労災保険の休業補償給付について会社から説明する(例)

Last Updated on 2025年9月11日 by

労災保険の給付の一つである休業補償給付について、労災を原因とする負傷によって休業することになった従業員に対して、会社の担当者が、制度のあらましと、給付を受ける従業員が知っておくべきことを説明します。

労災保険 休業補償給付の説明

休業補償給付の概要

山田: 佐藤さん、具合はいかがですか?まずはゆっくりと療養に専念してくださいね。

佐藤: ありがとうございます。まさかこんなことになるとは…。正直、働けない間の生活が少し心配で。

山田: 今日は、その辺りのこともご説明にあがりました。今回の怪我は業務中に発生したものですので、労災保険の対象となります。労災保険にはいくつかの給付制度がありますが、佐藤さんのように仕事ができない期間の生活を保障してくれる給付として、「休業補償給付」があります。今日はその制度の概要と、佐藤さんに知っておいていただきたいことを説明します。

佐藤: 休業補償給付ですか。具体的にどういうものなんですか?

山田: 簡単に言うと、労災による怪我や病気が原因で働けなくなり、お給料がもらえない期間に、その損失を補ってくれる制度です。給付を受けるための条件はいくつかあります。

佐藤: どんな条件ですか?

山田: 大きく分けて次の3つです。

  1. 労災による負傷や疾病の療養のために仕事ができないこと。
  2. 賃金を受けていないこと。
  3. 仕事ができない期間が4日以上あること。

佐藤: 4日以上なんですね。

山田: はい。最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、労災保険からの給付はありません。この3日間については平均賃金の60%を会社が支払います。

佐藤: ありがとうございます。それで、4日以降の給付金はどれくらいもらえるのでしょうか?

山田: 労災保険からの休業補償給付は、「給付基礎日額」をもとに計算されます。給付基礎日額とは、原則として労災発生直前の3か月の賃金総額を、その期間の暦日数で割った1日あたりの平均賃金です。この金額の60%が「休業補償給付」、さらに20%が「休業特別支給金」として支給されます。合計すると、給付基礎日額の80%が補償される形になります。

佐藤: 80%補償されるんですね。どうやって申請すればいいんでしょうか?

山田: 申請書類は会社で準備します。佐藤さんには、病院から証明をもらう部分や、ご自身の情報などを記入していただく必要があります。申請は会社を通じて労働基準監督署に行いますので、書類ができ次第ご連絡しますね。

佐藤: わかりました。他に何か知っておくべきことはありますか?

山田: 申請にはいくつかの注意点があります。

  • 申請書類(様式第8号)の提出: 会社が用意しますので、病院の証明をもらってください。
  • 療養の継続: 医師の指示に従い、療養に専念してください。給付を受けるには、医師から「療養のために働けない」という証明が必要です。
  • 定期的な連絡: 療養の状況や復帰の目途について、定期的に会社へご連絡をお願いします。

佐藤: この休業補償給付は、退院すれば打ち切りになるんですか?

山田:いいえ、退院したからといってすぐに打ち切りにはなりません。休業補償給付は、「療養のために働くことができない」という状態が続いている限り支給されます。もし退院後も、医師が「まだ仕事に戻れる状態ではない」と判断した場合は、引き続き給付を受けることができますのでご安心ください。給付が終了するのは、医師から「治癒」の診断が出たときです。

給付金の入金時期と受任者払い制度について

佐藤: すみません。給付金はいつ頃、私の通帳に振り込まれるのでしょうか?

山田: はい。通常、労働基準監督署に申請書を提出してから振り込まれるまでに、審査期間として1~2か月程度かかるようです。書類に不備がない場合でも、初回の申請は少し時間がかかる傾向にあります。

しかし、当社では、佐藤さんの生活を少しでも早く安定させていただくために、「受任者払い制度」を活用することをお勧めしています。

佐藤: 受任者払い制度、ですね。それはどういう仕組みですか?

山田: この制度を利用すると、労働基準監督署からの振込は会社に直接入りますが、会社は、労働基準監督署からの入金を待たずに、会社の給料日に合わせて受給見込み額を先に佐藤さんへお振込みします。

佐藤: 会社の給料日に振り込んでもらえるんですか!それはすごく助かります。

山田: はい。この制度を利用する場合は、申請書にその旨を記載していただきます。

佐藤: はい、お願いします。書類の方、できるだけ早くお願いします。

山田: はい、できるだけ急いでやらせていただきます。他にもわからないことが出てきたら、いつでも私に聞いてください。一日も早い回復を心から願っています。


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