Last Updated on 2024年8月9日 by 勝
労働時間とは
「労働時間は労働時間。字のとおり、働いている時間に決まっている」
まあ、そうなんですが、そんなに簡単ではありません。
次のような判例があります。
平12.3.9 〇〇重工事件 最高裁
労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。
つまり、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。
例で説明します。
勤務時間が午前9時からの会社があるとします。
この会社では、従業員は何時に出社するでしょうか?
午前9時ちょうどに入る人はあまりいないと思います。10分前、20分前というのが普通でしょう。遅刻にならないようにゆとりをもって出勤するからです。
そして、10分前に職場の自分の持ち場、例えばデスクに到着すれば、何をするでしょうか?
普通は、引き出しを開けて書類を取り出したり、パソコンのスイッチを入れたりすると思います。
そういう動作は仕事そのものですから、厳密に言えばその時点で労働を開始したことになります。
この場合、従業員は会社に対して、多く働いた10分の賃金を請求できるのでしょうか?
できるのです。
10分といえども、年間200日働くとすると、2000分、時間にすると33時間強です。もし、その人が時給1000円であれば、33000円、時間外労働ですから2.5割増をつけると41250円です。くれるなら欲しいですよね。
この例は始業時間前に仕事をしていた場合です。単に会社にいるだけで仕事をしていないのであれば労働時間にカウントすることはできません。
10分前に出社して自分のデスクについたとしても、隣の同僚と雑談したり、コーヒーを飲んでスマホをいじっているのであれば労働時間ではありません。
しかし、定時の前に出社した人が、すぐに仕事を始めたか、仕事をしなかったか、会社は把握していますか?
あるとき、「私は毎日1時間早く出社し仕事をしていた。さかのぼって払ってもらいたい。」と主張してきたらどうなるでしょうか?
これは労働時間になるの?
時間管理について、一度しっかり考えてみる必要があります。
試験会場のように、チャイムがなるまで机に手をふれるな、終了のチャイムがなったら机から手を離せ、というやり方ができれば良いのですが・・・・、現実の仕事はそういうものではありませんから・・・・。
では、どのような場合であれば労働時間にカウントしなければならないか、どのような場合であれば労働時間にカウントする必要がないか、ケース別に検討してみましょう。
黙示の指示がないか
はっきり指示したわけではないけれど、態度や雰囲気でやらせるような場合です。基本的には労働時間です。
関連記事:黙示の指示があれば労働時間になる
手待ち時間は労働時間か
勤務時間中ではあるけれど、特に仕事がなくて待機していたような時間です。基本的には労働時間です。
関連記事:手待ち時間も労働時間です
自宅待機させている時間も労働時間か
連絡があれば仕事をしなければならない状態にいることです。
関連記事:自宅待機は労働時間に入るか
持ち帰り残業も時間外労働か
仕事を家に持ち帰って家で仕事をすることです。
関連記事:持ち帰り残業は労働時間か
忘年会へ出席させれば時間外労働か
会社や取引先との親睦のための忘年会やゴルフは労働時間になるのでしょうか。
関連記事:忘年会に出ている時間は労働時間か
仕事に必要な研修も時間外労働か
研修に参加している時間は労働時間になるのでしょうか。
関連記事:研修時間は労働時間か
仮眠をとっている時間は労働時間か
夜間の勤務で仮眠をとれるとして、仮眠している時間に給料はでるでしょうか。
関連記事:仮眠時間は労働時間として扱うのか
移動している時間は労働時間か
客先への移動時間は労働時間になるのでしょうか。
関連記事:移動時間は労働時間か
労働時間に該当するものまとめ
□ 所定の時間に出社したが特に仕事を与えられなかった時間
□ 休憩時間中の来客当番や電話番
□ 当番制ではないが、休憩中に来客や着信があった場合は対応しなければならない場合(休憩時間全部が労働時間になります)
□ 上司からの指示による残業
□ 上司からの明確な指示はなかったが、時間外に働かなければこなせないので行った残業
□ 仕事を自宅に持ち帰って仕事した時間
□ 会社からの指示により参加した研修(強制ではなく、自由参加のものであれば、労働時間には該当しない可能性が高い)
□ 作業服などに着替える時間(指定の作業服がない会社では、労働時間には該当しない可能性が高い)
□ 仮眠時間(休憩中の来客や着信への対応と同じです)
労働時間に該当しないものまとめ
□ 通勤時間
□ 出張先への移動時間(物品の運搬自体を目的とする業務の移動時間は労働時間に該当する)
□ 緊急時の呼び出される可能性がある時間(労働時間ではありませんが、そのような負荷に対する対価が必要です)
□ 会社の忘年会などに出ている時間(参加強制があれば労働時間です)
□ 接待ゴルフなどの時間(参加強制があれば労働時間です)
会社事務入門>労働時間の適正な管理>このページ