カテゴリー: 育児介護

  • 育児介護する労働者への転勤に関する配慮

    条文

    育児介護休業法は、従業員を転勤(配置の変更で就業の場所の変更を伴うもの)させるときは、その従業員の育児や介護の状況に配慮しなければならないと定めています。

    (労働者の配置に関する配慮)
    第26条 事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

    説明

    配慮とは

    厚生労働省の施行通達は、「配慮」とは「労働者について子の養育又は家族の介護を行うことが困難とならないよう意を用いることをいい、配置の変更をしないといった配置そのものについての結果や労働者の育児や介護の負担を軽減するための積極的な措置を講ずることを事業主に求めるものではない」と示しています。

    また、厚生労働省の指針は、「配慮することの内容としては、例えば、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること、労働者本人の意向をしんしゃくすること、配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをした場合の子の養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと等がある」と示しています。

    対応

    育児や介護に関する事情がある労働者には一切転勤を命じることができないというわけではありませんが、転勤者の人選に際しては、候補にあがった者について、育児介護に関する事情の有無を確認し、事情があると確認できた場合には、再度、その事情を踏まえて慎重に検討し、発令することに問題がない、あるいはやむを得ないと判断した場合でも、本人の意向を確認した上で発令するのが無難です。

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  • 小学校就学前の育児支援措置

    小学校就学前の子を養育する労働者等に関する措置

    育児介護休業法第24条第1項に、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置」として次の努力義務が規定されています。

    休暇の付与

    子の看護休暇、介護休暇及び年次有給休暇とは別に、育児に関する目的で利用できる休暇を(出産後の養育について出産前において準備することができる休暇を含む)を与えるための措置をとること。

    1歳に満たない子を養育する労働者で育児休業をしていないもの始業時刻変更等の措置

    ① フレックスタイム制
    ② 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
    ③ 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与のうちいずれかの措置

    1歳から3歳に達するまでの子を養育する労働者

    育児休業に関する制度又は始業時刻変更等の措置。

    なお、1歳6か月までの育児休業ができる場合には、1歳を1歳6か月として、1歳6か月以降の育児休業ができる場合には、1歳6か月を2歳として考える必要があります。

    3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者

    育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置又は始業時刻変更等の措置。

    2025(令和7)年10月1日施行の改正育児・介護休業法により、新たに「柔軟な働き方を実現するための措置」(法律の条文上は、「3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者等に関する措置」)を講じることが義務付けられます。

    関連記事:3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者が選択できる措置


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  • 介護休業等の対象者と適用除外者

    日々雇用される者は対象外

    育児介護休業法は、介護休業等の対象を、労働者(日々雇用される者を除く)としています。

    つまり、日々雇い入れられる者(1日のみの雇用契約、あるいは30日未満の有期契約で雇用されている労働者)は介護休業、介護休暇、所定労働時間の制限請求、時間外労働の制限請求、深夜業制限請求等をすることができません。

    事業の正常な運営を妨げる場合

    所定労働時間の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限に、「事業の正常な運営を妨げる場合」を除くという定めがあります。

    これについて、厚生労働省ホームページ 「節電に向けた労働時間の見直しなどに関するQ&A 5.家族的責任を有する労働者への配慮について」に次の記述があるので参考にしましょう。

    「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その労働者の所属する事業所を基準として、その労働者の担当する作業の内容、作業の繁閑、代行者の配置の難易度等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきものとされています。
    事業主は、労働者が深夜業の免除を請求した場合においては、その労働者が請求どおりに深夜業の免除を受けることができるように通常考えられる相当の努力をすべきであり、単に深夜業が事業の運営上必要であるとの理由だけでは拒むことは許されません。
    例えば、事業主が通常の配慮をすれば代行者を配置する等により事業を運営することが客観的に可能な状態にあると認められるにもかかわらず、そのための配慮をしなかった場合は、深夜業が必要な配置人員を欠くこと等をもって、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するとは言えません。一方、事業主が通常の配慮をしたとしても代行者を配置する等により事業を運営することが客観的に可能な状況になかったと認められる場合は、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当します。また、深夜業をせざるを得ない繁忙期において、同一時期に多数の専門性の高い職種の労働者が請求した場合であって、通常考えられる相当の努力をしたとしてもなお事業運営に必要な業務体制を維持することが著しく困難な場合には、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当します。こうした育児や家族の介護など家族的責任を有する労働者を深夜業に従事させようとする場合においては、その事情に十分配慮することが望まれます。

