フレックスタイム制と裁量労働制は、どちらも柔軟な働き方を実現するための制度ですが、仕組みや適用範囲などに大きな違いがあります。
労働時間(いつ・どれだけ働くか)の考え方
制度 | 労働時間の考え方 | 働く時間帯の自由度 |
フレックスタイム制 | 実労働時間で管理 | 始業・終業時刻を労働者が自由に決める。ただし、清算期間(1ヶ月など)の総労働時間は満たす必要がある。 |
裁量労働制 | みなし労働時間で管理 | 業務の遂行方法や時間の配分が労働者に委ねられる。実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた「みなし労働時間」を働いたとみなす。 |
補足:
- フレックスタイム制: 会社が定める期間(清算期間)内で、トータルの「働くべき時間」が決まっています。日々の出退勤時刻は自由ですが、期間の終わりにこの総労働時間を満たさないと賃金が減ったり、超えると残業代が発生したりします。
- 裁量労働制: 「この仕事は1日8時間かかるものとする」のように、あらかじめ労働時間を決めます。実際の労働時間が6時間でも10時間でも、原則として8時間働いたものとして賃金が支払われます。
対象となる職種(誰に適用できるか)
制度 | 適用対象 |
フレックスタイム制 | 職種の制限なし。(業務内容によっては導入が向かない場合もある。) |
裁量労働制 | 限定された職種・業務のみ。 |
補足:
- 裁量労働制は、業務の性質上、時間配分などを大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務に限定されます。
- 専門業務型: 研究開発、デザイナー、弁護士、公認会計士など、専門性の高い業務。
- 企画業務型: 本社などで事業の企画・立案・調査・分析を行う業務。
賃金の計算方法(残業代など)
制度 | 基本的な賃金計算 | 残業代の考え方 |
フレックスタイム制 | 実労働時間に基づいて計算。 | 清算期間の総労働時間を超過した分は、原則として残業代(割増賃金)が発生する。 |
裁量労働制 | みなし労働時間に基づいて計算。 | 原則として、みなし労働時間を超えても残業代は発生しない。(ただし、深夜労働や休日労働の割増賃金は別途発生する。) |
まとめ
違いのポイント | フレックスタイム制 | 裁量労働制 |
最も重視されること | 総労働時間(決められた期間内に、必要な時間働くこと) | 成果・業務の達成 |
時間の自由度 | 始業・終業時刻の自由度が高い | 仕事の進め方・時間配分の裁量が大きい |
適用範囲 | 職種の制限なし | 法令で定める専門的な職種などに限定 |
給与の計算 | 実労働時間で計算 | みなし労働時間で計算 |
簡単に言えば、
- フレックスタイム制は、「時間は自分で決めるけど、必要な分はしっかり働いてね」という制度です。
- 裁量労働制は、「成果を出してくれれば、働く時間はあなたの自由だよ」という制度です。