カテゴリー: ハラスメント

  • 新入社員に会社の悪口をふきこむ社員がいますがどうすればよいでしょう?

    新入社員をつかまえて、「よくこんな会社に来たな、ここはとんでもないブラックだぞ」とか「この会社はそのうちつぶれる、次を考えたほうがよいぞ」などと言う古参の社員がいるそうです。その言葉を真に受けて辞めてしまった新人が何人もいるそうです。私は役員として、そのような噂を聞いて本人に直接注意したのですが「誓ってそんなことは言っていない。それを言ったのは誰ですか、これは名誉毀損だから対決させてください」と興奮して反論してくるありさまです。感触としては、実際に会社を悪く言っていると思うのですが、証拠がありません。どのように対処するべきでしょうか。

    会社の未来を担う新入社員が、心ない言葉でモチベーションを下げられ、退職してしまうのは残念です。ご相談の件、まずは証拠がなく本人も認めない状況での対処法について、いくつかのステップをご提案します。

    証拠の収集と事実確認

    直接的な証言が得られない場合でも、間接的な証拠を探ることはできます。

    まだ会社にいる新入社員がいれば、匿名性を保つことを約束したうえで、具体的な状況をヒアリングします。「誰に、いつ、どこで、何を言われたか」をできるだけ詳しく聞き出してください。

    他のにもヒアリングしましょう。「そのような発言があるらしい」と、特定の人物を名指しせず、広く聞き込み調査を行うことも考えられます。「最近、新入社員の定着率が悪いことについて、何か心当たりのあることはないか?」など、当たり障りのない聞き方でもよいでしょう。

    組織全体へのメッセージ発信

    特定の個人を名指しせず、会社全体に向けて再発防止と注意喚起を促します。

    「ハラスメント防止」 や 「エンゲージメント向上」 などをテーマにした研修を企画します。研修の中で「根拠のないネガティブな発言が、新入社員の会社への信頼を損ね、退職につながる深刻な問題である」と伝え、安易な発言がもたらす影響を認識させます。

    社内報やイントラネット、全体朝礼などを利用して、役員から全社員に向けて「新入社員の成長を支え、組織全体で温かく迎えることの重要性」 を訴えかけます。新入社員の成長を阻害する言動に対しては、会社として看過しない姿勢を明確に示しましょう。

    当該社員への指導

    証拠はなくても、疑わしい社員への指導は継続する必要があります。再度面談を試みてみましょう。

    面談の目的を「非難」ではなく、「会社への貢献」という観点に切り替えるのも一策です。「あなたの長年の経験は評価している。しかし、その貴重な経験や知識が、若い社員にうまく伝わっていないようだ」と伝えてみましょう。

    最終的な判断

    上記のような対応を続けても改善が見られない場合、最終的には就業規則に基づいた処分を検討することになります。

    しかし、それはあくまで最終手段です。まずは「事実の確認」「組織全体への働きかけ」「行動変容を促す面談」を地道に行っていくことが、今回の問題解決の糸口になるかと思います。

    このような状況は、個人だけの問題ではなく、組織として改善するべき課題が背景にあることも少なくありません。これを機に、会社にも反省すべき事項があれば謙虚に受け入れ、社員が安心して働ける環境づくりを推進していくことも重要です。


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  • 強く叱ったら従業員が行方不明になりました。どうすればよかったのでしょう?

    現場で作業をしていたときに、重大な事故につながりかねないミスをした従業員がいて、しかも、その日二度目の大きなミスだったため、上司が、「危なくてしょうがない、もうお前は帰れ」と言ったところ、会社に戻らずに、そのまま行方知れずになってしまいました。こうした場合、その上司及び会社にはどのような責任が生じるのでしょうか。その上司にはどのように指導するべきでしょうか?

