カテゴリー: ハラスメント

  • 新人社員が人事課長に学ぶ「男女雇用機会均等法」の基本

    新人:課長、お時間よろしいですか?
    配属されたばかりで、男女雇用機会均等法について少し勉強してるんですけど、いまいちピンと来なくて……実務でどう気をつければいいか教えていただけますか?

    男女雇用機会均等法とは

    採用時に性別で差をつけてはいけない(第5条)

    新人:まず、採用のところから。求人票に「女性歓迎」とか書いてるの、だいぶ前に見たことあるんですけど…あれってOKなんですか?

    課長:今はあまり見かけないね。基本的にはNGだよ。第5条で、募集・採用時の性差別は禁止されてるからね。中立的な表現にしなきゃいけない。

    新人:なるほど、能力で判断しろってことですね。

    配置・昇進・研修も性別で扱いを変えてはダメ(第6条)

    新人:じゃあ、入社後の配置とか昇進でも、性別を理由に変えちゃダメですか?

    課長:そのとおり。第6条では、配置・昇進・降格・教育訓練などにおける性差別が禁止されてる。
    「女性は出産があるから昇進は控える」とか、「男性だけ管理職研修に参加させる」とかは違法になるよ。

    新人:ちゃんと評価基準を男女問わずに統一することが必要なんですね。

    妊娠・出産・育児で不利益にしてはいけない(第9条)

    新人:マタハラとかも問題になってますけど、あれもこの法律の中ですよね?

    課長:そう。第9条では、妊娠・出産・産休・育休などを理由に不利益に取り扱うのは禁止されてる。
    たとえば「妊娠したから契約更新しない」とか「育休に入るから別の部署に異動させる」とか、全部NG。

    新人:実際にそういう相談ってあるんですか?

    課長:あるよ。対応を間違えると、会社全体の信頼にも関わるから、人事としては特に注意が必要だ。

    セクハラ対策は会社の義務(第11条)

    新人:セクハラも均等法の対象なんですね?

    課長:うん、第11条で会社に防止措置義務があるとされている。
    具体的には、就業規則に禁止規定を入れる、相談窓口をつくる、実際にトラブルがあったらすぐ調査して対応することなどがある。

    新人:なるほど。相談しやすい雰囲気をつくるのも大事ですね。

    間接差別にも気をつけて(第7条)

    新人:「間接差別」っていう言葉、あまり聞いたことがないんですが、どういうことですか?

    課長:第7条で禁止されているのは、一見性別に関係ないように見えて、結果的に特定の性に不利になる制度だ。
    たとえば「全国転勤可能であること」を昇進の条件にした結果、女性だけが除外されてしまう場合などがある。

    新人:表向きは中立でも、結果として差が出るような制度は見直しが必要ってことですね。

    女性の活躍を後押しする取り組みはOK(第8条)

    新人:差別を心配して女性だけを優遇すると「逆差別」になるんじゃないかと心配になるんですが…

    課長:そこは安心して。第8条で「ポジティブ・アクション」っていう考え方が認められていて、現状の格差を埋めるための取り組みはOKなんだ。
    たとえば「女性管理職育成プログラム」なんかもその一例だよ。

    まとめ

    新人:なるほど…なんとなくわかってきました!要するに「性別にとらわれずに、公平な扱いをする」ってことですね。

    課長:そのとおり。それに加えて、「制度だけじゃなく職場の雰囲気」も大切なんだ。
    人事としては、ルールの整備も必要だし、社員が安心して相談できる環境づくりも担ってる。
    この法律は、単なる義務じゃなく、いい職場をつくるための土台なんだよ。

    課長:今日は、男女雇用機会均等法の主要な部分だけを説明したから、実務ではこれだけでは不十分だ。これを機会によく勉強してほしいね。厚生労働省ホームページの「均等法Q&A」は入門として適していると思うよ。

    新人:はい、ありがとうございます!


    会社事務入門従業員を採用するときの手続き男女雇用機会均等法とは?知っておきたいポイントを分かりやすく解説>このページ

  • ハラスメント研修は義務ですか?その内容は?

