カテゴリー: 育児介護

  • 育児休業を延長できる要件と手続き

    育児休業の延長

    育児休業は、子どもが1歳になるまでの年間取得できるのが原則ですが、要件を満たせば最長2歳まで延長することができます。

    また、1歳6か月までの延長を「延長」、その後の2歳までの延長を「再延長」といい、それぞれについて申請が必要です。

    各期間途中でも夫婦が交代して育休を取得できるように、育休開始日は限定されていません。

    1歳6か月まで延長の要件

    1歳6か月までの延長を申請するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

    1.育児休業の対象の子どもが1歳になる誕生日の前日に、従業員本人又は配偶者が育児休業中である

    2.①と②のいずれかに当てはまる
    ① 保育所への入所を希望しているが入れない
    ② 子どもを育てる予定だった配偶者が、死亡やけが・病気、離婚によって育児をすることが難しくなった

    2歳まで延長の要件

    1.育児休業の対象の子どもが1歳6か月になる誕生日に、従業員本人又は配偶者が育児休業をしていること

    2.①と②のいずれかに当てはまる
    ① 保育所への入所を希望しているが入れない
    ② 子どもを育てる予定だった配偶者が、死亡やけが・病気、離婚によって育児をすることが難しくなった

    延長の手続き

    上記の要件を満たしている場合、延長開始の2週間前までに変更の年月日、変更の申出者氏名、変更後の育児休業最終予定日を勤務先に申請することができます。

    延長の申し出

    次の書類を、延長時の「育児休業給付金支給申請書」に添付してください。

    書式は厚生労働省サイトからダウンロードできます。「厚生労働省」「育児休業給付金」で検索してください。

    用意する書類

    保育所に入れなかったとき

    以前は市区町村が発行する不承諾通知書などにより延長の要件を確認していましたが、令和7(2025)年4月から、確認に加えて、保育所等の利用申し込みが、速やかな職場復帰のために行われたものであるかをハローワークが審査して延長の可否を判断しています。

    したがって「不承諾通知書」「延長事由認定申告書」「保育所等の利用申込書の写し」が必要です。

    延長事由認定申告書には、入所保留を希望するなどの意思表示をしていないか、合理的な理由なく遠い保育所に申し込んでいないか、内定を辞退したことがないか、など(詳細はハローワークのリーフレット等で確認してください)をチェックする欄があります。つまり、育児休業を延長するため恣意的に保育所の落選を狙っていないかをチェックされるということです。

    子どもを育てる予定だった人が死亡やけが、病気によって育児をすることが難しくなったとき

    世帯全員の住民票の写しと母子健康手帳、場合によって保育を予定していた人の状態に関する医師の診断書が必要です。

    延長の申請期限

    申請の期限に注意しましょう。申請は延長を開始したい日の2週間前までに受ける必要があります。

    1歳6か月まで延長の場合は、1歳の誕生日の2週間前までです。

    2歳までの再延長は1歳6か月の誕生日の2週間前までです。

    育児休業給付金の延長手続き

    育児休業期間の延長が認められた場合、育児休業給付金も延長した分が支給されます。育児休業給付金が自動的に延長支給されるわけではないので、別途申請手続きが必要です。

    要件と必要書類

    育児休業給付金延長の要件、必要書類は育児休業期間延長と基本的に同じです。

    会社に必要書類を提出すればハローワークへの手続きは会社がやってくれます。

    申請期限

    1歳6か月まで延長するときは、子どもが1歳になる日以後、最初に育児休業給付金の支給申請をするとき

    2歳まで再延長するときは、子どもが1歳6か月になる日以後、最初に育児休業給付金の支給申請をするとき

    給付金額

    育児休業を延長した際の給付金額は以下の通りです。

    労働者の育児休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の50%(上限あり)

    延長育休の再取得

    1歳以降の育児休業の再取得は、これまでは不可とされていましたが、特別な事情がある場合に限り再取得可能となりました。特別な事情とは、配偶者が死亡するなどの厚生労働省令で定める事情です。

    事業主は拒否できない

    会社の都合での育児休業延長申請を拒否することはできません。

    しかし、育児休暇延長の申請に必要な書類が揃わないために申請できないことがあります。特に、保育所に入れなかったときの不承諾通知が申請期限までに間に合わないことがあるので注意しましょう。


