Last Updated on 2025年9月7日 by 勝
個人情報と特定個人情報の違いを、総務課長と新人課員による会話形式で解説します。
個人情報と特定個人情報の違い
ある日の午後、総務課のオフィス。新人課員が、課長の席を訪ねてきた。
新人課員: 課長、今お時間よろしいでしょうか。少し伺いたいことがありまして。
総務課長: ああ、どうした?
新人課員: 先日、マイナンバー関連の業務で「特定個人情報」という言葉を耳にしたのですが、「個人情報」とは何が違うのでしょうか?どちらも個人を特定する情報ですよね。
総務課長: よく混同されるところだ。まず、大前提として「特定個人情報」は「個人情報」の一種だと考えてくれ。
新人課員: 一種、ですか?
総務課長: そう。個人情報保護法で定められている「個人情報」が、個人の氏名、生年月日、住所など、特定の個人を識別できるすべての情報を指す広い概念なのに対し、「特定個人情報」は、マイナンバー(個人番号)とそのマイナンバーに紐づく個人情報(氏名、住所、生年月日など)を合わせた特定の情報を指すんだ。
新人課員: なるほど!マイナンバーが含まれているかどうかがポイントなんですね。
総務課長: その通り。そして、最も重要な違いは、その利用目的と取扱いに関する厳格なルールにある。
新人課員: 利用目的とルール、ですか?
総務課長: そうだ。「個人情報」は、法令遵守や業務の遂行に必要な範囲で利用や提供が認められている。もちろん、勝手に使っていいわけではないが、目的や状況に応じて柔軟な取り扱いが可能な場合がある。一方で、「特定個人情報」は、マイナンバー法によって、利用目的が税や社会保障、災害対策など法律で定められた範囲に厳しく限定されている。それ以外の目的で利用したり、むやみに提供したりすることは、原則として禁止されているんだ。
新人課員: それは知らなかったです。マイナンバーは、利用目的が限定されているからこそ、より厳重に管理する必要があるということですね。
総務課長: その通り。だから、特定個人情報を取り扱う際は、安全管理措置も個人情報以上に厳格に求められる。例えば、保管場所を限定したり、アクセスできる人を最小限に絞ったり、利用履歴を記録したり、といったルールが徹底される。これは、もし情報が漏洩した場合、個人に深刻な被害を及ぼすリスクが非常に高いためだ。
新人課員: よく分かりました。個人情報は広い概念で、特定個人情報はマイナンバーを含む特別な情報。そして、特定個人情報は利用目的が厳しく限定されていて、より厳格な安全管理が求められる、ということですね!
総務課長: その理解があれば大丈夫だろう。この違いをしっかりと理解してください。
新人課員: ありがとうございます。
個人情報保護法とマイナンバー法
新人課員との会話を終えた数日後、再び総務課長と新人課員が顔を合わせた。
新人課員: 課長、先日はありがとうございました。
総務課長: どういたしまして。ところで、その話に関連して、もう一つ知っておくべきことがあるんだが、聞いていくかい?
新人課員: はい、ぜひお願いします!
総務課長: 個人情報保護法とマイナンバー法の関係だ。前回の話で「マイナンバーは利用目的が厳しく限定されている」と言っただろう?その厳格なルールを定めているのが、マイナンバー法なんだ。
新人課員: なるほど。個人情報保護法だけでは不十分ということでしょうか?
総務課長: その通り。個人情報保護法は、すべての個人情報を取り扱う事業者が守るべき「一般法」だ。氏名や住所、生年月日など、個人を識別できる情報全般を対象としている。しかし、マイナンバーは非常に重要な情報で、不正に利用されると個人の権利利益に甚大な影響を及ぼす可能性がある。そこで、マイナンバーとその関連情報(特定個人情報)の取り扱いについて、個人情報保護法よりもさらに厳しいルールを定めたのがマイナンバー法なんだ。
新人課員: マイナンバー法は、個人情報保護法の「特別法」のようなものだと考えていいのでしょうか?
総務課長: まさにその通り!個人情報保護法は「個人情報全般の取扱い」について定めた法律。一方で、マイナンバー法は「特定個人情報」という、個人情報の中でも特に重要な情報について、より厳格な取扱いを定めた「特別法」と位置づけられている。
新人課員: ということは、特定個人情報を取り扱う際は、両方の法律を守る必要があるということですか?
総務課長: その通りだ。原則として、特定個人情報には両方の法律が適用される。しかし、もし両方の法律に違う定めがある場合は、マイナンバー法が個人情報保護法に優先して適用される。
新人課員: 優先されるんですね。具体的には、どんな点で違いがあるのでしょうか?
総務課長: いくつか例を挙げてみよう。
法令による主な違い
- 利用目的の制限
- 個人情報保護法:利用目的をできる限り特定し、その目的の範囲内で利用することが求められる。
- マイナンバー法:利用目的が税、社会保障、災害対策など、法律で定められた事務に厳密に限定される。目的外の利用は原則禁止だ。
- 第三者提供の制限
- 個人情報保護法:原則として本人の同意が必要だが、法令に基づく場合など、例外的に同意なしで提供できるケースもある。
- マイナンバー法:本人の同意があっても、原則として第三者提供は禁止されている。法律で定められた特定のケース(例:源泉徴収票の提出など)のみ認められる。
- 罰則
- 個人情報保護法:罰則規定があるが、マイナンバー法に比べると法定刑は軽い。
- マイナンバー法:不正利用や情報漏えいに対して、個人情報保護法よりも厳しい罰則が設けられている。
新人課員: なるほど!特定個人情報が個人情報保護法という大きな枠組みの中にありながら、マイナンバー法によってさらに厳しく縛られているという関係性がよく分かりました。
総務課長: その理解があれば充分だ。マイナンバーを取り扱う際は、その重要性と、それを守るための二重の法律があることを理解してほしい。
新人課員: ありがとうございます。
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