ハラスメントの事後措置

ハラスメント

ハラスメントの種類

ハラスメントとは、嫌がらせをして相手に不快感を与える行為のことをいいます。職場における代表的なハラスメントは、セクハラ、パワハラに、マタハラです。

男女雇用機会均等法第11条は会社のセクハラ防止措置の義務化等を定めています。労働施策総合推進法第30条の2はパワハラ防止措置の義務化等を定めています。男女雇用機会均等法第11条の3、育児介護休業法第25はマタハラ防止措置の義務化等を定めています。

ハラスメントの調査後の会社が行う事後措置について、調査結果の認定別にご説明します。

ハラスメントと認定した場合

ハラスメントの事実が確認された場合、会社は再発防止と職場環境の改善を目的として、被害者への配慮行為者への措置を迅速かつ適切に行う義務があります。

被害者に対する措置

  • 心身のケア: 産業医やカウンセラーなどと連携したメンタルヘルス不調への相談対応やケア。
  • 就業環境の回復: 行為者と引き離すための配置転換(被害者の意向を踏まえ、不利益にならないように)。
  • 関係改善の援助: 被害者と行為者の関係改善に向けた援助。
  • 不利益の回復: 降格や減給など、ハラスメントにより被った労働条件上の不利益の回復。
  • 謝罪のあっせん: 行為者から被害者への謝罪の機会を設ける(被害者の希望があれば)。

行為者に対する措置

  • 懲戒処分: 就業規則に基づき、行為の態様や悪質性、影響の程度に応じて、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などの懲戒処分を適切に講じます。
  • 人事上の措置: 被害者と引き離すための配置転換や、役職の解任など。
  • 再発防止教育: 行為者に対する研修や指導、注意等を実施。

ハラスメントではないと認定した場合

調査の結果、訴えられた行為がハラスメントの定義に該当しないと判断された場合でも、会社は事後措置を講じる必要があります。

相談者(申立人)への措置

  • 調査結果の報告と説明: 事実確認の結果、ハラスメントには該当しないと判断した理由を丁寧に説明し、会社として適切に対応したことを理解してもらうよう努めます。
  • メンタルヘルスケア: 相談者は傷ついた経験から相談していることが多いため、結果として認定されなかったとしても、心身の状態に配慮し、必要に応じて産業保健スタッフ等による継続的なフォローアップを検討します。
  • 職場のフォロー: 相談者が職場で孤立しないよう配慮するなど、働きやすい環境を維持するための措置を講じます。

行為者(名指しされた者)への措置

  • 事実の通知: 調査の結果、ハラスメントとは認定されなかったことを通知します。
  • 不利益な扱いの禁止: 調査対象となったことを理由に、行為者に対して不当な不利益な扱いをしないよう配慮します。

判断することができなかった場合

事実関係の確認が難しく、ハラスメントの有無について断定的な判断ができなかった場合も、そのまま放置せず以下の措置を講じる必要があります。

  • 当事者への説明: 調査を行ったものの、客観的な証拠等に基づき事実関係の確認が困難であった経緯を誠実に説明し、理解を求めます。
  • 再発防止措置の徹底: 認定の有無にかかわらず、当該事案をきっかけとして、改めて職場全体に対し、ハラスメントに関する方針の周知・啓発(研修の実施や啓発資料の配布など)を徹底します。
  • 個別的な配慮: 当事者双方に対し、職場で孤立させない、精神的なフォローを行うなど、個別の状況に応じた配慮を行います。

全てのケースで共通する措置

ハラスメントの認定結果にかかわらず、会社は以下の措置を必ず講じ、職場のハラスメント対策を強化し続ける必要があります。

  • プライバシーの保護: 相談者、行為者、協力者など関係者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に周知します。
  • 不利益な取扱いの禁止: 相談や事実確認への協力等を理由に、不利益な取扱いをしないことを周知・徹底します。
  • 再発防止策の徹底: 職場全体に対し、ハラスメントに関する意識啓発研修を再度実施したり、相談窓口の周知を徹底したりするなど、再発防止に向けた措置を講じます。

これらの措置は、事業主が講ずべきハラスメント防止のための措置義務(労働施策総合推進法等)に基づくものです。