カテゴリー: 労働時間

  • 企画業務型裁量労働制|就業規則

    企画業務型裁量労働制について定める

    規定例

    (企画業務型裁量労働制)
    第〇条 企画業務型裁量労働制は、労使委員会の決議で定める対象従業員であって決議で定める同意を得た者に適用する。

    2 前項の規定に関わらず、会社の判断で対象従業員に企画業務型裁量労働制を適用しないことがある。

    3 裁量労働制適用従業員が、所定労働日に業務に従事したときは、決議で定める時間勤務したものとみなす。

    4 始業・終業時刻及び休憩時間は、業務遂行の必要に応じ、裁量労働制適用従業員の裁量により具体的な時間配分を決定するものとする。

    5 休日は、第〇条の定めるところによる。

    6 裁量労働対適用従業員が、休日又は深夜に労働する場合にはあらかじめ所属長の許可を受けなければならない。休日又は深夜労働に対しては割増賃金を支給する。

    ポイント

    関連記事:企画業務型裁量労働制導入のポイント

    会社事務入門就業規則逐条解説>このページ

  • 高度プロフェッショナルと企画業務型裁量労働の違い

    両制度の違い

    両制度は似通っているところがあります。どちらを導入するか検討する際のポイントを列記しました。

    労使委員会

    どちらの制度も労使委員会の設置が必要です。

    関連記事:労働基準法による労使委員会

    対象業務の違い

    高度プロフェッショナル制度

    対象業務に従事する時間に関し使用者から具体的な指示を受けて行うものは含まれない、とされ、次の業務が示されています。

    ①金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
    ②資産運用(指図を含む。以下同じ。)の業務又は有価証券の売買等のうち一定の業務
    ③有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務
    ④顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案又は助言の業務
    ⑤新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

    企画業務型裁量労働制

    事業運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するためには、その遂行方法を労働者の裁量にゆだねる必要があるため、業務遂行手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務、とされ、具体的な業務指定はありません。

    対象労働者の違い

    高度プロフェッショナル制度

    対象労働者の要件があります。

    ①使用者との間の合意に基づき職務が明確に定められていること
    ②使用者から支払われると見込まれる賃金額が1,075万円以上で、本人の同意が必要

    企画業務型裁量労働制

    ①知識、経験等を有する者で、本人の同意が必要

    労働時間管理の違い

    高度プロフェッショナル制度

    対象労働者の健康管理時間(対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間)を把握する措置を使用者が実施する

    時間外、休日、深夜労働の割増賃金は発生しませんが、年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日付与がの義務付けられています。

    企画業務型裁量労働制

    労働したとみなす時間を1日単位で定めますが、みなした時間に時間外労働時間数が含まれていれば時間外の割増賃金が発生します。また、休日労働や深夜労働の割増賃金も必要です。

    関連記事:企画業務型裁量労働制

    関連記事:高度プロフェショナル制度


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  • 農業水産業に従事する労働者は労働基準法の労働時間が適用されない?

    労働時間規定の適用除外

    労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない事業と職種があります。

    労働基準法第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
    一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
    二 管理監督者
    三 監視断続的労働

    関連記事:管理監督者の労働時間

    関連記事:監視断続的労働の扱い

    別表第一第六号又は第七号とは

    別表第一第六号又は第七号に掲げる事業とは、次のように、農林水産の事業です。

    六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業

    七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業

    このような業種は自然現象によって労働時間が左右され、作業の性質から労働時間を制限することが難しいという理由です。忙しいときもあるが、天候や時期によって休めるときも多いので適用除外しても労働者にとって不利とはいえないということのようです。

    なお、林業は適用除外ではありません。林業は自然的条件によって業務をする時間等が左右されるとはいえないからです。

    適用除外された結果

    1週40時間、1日8時間を超えられないという法定労働時間が適用されません。週1回の休日も適用されません。そのため、時間外労働割増賃金の規定も適用されません。6時間を超えれば45分などの休憩の規定も適用されません。

    深夜労働の規定、年次有給休暇の規定は、労働時間、休憩、休日の規定に含まれないので適用されます。

    見方を変えて整理すると

    適用除外された労働者は、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外になります。
    つまり、