    上司と会社には、法的な責任が発生する可能性が十分にあります。これは、従業員が精神的に不安定な状態で帰宅を命じられ、その結果として行方不明になったと見なされる可能性があるからです。以下で解説します。

    上司の責任

    この状況では、安全配慮義務違反の可能性が考えられます。労働契約法第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。

    今回のケースでは、上司が従業員に「もうお前は帰れ」と感情的に帰宅させたことが、この義務に反すると考えられます。従業員が精神的に不安定な状況だった場合、その状態を考慮せずに帰宅を命じた行為が、二次的な事故や事件につながる可能性を予見できなかったと判断されるかもしれません。

    また、上司の「もうお前は帰れ」という発言がパワーハラスメントに認定される可能性もあります。

    会社の責任

    会社も同様に、使用者としての安全配慮義務違反に問われる可能性があります。また、従業員の行方不明になって、事故等につながれば、労働災害と認定される可能性も出てきます。

    これは、業務上のストレスや上司からの発言が原因で従業員の精神状態が悪化し、その結果として行方不明になったと判断されるためです。

    上司への指導方法

    このような事態を再発させないため、上司には以下の点を指導する必要があります。

    1. 冷静な対応の徹底: 従業員がミスをした場合でも、感情的に怒ったり、非難したりするのではなく、冷静に事実を確認し、再発防止策を話し合うよう指導します。感情的な発言は、状況を悪化させるだけでなく、ハラスメントと見なされる可能性もあることを伝えます。
    2. 状況把握と適切な対応: 従業員がミスを繰り返す背景には、過度なストレス、睡眠不足、個人的な悩みなど、さまざまな要因が考えられます。上司には、ただ叱るだけでなく、従業員の精神的・肉体的な状態を把握し、必要に応じて人事担当者や産業医、カウンセラーなどと連携して適切な対応をとるよう指導します。
    3. 言葉選びの重要性: 「もう帰れ」という言葉は、従業員を突き放すような強いメッセージと受け取られる可能性があります。今回のケースのように、従業員の精神状態が不安定な時にこのような言葉をかけることは非常に危険です。上司には、言葉一つ一つが持つ影響を理解させ、より建設的で前向きな言葉を使うよう指導します。例えば、「今日は一度作業を中断して、明日また落ち着いて取り組もう」といった表現に言い換えることができます。

    この件は、ハラスメントにも繋がりかねないため、再発防止のために社内全体でメンタルヘルス教育やハラスメント研修を実施することも重要です。上司が一時の感情で発した言葉が、重大な結果を招く可能性があることを理解させることが、最も重要な指導ポイントとなります。


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  • 名札(なふだ)に本名を表示しないことについて

    最近の動向

    近年、名札を廃止する企業が増えています。また、名札に名字だけ表示したり、番号やニックネームや仮名を表示する例も増えています。 背景には、個人情報保護とセキュリティリスクの低減があります。この動きは、特に顧客と直接接する業務や、不特定多数の人が出入りする場所で顕著です。

    個人情報保護

    インターネットやSNSの普及により、個人の特定が以前より容易になってきたことも背景にあります。名札に本名と所属部署を記載している場合、ストーカー行為やプライベートな連絡先を探るなどの悪用につながるリスクがあります。特に、カスタマーサービスや窓口業務など、顧客と直接対話する従業員は、悪意のある顧客から個人情報を調べられる可能性があり、それを防ぐ目的があります。

    セキュリティリスクの低減

    組織の機密情報や不正アクセス対策も背景にあります。名札に記載された氏名や所属部署から、特定の人物のSNSを特定し、そこから組織の内部情報やセキュリティ上の弱点を探るサイバー攻撃の足がかりにされる可能性があります。本名を非公開にすることで、このようなリスクを低減することができます。

    名札を廃止する理由

    名札に記載される情報を少なくしても、個人を特定されるリスクはゼロではありません。特に、不特定多数の人が出入りする施設や、機密性の高い情報を扱う職種では、最初から名札を着用しない方がセキュリティリスクを最小限に抑えられます。

    また、カスタマーハラスメントが社会問題となる中、名札を廃止することで、従業員がより安心して働ける環境を整えることができます。

    電話でも名前を名乗らない

    会社に電話すると、部署名と電話に出た人の名前を名乗る会社がありますが、会社名だけを名乗る会社が増えています。

    背景には、名札に本名を表示しない動きと同様に、個人情報保護とセキュリティリスクの低減があります。

    多くの企業では電話応対のルールを設けています。

    • 姓のみを名乗る:「〇〇部の佐藤です」といった形で、フルネームではなく姓のみを名乗るのが一般的です。
    • 部署名や担当名のみを名乗る:「〇〇部です」や「カスタマーサービス担当です」といった形で、個人を特定できる情報を極力出さない方法もあります。
    • 代表番号への一括対応:個人の携帯電話番号を名刺に記載せず、会社の代表番号や部署の共有番号に集約することで、個人の連絡先が外部に流出するリスクを減らしています。

    もちろん、フルネームを名乗ることで、相手に安心感を与えたり、責任の所在を明確にするというメリットもあります。しかし、近年では、個人や組織の安全を優先するという考え方が主流になりつつあり、電話応対のルールも見直されているのが現状です。


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  • 部下を二次会に誘ったらパワハラ扱いされてしまいました。どうすればよかったのでしょうか?

