カテゴリー: 労働時間

  • フレックスタイム制と裁量労働制の違い

    両制度の違い

    両制度は似通っているところがありますが違うところもあります。

    労使委員会

    企画業務型裁量労働制は労使委員会を設置しなければなりませんが、フレックスタイム制は労使協定により実施できます。

    対象業務の違い

    裁量労働制は対象業務等が限定されていますが、フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲には制限がありません。

    対象労働者の違い

    裁量労働制は労使委員会の決議があっても適用される個別労働者の同意が必要ですが、フレックスタイム制では一括して適用できます。

    労働時間管理の違い

    裁量労働制とフレックスタイム制は、始業時刻と終業時刻を労働者が決められる点は同じです。

    ただし、フレックスタイム制は労働すべき時間を定める期間(清算期間)や清算期間における所定労働時間(総労働時間)、コアタイムがあります。裁量労働制にはそのような制度はありません。

    関連記事:企画業務型裁量労働制導入のポイント

    関連記事:フレックスタイム制


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  • 機密の事務を取り扱う者とは

    労働時間・休憩・休日の規定が適用されない

    労働基準法第41条は労働時間に関する規定が適用されない労働者について定めています。ここでは、同条の二の「又は」以下に定めがある「機密事務取扱者」について解説します。

    (労働時間等に関する規定の適用除外)
    第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
    一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
    二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
    三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

    これに関する通達では、該当するのは「秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位に在る者の活動と一体不可分であつて、出社退社等についての厳格な制限を受けない者」として、代表例として、「秘書」を挙げています。(昭和22.9.13発基17号)

    経営者と一体不可分か

    裁判例の一つでは、「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者とは、その名称にとらわれず、勤務の具体的態様に照らして、経営者と一体的な立場にある者であるか否か、労務管理上監督的地位にあるか否か、出社退社等について厳格な制限を受けていたか否か等を実質的に判断して決定されるべきものである」(抜粋)というものがあります。(大阪高等裁判所平成1.2.21判決)

    この裁判例では、「監督若しくは管理の地位にある者」と「機密の事務を取り扱う者」を一体的に扱っています。つまり、機密の事務を取り扱うもの」は「監督若しくは管理の地位にある者」と同等の扱いが求められるものと解釈できます。つまり「監督若しくは管理の地位にある者」の認定に用いられる基準、①職務内容や勤務実態に照らして、経営者又は管理監督者と一体不可分といえる関係にあるかどうか、②待遇が職務内容や勤務実態に見合っているか、などを考慮しなければなりません。

    関連記事:管理監督者の労働時間

    職務の実態による

    通達には「秘書その他」とありますが、もちろん、「秘書」と呼称していれば該当するというものではなく、勤務の実態により判断しなければなりません。

    裁判例でも、単に秘書としての業務を行っているだけでは「機密の事務を取り扱う者」とは言えないと判示しています。(東京地方裁判所平成16.3.29判決)

    秘書と呼称されていても書類の整理やスケジュール調整などの業務範囲であれば「機密の事務を取り扱う者」とはいえず、通常の労働時間管理をしなければならないと考えられます。

    特に、その秘書の職務内容が経営レベルの機密に関与し、経営上の重要な役割を担っているかという点がポイントになると思われます。

    労働時間管理自体は必要

    なお、労働時間に関するすべての取扱いが適用されないのではなく、深夜労働(労基法37条4項)や有給休暇(同法39条)の規定は適用され、また、当然に安全配慮義務(労働契約法第5条)が適用され過重労働等を避ける配慮義務があるので、労働時間管理は必要です。


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  • 勤務間インターバル制度の運用ポイントと注意点

    勤務間インターバル制度は、終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する制度です。これは、従業員の生活時間や睡眠時間を確保し、健康を維持するために重要な制度です。

    制度の概要

    勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法において、事業主の努力義務とされています。

    目的: 従業員の心身の健康確保、過重労働の防止、ワークライフバランスの向上。

    方法: 企業が就業規則等で制度の内容を定め、労使で合意して導入します。

    具体的なやり方

    勤務間インターバル制度の導入にあたっては、以下の点に留意する必要があります。

    休息時間の設定

    法令上、具体的な休息時間(インターバル時間)の長さは定められていません。しかし、厚生労働省は、9時間以上、可能であれば11時間以上のインターバルを設けることを推奨しています。多くの企業が、この推奨時間を参考に制度を設計しています。

