カテゴリー: 休職

  • メンタル不調者の休職:復職後のフォローアップ

    メンタル不調者の休職:復職後のフォローアップ

    メンタルヘルスケアのステップ3「復職後のフォローアップ」について、詳細に解説します。

    復職後のフォローアップは、従業員が再発なく、安定して働き続けられるようにするための最終段階です。焦らず、段階的に元の働き方に戻していくことが成功の鍵となります。

    定期的な面談と担当者

    復職後も、従業員の体調や業務状況を確認するため、定期的な面談を継続します。

    面談の担当者:

    • 直属の上司(ラインケアの継続): 従業員の日常的な変化に最も早く気づく立場であり、業務状況の確認や日々の体調変化に配慮します。
    • 人事担当者: 勤務時間や給与、休職制度などの事務的なサポートに加え、客観的な視点から従業員の復職状況を把握します。
    • 産業医または保健師(専門家によるケア): 医学的な専門家として、心身の状態を継続的にチェックし、就業継続が可能かどうかを判断します。

    面談の頻度

    復職直後は週1回、慣れてきたら2週間に1回、月に1回と、従業員の状況に合わせて頻度を徐々に減らしていきます。

    面談での注意事項と会話シナリオ

    面談では、従業員に安心感を与え、本音を引き出すことが重要です。

    面談の注意事項:

    • 個室で行う: 他の従業員に聞かれないよう、プライバシーが確保された場所で行います。
    • 責めない・励まさない: 「頑張って」「早く元に戻って」といった言葉はプレッシャーになるため避けます。
    • 具体的な質問をする: 「体調はどうですか?」のような漠然とした質問ではなく、「昨日はぐっすり眠れましたか?」など、答えやすい具体的な質問を心がけます。

    会話シナリオの例(上司が面談する場合):

    • 上司: 「〇〇さん、おはよう。今日はこの前の続きだけど、最近の体調や仕事の状況について話を聞かせてくれるかな。」(導入:安心して話せる雰囲気づくり
    • 従業員: 「はい、ありがとうございます。体調はだいぶ安定してきました。ただ、まだ少し疲れやすさを感じることがあります。」
    • 上司: 「そうなんだね。何か困っていることはない?タスクの量や難易度はどうかな?」
    • 従業員: 「タスクは問題ないのですが、以前より集中力が続かないと感じる時があります。休憩時間をこまめにとるようにしています。」
    • 上司: 「休憩をしっかり取るのは素晴らしいことだね。何かあったら一人で抱え込まず、いつでも声をかけてほしい。必要であれば、業務量を調整することもできるからね。」(寄り添いと具体的な提案
    • 上司: 「もし、私以外に相談したいことがあれば、人事の△△さんや産業医の先生にもいつでも相談してね。私も連携してサポートしていくから。」(専門家への連携を促す

    業務内容や部署変更のプロセス

    再発防止のためには、元の職場環境が不調の原因となった場合は、業務内容や部署を見直すことも必要です。

    プロセス:

    1. 本人の意向確認: まずは、従業員本人がどのような働き方を希望しているかを丁寧にヒアリングします。
    2. 産業医の意見聴取: 産業医が「就業上の配慮が必要」と判断した場合、具体的な配慮内容について意見を聴取します。
    3. 上司・人事で検討: 産業医の意見と本人の意向を踏まえ、業務内容の変更(例:営業職から内勤職へ)、または部署異動の可能性を検討します。
    4. 決定と実行: 変更内容を本人に提示し、合意が得られれば実行します。

    重要事項:

    • 復職プランへの明記: 復職前に作成する「復職プラン」に、業務内容や勤務時間、部署変更の可能性について明記し、関係者間で共有します。
    • 無理のない変更: 変更は一時的なものではなく、本人の回復と安定就労を目的としたものとします。急な変更ではなく、段階的に進めていくことが大切です。

    面談窓口について

    一つの窓口に絞ることは、従業員の負担を軽減する一方で、いくつかのデメリットも生じうるため、慎重な検討が必要です。複数の窓口を設置することは、役割の重複ではなく、むしろ多角的なサポート体制を築くための有効な手段となります。

    一つの窓口に絞る場合のメリットとデメリット

    メリット

    • 従業員の迷いをなくす: 相談先が明確になり、「誰に相談すればいいのか分からない」という迷いをなくせます。
    • 情報の一元管理: 相談内容が1つの窓口に集約されるため、情報共有や連携がスムーズになります。

