Last Updated on 2025年8月21日 by 勝
メーカーの営業課長です。部下に元気で声が大きい者がいます。多少他人に対する配慮に欠ける言動もありますが、仕事はきちんとやっています。その者の言動がパワハラだという声が複数あり、上司として対応に困っています。これまでも注意したことはあるのですが、本人が自分に悪いところがあるとはまったく思っていないので、説得にも会話にもなりません。どのように対応すれば良いかアドバイスをお願いします。
これまで注意をしても、本人に悪気がないため話が通じないという状況は、非常に歯がゆく感じられることと思います。しかし、この問題を放置すれば、さらに多くの従業員が精神的な苦痛を感じる可能性があり、最悪の場合、優秀な人材の離職や組織全体の士気の低下につながりかねません。以下に、具体的な対応をご提案させていただきます。
ステップ1:状況の正確な把握と記録
まず、事態を客観的に把握し、事実に基づいた対応を進めることが重要です。
- 具体的な言動の収集: 「パワハラ」という抽象的な言葉ではなく、「いつ」「どこで」「誰に」「どのような」言動があったのか、具体的な事例を集めてください。被害を受けたとする複数の従業員から、個別に話を聞く時間を設けるのが良いでしょう。
- 記録の作成: 聞き取った内容は、日時、場所、内容を詳細に記録しておきましょう。これにより、後で本人と話す際の証拠となり、感情的な議論を避けることができます。
ステップ2:本人への個別面談と具体的な指摘
事実関係を整理した上で、本人と一対一でじっくり話す機会を設けてください。この際のポイントは以下の通りです。
- 感情的にならず、淡々と事実を伝える: 「あなたにはパワハラをしているという声がある」といった抽象的な表現ではなく、「〇月〇日の会議で、Aさんに対して『そんなこともできないのか』と大声で発言したことが、Aさんを精神的に追い詰めていると訴えがあった」のように、収集した具体的な事例を提示します。
- 本人の視点を理解する努力: 「なぜそのような発言をしたのか?」と本人の意図を尋ね、本人の「悪気のない」行動の背景を理解しようと努めてください。たとえば、「チームの士気を上げようとした」「早く仕事を終わらせてほしかった」といった本人の考えがあるかもしれません。
- 行動の定義とリスクを伝える: 本人の意図がたとえ善意であったとしても、その行動が他者に与える影響が問題であることを明確に伝えます。悪意がなくとも、相手が不快に感じたり、精神的苦痛を感じれば、それはハラスメント行為になりうることを認識させてください。また、それが会社としてのコンプライアンス違反にあたる可能性や、放置した場合の懲戒処分など、個人が負うリスクについても冷静に説明しましょう。
ステップ3:行動改善に向けた具体的な目標設定
ただ注意するだけでなく、改善に向けた具体的な行動を一緒に考え、目標を設定します。
- 具体的行動の提案: 「大声で話さない」「相手の意見を最後まで聞く」「否定的な言葉を使わない」など、改善すべき行動を具体的にリストアップします。
- 具体的な行動計画の策定: 「週に一度はチームメンバー全員に感謝の言葉を伝える」「会議で発言する際は、まず相手の意見を肯定してから自分の意見を述べる」など、実践可能な行動計画を立てます。
- 定期的なフォローアップ: 面談で終わりではなく、定期的に声をかけ、改善状況を確認し、ポジティブなフィードバックを与えることで、本人のモチベーションを維持させます。
ステップ4:組織全体での意識改革
この問題は、特定の個人の問題として片づけるのではなく、組織全体でハラスメントに対する意識を高める機会と捉えることも重要です。
- 社内研修の活用: ハラスメント防止研修やアンガーマネジメント(怒りをコントロールする方法)に関する研修の受講を本人に促すだけでなく、営業課全体で参加することを検討してください。
- 相談窓口の周知: 部下たちが安心して相談できる窓口があることを改めて周知し、風通しの良い職場環境づくりに努めます。
以上のステップを踏むことで、部下の「悪意のなさ」を尊重しつつ、具体的な事実に基づいて問題の本質を伝え、建設的な改善を促すことができると考えます。