Last Updated on 2023年11月28日 by 勝
株主総会を行う場所
会社法は、株主総会を具体的な「場所」で開催することを前提としています。
会社法第二百九十八条 取締役(略)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
すべてを仮想空間で実施すれば、地図上の場所を示すことができないので、開催の要件を満たさないことになります。
上場会社の特例
上場会社の場合には、産業競争力強化法により、経済産業大臣等の確認や定款変更等の一定の要件を満たした場合に、会社法の特例として「場所の定めのない株主総会」、物理的な会場を用意しないバーチャルオンリー型の株主総会を開催することができます。
産業競争力強化法第六十六条(抜粋) 金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社(上場会社)は、(略)経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合には、株主総会を場所の定めのない株主総会とすることができる旨を定款で定めることができる。
ハイブリッド型
非上場会社の場合は産業競争力強化法の適用がありませんが、現行の会社法でも、地図上の場所で、役員や株主が実際に出席する株主総会を開催しつつ、「当該場所に存しない」他の役員や株主がインターネットを利用して遠隔地から参加する形態の開催方式は認められています。
会社法施行規則第七十二条3項一号 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
この、会場での株主総会の開催とオンライン参加を併用する株主総会(ハイブリッド型のバーチャル株主総会)は、上場会社・非上場会社を問わず開催することができます。
経済産業省は2020年に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」、2021年に「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド(別冊)実施事例集」を公表しています。
参加型と出席型
ハイブリッド型バーチャル株主総会には、参加型と出席型があります。
参加型
参加型の場合は、オンライン参加の株主は、法的な意味では出席していないものとして扱います。
オンラインで質問や動議を提出することも、議決権を行使することもできません。参加というより、中継動画を視聴するという言い方が近いかもしれません。
株主としての権利は、別途、議決権行使書や委任状によって行使することになります。
株主は、会社から提供されるID、PWを利用して、会場の動画配信を行うサイトや、株主専用サイトにアクセスすることになります。
出席型
出席型の場合は、オンライン参加の株主が、法的な意味で出席しているものとして扱います。
議事録において出席株主として扱い、オンラインで質問や動議を提出することも、議決権を行使することもできます。
とりわけ「出席型」においては、株主の権利を確保し、株主総会の手続に瑕疵を生じないために、周到な準備・対応が必要になります。
出席型の注意点
オンライン株主総会を開催するには多くの注意点がありますが、そのいくつかを示します。
株主総会を開催している会場と、オンラインで参加している株主との間で、情報伝達の双方向性と即時性が確保される必要があります。
株主の本人確認を行うための確実な認証システムが必要です。
議決権行使のための賛否投票もオンラインで即時・正確に処理しなければなりません。
株主のなかにはインターネットに不慣れな人もいます。分かりやすいパンフレットやマニュアルが必要になります。電話等での相談体制も準備しなければなりません。
以上のために、通常の株主総会より事前準備が増加します。また、当日も動作確認のために通常の株主総会より早い時間から準備が必要になります。
システムを確実に作動させ、運用するための技術的スタッフが必要になります。一般的には、専門会社の有償サポートが必要になると思われます。
関連記事:取締役が一堂に会せない場合の取締役会