個人情報の開示、訂正、利用停止の請求に対する対処

Last Updated on 2025年9月8日 by

原則として要求に応じなければならない

個人情報保護法には、個人情報の本人からの開示、訂正、利用停止等の求めについての定めがあります。

① 本人からの要求があれば、保有個人データを開示しなければなりません
② 内容に誤りがある場合には訂正等に応じなければなりません
③ 目的外利用などの法律上の義務に違反する取扱いや、不適正な取得方法、本人の同意なしに第三者提供している場合には、情報の利用を停止しなければなりません

開示等をしなくてもよい場合もある

開示等の要求に応じなくてもよい場合もあります。

次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部について開示等の要求に応じないことができます。

① 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
② 当該事業者(個人情報取扱事業者のことです。以下同じ)の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
③ 他の法令に違反することとなる場合

開示しない決定をしたときや、保有個人データが存在しないときは、本人に対し、遅滞なく通知しなければなりません。

本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合

これについては、以下のようなケースが該当すると考えられます。

本人の生命、身体、財産を害するおそれがある場合

  • 病状の悪化を招く可能性のある情報:
    • 開示することで、本人の病状が悪化する可能性のある医療情報。
    • 本人が末期的な病状であることを知らされ、失望する危険性が高まると判断される場合。
  • 財産の不正利用につながる情報:
    • 本人に多額の借金がある、または金融機関が本人に融資を拒否したといった信用情報。これらの情報を開示することで、本人が自暴自棄となる危険がある場合。

第三者の権利利益を害するおそれがある場合

  • 内部通報者の情報:
    • 不正行為を内部通報した者の氏名。これを本人(不正行為者)に開示すると、通報者が報復を受ける危険があるため。
  • 第三者からの評価や意見:
    • 人事考課において、上司や同僚が本人について行った評価やコメント。これを本人に開示すると、評価者が不利益を被る、または人間関係が悪化するおそれがあるため。
  • 共同利用者の個人情報:
    • 本人以外の共同利用者の氏名、住所、連絡先など。これらの情報を開示すると、共同利用者のプライバシーを侵害することになるため。

その他の権利利益を害するおそれがある場合

  • 企業秘密やノウハウ:
    • 本人の個人情報に、企業の営業秘密やノウハウが含まれている場合。これを本人の請求に応じて開示すると、その情報が外部に漏洩し、企業の正当な事業活動が妨げられるおそれがあるため。

注意点

これらの場合であっても、企業は開示請求を安易に拒否することはできません。請求された情報の中に開示できない部分が含まれている場合は、その部分を除いて開示することが求められます。また、開示を拒否する際には、本人に対してその理由を具体的に説明する義務があります。この判断は慎重に行う必要があり、不明な点があれば専門家や弁護士に相談することが推奨されます。

業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合

これについては、以下のようなケースが該当すると考えられます。

採用活動や人事評価に関する情報

  • 人事考課や面接の評価項目:
    • 採用選考中の応募者から、「面接の評価シート」の開示を求められた場合。評価シートには、企業の採用基準や評価の観点が詳細に記載されていることが多く、これを安易に開示すると、今後の採用活動に支障をきたすおそれがあります。
  • 従業員の人事評価プロセス:
    • 従業員から、昇進や異動に関する評価会議の議事録、または評価に至った個別の経緯についての開示を求められた場合。これを開示すると、人事評価の客観性や公平性が損なわれ、今後の円滑な人事管理が困難になる可能性があります。

契約や取引に関する情報

  • 顧客の信用情報:
    • クレジットカード会社が、本人の利用限度額の決定プロセスに関する詳細な内部情報を開示することで、不正利用の防止策や与信審査のノウハウが外部に漏洩し、事業の適正な運営が阻害されるおそれがある場合。
  • 取引先の評価情報:
    • 企業が、取引先の信用調査や評価に用いた内部資料について、本人(取引先の担当者)から開示を求められた場合。これを開示すると、今後の取引先選定や交渉に支障をきたすおそれがあります。

調査や監視に関する情報

  • 不正行為の調査記録:
    • 企業が従業員の不正行為について調査を行っている際、本人から調査記録(監視カメラの映像や通信記録など)の開示を求められた場合。これを開示すると、証拠隠滅や関係者への口裏合わせを招き、調査そのものが妨害される可能性があります。
  • 反社会的勢力に関する情報:
    • 企業が反社会的勢力と疑われる人物について収集した情報について、本人から開示を求められた場合。これを開示すると、企業の安全対策や情報収集活動に支障をきたし、業務に危険が生じるおそれがあります。

注意点

これらの場合であっても、企業は開示請求を安易に拒否することはできません。請求された情報の中に開示できない部分が含まれている場合は、その部分を除いて開示することが求められます。また、開示を拒否する際には、本人に対してその理由を具体的に説明する義務があります。この判断は慎重に行う必要があり、不明な点があれば専門家や弁護士に相談することが推奨されます。

訂正・削除請求について

本人は、事業者に対し、保有個人データの内容が事実でないときは、内容の訂正、追加又は削除を請求することができます。

事業者は、請求を受けたときは遅滞なく調査し、その結果に基づいて、保有個人データの内容の訂正等を行わなければなりません。

ただし、訂正等の対象が事実でなく評価に関する情報である場合には、訂正等を行う必要はありません。

事業者は、保有個人データの内容の全部もしくは一部について訂正・削除を行ったとき、または訂正・削除を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく通知しなければなりません。

利用停止・消去請求について

本人は、以下の場合に利用停止・消去を請求できます。

  • 保有個人データが、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱われているとき
  • 偽りその他不正の手段により個人情報が取得されているとき
  • あらかじめ本人の同意を得ないで個人情報を取得したいるとき

事業者は、その請求に理由があることが明らかになったときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、保有個人データの利用停止等を行わなければなりません。

ただし、保有個人データの利用停止等に多額の費用を要する場合、その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要な措置をとるときは、この限りではありません。

事業者は、保有個人データの全部もしくは一部について利用停止等を行ったとき、または利用停止等を行わない決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく通知しなければなりません。

第三者への提供停止請求について

本人は、保有個人データが、あらかじめ本人の同意を得ないで第三者に提供されているときは、第三者への提供の停止を請求することができます。

事業者は、その請求に理由があることが明らかになったときは、遅滞なく、保有個人データの第三者への提供を停止しなければなりません。

ただし、第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合、その他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要な措置をとるときは、この限りではありません。

事業者は、第三者への提供を停止したとき、または第三者への提供を停止しない決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく通知しなければなりません。

開示等の請求等に応じる手続

事業者は、保有個人データの開示等の請求を受け付ける方法を定めることができます。

事業者が受付方法を定めたときは、請求する人は、その方法に従って、開示等の請求を行わなければなりません。

事業者が定めておくべき事項

  • 請求書面の様式
  • 受付方法(郵送、FAXなど)送付先
  • 本人確認の方法
  • 手数料の額
  • その他必要な事項

ホームページ掲載例

以上の内容は、会社のホームページに掲載しましょう。

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