    • 1日8時間や週40時間の上限規制なし
    • 三六協定不要

    となります。

    なので、例えば法定労働時間を超えて働いたとしても法定時間外労働という概念がないので、「法定割増賃金」の支払義務も発生しません。

    ただし、使用者が、就業規則や雇用契約で、例えば、一日の労働時間は8時間と定めている(所定労働時間を定めている)場合は、

    • 所定を超えた時間の割増賃金は、労働基準法上の義務ではありませんが、
    • 所定労働時間を超えた分の通常賃金は支払う必要があります。

    この場合、超えた時間には割増支給すると雇用契約等で約束している場合は、その取り扱いに従う必要があります(労働基準法ではなく労働契約法、契約履行の問題です)。

    なお、深夜労働(22時〜5時)については、農業・水産業でも適用除外ではないため、25%以上の割増賃金が必要です。

    また、年少者(18歳未満)には、労働時間規制の適用があります。


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  • 有給休暇の買い取り

    買い取りは原則としてできない

    有給休暇は、通常の休日とは別に従業員に休暇を有給で与えて、心身の疲労を回復してもらおうという制度です。

    したがって、金銭を支払ってこれを与えないことは法律の目的に沿わないので原則として禁止されています。

    昭和30年11月30日基収4718号
    年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である。

    買い取りできる場合がある

    例外として次の3つの場合に買取りが認められています。

    法定の日数を上回る有給休暇

    最低限与えなければならない有給休暇の日数は労働基準法で定められています。

    会社によっては、法定以上の有給休暇を与えている場合もあります。

    つまり、労働基準法によれば、勤続6年半以上の従業員に与えるべき有給休暇は年間20日ですが、例えば25日付与していれば、法定を超過した5日分については、双方の合意があればいつでも買取りの対象にすることができます。

    時効により消滅した有給休暇

    有給休暇の請求権は2年で時効になります。

    時効になればその分の有給休暇を取得する権利はなくなるのですが、会社は有給休暇に時効を適用しないで引き続き取得の権利を認めることもできます。

    この場合、単に有給休暇を積算させるだけでなく、時効にかかった部分の有給休暇を金銭で買い取ることができます。

    退職時に残っている有給休暇

    退職予定者が残った有給休暇をまとめて請求した場合、会社はこれを認めなければなりません。

    しかし、引継ぎ等のため労働者の同意があったとき、または、退職日までに消化できない有給休暇を買い取ることに会社が同意したときは買取ることができます。

    就業規則等に定める

    買取りは法律上定められたものではありません。法律の趣旨を超える運用になるが、労働者に有利だということで違法ではないということです。

    したがって、買取りする場合には、どんな場合に有給休暇の買取りが可能なのかを、就業規則等に定める必要があります。

    また、買取り価格についても、基本的には有給休暇の賃金と同じ基準にすると考えられますが、法律上の規定がないので、就業規則等に定めておく必要があります。

    買い取り額の支払については、給与に上乗せして支給する場合と、退職金に上乗せして支給します。現金での渡し切りは所得税法上の問題があります。

    この辺りをきちんと決めておけば退職者が出るたびに有給休暇の問題で悩まなくなります。

    関連記事:退職するとき、有給休暇は消化できる?買い取ってもらえる?


    会社事務入門知らないと損する!有給休暇の基本からルールまで>このページ

  • 労使委員会決議のサンプル

    企画業務型裁量労働制に関する決議(例)

    企画業務型裁量労働制に関する労使委員会決議のサンプルです。

    〇〇株式会社本社労使委員会は、企画業務型裁量労働制につき、下記のとおり決議する。

    (対象業務)
    第1条 企画業務型裁量労働制を適用する業務の範囲は、次のとおりとする。
    1 企画部で経営計画を策定する業務
    2 人事部で人事計画を策定する業務

    (対象労働者)
    第2条 企画業務型裁量労働制を適用する労働者は、前条で定める業務に常態として従事する者のうち、入社して7年目以上でかつ職務の級が主事6級以上である者とする。(就業規則第〇条で定める管理監督者を除く。)

    (対象労働者の事前の同意)
    第3条 対象労働者を対象業務に従事させる前には本人の書面による同意を得なければならないものとする。この同意を得るに当たっては、使用者は、本決議の内容、同意した場合に適用される評価制度及び賃金制度の内容、同意しなかった場合の配置及び処遇について対象労働者に説明するものとする。

    (不同意者の取扱い)
    第4条 前条の場合に、同意しなかった者に対して、同意しなかったことを理由として、処遇等で、本人に不利益な取扱いをしてはならないものとする。

    (みなし労働時間)
    第5条 第2条に定める者のうち、第3条に基づき同意を得た者(以下「裁量労働従事者」という。)が、所定労働日に勤務した場合には、就業規則第〇〇条に定める就業時間に関わらず、1日8時間労働したものとみなす。

    (裁量労働従事者の出勤等の際の手続)
    第6条 裁量労働従事者は、出勤した日については、所定の出勤簿に押印しなければならない。

    2 裁量労働従事者が、出張等業務の都合により事業場外で従事する場合には、あらかじめ、所属長の承認を得てこれを行わなければならない。所属長の承認を得た場合には、前条に定める労働時間労働したものとみなす。

