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取締役と監査役

取締役が一堂に会せない場合の取締役会

Last Updated on 2023年11月28日 by

原則は一堂に会する必要がある

取締役会は、取締役全員が同じ場所に集まって会議をするのが本来のやり方ですが、感染症対策など、状況によっては一堂に会することが難しい場合があります。また、特定の取締役が遠隔地にいる状態で開催を要する場合もあります。

この対策として、取締役会の書面開催と、リモート開催があります。

取締役会の書面開催

まず、書面開催については、会社法第370条に、取締役会の決議の省略についての定めがあります。

第三百七十条(抜粋) 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

それによると次の要件を満たせば書面または電磁的記録での開催ができるということになります。

□ 取締役が取締役会決議の目的事項について提案したこと。

□ 当該提案について、特別利害関係取締役を除く取締役の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたこと。一人でも反対すればできません。

□ 監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べていないこと。

□ 定款にその旨が規定されていること。

以上の要件を満たせば、当該提案を可決した旨の決議があったものとみなせることになります。

なお、代表取締役および業務執行取締役は、3ヶ月に 1 回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならず、この報告の省略は認められません(会社法372条2項、363条2項)。

つまり、書面決議の要件が整っていても、3ヶ月に1回は物理的に取締役会を開催しなければなりません。

リモート開催

会社法施行規則第101条(取締役会の議事録)第3項に次のようにあります。

会社法施行規則第百一条3(抜粋) 取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)

つまり、会社法は、取締役等が違う場所にいる場合があることを前提としています。

つまり、リモート開催が可能です。オンライン開催、テレビ会議方式などとも言います。

リモート開催の注意点

招集通知

取締役会の開催は原則として1週間前までに通知が必要です。招集通知には日時や場所、議題などを記載しますが、リモートの場合は特定の場所を指定することができないので、Web会議システムで使うIDやパスワード、URLなどを記載することが必要です。

議事録

その場にいない取締役等がリモートで参加したことを注記しましょう。例えば、「取締役○○○○、○○○○、○○○○はテレビ会議システムによって参加した。」などと記載します。

また取締役会が、リアルタイムかつ双方向の通信環境という条件を満たした開催である旨も注記します。例えば、「議長は、テレビ会議システムにより、出席者の音声及び画像が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認したうえで議事に入った。」などと記載します。

議事録上の開催場所

全取締役がリモート参加になることが可能で、その場合は議長の所在する場所を取締役会の開催場所として記載することができると解されています。

議長となる社長は会社から参加するのが一般的だと思われるので、通常は会社を開催場所として記載します。

議事録の署名

議事録の署名は、終了後速やかに議事録を作成し、郵送等で回付して署名を求める方法が考えられます。また、事務方が議事録を持って役員一人一人と会って署名をもらう方法が考えられます。

迅速に署名を集めるには、取締役会議事録の署名を電子署名ですることが考えられます。この場合、各取締役が電子署名の電子証明書が必要です。

クラウド型の電子署名も認めるという法務省の見解が示されています。これは、クラウド上でサービス提供事業者(電子契約事業者)が利用者の指示を受けて電子署名を行うものです。

通常の議事録であれば幅広いタイプの電子署名サービスを利用できますが、登記手続きで添付する取締役会議事録の電子署名には形式の定めがあります。登記手続きが必要な場合もあるので、当初から登記にも使える電子署名サービスを選んだほうがよいでしょう。


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