    介護休業の扱い

    有期雇用労働者の制限

    期間を定めて雇用される者は、次に該当すれば介護休業の対象になります。

    介護休業を開始しようとする日(以下、「介護休業開始予定日」という。)から93日経過日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

    この制限は、法により認められている制限なので、これの適用について労使協定を結ぶ必要はありません。

    令和4年3月31日までは「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」という要件がありましたが、現在は撤廃されています。

    労使協定による制限

    次の労働者については、労使協定を締結すれば介護休業の対象から除外することができます。

    ① 入社1年未満の従業員
    ② 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
    ③ 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    つまり、有期契約労働者については1年という要件が削除されましたが、上記の労使協定を締結していれば、実質的にはこれまでと変りがない運用をすることができます。

    介護休暇の扱い

    要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は介護休暇を申出できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    次の労働者については、労使協定を締結すれば介護休暇の対象から除外することができます。

    ① 雇用されて6か月未満の者
    ② 1週間の所定労働日数が2日以下の者

    以前は、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できないという定めもありましたが、現在はその扱いはできません。

    さらに、労使協定により、半日単位・時間単位の取得から除外できる業務があります。

    ③ 業務の性質若しくは業務の実施体制に照らして、一日未満の単位で看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者

    これは、法16条の3第2項に規定されています。

    指針では、業務の性質や業務の実施体制に照らして、1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務として、下記のように例示しています。
    ・国際路線や長距離路線に就航する航空機において従事する客室乗務員、操縦士等
    ・労働時間の大半を移動しながら行う運輸業務
    ・長時間の移動を要する遠隔地で行う業務
    ・流れ作業方式による業務
    ・交替制勤務による業務
    ただし、これらはあくまでも例示であって、これら以外は困難と認められる業務に該当しないということではなく、また、これらであれば直ちに困難と認められる業務に該当するものではない、とも記載されています。

    所定労働時間制限の扱い

    要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は所定労働時間の制限を請求できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    次の労働者については、労使協定を締結すれば所定労働時間の制限の対象から除外することができます。

    ① 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
    ② 1週間の所定労働日数が2日以下の者

    法律に認められた制限

    「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」という規定があります。これについては、上述の「事業の正常な運営を妨げる場合」を参照してください。

    時間外労働制限の扱い

    要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は時間外労働の制限を請求できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    労使協定による制限はできません。

    法律に認められた制限

    次の労働者を時間外労働の制限の対象外とすることができます。

    ① 事業主に雇用されている期間が継続して1年に満たない
    ② 所定労働日数が、1週間で2日以下

    また、「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」という規定があります。これについては、上述の「事業の正常な運営を妨げる場合」を参照してください。

    深夜業制限の扱い

    要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者は深夜業の制限を請求できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    労使協定による制限はできません。

    法律に認められた制限

    以下のひとつでも該当する労働者は対象外とすることができます。

    ① 雇用された期間が継続して1年に満たない
    ② 所定労働日数が1週間で2日以下
    ③ 所定労働時間の全部が深夜である
    ④ 深夜において当該の家族を介護できる同居の家族がいる

    深夜において介護できる同居の家族とは、16歳以上で、深夜に就業していないこと、負傷・疾病等により介護が困難でないこと、6週以内に出産予定か出産後8週以内でないことのすべてに該当する者をいいます。

    また、「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」という規定があります。これについては、上述の「事業の正常な運営を妨げる場合」を参照してください。