    (裁量労働従事者の健康と福祉の確保)
    第7条 裁量労働従事者の健康と福祉を確保するために、次の措置を講ずるものとする。
    1 裁量労働従事者の健康状態を把握するために次の措置を実施する
    ① 所属長は、入退室時のIDカードの記録により、裁量労働従事者の在社時間を把握する
    ② 裁量労働従事者は、2ヵ月に1回、自己の健康状態について所定の「自己診断カード」に記入の上、所属長に提出する
    ③ 所属長は、②の自己診断カードを受領後、速やかに、裁量労働従事者ごとに健康状態等についてヒアリングを行う

    2 使用者は、1の結果をとりまとめ、産業医に提出するとともに、産業医が必要と認めるときには、次の措置を実施する
    ① 定期健康診断とは別に、特別健康診断を実施する
    ② 特別休暇を付与する

    3 精神・身体両面の健康についての相談室を〇〇に設置する

    (裁量労働適用の中止)
    第8条 前条の措置の結果、裁量労働従事者に企画業務型裁量労働制を適用することがふさわしくないと認められた場合又は裁量労働従事者が企画業務型裁量労働制の適用の中止を申し出た場合は、使用者は、当該労働者に企画業務型裁量労働制を適用しないものとする。

    (裁量労働従事者の苦情の処理)
    第9条 裁量労働従事者から苦情等があった場合には、次の手続に従い、対応するものとする。

    1 裁量労働相談室を次のとおり開設する
    ① 場所 総務部
    ② 開設日時 毎週金曜日12:00~13:00と17:00~19:00
    ③ 相談員 〇〇〇〇

    2 取り扱う苦情の範囲を次のとおりとする
    ① 裁量労働制の運用に関する全般の事項
    ② 裁量労働従事者に適用している評価制度、これに対応する賃金制度等の処遇制度全般
    3 相談者の秘密を厳守し、プラ①バシーの保護に努める

    (決議の変更)
    第10条 決議をした時点では予見することができない事情の変化が生じ、委員の半数以上から労使委員会の開催の申出があった場合には、有効期間の途中であっても、決議した内容を変更する等のための労使委員会を開催するものとする。

    (勤務状況等の保存)
    第11条 使用者は、裁量労働従事者の勤務状況、裁量労働従事者の健康と福祉確保のために講じた措置、裁量労働従事者からの苦情について講じた措置、企画業務型裁量労働制を適用することについて裁量労働従事者から得た同意に関する労働者ごとの記録を決議の有効期間の始期から有効期間満了後3年間を経過する時まで保存することとする。

    (評価制度・賃金制度の労使委員会への開示)
    第12条 使用者は、裁量労働従事者に適用される評価制度、これに対応する賃金制度を変更する場合、事前にその内容について委員に対し説明をするものとする。

    (労使委員会への情報開示)
    第13条 使用者は、労使委員会において、裁量労働従事者の勤務状況、裁量労働従事者の健康と福祉確保のために講じた措置、裁量労働従事者からの苦情について講じた措置の情報を開示するものとする。

    (決議の有効期間)
    第14条 本決議の有効期間は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの3年間とする。

    令和〇年〇月〇日

    〇〇株式会社本社労使委員会
    委員 〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印
       〇〇〇〇 印


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  • いろいろな労働時間制

    変形労働時間制

    変形労働時間制とは、労働時間を週単位・月単位・年単位で調整できる労働時間制のことです。例えば、1か月の労働時間が1日8時間×20日で160時間である場合、変形労働時間制であれば、月末の忙しい時期には10時間働き、閑散期の月初は6時間に抑えるといった調整ができます。

    1か月単位の変形労働時間制

    1年単位の変形労働時間制

    1週間単位の変形労働時間制

    フレックスタイム制

    みなし労働時間制

    みなし労働時間制とは、実労働時間の把握が難しい業務に適用される労働時間制度のことです。そのような業務に対して、実際に働いた時間とは関係なく、所定労働時間や当該業務を行うために通常要する時間を働いたものとみなして賃金が支払われる制度です。

    事業場外みなし労働時間制

    専門業務型裁量労働制

    企画業務型裁量労働制

    高度プロフェッショナル制度

    その他の時間制

    時差出勤制

    比較検討

    一見似ている制度についてその違いを解説します。

    高度プロフェッショナルと企画業務型裁量労働の違い

    フレックスタイム制と裁量労働制の違い

    それぞれの就業規則規定例

    1か月単位の変形労働時間制

    1年単位の変形労働時間制

    1週間単位の非定型変形労働時間制

    フレックスタイム制

    専門業務型裁量労働制

    企画業務型裁量労働制


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