    制度の適用範囲

    制度を全従業員に適用するのか、特定の部署や職種に限定するのかを定めます。

    適用除外

    突発的なトラブル対応など、緊急性・不可避性が高い業務の場合、制度の適用を除外するかどうかを定めます。

    休息時間の確保が難しい場合の対応

    インターバル時間を確保できなかった場合の対応方法も定めておくことが重要です。例えば、以下の措置が考えられます。

    遅い始業時間: 終業時刻が遅くなった場合、始業時刻を遅らせてインターバル時間を確保します。

    手当の支給: 例外的にインターバルが確保できなかった場合、手当を支給するなどの対応です。

    就業規則例

    この制度を導入するのであれば就業規則の改正が必要です。厚生労働省のホームページに就業規則の規定例が出ています。

    (勤務間インターバル)
    第◯条 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、◯時間の継続した休息時間を与える。

    このままでも良いのですが、法律上は努力規定なので、上記の「◯時間の継続した休息時間を与える」を「◯時間の継続した休息時間を与えるよう努める」としても問題ないでしょう。また、同じく努力規定であるので、「いかなる場合も」と規定するまでもないと思われます。

    次いで、この例の第2項で、継続した休息時間が与えられなかった場合にどうするかを規定しています。

    例1
    一つは、勤務間インターバルを守って勤務できなかった時間を労働時間に参入して賃金を払う定め方です。

    2  前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。

    労働時間とみなされた時間は当然有給になります。前日の残業代に加えて一定の金銭補償をするということになります。企業に金銭負担をさせることで残業抑制効果をねらっているのかもしれません。

    例2
    勤務間インターバルを確保するために遅く出勤しても良いという定め方です。

    2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時間は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。

    この場合、遅く出勤した日は終業時間もその分繰り下がるのか、終業時間を同じにして所定労働時間勤務したとみなすのか明確に規定した方がよいでしょう。この日に遅刻控除がなくて定時退勤できるのであれば、実質は例1と同じ扱いになります。

    例2
    厚生労働省が示した規定例には例外も示されています。

    ただし、災害その他避けることができない場合は、その限りではない。

    例外も規定するべきですが、この規定例の「その限りでない」ケースは非常に限定的だと思われます。

    導入の補助金

    厚生労働省では、勤務間インターバル制度を導入または見直した中小企業を対象に、労働時間等設定改善助成金(勤務間インターバル導入コース)を設けています。この助成金は、制度導入にかかる費用の一部を助成するものです。


    会社事務入門労働時間の適正な管理労働時間等設定改善法とはどういう法律か?>このページ

  • 労働時間管理チェックリスト

    チェックリスト

    労働基準監督署が調査に入ったときに、労働基準法違反として是正勧告が出ることが多いのは、労働時間に関することです。

    チェックしてみましょう!

    年次有給休暇の残日数を従業員別に把握し伝えている。
    □YES □NO
    有給休暇管理簿の記載事項と管理上の注意点

    すべての従業員が5日以上の年次有給休暇を取得している。
    □YES □NO
    最低5日の有給休暇を取得させる義務

    管理職を含むすべての従業員の労働時間を把握している。
    □YES □NO
    労働時間の適正な把握について

    36協定を毎年更新している。
    □YES □NO
    時間外労働の手続き

    従業員代表の選出に会社は一切関与していない。
    □YES □NO
    労働者の過半数代表者とは

    注意点

    ひとつでもNOがあってはいけません。


    関連記事:労働時間の適正な管理

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  • 徹夜になった場合の残業代はどうなるか

    徹夜した場合の原則的扱い

    労働基準法の1日とは午前0時から午後12時までの1暦日のことです。

    しかし、前日からの時間外労働が深夜0時を超えて翌日に及んだ場合は、翌日の始業時間までは1勤務として取り扱います。

    翌日の始業時間から次の日になります。

    したがって、深夜0時から始業時刻までの労働時間については、前日から引き続く時間外労働として取り扱います。通常の時間外労働に対する割増賃金を支払って、その時間帯のうち午後10時から午前5時までの時間はさらに深夜割増を追加します。