    デメリット

    • 専門性の偏り: 担当者が1人(または1部署)に限定されると、対応できる専門分野が偏る可能性があります。例えば、人事担当者だけでは、医学的な判断や専門的なカウンセリングには対応できません。
    • 心理的抵抗感の増加: 相談内容によっては、会社の人事担当者には話しにくいと感じる従業員もいます。プライバシーへの懸念から、相談そのものをためらってしまう可能性があります。
    • 担当者への負担集中: すべての相談を1人で受け持つことになり、担当者自身の精神的・業務的負担が大きくなります。

    複数の窓口を設けることの重要性

    複数の窓口を設けることは、上記デメリットを補い、従業員に「選択肢」と「安心感」を提供します。

    • 専門性の確保: 産業医や保健師といった専門家を窓口に加えることで、医学的な知識に基づいた的確なアドバイスが可能になります。
    • 相談内容に応じた選択肢:
      • 上司: 日常的な業務の悩み。
      • 人事担当者: 人事評価や配置、休職に関する相談。
      • 産業医・保健師: 心身の不調や健康問題に関する専門的な相談。
    • プライバシー保護: 会社の人事部とは独立した、社外のEAP(従業員支援プログラム)サービスを窓口に加えることで、従業員はより安心して相談できます。

    負担を軽減するためには、窓口を絞るよりも、各窓口の役割と相談内容を明確に区分けし、従業員に周知することの方が効果的です。これにより、従業員は自分の悩みに合わせて最適な相談先を迷わず選べるようになります。


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  • メンタル不調者の休職:会社からのサポート

    メンタル不調者の休職:会社からのサポート

    メンタルヘルスケアの第3ステップである「職場復帰と再発防止」の一環である「休職中のサポート」について詳しく解説します。

    休職中のサポートは、従業員が安心して治療に専念し、スムーズな職場復帰につなげるために非常に重要なプロセスです。

    休職中の連絡体制の構築

    休職に入った従業員は、会社から孤立していると感じ、不安や焦りを抱きやすくなります。こうした状況を防ぐために、適切な連絡体制を構築することが重要です。

    • 連絡窓口の一本化: 人事担当者や産業保健スタッフなど、連絡窓口を一人に限定します。これにより、複数の部署からバラバラに連絡が来ることで従業員が混乱したり、プレッシャーを感じたりするのを防ぎます。
    • 連絡頻度と方法の確認: 休職に入る前に、従業員の希望を確認し、無理のない連絡頻度(例:月に1回)や方法(例:メール、郵送)を決めます。
    • 連絡内容の限定: 連絡は、安否確認や休職制度に関する事務連絡に限定します。「いつ頃復帰できそうか?」といった、治療の進捗を問うような質問は、従業員の負担になるため避けるべきです。

    経済的なサポートと情報提供

    従業員が治療に専念できるよう、経済的な不安を軽減することも大切なサポートです。

    • 公的制度の案内:
      • 傷病手当金: 健康保険から支給される給付金制度です。従業員自身が申請手続きを行う必要があるため、人事担当者が申請方法や必要書類について丁寧に案内します。
      • 自立支援医療制度: 精神科の医療費負担を軽減する制度です。
    • 会社の制度の案内:
      • 会社の休職期間中の給与や福利厚生、社会保険料の取り扱いについて、正確に情報提供します。

    主治医との連携

    従業員の治療状況や回復の度合いを把握するためには、主治医との連携が不可欠です。

    • 情報提供と連携の体制:
      • 復職に向けて、主治医に「職場情報提供書」などを通じて、仕事内容や職場環境、必要な配慮事項などを伝えます。
      • 主治医が記載した「診断書」や「意見書」は、復職の可否を判断する際の重要な資料となります。

    ただし、主治医とのやり取りは従業員本人を通して行うことが原則であり、プライバシー保護の観点から、従業員の同意なしに会社が直接連絡を取ることは避けるべきです。

    復職に向けた準備

    休職期間の後半には、従業員がスムーズに職場復帰できるよう、段階的な準備を支援します。

    • リハビリ出勤制度: 本格的な復帰の前に、徐々に職場に慣れていく「リハビリ出勤」制度を導入します。
    • 復職面談の実施: 休職者、人事担当者、産業医、そして直属の上司が参加する面談を定期的に実施し、復職後の業務内容や勤務体制について話し合います。

