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会社の規程 懲戒処分

遅刻や無断欠勤への対応

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就業規則はどうなっているか

多くの就業規則は、解雇の事由として次の項目を掲げていると思います。

・正当な理由なく無断欠勤14日以上に及び、且つ再三の出勤の督促に応じなかったとき。

現実には、このような行方不明に等しいような無断欠勤をする人は稀でしょう。

多いのは、1日から数日の無断欠勤をし、上司が注意するが、忘れたころに又繰り返すというようなケースではないでしょうか。その場合は、上記のような規定は適用できません。

もちろん、数日の無断欠勤で解雇というのは厳しすぎると思いますが、7日や10日ではなく、なぜ14日以上なのでしょうか。

それは、行政通達で、解雇できる事例が示されており、その中の一つに、「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」という記載があるからです。これをもとに作られた就業規則が多いのです。

その是非はともかく、連続無断欠勤で懲戒解雇するには14日というのが一つの基準になっていることは確かです。

では、それよりも少ない無断欠勤にはどう対処すればよいのでしょうか。

行政通達が示す解雇事例には、「出勤不良又は出欠常ならず数回にわたって注意を受けても改めない」というのもあります。

これに沿って、解雇事由に次の項目を追加しておけばだいぶ穴をふさぐことができます。
・正当な理由なく遅刻、早退、無断欠勤が著しく、再三の注意にもかかわらず、改善がみられないとき

ただし、
①どういう場合が正当な理由と言えるか
②著しいとは何回以上か
③再三の注意とは何回か、また、注意した証拠はあるか

など、安易に適用すれば、突っ込まれるところがいろいろあります。内規等で、基準を決め、さらに従業員に周知させることが必要です。

けん責規定を見直す

すぐに解雇を考えるのは短絡的です。

まず、けん責処分をし、それでも改まらない場合に解雇に持ってい行くという運用がよいでしょう

1.けん責処分事由に次を追加する
・正当な理由のない無断欠勤をしたとき
・正当な理由のない遅刻が月に〇回に及んだとき、又は正当な理由のない無断早退をしたとき

2.懲戒解雇事由に次を追加する
けん責以上の処分を受けることが半年間に〇回に及び、特段の考慮すべき事情が認められないとき

注意の記録を残さなければならない

遅刻や無断欠勤に対して、上司は注意を与えていると思います。しかし、注意の記録が残っていないことがほとんどです。争いになったときは、1にも証拠2にも証拠です。あとで証言したり、文書を提出することもできますが、都度都度作成していた文書が強い証拠能力を持ちます。

いずれにしても解雇には慎重になるべきで、なるべく解雇などしない方がよいのですが、放置すると職場の秩序がたもてないという状況であれば、他の社員のためにも毅然とした対応が必要なときもあります。

懲戒処分をするときは→懲戒処分について

ねばり強く指導して改善させるのが一番

従業員には決められた時間に出社する義務があります。そういう約束で雇用されているのですから、約束を守らないのであれば、懲戒処分は可能です。

しかし、悪意のないうっかりミスのような事案で懲戒などというのは重すぎるでしょう説諭はもちろんですが、遅刻しないような対策を当人と一緒に考えてみるなど、懲戒処分の前にいろいろ手立てがあると思います。

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私的行為に対して懲戒処分できるか

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原則として処分できない

懲戒処分は、原則として会社で起こした不始末に対して科せられるものです。会社を離れたときの行為は、原則として懲戒処分の対象とはなりません。

労働契約上の従業員の義務は、勤務時間内に仕事をすることであって、仕事を離れている時間に何をするかは従業員の自由だからです。悪いことをしてよいというものではありませんが、会社の管理が及ばないということです。

したがって、不倫行為や、家庭のトラブル、私的な金銭トラブル、勤務時間外に行ったケンカ、などに対して懲戒処分をするのは無理があると考えられています。

ただし、会社の社会的評価に大きな影響を与えたり、具体的に会社に損害を与えていることがあれば懲戒処分が認められる可能性もでてきます。

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処分手続き厳守の原則

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処分手続き厳守の原則とは

懲戒処分を決定する手順に手落ちがあると懲戒処分が無効になるおそれがあります。

懲戒処分の手順の一例を示します。

調査する

1.調査担当者を指名する
2.調査担当者は、当事者や関係者から聞き取りをする(概略ではなく一問一答形式の記録を残す)
3.当事者や関係者から、報告書を提出してもらう。
4.不明の点を再調査する(この際も、詳細な記録が重要)