    会社事務入門出産と育児を支援する諸制度育児休業制度のあらまし>このページ

  • パパママ育休プラスとは

    制度の概要

    パパママ育休プラス制度は、夫婦がともに育児休業をすることで、通常は子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの育児休業期間を、子どもが1歳2か月になるまで延長することができる制度です。

    ただし、それぞれの育児休業期間が2か月延長されるのではなく、夫婦の取得タイミングをずらすことで、合計の育休期間を最長1歳2か月にできる制度です。

    通常の育児休業は、引き続き休業を必要とする特別な事情がある場合に限り、1歳6か月または2歳に達するまで延長が可能です。これに対して、パパママ育休プラスは、上記の特別な事情が必要とされません。

    パパママ育休プラスは2回に分割取得することもできます。

    名称が似ている制度で、産後パパ育休という制度があります。こちらは父親が子の出生日から8週間の間に最大4週間の育児休業をとれる制度です。

    関連記事:出生時育児休業(産後パパ育休制度)のあらまし

    利用例

    例えば、子どもが1歳の誕生日を迎える前日まで母親が育児休業を取得し、復職するタイミングで父親が育児休業を2か月間取得する。

    母親が復職する少し前に父親が育児休業を取得することで、2人で一緒に育児休業期間を過ごすこともできます。

    その他、下記の取得条件の範囲内であればいろいろなパターンで育児休業をとることができます。

    取得条件

    以下の条件を満たしている必要があります。

    □ 夫婦(事実婚も含みます)ともに育児休業を取得すること
    □ 配偶者が子どもの1歳の誕生日前日までに育児休業を取得していること
    □ 子どもの1歳の誕生日前に育児休業開始予定日が設定してあること
    □ パパ・ママ育休プラス取得者の育児休業開始予定日が、配偶者の取得した育児休業開始の初日以降になっていること

    子どもが1歳を超えてパパ・ママ育休プラスの期限である1歳2か月になるまで育休を利用できるのは、育休をあとから取得した配偶者のみです。

    母親が先に育休を取得した場合、1歳2か月まで育休を取得できるのは父親となり、逆に父親が先に育休を取得した場合は、母親が1歳2か月まで育休を取得できます。

    ただし、父親が産後8週までに育休を取得してから母親がパパ・ママ育休プラスを取得する場合は、この条件はあてはまりません。

    適用外

    パパママ育休プラスは夫婦ともに育児休業を取得することが条件なので、夫婦どちらかが専業主婦(夫)の場合は申請できません。

    育児休業取得者が入社1年未満、育休取得者の雇用期間が育休申請日から1年以内に終了する場合、労使協定により取得ができない旨が定められていると申請できません。

    給付金等

    パパママ育休プラスの場合も育児休業給付金を受け取れます。この場合の給付金額は、通常の育児休業給付金と同じく、育児休業す開始日から180日間は月額給与の67%、181日目から支給終了日までは50%です。また、育休開始から180日までの間に父親が育休を取得した場合も同様に、月額給与の67%を受け取れます。

    パパ・ママ育休プラス取得中は、本人負担分・会社負担分ともに社会保険料が免除されます。会社が「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」を管轄の年金事務所と健康組合に提出する必要があります。

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  • 育児休業等の休業の復帰が円滑に行われるようにするための措置

    休業後の就業を円滑にするための措置についての条文

    育児介護休業法第22条第2項 事業主は、育児休業申出等及び介護休業申出並びに育児休業及び介護休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

    育児休業及び介護休業後の就業が円滑に行われるようにするため、①労働者の配置その他の雇用管理、②育児休業又は介護休業期間中の労働者の職業能力の開発及び向上等について必要な措置を講ずる努力義務を定めています。

    労働者の配置その他の雇用管理

    具体的には、休業後に職場復帰したときに、原則として休業前の状態に戻れることが求められています。

    指針第2の7(1)育児休業及び介護休業をする労働者については育児休業及び介護休業後においては、原則として原職又は原職相当職に復帰させるよう配慮しましょう。

    「原職相当職」というのは、個々の企業又は事業所における組織の状況、業務配分、その他雇用管理の状況によって様々であることを前提としつつも、

    ① 休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと
    ② 休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと、
    ③ 休業前と休業後とで勤務する事業所が同一であること