    これらのサポートを通じて、従業員は安心して療養に専念でき、復職へのプレッシャーを軽減することができます。


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  • 休職復帰後の「リハビリ出勤制度」の解説

    休職復帰後の「リハビリ出勤制度」の解説

    特に制度がなければ、休職から復帰した社員はいきなり通常勤務に戻ります。慎重に対応するのであれば、段階的に慣れてもらう「リハビリ勤務制度」は、再休職リスクを減らし、本人にとっても会社にとっても非常に有効な制度です。

    ここでは、復職後のリハビリ勤務制度を設計する際のポイントと、具体的な制度案について解説します。

    リハビリ出勤制度設計のポイント

    制度を設計する際には、以下の点を明確に定めておくことが重要です。

    1. 目的の明確化:
      • この制度は、あくまでも「正式な職場復帰の移行期間」であることを明確にします。単なる短時間勤務制度とは異なり、最終的には通常勤務に戻ることを前提とします。
    2. 対象者の限定:
      • 誰でも利用できる制度ではなく、病気やケガで休職し、主治医や産業医からリハビリ勤務が必要と判断された社員に限定します。
    3. 期間と評価:
      • 制度の適用期間を定め(例:最大3ヶ月)、その期間中に段階的に勤務時間を増やしたり、業務内容を広げたりする計画を立てます。期間終了時には、本人の状態や業務遂行能力を評価し、本格的な復職・配置を決定します。
    4. 賃金と福利厚生:
      • 短時間勤務となるため、基本給を減額するかどうかを定めます。また、賞与の算定や福利厚生の扱についてもルールを明確にしておきます。
    5. 就業規則への明記:
      • 制度の目的、対象者、期間、勤務時間、賃金など、運用に必要なルールを就業規則に明記し、社内全体で認識を共有します。

    復職後のリハビリ勤務制度の例

    上記のポイントを踏まえた制度例を示します。

    1. 制度名

    復職移行支援制度またはリハビリ勤務制度

    2. 目的

    休職から復職した社員が、心身ともに無理なく段階的に通常勤務へ移行できるよう、一定期間、勤務時間や業務内容に配慮することで、再休職リスクの軽減と円滑な職場定着を図ることを目的とする。

    3. 対象者

    病気や負傷により長期休職していた社員のうち、主治医および産業医が本制度の適用を適当と判断した者とします。

    この制度を「本人の希望があれば適用する」のか、「原則として適用する」のかを決めます。療養後の復職者は原則として本制度を適用し、ただし、本人の意向や主治医の意見を十分に聴取した上で、柔軟に対応するというハイブリッドな運用が最も望ましいと考えられます。

    4,復職者面談

    全期間を通じて丁寧な面談を実施します。

    • 復職を検討する段階で、本人、人事担当者、直属の上司、産業医が参加する復職面談を実施します。
    • この面談で、リハビリ勤務の必要性、期間、業務内容などを丁寧に説明し、本人の希望や懸念事項を十分に聴き取ります。
    • リハビリ勤務期間中は、上司との定期的な面談を通じて、本人の体調や業務への適応状況を常に把握します。
    • 期間中に無理をしている兆候が見られた場合は、当初の計画を修正し、勤務時間をさらに短縮するなどの対応を取る体制を整えておくことが重要です。
    • 期間終了時には、産業医、上司、本人を交えて最終的な評価を行い、本配置を決定する。

    5. 適用期間

    復職日から最長3か月間として、会社が特に必要と認める場合は、期間を延長することがあるというプランにしました。

    6. 勤務形態

    • 短時間勤務: 段階的に勤務時間を延長していく。
      • 第1フェーズ(1ヶ月目): 1日の勤務時間を4時間とする。
      • 第2フェーズ(2ヶ月目): 1日の勤務時間を6時間とする。
      • 第3フェーズ(3ヶ月目): 通常勤務に準じた勤務時間(7時間45分など)とする。
      • 勤務時間帯は、本人の状況や部署の業務に合わせて個別に設定する。
    • 業務内容:
      • 第1フェーズ: 精神的・肉体的負担が少ない単純作業や、チーム内での見学、情報収集などから開始する。
      • 第2フェーズ: 徐々に対人業務や専門的な業務を再開する。
      • 第3フェーズ: 通常業務への完全移行を目指す。

    業務内容のリハビリは重要なポイントなので、後述します。

    7. 賃金・手当

    • 基本給: 短時間勤務期間中は、所定労働時間に対する基本給を勤務実績に応じて日割りで支払う。
    • 賞与: 賞与算定期間中に本制度を適用した場合は、勤務実績を考慮して支給額を決定する。
    • その他手当: 該当期間中の通勤費については、実態に合わせた金額を支給する。