調査担当者は取り調べをするのではありません。あくまでも事実関係を聴取するのであって、不明の点は不明のまま、意見が相違するところは相違するまま、正確に記録を作成する必要があります。

重大な事案の時は処分が決定するまで本人に自宅待機を命じることがありますが、これが出勤停止処分と見なされると、さらに重い懲戒処分を科すことができなくなります。調査のための待機であることを明確にしてください。

調査の際に、本人から文書で報告させる場合には、文書名やその内容に注意しましょう。文書名を「始末書」にしてはいけません。また、内容はあくまでも事実の列記にとどめさせ、文中に反省的な内容や、対策的な内容を書かせないようにしましょう。このようなことに注意を払わないと、始末書を提出させるという一つの処分を行ったように見えるからです。

一つの処分を行ったとみなされれば、本格的な処分ができなくなってしまう恐れがあります。

二重処分禁止の原則

処分案の作成

調査が終わったら、調査担当者は調査内容を総務部長に提出します。総務部長は、関係者と協議の上、就業規則の懲戒事由に該当するかどうか、該当する場合どのような処分が適当かについて懲戒処分の原案を作ります。

懲戒委員会での審議

懲戒処分の手続きで、懲戒委員会は、資料調べを行い、必要に応じて調査担当者及び総務部長の補足説明をもとめ、事案の把握につとめます。

就業規則には次のように定めます。

(懲戒委員会)
第〇条 懲戒処分は、懲戒委員会の審議を経て決定する。懲戒委員会の詳細は別に定める。

懲戒委員会規程を定めます。

懲戒委員会規程

就業規則に懲戒委員会の設置規定がない場合は、臨時に取締役を含む委員会を組織するか、取締役会で懲戒審議を行うことになります。

弁明の機会を与える

処分対象者に弁明の機会を与えることは特に重要です。この際、処分対象者が出席の条件として立会人の同席を希望した場合、就業規則に基づく非公開の社内手続きであることを理由に拒むこともできますが、それによって本人の弁明機会が消滅するのであれば、手続きに瑕疵がのこるので、できるだけ希望に沿うのがよいでしょう。

ただし、パワハラ・セクハラ案件では、本人が証言者に対し自ら反論したい旨申し立てがあっても、セクハラ・パワハラの被害者を反対尋問の場に立たせることをしてはいけません。

懲戒委員会の結論

懲戒委員会は、審議を尽くした後に結論を出し、議事録を作成します。処分案は答申のかたちで社長などの処分権者に伝えます。

処分権者の決裁を得て、総務部長等が、処分(不処分もありうる)の内容を本人に文書で伝えます。解雇のときは解雇理由証明書も準備します。

処分の決定過程を厳密に実施する

就業規則や懲戒委員会規程に定められた手続きを恣意的に簡略化してはいけません。記載された手続きは必ず実行してください。規程に問題があって実際にはその通りにできないという場合には、速やかに規程を改定しなければなりません。

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二重処分禁止の原則

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二重処分禁止の原則

一つの不始末に対して二重に処分してはいけません。

憲法第39条に次のように規定されています。

何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

会社の行う懲戒処分にもこの規定が適用されます。ただし、実際の運用ではどう解釈すればよいか悩むことがあります。

反省の態度がないので再処分

懲戒処分を受けたにもかかわらず、日常の言動に反省の態度が見受けられない場合。それだけを理由にもう一度懲戒することはできません。処分への批判を繰り返すようであれば、その態様によっては処分できる可能性があります。

同じことを繰り返したので再処分

ある事実について懲戒処分にしたところ、短期間のうちにまた同じことを繰り返したという場合は、似たような不始末だとしても、新しい事案に対する懲戒処分であれば二重処分にはあたりません。例えば、無断欠勤によって処分を受け、にもかかわらず、また無断欠勤をしたというようなケースです。

こうした事案では、処分したにもかかわらず、反省なく繰り返したということになるので、不利な情状として2度目の処分が重くなってもやむを得ないでしょう。

ただし、例えば、何回かの無断欠勤を分解して、あとになってから別々に減給処分を科すことは、事案を分解する合理的理由があったとしても、恣意的に処分を拡大したとされる可能性が高くなります。

減給処分のあとに賞与が低下

処分のあとに支給になった賞与が下がっていたとしても、会社の人事制度がしっかりしていて、賞与決定に関する規定に基づいて、正当な評価の結果で賞与が下がったのであれば、会社は二重処分ではないと主張できるでしょう。