    短時間労働の扱い

    要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者であって、介護休業をしていない者は所定労働時間の短縮措置を申出できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    ① 事業主に雇用されている期間が継続して1年に満たない
    ② 所定労働日数が、1週間で2日以下


    育児・介護休業等に関する労使協定のサンプル

    会社事務入門介護を支援する諸制度>このページ

  • 育児休業等の対象者と適用除外者

    日々雇用される者は対象外

    育児介護休業法は、育児休業等の対象を、労働者(日々雇用される者を除く)としています。

    つまり、日々雇い入れられる者(1日のみの雇用契約、あるいは30日未満の有期契約で雇用されている労働者)は育児休業、子の看護休暇、所定労働時間の制限請求、時間外労働の制限請求、深夜業制限請求等をすることができません。

    事業の正常な運営を妨げる場合

    所定労働時間の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限に、「事業の正常な運営を妨げる場合」を除くという定めがあります。

    これについて、厚生労働省ホームページ 「節電に向けた労働時間の見直しなどに関するQ&A 5.家族的責任を有する労働者への配慮について」に次の記述があるので参考にしましょう。

    「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その労働者の所属する事業所を基準として、その労働者の担当する作業の内容、作業の繁閑、代行者の配置の難易度等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきものとされています。
    事業主は、労働者が深夜業の免除を請求した場合においては、その労働者が請求どおりに深夜業の免除を受けることができるように通常考えられる相当の努力をすべきであり、単に深夜業が事業の運営上必要であるとの理由だけでは拒むことは許されません。
    例えば、事業主が通常の配慮をすれば代行者を配置する等により事業を運営することが客観的に可能な状態にあると認められるにもかかわらず、そのための配慮をしなかった場合は、深夜業が必要な配置人員を欠くこと等をもって、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するとは言えません。一方、事業主が通常の配慮をしたとしても代行者を配置する等により事業を運営することが客観的に可能な状況になかったと認められる場合は、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当します。また、深夜業をせざるを得ない繁忙期において、同一時期に多数の専門性の高い職種の労働者が請求した場合であって、通常考えられる相当の努力をしたとしてもなお事業運営に必要な業務体制を維持することが著しく困難な場合には、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当します。こうした育児や家族の介護など家族的責任を有する労働者を深夜業に従事させようとする場合においては、その事情に十分配慮することが望まれます。

    育児休業の扱い

    有期雇用労働者の制限

    期間を定めて雇用される者は、次に該当すれば育児休業の申出ができます。

    ①  子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

    この制限は、法により認められている制限なので、これの適用について労使協定を結ぶ必要はありません。ただし、就業規則または育児介護休業規程に定める必要があります。また、雇用期間の制限をしない定めにすることもできます。

    令和4年3月31日までは「同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること」という要件がありましたが、現在は撤廃されています。

    労使協定による制限

    次の労働者については、労使協定を締結すれば育児休業の対象から除外することができます。

    ① 雇用されて1年未満の者
    ② 1年以内に雇用関係が終了することが明らかな者(1歳から1歳6か月までの育児休業の場合は6か月以内)
    ③ 1週間の所定労働日数が2日以下の者

    この定めは、有期雇用労働者だけでなく全ての従業員に適用されます。つまり、今後、有期契約労働者については1年という要件が削除されますが、上記の労使協定を締結していれば、実質的にはこれまでと変りがない運用をすることができます。

    産後パパ育休の扱い

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用契約労働者については、子の出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から起算して8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない場合に産後パパ育休をすることができます。

    子の看護休暇の扱い

    子の看護休暇は小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が申出できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    次の労働者については、労使協定を締結すれば子の看護休暇の対象から除外することができます。

    ① 雇用されて6か月未満の者
    ② 1週間の所定労働日数が2日以下の者

    以前は、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できないという定めもありましたが、現在はその扱いはできません。

    さらに、労使協定により、半日単位・時間単位の取得から除外できる業務があります。

    ③ 業務の性質若しくは業務の実施体制に照らして、一日未満の単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者