    業務内容のリハビリ

    業務内容のリハビリ勤務は、単純に期間で区切ってしまうと、社員の回復状況に合わず、かえって負担をかけてしまう可能性があります。

    そこで、業務内容のフェーズは、「能力評価」と「本人との合意」をベースに、段階的に進めていくのが望ましいです。

    以下に、その具体的なフェーズの区切り方と運用方法を提案します。

    業務内容フェーズの区切り方

    フェーズ1:ウォームアップ

    • 目的:体力・集中力の回復、職場環境への再適応
    • 業務内容
      • 軽作業・単純作業:書類整理、ファイリング、備品管理など、集中力をあまり必要としない業務。
      • 情報収集・見学:チームの会議に参加して話を聞く、社内システムや資料を閲覧するなど、受動的な業務。
      • 交流:同僚や上司との簡単な会話。

    フェーズ2:本格的な業務への移行

    • 目的:専門能力の再確認と回復
    • 業務内容
      • チーム内での簡単なサポート業務:先輩社員のサポートとして、データ入力や簡単なメール返信などを担当。
      • 限定的な対人業務:電話対応や顧客対応など、心理的負担の少ないものから始める。
      • 専門業務の再開:担当していた業務のうち、負荷の低いものから徐々に再開する。

    フェーズ3:通常業務への移行

    • 目的:責任範囲を広げ、通常業務に完全に復帰する
    • 業務内容
      • 単独業務の増加:先輩のサポートを徐々に減らし、担当業務の割合を増やす。
      • 責任範囲の拡大:新たなプロジェクトへの参加、チームのリーダー的役割など、責任を伴う業務を再開する。
      • 対人業務の拡大:会議での発言や顧客との交渉など、より複雑な対人業務を再開する。

    運用方法

    これらのフェーズを期間ではなく、「本人の状態」と「上司とのすり合わせ」で進めていくことが重要です。

    • 定期的な評価と面談
      • 週に一度、上司と本人が面談し、その週の体調や業務への適応状況を確認します。
      • 上司は、本人の様子を見て、次のフェーズに進めるかどうかを判断します。
      • 本人の「もう少し今のフェーズで慣れたい」という希望を尊重し、無理に進めないことが再休職を防ぐ鍵となります。
    • 産業医との連携
      • 上司が一人で判断するのではなく、産業医と連携し、専門的な視点から業務内容やペースについて助言をもらいます。

    このように、業務内容を段階的に、かつ柔軟に進めることで、社員の回復ペースに合わせた無理のない復帰を支援することができます。

    就業規則への記載例

    就業規則には、以下のような条文を追加することが考えられます。

    (復職後のリハビリ勤務)

    第〇条 社員が病気または負傷により休職し、復職する場合においては、療養後の復職者の心身の状態を考慮し、原則として復職日から最長3ヶ月間のリハビリ勤務制度を適用する。

    2. 本人が早期の通常勤務を希望する場合は、主治医の意見を参考にしながら、リハビリ勤務期間を短縮あるい適用しないことがある。

    2. リハビリ勤務中の労働条件は、別途定める「復職移行支援制度規程」によるものとする。

    復職移行支援制度規程のサンプル

    これは就業規則に定める「復職後のリハビリ勤務」を具体化するものです。自社の状況に合わせて修正してご活用ください。


    復職移行支援制度規程

    第1条(目的)

    この規程は、就業規則第〇条(復職後のリハビリ勤務)に基づき、病気または負傷により長期休職した社員が円滑に職場に復帰し、安定して就労を継続できるよう、心身のリハビリテーションを目的とした支援制度を定める。

    第2条(適用対象)

    本制度の適用対象者は、以下の各号をすべて満たす者とする。

    1. 病気または負傷により、〇ヶ月以上休職していた者
    2. 主治医より職場復帰が可能であるとの診断を受けた者
    3. 産業医が本制度の適用を適当と判断した者

    2 本人がリハビリ勤務制度の適用を希望しないときは、主治医の意見を参考にしながら、通常の職場復帰を認めることがある。

    第3条(制度の申請)

    本制度の適用を希望する社員は、所定の「復職移行支援申請書」に主治医の診断書を添付し、会社に提出しなければならない。

    2 会社は、提出された書類および産業医の意見を基に、本制度の適用可否を判断する。

    第4条(リハビリ勤務の期間)

    リハビリ勤務の期間は、原則として復職日から最長3か月間とする。

    2 会社は、社員の心身の状態、業務への適応状況等を考慮し、本人の同意を得て、期間を短縮または延長することがある。

    第5条(リハビリ勤務の内容)

