Last Updated on 2025年8月11日 by 勝
仕訳とは、会社やお店の経済活動(取引)を、「借方(かりかた)」 と 「貸方(かしかた)」 の2つの項目に分けて記録することです。これは簿記の基本的なルールで、すべての取引をこの形式で記録することで、会社の財政状態や経営成績を正確に把握することができます。
借方と貸方について
仕訳は、必ず左右に分かれます。左側が借方、右側が貸方です。
仕訳は、以下の5つのグループのどれかが増えたか減ったかを記録します。
資産(現金、売掛金など): 会社の財産のことです。
負債(買掛金、借入金など): 会社が将来支払うべき義務のことです。
純資産(資本金など): 資産から負債を引いた、返済不要なお金のことです。
収益(売上など): 会社がお金を稼いだ活動のことです。
費用(給料、家賃など): 会社の活動でお金を使ったこと、または将来使うお金のことです。
これらのグループの増減を、借方と貸方に以下のようにルールに従って記入します。
グループ | 増えた場合 | 減った場合 |
資産 | 借方 | 貸方 |
負債 | 貸方 | 借方 |
純資産 | 貸方 | 借方 |
収益 | 貸方 | 借方 |
費用 | 借方 | 貸方 |
最初は難しく感じるかもしれませんが、この5つのグループのどれが増えて、どれが減ったのかを考えることが大事です。慣れてくると「仕訳」ができるようになります。
具体的な仕訳の例
例として、「コピー用紙1,000円を現金で買った」という取引を考えてみましょう。コピー用紙は「消耗品費という費用」で、現金は「現金という資産」です
この取引では、以下の2つの動きがあります。
1.「現金」 という 資産 が1,000円 減った
2.「消耗品費」 という 費用 が1,000円 増えた
上記のルールに当てはめると、
資産の減少は貸方に記入するので、(貸方)現金 3,000 となります。
費用の増加は借方に記入するので、(借方)消耗品費 3,000 となります。
これを帳簿に書くと以下のようになります。これを「仕訳」といいます。
借方 | 貸方 |
消耗品費 | 現金 |
3,000 | 3,000 |
このように、必ず借方と貸方の金額が同じになるのが仕訳の基本的なルールです。これが簿記の最も重要な考え方である 「複式簿記(ふくしきぼき)」 です。
複式簿記とは
「複式」とは、一つの取引を「原因」と「結果」という2つの側面から記録することです。
家計簿のようなものを「単式簿記」といいます。単式簿記は、例えば、お金の動きがあったときに、「食費として3,000円使った」などという事実だけを記録します。
一方、「複式簿記」では、この取引を「お金が減った」という結果と、「食料品を買うという原因(=費用が発生した)」という2つの側面で捉え、それぞれを借方(左)と貸方(右)に分けて記録します。
複式簿記の仕組み
すべての取引はこの2つの側面で記録されるため、借方と貸方の合計金額は常に一致するようになります。この「二重に記録する」という仕組みが「複式」の由来です。
この記録方法によって、お金の動きだけでなく、会社の財産(資産)、借金(負債)、儲け(利益)などがどのように変動したかを詳細に把握できます。これにより、会社の正確な財政状態や経営成績を把握できるようになるのです。
簿記と仕訳の関係
簿記を理解する上で、仕訳の知識は欠かせません。
簿記における仕訳の重要性
簿記は、会社の経済活動を記録・計算・整理し、その結果を報告するための技術です。そして、その記録の出発点となるのが仕訳です。すべての取引は、仕訳という形式で記録され、それが集計されて決算書(貸借対照表や損益計算書など)が作成されます。
仕訳を理解するということは、「なぜこの取引が、この勘定科目で、借方と貸方にそれぞれ記録されるのか」という簿記のルールや論理を理解することに他なりません。つまり、仕訳を正しく行えなければ、その後のすべての作業も成り立たないため、簿記の学習において仕訳は最も基本的な、かつ最も重要な土台となります。
簿記3級と仕訳のレベル
簿記3級の試験では、仕訳の知識は必須です。
試験問題の多くは、まず取引を正確に仕訳できるかどうかを問う形式になっています。具体的には、現金預金の増減、売上・仕入、費用・収益の認識、商品の販売、手形取引、借入金・貸付金など、個人商店や中小企業で発生する基本的な取引の仕訳が問われます。
簿記3級に合格するためには、これらの仕訳を正確に、かつスムーズにこなせるレベルの理解が求められます。仕訳のパターンを丸暗記するのではなく、取引の「原因」と「結果」を理解し、借方と貸方のどちらにどの勘定科目が来るのかを自分で判断できるようになることが大切です。
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