    これは、法16条の3第2項に規定されています。

    指針では、業務の性質や業務の実施体制に照らして、1日未満の単位で休暇を取得することが困難と認められる業務として、下記のように例示されています。
    ・国際路線や長距離路線に就航する航空機において従事する客室乗務員、操縦士等
    ・労働時間の大半を移動しながら行う運輸業務
    ・長時間の移動を要する遠隔地で行う業務
    ・流れ作業方式による業務
    ・交替制勤務による業務
    ただし、これらはあくまでも例示であって、これら以外は困難と認められる業務に該当しないということではなく、また、これらであれば直ちに困難と認められる業務に該当するものではない、としています。

    所定労働時間制限の扱い

    所定労働時間の制限は、3歳に満たない子を養育する労働者が請求できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    次の労働者については、労使協定を締結すれば所定労働時間の制限の対象から除外することができます。

    ① 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者
    ② 1週間の所定労働日数が2日以下の者

    法律に認められた制限

    また、「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」という規定があります。これについては、上述の「事業の正常な運営を妨げる場合」を参照してください。

    時間外労働制限の扱い

    時間外労働の制限は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    労使協定による制限はできません。

    法律に認められた制限

    次の労働者を時間外労働の制限の対象外とすることができます。

    ① 事業主に雇用されている期間が継続して1年に満たない
    ② 所定労働日数が、1週間で2日以下

    また、「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」という規定があります。これについては、上述の「事業の正常な運営を妨げる場合」を参照してください。

    深夜業制限の扱い

    深夜業の制限は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    労使協定による制限はできません。

    法律に認められた制限

    以下のひとつでも該当する労働者は対象外とすることができます。

    ① 雇用された期間が継続して1年に満たない
    ② 所定労働日数が1週間で2日以下
    ③ 所定労働時間の全部が深夜である
    ④ 深夜において当該の子供を保育、あるいは当該の家族を介護できる同居の家族がいる

    深夜において保育・介護できる同居の家族とは、16歳以上で、深夜に就業していないこと、負傷・疾病等により保育・介護が困難でないこと、6週以内に出産予定か出産後8週以内でないことのすべてに該当する者をいいます。

    また、「ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。」という規定があります。これについては、上述の「事業の正常な運営を妨げる場合」を参照してください。

    短時間労働の扱い

    所定労働時間の短縮措置は、3歳に満たない子を養育する者であって育児休業をしていない労働者が申出できます。

    有期雇用労働者の制限

    有期雇用労働者に対する制限はありません。

    労使協定による制限

    ① 事業主に雇用されている期間が継続して1年に満たない
    ② 所定労働日数が、1週間で2日以下
    ③ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、育児のための所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者

    関連記事:育児短時間勤務を適用するのが困難な場合

    協定書式:育児・介護休業等に関する労使協定のサンプル


    会社事務入門出産と育児を支援する諸制度育児休業制度のあらまし>このページ

  • 出生時育児休業(産後パパ育休)制度のあらまし

    出生時育児休業(産後パパ育休)は、育児休業とは別に、子の出生直後の時期(原則8週間以内)に柔軟に取得できることを目的とした休業制度です。特に男性労働者が子の養育に主体的に関わることを促進し、労働者が職業生活と家庭生活の両立を図り、退職せずに雇用を継続できるように支援することを目的としています。

    出生時育児休業(産後パパ育休)の概要

    定義と対象期間

    出生時育児休業は、子の出生の日から8週間以内の期間に、最長4週間(28日)まで取得できる休業です。この期間は、1回または2回に分割して取得することが可能です。

    期間の起算点

    期間の起算点は次のようになっています。

    □出産予定日より早く生まれた場合:子の出生の日から8週間以内
    □出産予定日より遅く生まれた場合:出産予定日から8週間を経過する日の翌日まで

    主な対象者

    出生時育児休業は、出産後8週間以内の子を養育するために、産後休業をしていない労働者が取得することを原則とします。労働基準法により女性労働者は産後休業の取得が義務付けられているため、一般的には男性労働者が主な対象となります。