    リハビリ勤務は、以下のフェーズを段階的に実施する。

    1. 第1フェーズ(第1週目から第4週目まで):
      • 勤務時間: 1日〇時間(例: 4時間)
      • 業務内容: 精神的・肉体的負担が少ない単純作業、資料整理、チームミーティングへの参加、見学等
    2. 第2フェーズ(第5週目から第8週目まで):
      • 勤務時間: 1日〇時間(例: 6時間)
      • 業務内容: 徐々に対人業務や専門的な業務を再開する
    3. 第3フェーズ(第9週目から第12週目まで):
      • 勤務時間: 1日〇時間(例: 7時間45分)
      • 業務内容: 通常業務への完全移行を目指す

    第6条(賃金および手当)

    リハビリ勤務中の基本給は、所定労働時間に対する基本給を勤務実績に応じて日割りで支払う。

    2 通勤手当は、通勤日数および経路に応じて実費を支給する。

    3 時間外労働、休日労働、深夜労働は原則として命じない。

    第7条(復職後の評価と本配置)

    リハビリ勤務期間中は、直属の上司が社員の業務遂行能力、体調、勤怠状況を観察・評価し、産業医と連携して定期的なフォローアップ面談を実施する。

    2 リハビリ勤務期間満了の約2週間前に、人事担当者、直属の上司、産業医、社員を交えた最終面談を実施し、通常勤務への移行の可否、および本配置を決定する。

    3 通常勤務への移行が困難と判断された場合、再休職または休職期間の延長を検討するものとする。

    第8条(規程の改廃)

    本規程の改廃は、就業規則に準じて行う。

    附則:本規程は〇〇年〇〇月〇〇日から施行する。


    関連記事:メンタルヘルスケアとは?会社はどのように取り組むか?

    会社事務入門休職制度のあらまし>このページ

  • 休職中の「リハビリ出勤制度」の解説

    休職中の「リハビリ出勤制度」の解説

    休職中の社員を対象としたリハビリ出勤制度は、病気やけがなどで長期にわたって休業していた社員が、無理なく円滑に職場復帰できるよう、正式な復職の前に、通勤訓練・模擬出勤をする制度です。厚生労働省も導入を推奨しており、多くの企業で取り入れられています。

    リハビリ出勤制度の具体的な内容

    この制度は法律で定められたものではなく、企業が独自にルールを定めて運用するものです。主な目的は、休職者が規則正しい生活リズムを取り戻し、体力や集中力を回復させることにあります。

    具体的な内容は企業によって異なりますが、一般的には会社の指揮命令下で業務を行うのではなく、決められた時間に出社して時間を過ごしたり、通勤の練習をしたりすることで、職場環境に慣れることを目的とします。

    導入する場合の注意事項

    リハビリ勤務制度を導入する際には、将来的なトラブルを避けるために、以下の点に注意して制度設計と運用を行う必要があります。

    1. 就業規則への明記:
      • 制度の目的、対象者、賃金の扱いなどを休職規程等に明記し、社内ルールを明確にしておくことが重要です。
    2. 休職者本人との合意:
      • リハビリ出勤を開始する前に、制度の内容について休職者本人と十分に話し合い、書面で合意を得ておくことが必須です。
    3. 賃金の取り扱い:
      • 会社の指揮命令下で業務を行っていない(模擬出勤など)場合は、労働とみなされず、原則として賃金支払いの義務は生じません。
    4. 労災保険・健康保険との関係:
      • 会社の指揮命令下で業務を行っていない(模擬出勤など)場合は、労働とみなされず、事故があっても原則として労災保険の対象になりません。
      • 万が一の事故に備え、会社が独自で保険に加入したり、見舞金制度を設けたりするなど、従業員の不安を軽減するための対応策を検討することが望ましいです。
    5. リハビリ出勤中の扱い:
      • 賃金は支給せず無給とする。
      • 主目的は、出社帰宅を繰り返すこと。職場では見学程度とし、持ち込みの本を読んだり、私物のスマホを操作することを認めるが、会社の資料閲覧やパソコン操作等はしない、という扱いにする。
      • このようにすることで、指揮命令下ではない労務の提供がないということになります。規則正しい生活を送るための「訓練」や「リハビリ」の機会を与えているにすぎない、という位置づけになります。
    6. 厳格な運用:
      • 「見学程度」というルールが形骸化し、上司が軽微な作業でも指示したり、本人が自主的に手伝い始めたりすると、意図せず「労働」とみなされる可能性があります。ルールは厳格に守り、会社側も本人も「労働ではない」という意識を徹底することが大切です。
    7. 産業医・主治医との連携:
      • リハビリ出勤の開始可否や勤務内容の調整にあたっては、休職者の主治医や会社の産業医の意見を聴き、健康状態を客観的に評価することが不可欠です。
    8. プライバシー保護:
      • 休職者の健康情報や個人的な情報を厳重に管理し、取り扱いに関わる者への教育・研修を徹底するなど、プライバシー保護に配慮する必要があります。