    ハラスメント研修は義務ですか

    ハラスメント研修の義務化は、主に以下の法律に規定されています。

    労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)

    第30条の2で、事業主は職場におけるパワーハラスメントを防止するために必要な措置を講じなければならないと規定されています。

    大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月から義務化されています。

    男女雇用機会均等法

    第11条で、事業主は職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために必要な措置を講じる必要があると規定されています。

    男女雇用機会均等法とは?知っておきたいポイントを分かりやすく解説

    育児・介護休業法

    第25条で、事業主は職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタニティハラスメント、ケアハラスメント)を防止するために必要な措置を講じる必要があると規定されています。

    これらの法律に基づき、厚生労働省が具体的な「雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」を定めており、その中で研修の実施が重要な措置の一つとして挙げられています。

    研修の内容について

    厚生労働省の指針や関連情報から、ハラスメント研修で盛り込むべき内容は以下の点が挙げられます。

    事業主の方針等の明確化と周知・啓発

    職場におけるハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ・ケアハラ等)の内容や、ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること。

    行為者に対して厳正に対処する旨の方針や対処の内容(就業規則等への規定)を労働者に周知・啓発すること。

    相談窓口の担当者、人事部門、管理職など、関係者がハラスメントに関する関心と理解を深めること。

    ハラスメントの定義と種類、具体例

    各ハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ・ケアハラなど)の定義を理解させる。

    ハラスメントに該当する具体的な言動や行為の例を提示し、してはいけないことの理解を深める。特に、パワハラについては「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」という3つの要素を説明し、6つの類型(身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)を具体的に解説することが有効です。

    「指導」と「ハラスメント」の線引きを明確にする。

    ハラスメントが労働者や企業に与える影響

    ハラスメントが被害者にもたらす精神的・身体的苦痛、モチベーション低下、生産性低下などの悪影響を理解させる。

    企業イメージの低下、訴訟リスク、人材流出など、企業全体に与える悪影響についても説明する。

    相談窓口と対応フロー

    ハラスメントに関する相談窓口がどこにあるのか、どのような体制で相談を受け付けるのかを明確にする。

    相談があった場合の事実確認、被害者・行為者への対応、再発防止措置などの具体的な対応フローを説明する。

    相談者や行為者のプライバシー保護、相談したことによる不利益な取り扱いの禁止を徹底する。

    ハラスメントの予防と対策

    労働者一人ひとりがハラスメントをしない、させないための意識を持つことの重要性を強調する。

    日頃からのコミュニケーションの重要性、多様な価値観の尊重について考える機会を設ける。

    管理職に対しては、部下との適切なコミュニケーション、指導のあり方、ハラスメント発生時の初期対応など、より実践的な内容を盛り込む。

    その他

    最新の法改正や社会情勢を踏まえた内容とすること。

    従業員の属性(一般社員、管理職、新入社員など)に合わせて、内容や深さを調整することも効果的です。

    一方的な講義だけでなく、グループワークや事例検討などを取り入れ、参加者が主体的に考える機会を設けることも推奨されます。

    厚生労働省のウェブサイト「あかるい職場応援団」では、ハラスメント対策に関する詳細な情報や、企業向けの各種ガイドライン、研修資料などが提供されていますので、参考にされることをお勧めします。

    ハラスメント防止研修レジメ(例)

    以下は、ハラスメント防止研修のレジュメの一例です。対象者を一般的な従業員(管理職・一般社員含む)と想定し、半日程度の研修を想定した内容です。貴社の具体的な課題や従業員の皆さんの状況に合わせて、内容の深さや重点を置くポイントを調整してください。特に、事例を用いたグループワークやロールプレイングを取り入れると、より実践的な研修になります。

    本研修の概要

    研修目的

    ハラスメントの定義と種類、具体例を理解する。

    ハラスメントが個人と組織に与える悪影響を認識する。

    ハラスメントを未然に防ぎ、快適な職場環境を維持するための行動を学ぶ。

    ハラスメントが発生した場合の適切な対応について理解を深める。

    研修対象

    全従業員(管理職、一般社員)

    研修時間

    3時間(休憩15分含む)

    1. はじめに:なぜ今、ハラスメント対策が必要なのか?(15分)

    社会情勢と企業の責任

    ハラスメントに関する法改正(パワハラ防止法の義務化など)の背景

    企業の社会的責任とハラスメント対策の重要性

    ハラスメントが企業にもたらすリスク(信用の失墜、人材流出、法的措置など)

    本研修の目的と重要性

    「自分ごと」として捉えることの重要性

    快適な職場環境づくりのために、全員で取り組むべきこと

    2. ハラスメントの基礎知識:知ることから始める(60分)

    ハラスメントとは何か?