    ただし、以下の場合は女性労働者も対象となり得ます。

    □養子縁組等により子を養育する場合(出産を伴わないため)
    □女性労働者が産後休業を取得していない特別な事情がある場合(ごく稀なケースですが、法令上は可能性が残されています)

    対象労働者

    原則として、日々雇用される労働者を除き、全ての労働者が対象となります。

    期間の定めのない労働者(正社員、無期雇用のパートタイマーなど)は、基本的に全て対象です。

    期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)については、以下の両方の要件を満たす場合に限り、申出が可能です。

    □子の出生日または出産予定日(いずれか遅い方)から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
    □労使協定の定めがないこと。

    給付金と社会保険料免除

    出生時育児休業期間中は、要件を満たすことで雇用保険から出生時育児休業給付金が支給されます。

    また、この期間中は社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除されます。

    関連記事:産後パパ育休取得者に出生時育児休業給付金が支給される

    手続きについて

    申出方法

    出生時育児休業の申出は、以下の事項を事業主に対して明らかにすることで行わなければなりません。

    □申出の年月日
    □申出をする労働者の氏名
    □申出に係る子の氏名、生年月日、労働者との続柄(子が未出生の場合は出産予定者の氏名、出産予定日、続柄。特別養子縁組等の場合はその事実)
    □休業の開始予定日と終了予定日
    □既に同じ子について出生時育児休業の申出がある場合はその旨
    □既に撤回した出生時育児休業申出がある場合はその旨
    □休業に係る子以外の、出生の日から8週間を経過しない子がいる場合はその子の情報
    □子が養子の場合は養子縁組の効力発生日
    □特定の事由(希望する日の1週間前までに申出をする場合の配偶者の死亡、負傷・疾病、同居しないこと、子の負傷・疾病など)が生じた場合はその事実

    申出は、書面提出、ファクシミリ送信、または電子メール等の送信(事業主が適当と認める場合に限る)によって行われます。

    申し出期限

    原則として、休業開始予定日の2週間前までに事業主へ申し出る必要があります。

    ただし、以下のいずれかに該当する場合は、希望する日の1週間前までの申出が可能です。

    □出産予定日より子が出生したのが早かった場合
    □配偶者の死亡、負傷・疾病、同居しなくなった場合
    □子が負傷・疾病等により2週間以上の世話が必要になった場合

    事業主の義務と対応

    事業主の対応義務

    事業主は、原則として労働者からの出生時育児休業の申出を拒むことはできません。

    ただし、労使協定により、以下の労働者を出生時育児休業の対象から除外することができます。

    □引き続き雇用された期間が8週間未満の労働者
    □週の所定労働日数が2日以下の労働者

    これらの除外対象者は労使協定で明記されている場合にのみ適用されます。

    開始予定日の指定

    申出があった日から2週間以内に開始予定日がある場合、事業主は2週間経過日までの間のいずれかの日を開始予定日として指定できる場合があります。

    申出の変更・撤回

    労働者は、休業開始予定日の前日までであれば、休業期間の変更(繰り上げ、繰り下げ)や申出の撤回が可能です。

    休業開始後は、原則として変更や撤回はできませんが、以下の「特別の事情」がある場合に限り、撤回や期間の変更が可能となります。

    □子の死亡、他人の養子となる、または同居しなくなった場合
    □配偶者が死亡した場合、または負傷、疾病、障害により子の養育が困難になった場合
    □離婚などにより配偶者が子と同居しなくなった場合
    □特別養子縁組の請求が不成立になった場合
    □子が負傷、疾病、障害により2週間以上の世話が必要になった場合

    休業期間中の就業(労使協定締結が必須)

    出生時育児休業は原則として就業しない期間ですが、労使協定を締結している場合に限り、以下の要件に基づき休業期間中の就業が可能です。

    労働者の申出と事業主の同意が必要です。事業主が一方的に就業を求めたり、労働者の意に反する取り扱いをしたりすることは認められません。

    労働者は、就業可能な日、時間帯、その他の労働条件を具体的に事業主に申し出る必要があります。

    就業の範囲には上限があり、以下のいずれも超えてはなりません。

    □就業日数の合計が、休業期間中の所定労働日数の半分以下であること
    □就業時間の合計が、休業期間中の所定労働時間の半分以下であること
    □就業によって、休業が中断される日以外に、その日の午前0時から午後12時までの全ての時間において就業することとなる日がないこと