    小さな商社の課長をやっています。取引先との接待が終わった帰りに、ねぎらいの気持ちで部下を誘ってもう1軒飲みに行きました。しばらくしてから部長に呼ばれて、「部下に酒の無理強いをするものではない、下手をすればパワハラだ」と注意されました。私としては無理強いしたつもりはなく、部下も喜んで飲んでいたように見えたのですが、これではもう誘うことはできません。そういう時代だと思って大人しくしているしかないのでしょうか。アドバイスをお願いします。

    接待後の二次会、お疲れ様でした。部下の方をねぎらうお気持ちはとても素晴らしいと思います。しかし、部長さんから注意を受けてしまったとのこと、心中お察しいたします。

    パワハラとは

    まず、パワーハラスメントは一般的に以下の3つの要素で定義されます。

    • 優越的な関係に基づいて(上司と部下の関係など)
    • 業務の適正な範囲を超えて
    • 身体的・精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

    今回のケースをこれに照らし合わせて考えてみましょう。

    1. 優越的な関係

    課長であるあなたと部下という関係は、まさにこの「優越的な関係」に該当します。

    2. 業務の適正な範囲

    二次会が担当業務の適正な範囲に含まれるかですが、気をつかう接待が終わって、部下を労おうとしたのであれば、業務の適正な範囲と考えてもよいでしょう。しかし、部下が「やれやれこれで帰れる」という気持ちになっていたかもしれません。さらに負担をかけることになったのであれば、業務の適正な範囲とは言えなくなるかもしれません。

    また、部下が部長に訴えたのであれば、「身体的・精神的な苦痛が」あったと思われます。

    パワハラかどうか

    今回のご相談内容は、パワハラの定義にあてはめれば、パワハラに近いようにみえます。しかし、無理に手を引いて行ったわけではなく、もう飲めない人に無理強いしたようでもなく、そのときは楽しく飲んでいたようなので、パワハラとまではいかないように思われます。

    ただし、無理強いをしたつもりがなくても、相手が「そう感じてしまった」のであれば、ハラスメントと見なされる可能性があるので、今回はパワハラに近かったかもしれないと考えましょう。

    部長も「下手をすればパワハラだ」と仰っています。これは「あなたがすでにパワハラをした」という意味ではなく、「無理強い」の可能性があると言っているだけです。

    上司からの誘いを断りにくいと感じる部下も少なくありません。たとえ本人が「喜んで飲んでいた」ように見えても、それは本心ではないかもしれません。このことを理解して、どのように立ち回るのが良いか考えてみましょう。

    今後の対応

    誘い方を工夫する

    まず、部下を誘う際には「行きたい人が行く」という選択肢を明確にするとよいでしょう。

    例えば、次のように声をかけてみてはいかがでしょうか。

    • 「もし良かったら、この後もう一軒どうかな? 疲れてるだろうから、無理はしなくていいからね。もちろん、まっすぐ帰っても大丈夫だよ」
    • 「二次会に行きたい人いる? 私はもうちょっと飲んで帰ろうと思うんだけど、よかったら付き合ってくれる?」

    このように、相手にプレッシャーを与えない言葉を選ぶことで、部下は「帰ります」と言いやすくなります。

    このことについては、誘ったときに言うだけでなく、日頃から、誘いを断ってもマイナス評価にならないと伝えておくことも大事です。

    時間が長くなったり、つい飲みすぎたりして翌日に響けば、「喜んでいた」本人も、後になって後悔することもあります。

    誘いに乗ってくれたとしても、一人ひとりが自分のペースで注文できるおちついた店を選ぶなどの配慮をしましょう。

    二次会の時間は、1時間程度で終わるようにしましょう。また、昔は、もっと飲みなさいと勧めるのが常識だった時代もありますが、今は通用しません。上司は部下が飲みすぎないように注意を払う必要があります。