    のいずれにも該当する場合を言います。

    職業能力の開発及び向上

    指針第2の8(1)(2)育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して必要な措置を講ずるに当たっては、

    ① 労働者がその適用を受けるかどうかを選択できるもの
    ②  労働者の職種、職務上の地位、職業意識等の状況に的確に対応し、かつ計画的に講じられること

    が求められています。

    代替要員の雇用管理

    休業取得者の養育していた子又は介護していた対象家族の死亡等があれば、当該従業員は、休業を終了して職場復帰することになります。

    その場合、育児休業等をする労働者の業務を処理するために臨時に採用している労働者(以下「代替要員)処遇に配慮が求められます。

    基本的には、休業取得者が職場復帰したとしても、代替要員の雇用期間の終了前に当該代替要員の雇用契約を打ち切ることはできません。

    代替要員との雇用契約に、休業取得者が職場復帰した場合には雇用契約を終了させる旨の留保条件が付されている場合は雇用契約を終了させることは可能ですが、この場合においても労働基準法第 20 条の解雇予告の規定が適用されます。


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  • 育児・介護休業等を取得しやすい雇用環境の整備

    休業を取得しやすいようにする措置の条文

    第二十二条 事業主は、育児休業申出等が円滑に行われるようにするため、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
    一 その雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
    二 育児休業に関する相談体制の整備
    三 その他厚生労働省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置
    2 前項に定めるもののほか、事業主は、育児休業申出等及び介護休業申出並びに育児休業及び介護休業後における就業が円滑に行われるようにするため、育児休業又は介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

    育児休業等を取得しやすい雇用環境の整備が求められています。

    育児休業等の申出が円滑に行われるようにするため、会社は以下のいずれかの措置のうち、少なくとも1つの措置を講じなければなりません。(2025年4月1日より)

    ① 研修の実施
    ② 相談体制の整備
    ③ その他厚生労働省令で定める事項

    研修の実施

    両立支援制度等に関する研修を実施します。研修の対象者は、全従業員とすることが望ましいとされていますが、少なくとも管理職は、研修を受けたことがある状態にすることが必要です。

    両立支援制度等とは、育児介護休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度、深夜業の制限に関する制度、育児介護のための所定労働時間の短縮等の措置を指しています。

    相談体制の整備

    相談窓口を設置して担当者を指名します。相談窓口を形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることが必要です。

    従業員に対して窓口を周知する等して、従業員が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。

    その他の措置

    取得事例の収集・提供

    取得事例を収集・提供する際は、あくまでも自社の事例を対象にする必要があります。当該事例の掲載された書類の配布やイントラネットへの掲載等により、いつでも労働者が閲覧できる状態にしておく必要があります。

    方針の周知

    育児休業に関する制度および育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したものを、事業所内やイントラネットへ掲示する必要があります。


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  • 育児介護後の再雇用について

    再雇用特別措置等の内容

    妊娠、出産、育児、介護を理由として退職する労働者は少なくありませんが、事業主は、そのようにやむを得ず退職した人たちを再雇用するよう努めなければならないと、育児介護休業法に定められています。

    (再雇用特別措置等)
    第27条 事業主は、妊娠、出産若しくは育児又は介護を理由として退職した者について、必要に応じ、再雇用特別措置(育児等退職者であって、その退職の際に、その就業が可能となったときに当該退職に係る事業の事業主に再び雇用されることの希望を有する旨の申出をしていたものについて、当該事業主が、労働者の募集又は採用に当たって特別の配慮をする措置をいう。)その他これに準ずる措置を実施するよう努めなければならない。

    努力義務です。女性だけでなく男性労働者も対象となります。

    助成金制度

    再雇用制度を実施した企業が利用できる助成金があります。「両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)」は、育児、介護等を理由に退職した方を再雇用する「再雇用制度」を就業規則等に基づいて導入し、再雇用者を無期雇用契約によって、一定期間、継続雇用した場合に支給されます。

    助成対象になるためには、要件を満たした制度をつくらなければなりません。対象となる従業員にも要件があります。また、助成金制度は予告なく廃止されることがあるのでご注意ください。事前に各都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