    翌日の始業時間以降にも仕事を続けたとすれば、通常の勤務時間帯に入るので、労働基準法上は割増賃金の対象にならないという解釈が主流です。もちろん、この場合は実質的には勤務の継続なので、労働基準法を上回る措置として時間外割増の対象として扱ってもかまいません。むしろ、大変な長時間労働になるので、それを慰労するためにも割増賃金を支払う措置が妥当だと思われます。

    翌日が休日の場合

    労働基準法における休日は、原則として暦日すなわち午前0時から午後12時までの暦日です。

    平日の時間外労働が翌日の法定休日に及んだ場合には日数としては1勤務として取り扱うとしても、法定休日の割増賃金率はあくまで暦日単位で適用することになります。

    つまり、その翌日が法定休日であれば、法定休日に入る午前0時以降は、休日勤務の割増率を適用しなければなりません。

    始業時間が遅い場合

    交替制勤務などで夜の時間帯から勤務が開始する場合は、勤務開始から所定労働時間を経過するまでは時間外割増賃金の対象になりません。ただし、始業時間にかかわらず、深夜時間帯は深夜割増の適用時間になり、深夜0時を過ぎて法定休日になった時間は休日割増の対象時間になります。

    仮眠時間が入ればどうなるか

    夜の勤務中に仮眠時間がある場合に、一時的に労働が中断しただけとするか、仮眠後に新たな勤務が始まったとするかは、仮眠時間の長さや仮眠の態様によって判断します。

    新たな勤務が始まると認められる仮眠とは、時間の長さとしては7時間程度が確保されていること、態様としては布団等の寝具が提供されていること、更に作業場とは隔離された部屋が用意されている必要があると考えられています。

    したがって、一般的に仮眠と言われる程度の睡眠であれば、勤務時間は継続しているとして扱います。その場合、完全に業務から解放されてる仮眠時間は休憩時間として扱い、完全に開放されているとは言えない(何かあれば起きなければならないなど)のであれば労働時間として扱う必要があります。

    労働時間ということになれば、仮眠中であっても当然に賃金が発生し、対象になる時間帯であれば深夜割増賃金も休日割増賃金も加算しなければなりません。

    36協定の問題

    仮に、9時始業18時終業の会社が、三六協定で延長できる時間を、1日15時間、1週間15時間、1か月45時間、1年360時間としている場合で説明します。

    9時に勤務を始めた従業員が、18時から残業に入り、作業が終わらず次の日の始業時間である9時を迎えたときに15時間の時間外労働となります。

    この場合、始業時間を超えなければ三六協定に違反しないことになります。ただし、1週間の時間外も考慮しなければならないので、前後の状況によっては違反になります。

    長時間労働の問題

    いずれにしても、徹夜は心身に相当なダメージを与えます。単に割増賃金を適法に払ったからとか、三六協定に違反していないからそれで良いとは言えない問題です。

    おそらく徹夜の残業は、大きなトラブルなどにより、やらざるを得ない状況で発生します。やむを得ず徹夜になったときは労働者の健康面に十分に配慮することが大切です。


    会社事務入門給与計算のやり方三六協定と割増賃金、正しく説明できますか?>このページ

  • 専門業務型裁量労働制|就業規則

    専門業務型裁量労働制について定める

    規定例

    (専門業務型裁量労働制)
    第〇条 専門業務型裁量労働制は、労使協定で定める対象労働者に適用する。

    2 就業規則第〇条にかかわらず、専門業務型裁量労働制の適用対象労働者の労働時間については、労使協定の定める労働時間を労働したものとみなす。

    3 会社は、専門業務型裁量労働制の適用対象労働者については、対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、社員本人の裁量に委ねる。

    4 裁量労働適用労働者であっても、休日又は深夜に労働する場合は、あらかじめ所属長の許可を受けなければならない。休日又は深夜労働に対しては割増賃金を支給する。

    ポイント

    第3項では「対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、社員本人の裁量に委ねる」と規定しています。これは、ある業務をいつから始めていつ終わらせるかを本人にまかせるという定めなので、例えば、きびしい納期を課すなどの制約があれば、実態として裁量が乏しいとして裁量労働の適用が否定される可能性があります。

    関連記事:専門業務型裁量労働制導入のポイント

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