しかし、人事評価制度がしっかりしていない会社では難しくなります。減給処分を科したところでその事案は終わっているのですから、賞与に手を付けない方が無難です。

懲戒の手続きが問題になることも

処分の調査のために処分が決定するまでのあいだ「自宅待機」を命じることがあります。この自宅待機が処分の一つとみなされると二重処分の問題が生じ、別な処分をすることができなくなります。

当事者から文書で報告を求める際に、そのタイトルを「始末書」にしたり、内容が反省文のようになってはいけません。タイトルはあくまでも「報告書」、内容は事実の列記のみとします。「始末書」の提出とみなされれば、始末書の提出という一つの処分とみなされることがあるからです。

懲戒処分手続き厳守の原則

出向従業員に対する処分

子会社に出向している従業員が、子会社で懲戒処分を受けたとき、籍のある親会社も同時に処分することができるかという問題があります。

これは、事情によって異なります。両方に懲戒権があるとしても、懲戒解雇は籍のある出向元がすることになるでしょうし、減給処分は給料を払っている方が行うことになると思います。

出向者は、始業・終業時刻、休日などの労働時間、服務規律などについては、出向先の就業規則に従って労務を提供しています。労働時間や服務規律について非違行為があれば、出向先が懲戒権を行使することができるます。

また、出向者は、出向先の指揮命令下で労務に服していますが、あくまでも出向元の出向命令に従い出向先において労務を提供しています。したがって、出向先における服務規律違反などは、同時に出向元に対する義務違反でもあるので、出向元の就業規則を適用して懲戒処分を行うことができるとも考えられます。

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個人責任の原則

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個人責任の原則とは

公職選挙法では、重要な立場にある者が選挙違反をしたことを理由として、選挙違反に直接関与していない候補者を当選無効にする連座制があります。しかし、会社が行う懲戒処分は、本人に対して科すものであって、本人となんらかの関係をもつからといって他の者にも責任を負わせることはできないのが原則です。

連帯責任はいけないということ

小売店などでレジが一つしかなく、アルバイトを含めた従業員5人が交替でレジをやっていたとします。閉店後、お金が5000円足りないことが判明し、店主は、お釣りの渡し間違いと推定しました。誰が間違えたか分からないので、店主は従業員全員の連帯責任だと言って、一人1000円ずつ出すように求め徴収しました。

これでよいのでしょうか。

よいわけがありません。

基本的には間違えた者に責任があり、間違えた者以外には責任がないことは自明です。一律1000を負担させたのは、お釣りを間違えていない者にとっては、何の理由もなく金銭を取られたことになります。誰がミスしたか分からないときは、金銭を管理する最終責任がある店主の責任というのが妥当です。

管理職の管理責任を問える場合がある

部下が懲戒処分を受けたとき、上司も併せて処分することができるのでしょうか。

上司にも懲戒処分を科すことは可能です。

ただし、就業規則に「従業員が懲戒処分を受けたときは、その管理監督の任務にある管理職を管理不行届きにより懲戒することがある。」旨の規定がなければ該当事由を満たしません。

その上で、その上司に、管理職として義務の不履行があったかどうか、明確に示せなければなりません。普通の注意を払っていれば不正を見抜けたはず、普通の指導をしていればそのような不祥事は起こらなかっただろう、そのような普通の注意や指導が足りなかったという根拠があれば処分可能ですが、単に上司だからというだけでは足りないと思われます。

また、出張中の出来事などで管理職の責任を問うのも一般的には難しいでしょう。予想がつかないような不祥事についても管理職の責任を問うことはできません。

不正が行われていることを知りながら見て見ぬふりをした。あるいは、ちょっと考えれば不正があるのではないか疑うのが当然というケースで追及しなかったのであれば、管理職としての責任を問えると思われます。

上司を処分するにしても、本人の処分より軽くする必要があるでしょう。本人が懲戒解雇処分であったケースでは、管理責任だけで上司も一緒に懲戒解雇するのは無理です。ただし、不正を知って黙認し、その結果会社に重大な損害が生じたケースでは懲戒解雇を妥当とした裁判例もあります。

いずれにしても、会社は管理職に対して、管理職の役割を日頃から繰り返し教育することが大事です。上司がしっかり目を光らせていれば、金銭にまつわる不正はほとんど防げるものだからです。