    関連規程:育児介護等再雇用規程のサンプル

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  • 育児介護等再雇用規程のサンプル

    注意点

    育児介護による退職者を再雇用する制度は、法律で義務化されている制度ではないので(努力義務があります)会社の実情にあわせて自由に設計することができます。

    ただし、制度導入による助成金を検討しているのであれば、助成金制度に求められる要件を満たす制度にする必要があります。

    次の①から⑦までのいずれにも該当する再雇用制度を新たに就業規則または就業規則に基づく再雇用規程、または労働協約を策定する必要があります。

    ① 妊娠、出産、育児、介護のいずれも制度対象となる退職理由として明記していること。
    ② 退職者が、その退職の際又は退職後に退職理由と就業が可能となったときに退職した事業主や関連事業主の事業所に再び雇用されることを希望する旨の申出を登録し、事業主が記録するものであること。
    ③ 制度の対象となる年齢について、定年を下回る制限を設けていないこと。
    ④ 退職後の期間が一定期間内の者のみを対象とする制度の場合は、その期間が3年以上であること。
    ⑤ 再雇用する場合には、退職前の勤務実績等を評価し、処遇の決定に反映させることを明記していること。
    ⑥ 対象者が退職から再雇用までの間に、就業経験、能力開発の実績がある場合は、当該実績を評価のうえ処遇の決定に反映させることを明記していること。
    ⑦ 対象者の中長期的配置、昇進、昇給等の処遇については、退職前の勤務実績及び退職から再雇用までの就業経験、能力開発の実績を踏まえた取扱いを検討するものであること。

    規程の要件以外にも、事業所、従業員の要件もあります。実際にこの制度を採用するときは、事前に、労働局雇用環境・均等部(室)に相談したほうが良いでしょう。

    規程例

    (目的)
    第1条 この規則は、株式会社○○就業規則○条に基づく再雇用制度について定める。

    (適用範囲)
    第2条 この規定は、株式会社〇〇を退職した者に適用する。

    (資格要件)
    第3条 この制度の適用を受ける者は、次の各号のいずれにも該当する者である必要がある。

    1 入社後1年以上在職したこと。

    2 次のいずれかの理由により退職した者であること。

    (1) 妊娠、出産
    (2) 育児
    (3) 介護
    (4) 自己啓発(就学、資格取得等)
    (5) その他会社が認めた理由

    3 退職時又は退職後に、再雇用を希望する旨を申し出た者

    (手続き)
    第4条 本制度の適用を希望するときの手続きは次の通りとする。

    1 退職時又は退職後に、退職理由及び再雇用を希望する旨を書面により人事部に申し出ること。

    2 会社は申出者のうち第3条の資格要件を満たす者を「再雇用希望者登録名簿」に記録し、登録証を交付する。

    3 登録証を交付された者は、就労が可能となった場合、人事部に採用希望時期を申し出ること。

    (採用)
    第5条 中途採用を行う場合は、再雇用制度登録者に対して優先的に募集を行うこととする。

    2 再雇用制度登録者から応募があった場合は、本人の経験、能力等を勘案し、優先的に採用するよう努める。

    (再雇用時の処遇・賃金)
    第6条 再雇用時の処遇は、退職前の勤続年数、資格等級等及び退職から再雇用時までの就労経験、能力開発の実績等を評価して決定することとし、原則として退職時の勤務地、社員区分、職種、資格等級を維持するよう努める。ただし、本人の希望、事業所の業務・人員の状況等を踏まえて決定する。

    (再雇用後の配置・昇進・昇給等)
    第7条 再雇用後の配置・昇進・昇給等については、退職前の勤務実績及び退職から再雇用までの就業経験、能力開発の実績を踏まえた取り扱いを検討することとし、同一の社員区分・職種、同程度の経験・能力の社員と異なる取り扱いは行わない。

    (再雇用者への教育訓練)
    第8条 会社は、再雇用者の退職後の期間、経験を踏まえ、個別に必要な教育訓練を実施するよう努める。

    附則
    この規則は、令和〇年〇月〇日から適用する。

    関連記事:育児介護後の再雇用について

    会社事務入門就業規則などの会社規程>このページ