    ハラスメントの共通認識:相手の尊厳を傷つけ、就業環境を害する行為

    悪意の有無に関わらずハラスメントになる可能性

    各種ハラスメントの定義と具体例

    パワーハラスメント(パワハラ)

    定義:優越的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えて行われる言動であって、労働者の就業環境を害するもの

    6つの類型とその具体例(身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)

    「指導」と「パワハラ」の線引き:どこからがハラスメントか?

    セクシュアルハラスメント(セクハラ)

    定義:職場において行われる性的な言動に対する、労働者の意に反する対応により、その労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されたりすること

    典型的な具体例:対価型、環境型

    同性間、男性から女性へのセクハラだけでなく、女性から男性へのセクハラ、同性間のセクハラも含まれること

    妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ・ケアハラ)

    定義:職場において行われる妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関する言動により、就業環境が害されたり、不利益な取扱いを受けたりすること

    典型的な具体例と留意点

    その他のハラスメント(アルコールハラスメント、モラルハラスメントなど、必要に応じて触れる)

    被害者・加害者・周囲の人の心理と影響

    ハラスメントが被害者にもたらす影響(精神的・身体的健康、モチベーション、キャリアなど)

    無自覚な加害者にならないために

    見て見ぬふりをする周囲の人が職場に与える影響

    3. ハラスメントの予防と良好な職場環境づくり(60分)

    企業としての方針と取り組み

    当社のハラスメント防止規程、就業規則の確認

    懲戒処分の対象となることの明確化

    相談窓口の周知と利用促進

    一人ひとりができるハラスメントの予防策

    コミュニケーションの重要性:日頃からの良好な人間関係構築

    多様性の尊重:価値観、文化、バックグラウンドの違いを理解する

    アサーティブネス:相手を尊重しつつ、自分の意見を適切に伝えるスキル

    アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見):自分の思い込みに気づき、ハラスメントに繋がる言動を防ぐ

    「嫌だ」と感じたら伝える勇気:早期対応の重要性

    見て見ぬふりをしない勇気:周囲の人の役割

    管理職に求められる役割(管理職が参加している場合、特に強調)

    部下の状態を常に把握するアンテナ

    適切な業務指示・指導とハラスメントとの線引き

    日頃からのコミュニケーションと信頼関係の構築

    ハラスメントの兆候を早期に察知し、対応する意識

    4. ハラスメント発生時の対応と相談窓口の活用(45分)

    ハラスメントを受けてしまったら

    一人で抱え込まない:相談することの重要性

    相談窓口の利用方法、相談ルート

    事実の記録:いつ、どこで、誰が、何を、どうしたか

    ハラスメントを目撃したら

    見て見ぬふりをしない

    相談を促す、あるいは相談窓口へ情報提供する

    相談があった場合の対応プロセス

    相談内容の聴取とプライバシー保護

    事実確認の方法

    被害者・行為者への対応(配置転換、懲戒処分など)

    再発防止策の検討と実施

    相談者・行為者への不利益な取り扱いの禁止

    当社の相談窓口と担当者

    具体的な相談窓口(担当部署、担当者名、連絡先など)

    相談後の流れについて改めて説明

    5. 質疑応答とまとめ(15分)

    質疑応答

    研修の振り返り

    快適な職場環境は全員で作るものというメッセージ

    本日の研修内容を今後の行動に活かすことへの期待

    持ち物

    筆記用具

    (配布資料があれば)配布資料


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    会社事務入門職場内のトラブルに会社はどう対応するハラスメント対策の留意点>このページ

  • ハラスメントに関する会社方針の発表(サンプル)

    会社方針の文書例

    ○年○月○日

    株式会社○○○ 代表取締役社長○○○

    ハラスメントに関する注意喚起

    1 はじめに

    職場におけるハラスメントは、従業員の個人としての尊厳を不当に傷つける許されない行為であるとともに、職場秩序や業務の遂行を阻害し、会社の社会的評価に影響を与える問題です。

    性別役割分担意識に基づく言動は、セクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となることがあり、また、妊娠・出産・育児休業等に関する否定的な言動は、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの発生の原因や背景になることがあります。このような言動をしてはいけません。

    また、パワーハラスメントの発生の原因や背景には、従業員同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題があると考えられるので、職場環境の改善に努めましょう。