    ※ 就業日数が上限を超えたり、労働時間の上限を超えたりすると、給付金の支給対象外となる可能性があるため注意が必要です。

    事業主の個別周知・意向確認義務

    労働者から本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった場合、事業主は以下の事項を個別に周知し、就業に関する意向を確認する義務があります。

    □出生時育児休業に関する制度
    □出生時育児休業申出等の申出先
    □出生時育児休業給付金および社会保険料免除に関すること
    □その他、労働者が希望するキャリア形成や働き方に関する意向

    この周知・意向確認は、面談、書面交付、FAX、電子メール等(記録を出力できるものに限る)のいずれかの方法で行う必要があります。取得を控えさせるような形で行ってはなりません。


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  • 育児時間について

    育児時間とは

    育児時間とは1歳未満の子を育てる女性に与えられる休憩時間のことです。

    生後1歳になるまでという期間の関係で、育児休業を取得中の期間に重なることから、比較的利用が少ない制度ですが、子が1歳になる前に職場復帰をする人も少なくないことから、会社としては利用のあるなしに関わらず制度を整えておく必要があります。

    労働基準法第67条
    生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
    2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。

    制度の対象者

    条文にあるように、育児時間を取得できるのは、1歳未満の子を育てる女性です。男性には与えられません。また、ここで生児とあるのは、実子だけでなく養子も含みます。

    正社員、契約社員、アルバイト・パートタイムなどの雇用形態による制限はありません。

    取得の仕組み

    育児時間は自動的には与えられません。「請求することができる」と条文にあります。該当する女性からの請求によって付与されます。使用者は請求を拒むことができません。

    いつ請求されても拒むことはできませんが、会社としては、業務の円滑な運営の観点から、できれば取得の時間を一定させたいと考えるところです。そこで、事前申請のルールを設けるのが一般的です。

    ただし、育児は予定通りにいかないものですから、事前申請と定めたとしても、柔軟に対応する旨規定し、実際に柔軟に取得させることが必要です。取得しにくい制度になれば法の趣旨に反するだけでなく、取得を実施的に拒まれたとされかねません。

    時間の設定

    育児時間をどの時間帯に請求するかは、原則として請求する女性の自由です。

    使用者があらかじめ時間を指定して、それ以外の時間帯での取得請求を拒否することは違法とされています。

    従業員の希望があれば、例えば、始業と終業の時間に30分ずつ育児時間を取得し、30分遅れの出社、30分早くの退社にすることもできるとされています。

    また、従業員の希望があれば、育児時間を1時間分まとめて取得し、通常よりも1時間遅く出社する、または1時間早く退社するという運用も違法ではないとされています。

    「1日2回」「各々」「少なくとも30分」というのは、フルタイム勤務を想定した場合の設定です。仮にパート勤務で1日の勤務時間が4時間以内(フルタイム勤務の半分以下)の労働者については、「1日1回」「少なくとも30分」の育児時間を与えればよいとされています。

    育児時間の使い方

    育児時間は、1日2回、30分ずつという設定から、授乳時間と考えられがちですが、そうではありません。

    会社は育児時間の使い方に注文をつけることはできません。母性保護という観点から単に休憩するために利用してもまったく構わないのです。

    就業規則に定める

    法律に定められた権利なので就業規則に記載がなくても与えなければなりませんが、制度を周知するためにもきちんと就業規則に定めましょう。

    育児時間を有給にするか無給にするかは会社が決めることができます。

    育児時間:就業規則

    育児短時間勤務との併用

    育児時間と育児短時間勤務は別の制度なので、育児短時間勤務の対象者にも育児時間を与えなければなりません。

    育児のための短時間勤務制度


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