときは、事業所台帳等も忘れずに変更しておきましょう。

    他県への事業所住所変更の場合は、健康保険被保険者証の差し替えがあります(保険料率も変わります)。同じ都道府県内での住所変更だけの場合は健康保険証の差し替えはありません。

    労働保険関係

    労働保険は、「労働保険名称、所在地等変更届」を移転後の住所を管轄する労働基準監督署に提出します。

    提出期限は、移転の翌日から10日以内です。

    社会保険(厚生年金・健康保険)は、移転前の管轄へ提出なので逆になっています。


    雇用保険は、「雇用保険事業主事業所各種変更届」をハローワークに提出します。

    このとき、労働基準監督署へ提出した「労働保険名称、所在地等変更届」の控(コピー)を添付します。

    提出期限は、事実発生日から10日以内です。

    いずれも電子申請ならオンラインで完結します。

    税務関係

    納税地を管轄する税務署に「異動事項に関する届出」で名称変更を届け出ます。

    地方税に関しては、各都道府県税事務所と市町村に法人異動届を提出します。

    その他の変更届・連絡

    社内外に住所の変更を連絡または届け出しなければなりません。

    顧客・仕入先・外注先

    加入している外部団体等

    取引している金融機関

    取引している生命保険会社、損害保険会社等

    賃貸の場合は不動産管理会社

    契約している電話会社

    電気・ガス・水道等の各種公共料金

    社有車がある場合は運輸支局

    各種許認可を受けている行政機関

    移転のお知らせのサンプル

    事務所移転のお知らせ

    拝啓 〇〇の候 皆様におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます
    このたび令和〇年〇月〇日より事務所を移転することとなりましたのでご案内申し上げます
    社員一同 気持ちを新たに日頃のご愛顧に報いるべく専心努力いたします
    今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます
    略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます

    敬具

    令和〇年〇月 吉日

    新住所 〒  東京都〇〇区〇一〇-〇 〇〇ビル〇階
    電 話 〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

    株式会社〇〇
    代表取締役社長 〇〇〇〇

    社内手続き等

    自社ウェブサイトやパンフレットの住所表示の変更

    住所が記載されている名刺・封筒、見積書などの印刷物の変更


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  • 養育期間の厚生年金保険料

    厚生年金保険料は将来の年金に影響する

    収入が少ない時期に社会保険料が減るのはありがたいですが、納付する厚生年金保険料が減るために、将来受け取る年金の額も減ってしまいます。

    養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

    そこで、子どもが3歳までの間、勤務時間短縮等の措置を受けて働き、それに伴って標準報酬月額が低下した場合、子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができる仕組みがあります。

    養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないようにするため、従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額を計算する措置です。

    手続きは、被保険者からの申出を受けた事業主が「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を日本年金機構へ提出します。


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