    2 厳正な対処

    当社は職場におけるハラスメント行為に対して就業規則並びにハラスメント防止規程等の社内規程に則って厳正に対処します。職場以外であっても仕事の延長として行われたハラスメント行為、従業員以外の者に対するハラスメント行為についても同様に厳正に対処します。

    相手の立場に立って、普段の言動を振り返り、ハラスメントのない、快適な職場を作っていきましょう。

    すべての従業員は、どのような行為がハラスメント行為にあたるかを確認してください。就業規則の関係条項とハラスメント防止規程、別途配布するリーフレットを熟読するよう求めます。

    3 相談窓口

    当社におけるハラスメントに関する相談(苦情を含む)窓口担当者は次の者です。一人で悩まずにご相談ください。相談したことで不利な扱いをされることはありません。

    ○○課○○○(電話○○、メールアドレス○○○)(女性)
    ○○課○○○(電話○○、メールアドレス○○○)(男性)
    外部相談窓口(電話○○、メールアドレス○○○)

    以上


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    会社事務入門ハラスメント対策の留意点ハラスメントが起こらない職場づくり>このページ

  • 同僚間のハラスメントに関する注意喚起の文書(サンプル)

    社内通達:同僚間のハラスメント防止について

    令和◯年◯月◯日

    従業員の皆さんへ

    株式会社◯◯ 
    社長 ◯◯◯◯

    快適な職場環境は、私たち一人ひとりが互いを尊重し、協力し合うことで築かれます。当社ではこれまでも、セクシャルハラスメント、マタニティハラスメント、パワーハラスメントといった各種ハラスメントの防止に努めてまいりました。

    ハラスメントと聞くと、「上司から部下へ」「優位な立場から劣位な立場へ」といった構図をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、上司・部下の関係ではない同僚間であっても、特定の言動がハラスメントに該当し、会社として見過ごせない重大な問題となることがあります。

    同僚間の個人的なトラブルに見えても、その行為が相手に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を悪化させたりするものであれば、それはハラスメントに該当し、会社はハラスメント対策を行う義務があります。

    同僚間において、以下のような行為はハラスメントと見なされ、関係者に重大な影響を及ぼす可能性があります。下記の事項に留意し、十分注意されるようお願いいたします。

    セクシュアルハラスメント(セクハラ)

    性的な言動によって、相手が不快に感じたり、就業環境が害されたりすることです。

    性的な冗談や発言:相手が嫌がっているにもかかわらず、性的な内容の冗談を言ったり、性的な経験について執拗に尋ねたりする。

    身体への不必要な接触:肩や腰に触れる、抱きつくなど、性的な意図がないとしても相手が不快に感じる身体的接触。

    性的な噂の流布:事実に基づかない性的な噂を広める行為。

    個人的な交際・デートの強要: 相手が拒否しているにもかかわらず、執拗に誘い続ける。

    パワーハラスメント(パワハラ)

    優位性のある立場を利用し、相手に精神的・身体的苦痛を与えることです。同僚間では、特定のグループからの無視、集団でのいじめ、特定の個人に対する嫌がらせなどが該当します。

    精神的な攻撃:誹謗中傷、暴言、仲間外れ、無視、SNS等での攻撃的な書き込み。

    過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強要。

    過小な要求:業務を与えず、意図的に仕事から外す。

    個の侵害: プライベートな情報を執拗に聞き出す、噂を流す、立ち入った干渉をする。

    マタニティハラスメント(マタハラ)

    妊娠・出産・育児に関するハラスメントです。同僚間でも、以下のような行為はマタハラに該当します。

    心無い言動: 妊娠・育児中の同僚に対し、「迷惑」「役立たず」といった心無い言葉を浴びせる。

    制度利用の妨害: 育児休業や時短勤務制度の利用を揶揄したり、諦めさせようとしたりする。

    嫌がらせ: 妊娠・育児中の同僚に対して、業務上の協力を拒否したり、嫌がらせを行ったりする。

    なぜ同僚間のハラスメントが問題か

    同僚間のハラスメントは、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、職場の雰囲気を著しく悪化させ、チーム全体の生産性低下にもつながります。放置すれば、ハラスメントを受けた従業員が精神的な不調をきたし、休職や退職に至ることもあります。会社としては、このような事態は決して看過できません。

