カテゴリー
労働時間

勤務間インターバル制度の運用ポイントと注意点

Last Updated on 2025年8月12日 by

勤務間インターバル制度は、終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する制度です。これは、従業員の生活時間や睡眠時間を確保し、健康を維持するために重要な制度です。

制度の概要

勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法において、事業主の努力義務とされています。

目的: 従業員の心身の健康確保、過重労働の防止、ワークライフバランスの向上。

方法: 企業が就業規則等で制度の内容を定め、労使で合意して導入します。

具体的なやり方

勤務間インターバル制度の導入にあたっては、以下の点に留意する必要があります。

休息時間の設定

法令上、具体的な休息時間(インターバル時間)の長さは定められていません。しかし、厚生労働省は、9時間以上、可能であれば11時間以上のインターバルを設けることを推奨しています。多くの企業が、この推奨時間を参考に制度を設計しています。

制度の適用範囲

制度を全従業員に適用するのか、特定の部署や職種に限定するのかを定めます。

適用除外

突発的なトラブル対応など、緊急性・不可避性が高い業務の場合、制度の適用を除外するかどうかを定めます。

休息時間の確保が難しい場合の対応

インターバル時間を確保できなかった場合の対応方法も定めておくことが重要です。例えば、以下の措置が考えられます。

遅い始業時間: 終業時刻が遅くなった場合、始業時刻を遅らせてインターバル時間を確保します。

手当の支給: 例外的にインターバルが確保できなかった場合、手当を支給するなどの対応です。

就業規則例

この制度を導入するのであれば就業規則の改正が必要です。厚生労働省のホームページに就業規則の規定例が出ています。

(勤務間インターバル)
第◯条 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、◯時間の継続した休息時間を与える。

このままでも良いのですが、法律上は努力規定なので、上記の「◯時間の継続した休息時間を与える」を「◯時間の継続した休息時間を与えるよう努める」としても問題ないでしょう。また、同じく努力規定であるので、「いかなる場合も」と規定するまでもないと思われます。

次いで、この例の第2項で、継続した休息時間が与えられなかった場合にどうするかを規定しています。

例1
一つは、勤務間インターバルを守って勤務できなかった時間を労働時間に参入して賃金を払う定め方です。

2  前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。

労働時間とみなされた時間は当然有給になります。前日の残業代に加えて一定の金銭補償をするということになります。企業に金銭負担をさせることで残業抑制効果をねらっているのかもしれません。

例2
勤務間インターバルを確保するために遅く出勤しても良いという定め方です。

2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時間は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。

この場合、遅く出勤した日は終業時間もその分繰り下がるのか、終業時間を同じにして所定労働時間勤務したとみなすのか明確に規定した方がよいでしょう。この日に遅刻控除がなくて定時退勤できるのであれば、実質は例1と同じ扱いになります。

例2
厚生労働省が示した規定例には例外も示されています。

ただし、災害その他避けることができない場合は、その限りではない。

例外も規定するべきですが、この規定例の「その限りでない」ケースは非常に限定的だと思われます。

導入の補助金

厚生労働省では、勤務間インターバル制度を導入または見直した中小企業を対象に、労働時間等設定改善助成金(勤務間インターバル導入コース)を設けています。この助成金は、制度導入にかかる費用の一部を助成するものです。


会社事務入門労働時間の適正な管理労働時間等設定改善法とはどういう法律か?>このページ