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高齢者雇用上の注意事項

Last Updated on 2023年11月10日 by

高齢者雇用安定法

高齢者の雇用に関する事項は主に高齢者雇用安定法に定められています。

高齢者雇用安定法は、正式には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」といいます。最新の改正は、2021年4月に改正施行されました。

継続雇用制度には労使協定により対象者を限定できる経過措置がありますが、令和 7年(2025年)3月に終了し、4月からは希望者全員を65歳まで継続雇用しなければなりません。

以下、主要な条文を取り出して解説します。

定年の年齢

高齢者雇用安定法第8条は定年についての定めです。

定年を何歳にしろということではなく、「定年の定めをする場合には、当該年齢は、60歳を下回ることができない」と定めています。

つまり、定めないという選択肢もあるし、60歳を下回らないという条件なので、定年60歳は合法なのです。

なお、この規定には、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務に従事している労働者については除外されます。具体的業務は厚生労働省令で定めています。

65歳までの雇用確保措置

高齢者雇用安定法第9条は、65歳までの雇用確保措置について定めています。

(高年齢者雇用確保措置)
第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止

選択肢は3つです。①定年の65歳への引き上げ、②65歳までの継続雇用制度、③定年制度の廃止です。

継続雇用制度

65歳までの雇用を確保する措置として示されている3つの措置のなかでは、継続雇用制度が多く採用されています。

継続雇用制度とは、「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。」と規定されています。

そして、厚生労働省ホームページ内の「高齢者の雇用」では「継続雇用制度とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、再雇用制度などの制度をいいます。」と説明しています。

再雇用制度

継続雇用制度の代表的な制度が再雇用制度です。

定年後の再雇用制度について

70歳までの就業機会の確保

高齢者雇用安定法第10条の2では65〜70歳の労働者に就業機会を確保する努力義務を定めています。

具体的には、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が定められています。以下のとおり選択肢が多くなっています。

□ 70歳までの定年延長
□ 定年制の廃止
□ 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
□ 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
□ 70歳まで事業主が実施・委託等をする社会貢献事業に継続的に従事できる制度の導入

70歳までの就業確保措置について

高年齢者雇用等推進者

高齢者雇用安定法第11条は、高年齢者雇用等推進者を設置する努力義務を定めています。

雇用する労働者の数が常時30人以上の企業は高齢者雇用推進者を選任するよう努めなければなりません。

高年齢者雇用推進者

事業主による再就職援助措置

高齢者雇用安定法第15条は、事業主による再就職援助措置についてさだめています。

以下の高齢者に対して、求人の開拓、求職活動を行うための休暇の付与など、本人の再就職を援助する措置を実施する努力義務があります。

□ 解雇その他の事業主の都合により45歳以上70歳未満で離職する者(以下を含む)
□ 65歳までの雇用確保措置(経過措置)及び70歳までの就業確保措置における対象者基準に該当せず離職する
□ 就業確保措置の上限年齢が70歳未満に設定されており、当該年齢に達したことにより離職する
□ 創業支援等措置による契約が事業主都合により終了する

多数離職の届出

高齢者雇用安定法第16条は、多数離職の届出について定めています。

1か月以内に5人以上の離職者(上記の再就職援助措置の対象になる労働者)が発生する場合、あらかじめ多数離職届をハローワークに提出しなければなりません。

求職活動支援書の作成交付

高齢者雇用安定法第17条は、求職活動支援書の作成等について定めています。

解雇その他の事業主の都合により45歳以上70歳未満で離職する(創業支援等措置による契約が事業主都合により終了する場合を含む)離職者が希望するときは、求職活動支援書を作成して本人に交付しなければなりません。

また、求職活動支援書を作成した事業主は、再就職援助担当者の選任が必要です。

募集採用年齢の理由提示

高齢者雇用安定法第20条は、募集及び採用についての理由の提示等について定めています。

労働者の募集及び採用をする場合において、やむを得ない理由により一定の年齢(六十五歳以下のものに限る。)を下回ることを条件とするときは、求職者に対し、厚生労働省令で定める方法により、当該理由を示さなければなりません。

年齢差別について

募集・採用、賃金、配置、昇進などで、合理的な理由のない年齢差別をしてはいけません。定年制度は就業規則等で定めた場合に適用できます。

募集採用の年齢制限について

退職準備援助

高齢者雇用安定法第21条は、定年退職等の場合の退職準備援助の措置について定めています。

定年その他これに準ずる理由により退職する高年齢者に対し、引退後の生活に関する必要な知識の取得の援助その他の措置を講ずる努力義務を定めています。

雇用状況報告

高齢者雇用安定法第52条は、雇用状況等の報告について定めています。

雇用する労働者の数が常時30人以上の企業は、毎年1回「高齢者雇用状況報告書」により6月1日現在の高齢者雇用状況(定年、継続雇用制度、六十五歳以上継続雇用制度及び創業支援等措置の状況その他高年齢者の就業の機会の確保に関する状況)を公共職業安定所長に報告しなければなりません。提出期限は7月15日です。

厚生年金の資格喪失

厚生年金保険の加入者は、70歳になれば会社勤務が継続していても加入者の資格を失いますが、在職中の人で70歳になっても老齢年金の受給資格期間を満たせない場合は、申し出てその期間を満たすまで任意加入することができます。保険料は全額本人が負担しますが、事業主が同意すれば労使折半にすることもできます。

健康保険の資格喪失

被保険者またはその扶養者が75歳になれば後期高齢者医療が適用されるので健康保険からはずします。


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