    リハビリ出勤制度は、休職者がスムーズに職場復帰するための有効な手段であり、再休職リスクの低減にもつながります。しかし、その運用には専門的な知識が必要となるため、導入を検討する際は、社会保険労務士などの専門家に相談することをおすすめします。

    本人との合意書

    本人との合意文書の文例を以下に示します。

    この文例は、リハビリ出勤が「労働」に当たらないことを明確にし、将来的なトラブルを防ぐことを目的としています。会社の状況に応じて、項目や文言を調整してご活用ください。


    リハビリ出勤に関する合意書

    (以下、「甲」という。)と(以下、「乙」という。)は、乙の職場復帰に向けたリハビリ出勤について、以下の通り合意しました。

    第1条(目的)

    本合意書は、乙の円滑な職場復帰を目的とし、休職期間中にリハビリテーションの一環として出勤すること(以下、「リハビリ出勤」という。)に関する事項を定める。

    第2条(リハビリ出勤の期間および内容)

    1. リハビリ出勤の期間は、〇〇年〇〇月〇〇日から〇〇年〇〇月〇〇日までとする。この期間内に行うリハビリ出勤の回数は本人の任意とする。
    2. リハビリ出勤中は、原則として午前〇〇時〇〇分から午後〇〇時〇〇分までの間に終えるものとする。
    3. リハビリ出勤中の活動内容は、以下の通りとする。
      • 規則正しい生活リズムの再構築、および通勤訓練
      • 職場環境への順応
      • 机上での個人的読書、個人学習、その他リハビリ目的の活動
      • 社員との交流(雑談等)
      • その他、甲が認めた軽微な活動

    第3条(賃金の不支給)

    1. 乙が本合意書に基づくリハビリ出勤を行うことは、労働基準法に定める「労働」ではないことを甲、乙双方で確認する。
    2. したがって、甲は乙に対し、リハビリ出勤に関する賃金、交通費、その他一切の報酬を支払わない。

    第4条(労災保険の不適用)

    本合意書に基づくリハビリ出勤は、労働ではないため、通勤中または出勤中の事故等による負傷等について、労働者災害補償保険法(労災保険)は適用されない。事故等による負傷等には見舞金を支給する。

    第5条(休職期間の継続)

    乙は、本合意書に基づくリハビリ出勤中も休職期間が継続することを承諾する。

    第6条(復職の決定)

    1. 本合意書に基づくリハビリ出勤期間の満了後、乙の主治医および甲の産業医の意見を参考に、甲が復職の可否を判断する。
    2. 甲は、復職の可否を〇〇年〇〇月〇〇日までに乙に通知する。

    第7条(その他)

    本合意書に定めのない事項については、甲、乙双方で協議の上、定めるものとする。

    上記の内容を確認し、双方合意の上、本合意書を2通作成し、甲、乙がそれぞれ1通を保有する。

    〇〇年〇〇月〇〇日

    会社名:〇〇〇〇株式会社

    所在地:

    代表者名:

    社員番号:

    氏名:

    住所:

    休職規程への記載

    就業規則や休職規程に記載する「リハビリ出勤」の条文サンプルをご提示します。

    これは、リハビリ出勤が「労働」ではないことを明確にし、企業と社員双方の認識を統一することを目的としています。自社の規定に合わせて修正してご活用ください。


    (リハビリ出勤)