    日頃からコミュニケーションを増やす

    飲み会はコミュニケーションの一つの手段ですが、それだけではありません。

    日々の業務の中で、部下との信頼関係を築くことも大切です。

    • 機会があれば雑談をする(長くなったり話題が説教臭くならないように注意)
    • 仕事の合間にコーヒーを誘って奢る(同上)

    こうした日常的な交流を通じて、部下の個性や考え方を深く理解することで、お互いに気持ちの良い関係を築くことができます。

    まとめとして言えば、「そういう時代だから仕方ない」と諦めてしまうのは、少しもったいないかもしれません。

    部長さんが指摘されたのは「無理強い」の可能性があるという点だけで、「誘うこと自体」を否定されたわけではありません。

    時代に合わせた新しい付き合い方を模索し、部下との信頼関係を築いていけば、より良いチームを作ることができるはずです。


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  • 細かなことに口出しする先輩の言動はパワハラにあたりますか?

    この春に入社して営業部門に配属されました。10人の小さな課なので、仕事は課長から直接指示され、報告も課長に直接することになっています。課内に3年ほどのキャリアがある先輩が居て、権限が無いはずなのに、課長がいないところであれこれ細かなことに口出しをします。課長の指示と違うことを言われることもあります。とても鬱陶しいのですが、新人なので我慢しています。先日、そのことを社外の友人に愚痴を言ったら、それはパワハラではないかと言われました。思っていませんでしたが、客観的にはどうでしょうか?

    先輩が課長と違うことを言ってくると、どう対応していいかわからず戸惑いますよね。それがパワハラかどうか、客観的に考えてみましょう。

    パワハラの定義

    まず、一般的にパワハラ(パワーハラスメント)は、以下の3つの要素をすべて満たす行為とされています。

    1. 優越的な関係に基づいている: 指示をする側とされる側に、上下関係や影響力の差があること。
    2. 業務の適正な範囲を超えている: 仕事の必要性を超えた行為であること。
    3. 労働者の就業環境が害される: 精神的、身体的な苦痛を与え、仕事をする上で見過ごせない問題が生じること。

    あなたの状況を当てはめてみる

    ご相談の状況をこれらの定義に当てはめてみると、次のように考えられます。

    優越的な関係

    この点については、課の先輩という立場なので、あなたに対して優越的な関係があると言えます。

    業務の適正な範囲

    「権限がないはずなのに細かな口出しをする」「課長の方針と違うことを言う」という点から、先輩の指示が業務の適正な範囲を超えている可能性があります。しかし、先輩として新入社員にアドバイスをするという行為自体は、業務の一環と見なされることもあります。

    重要なのは、そのアドバイスが本当に業務を円滑に進めるためのものなのか、それとも個人的な感情や意図によるものなのかという点です。

    就業環境が害されている

    「とても鬱陶しい」と感じていることから、精神的なストレスを受けている状態です。しかし、これが「見過ごせない問題」にまで達しているかは、判断が難しいところです。

    パワハラかどうか

    これらの点を総合的に考えると、パワハラに発展するリスクのあるグレーゾーンだと言えます。もっと具体的な言動を分析しなければなりませんが、ご提示いただいた範囲で検討すると、パワハラかどうかの判断は難しいです。

    ただし、課長と先輩の間で指示内容に矛盾が生じ、あなたが板挟みになって悩んでいる状況は、健全な職場環境とは言えないので改善しなければなりません。

    先輩が良かれと思ってアドバイスをしている可能性もありますが、新人指導という名目で不当な圧力をかけている可能性もあります。

    どう対処すべきか

    すぐにパワハラだと決めつけるのではなく、まずは冷静に対処することをおすすめします。

    • 先輩と穏やかに話す: 「いつもご指導ありがとうございます。先輩のご意見も参考にさせていただきたいと思いますが、私の上司は課長なので、その件については課長の指示に従いたいと思いますがどうでしょうか?」などと、柔らかめに話して、本心を探ってみましょう。
    • 課長に相談する: 当人と話してもうまく意思疎通ができなければ、課長に相談するべきです。課長に「先輩からこのような指示をいただいたのですが、課長の方針と少し違うように感じますが、どのように進めるのが良いでしょうか?」といった形で、穏やかに確認してみるのが良いでしょう。

    それでも状況が改善しない場合は、一人で抱え込まず、会社のパワハラ相談窓口に相談することを検討してください。

    いずれにしても、ご自身の気持ちと向き合い、無理のない範囲で行動することが大切です。


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  • 私の部下の言動がパワハラだと言われましたが、当人に悪気がありません。どう対応すればよいでしょうか?