    私たち一人ひとりにできること

    相手への配慮と尊重:相手がどう感じるかを常に考え、言動には細心の注意を払いましょう。

    多様性の理解: 性別、年齢、国籍、価値観などが異なる人々がいることを理解し、それぞれの違いを尊重しましょう。

    ハラスメントは許さないという意識: 自身の言動がハラスメントに該当しないか常に自問自答し、他者のハラスメント行為には毅然とした態度で臨みましょう。

    相談窓口の利用: もし、ハラスメントを受けていると感じたら、またハラスメントを目撃したら、ためらわずに人事部または社内相談窓口に相談してください。相談者のプライバシーは保護され、不利益な取り扱いは一切いたしません。

    ハラスメントは、被害者、加害者、そして会社全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。同僚間のハラスメントも例外ではありません。「個人的なことだから」「大したことない」と安易に考えず、上記のような行為は絶対に行わないでください。

    皆で協力し、誰もが安心して働ける健全な職場環境を維持していきましょう。


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  • カスハラ対策の義務化について

    顧客による従業員への著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策を企業に義務付ける改正労働施策総合推進法などが2025年6月4日の参院本会議で可決成立しました。この改正内容と、施行時期、これから企業が準備しなければならないことについて説明します。

    改正内容

    先生:社長、本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。本日はカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の法改正についてご説明させていただきます。先日、企業がカスハラ対策を講じることが法的に義務化されることが決定したのはご存知でしょうか。

    田中社長: ああ、山田先生、今日はよろしくお願いします。その件はニュースでも少し見ましたが、うちにどう影響するのか、正直まだ理解できていません。義務化というのは、結構大変なことだと思うんですが。

    先生: はい、これまではハラスメント対策というと、社内のパワハラやセクハラが中心でしたが、今後は、カスハラ、つまりお客様からの迷惑行為についても企業の責任として対策が求められるようになります。従業員の皆さんが安心して働ける環境を整えることが企業の責任ということです。

    具体的な義務

    先生: 具体的にどのような対策が義務化されるかというと、主に以下の点が挙げられます。

    1.カスハラ対策の基本方針を明確にし、従業員に周知すること。
    2.相談窓口を設置し、相談があった際には適切に対応できる体制を整えること。
    3.現場での初期対応の方法や手順を明確にすること。
    4.カスハラ被害を受けた従業員への心身のケアなど、適切な配慮を行うこと。
    5.事実関係を確認し、再発防止策を検討・実施すること。
    6.従業員のプライバシー保護も考慮すること、例えば名札を苗字だけにするなども検討事項になります。

    社長: なるほど、相談窓口の設置やマニュアル作成など、色々やることがありそうですね。従業員への教育も必要になんですね。

    先生: その通りです。カスハラに該当する行為としては、大声での執拗なクレーム、金銭や不可能な要求、人格否定、長時間の拘束、性的な言動などが含まれます。線引きが難しいケースもありますが、従業員の心身に著しい影響を与えるような行為が対象となります。

    社長:これは義務なんでしょうか。やらなければ罰則があったりしますか。

    先生:あとで条文をお示ししますが「講じなければならない」という部分は一般的にいう義務規定です。「努めなけれならない」の部分は努力義務規定です。また、罰則は直接には定められていません。ですが、求められている対策をしなければ行政指導されることがありえます。また、対策が充分でないことに起因して従業員に万一健康被害などが発生すれば、安全配慮義務違反による損害賠償もありうるわけですから、努力義務だから努力すればよいということでは済まされないのです。

    社長:そうですね。

    施行時期

    先生: この改正法は、公布の日から1年6か月以内に施行される予定です。具体的な施行日はまだ確定していませんが、報道などを見る限り、来年、2025年中には施行される可能性が高いです。

    社長: 来年中には、ですか。あまり時間がないですね。

    今後の準備

    社長:うちとしては、具体的に何から手をつければいいんでしょうか?