    1. 社員は、休職期間中、職場復帰のためのリハビリテーションとして、会社の承諾を得てリハビリ出勤を行うことができる。
    2. リハビリ出勤は、労働ではない。そのため、会社はリハビリ出勤に対し、賃金、交通費、その他一切の報酬を支払わない。
    3. リハビリ出勤の期間および勤務時間は、社員の症状を考慮し、会社が個別に定めるものとする。
    4. リハビリ出勤中の社員は、会社の指揮命令下で業務を行うことを禁止する。活動は、以下の通りとする。
      • 職場への出社・帰宅を通じた生活リズムの調整
      • 職場環境への順応
      • 個人的自習、個人的読書、職場見学など、心身のリハビリテーションを目的とした活動
      • 会社が認めた軽微な活動
    5. リハビリ出勤中のケガについて、労働者災害補償保険法(労災保険)は適用されない。
    6. リハビリ出勤は、休職期間を中断するものではない。
    7. 会社は、リハビリ出勤の実施にあたり、社員の主治医および産業医の意見を聴取し、円滑な職場復帰を支援するよう努める。
    8. リハビリ出勤に関する詳細は、別途定める「リハビリ出勤に関する合意書」に準ずるものとする。

    休職規程の一部ではなく、リハビリ出勤を対象にする規程サンプルも用意しました。

    関連記事:リハビリ出勤規程のサンプル


    関連記事:メンタルヘルスケアとは?会社はどのように取り組むか?

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  • 休職中の「療養専念義務」とは具体的にはどういう義務ですか?

    休職中の「療養専念義務」とは、労働者が病気やケガの治療に集中し、早期の職場復帰を目指す義務のことです。これは、単に自宅で安静にすることだけを意味するのではなく、症状や病状に応じて、回復を促すための合理的な行動も含まれます。

    専念とはどういうことか

    療養専念義務の「専念」は、病状の回復を最優先することを意味します。この義務は、会社が労働者の健康状態を理由に休職を認める代わりに、労働者は、休職期間を利用して病状を回復させる努力する責任を負うというものです。

    具体的には次のようなことが「療養専念」にあたります。

    • 静養(安静): 発熱や体力の消耗が激しい病気(例:インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症)の場合、自宅で安静にすることが療養に専念することになります。
    • リハビリ等: 外傷などでリハビリが必要な場合(例:骨折、脳血管疾患の後遺症)は、医師の指示に基づいた通院やリハビリテーションが療養の範疇となります。
    • 精神的ケア: 精神疾患(例:うつ病)の場合、心身のリフレッシュを目的とした散歩や軽度の運動、気分転換になるような外出や旅行も、医師が治療の一環として認めるものであれば、療養専念義務に反しないと解釈されることがあります。

    上記のように、療養専念は、行動が「病状の回復に資すること」が前提になりますが、自分の判断だけでなく「医師の指示があること」が重要になります。医師の許可なく、一見すると趣味や遊びと見られる行動を頻繁に行うと、療養専念義務違反とみなされる可能性があります。

    義務違反になりやすいケース

    以下のような行為は、療養専念義務に違反すると判断されるリスクが高い行為です。

    • アルバイトや副業: 許可なく他の会社で働いたり、個人的な事業活動をしたりすることは、療養に専念しているとは言えない可能性が高いです。ブログやSNSを通じて、自身のスキルや作品を売り込んだり、副業の顧客を募集したりするような行為は、療養専念義務に反する「兼業行為」とみなされることがあります。
    • 過度な活動: 激しい運動や飲酒を伴う宴会への参加、頻繁な外出など、病状悪化のリスクがある行動は違反と判断されやすいです。また、家の中にいたとしても、1日に何回もブログ記事を投稿したり、長時間にわたってSNSに張り付いているような状態が続いている場合、療養に専念していないと判断されることがあります。
    • 頻繁な旅行: 頻繁にテーマパークや観光地を訪れたり、海外旅行をすると、療養に専念していないと問題視されることが多いです。また、観光地やテーマパークではしゃいでいる写真をSNSにアップロードすることは、会社や同僚の目に触れるリスクがあります。もし投稿するとしても、元気な様子を過度にアピールするような内容は避けるべきです。
    • 会社を批判するブログ投稿:ブログ投稿やSNSでの発信は、その内容や頻度、目的によって、療養専念義務に違反するかどうかの判断が分かれます。単なる気分転換や暇つぶしであれば問題ないと考えるのが一般的ですが、発信内容が会社の信用を毀損するケースだと大きな問題になる可能性があります。また、療養中とは思えないほど活動的な様子が頻繁に投稿していると、会社から「本当に病気なのか?」と疑念を持たれる可能性があります。

    トラブルを避けるためのポイント

    療養専念義務に関するトラブルを避けるためには、以下の点に注意することが重要です。

    医師との連携

    その活動が治療の一環となるかについて、主治医と相談し、必要に応じて会社に提出する診断書にその旨を記載してもらうことが有効です。

    例えば、医師の指示なく旅行に行った場合、療養専念義務違反とみなされる可能性は高まります。ただし、裁判例によると「旅行に行ったこと」が直ちに療養専念義務違反となるわけではなく、その旅行が「療養に資するもの」と判断されるかどうかが重要とされています。