    メーカーの営業課長です。部下に元気で声が大きい者がいます。多少他人に対する配慮に欠ける言動もありますが、仕事はきちんとやっています。その者の言動がパワハラだという声が複数あり、上司として対応に困っています。これまでも注意したことはあるのですが、本人が自分に悪いところがあるとはまったく思っていないので、説得にも会話にもなりません。どのように対応すれば良いかアドバイスをお願いします。

    これまで注意をしても、本人に悪気がないため話が通じないという状況は、非常に歯がゆく感じられることと思います。しかし、この問題を放置すれば、さらに多くの従業員が精神的な苦痛を感じる可能性があり、最悪の場合、優秀な人材の離職や組織全体の士気の低下につながりかねません。以下に、具体的な対応をご提案させていただきます。

    ステップ1:状況の正確な把握と記録

    まず、事態を客観的に把握し、事実に基づいた対応を進めることが重要です。

    • 具体的な言動の収集: 「パワハラ」という抽象的な言葉ではなく、「いつ」「どこで」「誰に」「どのような」言動があったのか、具体的な事例を集めてください。被害を受けたとする複数の従業員から、個別に話を聞く時間を設けるのが良いでしょう。
    • 記録の作成: 聞き取った内容は、日時、場所、内容を詳細に記録しておきましょう。これにより、後で本人と話す際の証拠となり、感情的な議論を避けることができます。

    ステップ2:本人への個別面談と具体的な指摘

    事実関係を整理した上で、本人と一対一でじっくり話す機会を設けてください。この際のポイントは以下の通りです。

    • 感情的にならず、淡々と事実を伝える: 「あなたにはパワハラをしているという声がある」といった抽象的な表現ではなく、「〇月〇日の会議で、Aさんに対して『そんなこともできないのか』と大声で発言したことが、Aさんを精神的に追い詰めていると訴えがあった」のように、収集した具体的な事例を提示します。
    • 本人の視点を理解する努力: 「なぜそのような発言をしたのか?」と本人の意図を尋ね、本人の「悪気のない」行動の背景を理解しようと努めてください。たとえば、「チームの士気を上げようとした」「早く仕事を終わらせてほしかった」といった本人の考えがあるかもしれません。
    • 行動の定義とリスクを伝える: 本人の意図がたとえ善意であったとしても、その行動が他者に与える影響が問題であることを明確に伝えます。悪意がなくとも、相手が不快に感じたり、精神的苦痛を感じれば、それはハラスメント行為になりうることを認識させてください。また、それが会社としてのコンプライアンス違反にあたる可能性や、放置した場合の懲戒処分など、個人が負うリスクについても冷静に説明しましょう。

    ステップ3:行動改善に向けた具体的な目標設定

    ただ注意するだけでなく、改善に向けた具体的な行動を一緒に考え、目標を設定します。

    • 具体的行動の提案: 「大声で話さない」「相手の意見を最後まで聞く」「否定的な言葉を使わない」など、改善すべき行動を具体的にリストアップします。
    • 具体的な行動計画の策定: 「週に一度はチームメンバー全員に感謝の言葉を伝える」「会議で発言する際は、まず相手の意見を肯定してから自分の意見を述べる」など、実践可能な行動計画を立てます。
    • 定期的なフォローアップ: 面談で終わりではなく、定期的に声をかけ、改善状況を確認し、ポジティブなフィードバックを与えることで、本人のモチベーションを維持させます。

    ステップ4:組織全体での意識改革

    この問題は、特定の個人の問題として片づけるのではなく、組織全体でハラスメントに対する意識を高める機会と捉えることも重要です。

    • 社内研修の活用: ハラスメント防止研修やアンガーマネジメント(怒りをコントロールする方法)に関する研修の受講を本人に促すだけでなく、営業課全体で参加することを検討してください。
    • 相談窓口の周知: 部下たちが安心して相談できる窓口があることを改めて周知し、風通しの良い職場環境づくりに努めます。

    以上のステップを踏むことで、部下の「悪意のなさ」を尊重しつつ、具体的な事実に基づいて問題の本質を伝え、建設的な改善を促すことができると考えます。


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