    先生: はい、今から準備すべきことがいくつかあります。

    1.就業規則やハラスメント防止規程の改定(カスハラ対策に関する条項を盛り込む必要があります)
    2.相談窓口の設置と担当者の育成(相談を受け付け、適切に対応できる人材の育成が必要です)
    3.カスハラ対応マニュアルの作成(現場の従業員が困った時にすぐ対応できるよう、具体的な手順を定めたマニュアルが必要です)
    4.従業員への研修・教育(カスハラの具体例や企業の対応方針、相談窓口の利用方法などを周知徹底します)
    5.メンタルヘルスケア体制の強化(被害を受けた従業員が心身の不調を訴えた際に、適切なケアを受けられる体制を整えておくことも重要です)

    関連記事:カスタマーハラスメント対応マニュアル(サンプル)

    社長: 社内規程の変更、窓口の設置、マニュアル作り、それに研修ですか。結構大変ですね。しかし、従業員が疲弊してしまっては、会社としても良いことはないですからね。これを機に、しっかりとした体制を作らないといけないですね。

    先生:御社ではパワハラ、セクハラ、マタハラといった他のハラスメント対策は既に実施されているので、それらの措置の内容を参考に、カスハラについても同等の対策を講じる流れになると思います。具体的なことは、今後順次ご提案させていただきます。

    社長:よろしくお願いします。

    条文等

    カスハラ対策の義務化は、主に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」の改正によって行われました。

    直接的にカスハラ対策を義務付ける条文として、労働施策総合推進法 第30条の2 が改正され、新たに第2項が追加されました。

    労働施策総合推進法 第30条の2 (抜粋・改正後)
    「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」

    そして、今回の改正で追加されたのが以下の部分です。

    「2 事業主は、前項の措置を講ずるに当たっては、労働者が業務に関して他の労働者又は事業主以外の者から著しい迷惑行為を受けることによって、その就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講ずるように努めなければならない。」

    また、労働施策総合推進法第30条の2の規定に基づき、厚生労働大臣はハラスメント防止のための指針を定めることになっています。この指針の中で、カスハラ対策として具体的にどのような措置を講じるべきかが示される予定です。


    会社事務入門ハラスメント対策の留意点>このページ

  • ハラスメントが起こらない職場づくり

    ハラスメントの種類

    ハラスメントとは、嫌がらせをして相手に不快感を与える行為のことをいいます。職場における代表的なハラスメントは、セクハラ、パワハラに、マタハラです。

    男女雇用機会均等法第11条は会社のセクハラ防止措置の義務化等を定めています。労働施策総合推進法第30条の2はパワハラ防止措置の義務化等を定めています。男女雇用機会均等法第11条の3、育児介護休業法第25はマタハラ防止措置の義務化等を定めています。

    セクハラに対する会社の対応

    パワハラに対する会社の対応

    マタハラに対する会社の対応

    事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

    方針を明確にして周知・啓発すべき事項は主に次の事項です。

    ① ハラスメントがあってはならない旨の会社方針を明確にする
    ② どのような言動がハラスメントになるか例示して周知・啓発する
    ③ 違反に対する処罰等について定めた規程等を周知・啓発する
    ④ 相談窓口、相談担当者、連絡方法等を周知・啓発する

    周知・啓発の方法としてはは次の3つが中心となります。

    ① 就業規則などの規程やマニュアルなどにハラスメント防止について必要な事項を整備する
    ② ハラスメント防止に関する方針や会社が行っている措置を、社長通達、一斉メール、社内掲示などを利用して周知・啓発する
    ③ ハラスメント防止に関する研修、講習会等を実施する。

    ハラスメントに関する会社方針の発表(サンプル)

    同僚間のハラスメントに関する注意喚起の文書(サンプル)

    規定例

    ハラスメント防止の措置は社内における強制法規である就業規則等の規程類に取り込むと効果的に行うことができます。また、厚生労働省の指針が規程の整備をもとめています。

    社内規程をチェックしましょう。次の項目がもれなく整備されているでしょうか。

    ①セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントの定義や具体的な例がもりこまれているか
    ②ハラスメントを行ってはならないことが明確にされているか
    ③ハラスメントに該当する行為を行った者に対する懲戒規定が整備されているか
    ④相談窓口に関する事項があるか
    ⑤相談や協力をしたことを理由に不利益な取り扱いをされないことが明確にされているか
    ⑥相談者や行為者等のプライバシーが保護されることを明確にしているか

    ハラスメントに関する規定は、就業規則本則に規定することも可能ですが、ハラスメントの具体的な例や相談に関することなど詳細に規定するべき事項が多いので、就業規則の本則に委任規定を設けた上で、詳細を別規程(ハラスメント防止規程など)で定める方がよいでしょう。

    ハラスメント防止規程

    セクシュアルハラスメントの禁止|就業規則

    パワーハラスメントの禁止|就業規則

    マタニティハラスメントの禁止|就業規則

    その他のハラスメントの禁止|就業規則

    その他の措置

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