    つまり、医師に知らせていない旅行や外出が直ちに療養専念義務違反とはなりませんが、休職中に旅行などをするときは、トラブルを避けるために、主治医に相談し、それが療養の一環であることを確認することが重要です。

    会社とのコミュニケーション

    会社に、休職中の状況を定期的に報告しましょう。特に、治療の一環として外出や旅行を計画している場合は、事前に相談し、理解を得ておくことが望ましいです。

    会社に定期報告をする義務がある場合は、外出の状況を軽く報告しておくことも有効です。問題視されることを恐れて隠すより、例えば「体調が良い日は、リハビリを兼ねて公園を散歩したり、買い物に行ったりしています」「先日、医師から気分転換になると勧められて隣県のテーマパークに行ってきました」などと伝えるだけでも、会社の理解は深まります。

    会社から求められた場合は、医師の診断書を提出し、病状や治療方針を明確に伝えることが、会社側の理解を得る上で非常に重要です。

    療養専念義務は、会社のためだけでなく、自身の回復のためでもあります。主治医の指示に従い、療養に努めることが、早期の職場復帰につながります。


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  • 休職命令書のサンプル

    休職命令書のサンプル

    令和 年 月 日

    ○○○○殿

    ○○株式会社
    代表取締役社長○○○○印

    休職命令書

    就業規則第○条の規定により下記の通り貴殿に休職を命じます。

    1.休職種別 私傷病休職

    2.休職期間 令和 年 月 日から同 年 月 日まで

    3.休職中の扱い

    ① 休職期間中は無給となりますが、健康保険から傷病手当金が支給される予定です。
    ② 休職期間中に発生する社会保険料等の公租公課の本人負担分は、当月分を翌月末日までに、会社が指定する振込口座に振り込んでください。
    ③ 休職中はおおむね月に1回、会社の担当者から貴殿の近況について問い合わせさせていただきます。

    4.上記の休職期間満了日までに貴殿の私傷病が治癒せずに復職できない場合は退職となります。

    5.上記の休職期間満了日までに復職を希望する場合は、復職が可能である旨の主治医の診断書を提出してください。追って復職に向けた手続きについて連絡します。

    以上

    付記

    貴殿の休職に関する会社窓口は人事課○○○○です。

    休職辞令のサンプル

    辞令

    令和 年 月 日

    ○○○○殿

    ○○株式会社
    代表取締役社長○○○○印

    就業規則第○条の規定により貴殿に休職を命じます。

    1.期間 令和 年 月 日から同 年 月 日まで

    2.休職事由 貴殿の私傷病による

    以上

    休職通知書のサンプル

    令和 年 月 日

    ○○○○様

    ○○株式会社
    代表取締役社長○○○○印

    休職通知書

    あなたの休職について、当社の就業規則第○条の規定に基づき下記の通りご通知いたします。

    1.休職種別 私傷病休職

    2.休職期間 令和 年 月 日から同 年 月 日まで

    3.休職中の扱い

    ① 休職期間中は無給となりますが、健康保険から傷病手当金が支給される予定です。
    ② 休職期間中に発生する社会保険料等の公租公課の本人負担分は、当月分を翌月末日までに、会社が指定する振込口座に振り込んでください。
    ③ 休職中はおおむね月に1回、会社の担当者から貴殿の近況について問い合わせさせていただきます。

    4.上記の休職期間満了日までに貴殿の私傷病が治癒せずに復職できない場合は退職となります。

    5.上記の休職期間満了日までに復職を希望する場合は、復職が可能である旨の主治医の診断書を提出してください。追って復職に向けた手続きについて連絡します。

    以上

    付記

    あなたの休職に関する会社窓口は人事課○○○○です。分からないことがありましたら遠慮なくお尋ね下さい。

    注意点

    就業規則に「従業員が次の各号の一に該当するときは休職を命じる」などと規定されているのであれば、休職は従業員の意志で始まるのではなく、会社による休職命令が必要です。

    第二のサンプルのように「辞令」とすることもあります。辞令なので更に簡潔に、期間と事由だけにしました。

    第三のサンプルは「通知書」としました。内容的には命令に等しいのですが、表現を柔らかくしたものです。

    これらの命令書や辞令は、詳細が記載されていないので、実務上は、説明文書の交付や覚書の取り交わしなどが、別途必要です。


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