Last Updated on 2025年6月22日 by 勝
3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関する柔軟な働き方を実現するための措置を実施しなければなりません。(2025年10月改正施行)
- 3歳から小学校就学前の子を養育する労働者への柔軟な働き方を実現するための措置の義務化に関するQ&A
- Q1: この措置はどのような目的で導入されますか?
- Q2: どのような労働者がこの措置の対象となりますか?
- Q3: 事業主はどのような措置を講じる義務がありますか?
- Q4: 措置を講じる際に、労使協定による除外規定はありますか?
- Q5: 措置を選択する際、事業主はどのような手続きを踏む必要がありますか?
- Q6: 労働者への個別の周知・意向確認は義務ですか?
- Q7: 個別の周知・意向確認はどのように行えばよいですか?
- Q8: 「3歳になるまでの適切な時期」とは具体的にいつを指しますか?
- Q9: 労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮も義務化されますか?
- Q10: 所属長や直属の上司が個別周知や意向確認・聴取を行ってもよいですか?
- Q11: 労働者の業務内容によって、事業主が用意した措置が利用できない場合、事業主は義務を果たしたことになりますか?
- Q12: テレワーク等の措置を導入する際に、事業主としてどのような配慮が求められますか?
- Q13: 既存の休暇制度を「養育両立支援休暇」として充当することは可能ですか?
- Q14: これらの措置の利用を理由として、労働者に不利益な取扱いをすることは禁止されますか?
3歳から小学校就学前の子を養育する労働者への柔軟な働き方を実現するための措置の義務化に関するQ&A
Q1: この措置はどのような目的で導入されますか?
少子高齢化が進む中で、出産・育児による労働者の離職を防ぎ、男女ともに希望に応じて仕事と育児を両立できる社会を実現することが重要な課題とされています。特に、子の年齢に応じてフルタイムで残業をしない働き方や、フルタイムで柔軟な働き方を希望する割合が高まっていることから、男女ともに希望に応じたキャリア形成と育児の両立を可能にすることを目指しています。
Q2: どのような労働者がこの措置の対象となりますか?
3歳から小学校就学前の子を養育する労働者が対象です。ただし、日々雇用される労働者は除外されます。
Q3: 事業主はどのような措置を講じる義務がありますか?
事業主は、以下の5つの措置の中から、2つ以上を選択して講じる義務があります。労働者は、事業主が講じた措置の中から1つを選択して利用することができます。
1.始業時刻等の変更の措置: フレックスタイム制や、1日の所定労働時間を変えずに始業・終業時刻を繰り上げまたは繰り下げる時差出勤制度などが含まれます。
2.在宅勤務等の措置: 自宅やそれに準ずる場所での勤務を指します。原則として時間単位での利用が可能で、1日10労働日以上の利用日数確保が求められます(週5日勤務の場合)。
3.育児のための所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度): 1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含まなければなりません。
4.就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与: 1年間に10労働日以上の休暇を付与する措置です。原則として時間単位での取得が可能で、始業時刻から連続または終業時刻まで連続する形での利用が想定されています。
5.保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与: ベビーシッターの手配や費用負担などが含まれます。
Q4: 措置を講じる際に、労使協定による除外規定はありますか?
はい、以下の労働者については、労使協定を締結することで措置の利用対象外とすることができます。
•その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者。
•1週間の所定労働日数が2日以下の労働者。
ただし、養育両立支援休暇においては、時間単位での取得が困難と認められる業務に従事する労働者は、労使協定により時間単位取得の対象外とできますが、1日単位での取得を拒むことはできません。
Q5: 措置を選択する際、事業主はどのような手続きを踏む必要がありますか?
事業主が講じる措置を選択する際、過半数組合等からの意見を聴く機会を設けなければなりません。また、より労働者が利用しやすい措置となるよう、子を養育する労働者からの意見聴取やアンケート調査も併せて行うことが望ましいとされています。
Q6: 労働者への個別の周知・意向確認は義務ですか?
はい、義務です。労働者の子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は、柔軟な働き方を実現するための措置として選択した制度に関する事項(対象措置、申出先、所定外労働の制限、時間外労働の制限など)を個別に周知し、制度利用の意向を確認しなければなりません。
Q7: 個別の周知・意向確認はどのように行えばよいですか?
面談、書面交付、FAX、または電子メール等の方法で行うことができます。面談はオンラインでも可能ですが、対面と同程度の質を確保する必要があります。電子メール等による場合は、労働者が記録を出力して書面を作成できるものに限られます。
Q8: 「3歳になるまでの適切な時期」とは具体的にいつを指しますか?
A8: 子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの1年間とされています。
Q9: 労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮も義務化されますか?
はい、義務です。事業主は、労働者が本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出たとき、および子が3歳になるまでの適切な時期に、子や各家庭の事情に応じた仕事と育児の両立に関する以下の事項について、労働者の意向を個別に聴取しなければなりません。
1.勤務時間帯(始業および終業の時刻)
2.勤務地(就業の場所)
3.両立支援制度等の利用期間
4.仕事と育児の両立に資する就業に関する条件
事業主は、聴取した意向について、自社の状況に応じて配慮する義務があります。
Q10: 所属長や直属の上司が個別周知や意向確認・聴取を行ってもよいですか?
はい、事業主から委任を受けていれば、所属長や直属の上司が行っても差し支えありません。ただし、労働者が意向を表明しにくい状況にならないよう、実施者となる所属長や直属の上司に対し、制度の趣旨や適切な実施方法等を十分に周知しておくことが重要です。
Q11: 労働者の業務内容によって、事業主が用意した措置が利用できない場合、事業主は義務を果たしたことになりますか?
労働者の職種や配置等から利用できないことがあらかじめ想定できるものを措置することは、事業主が措置義務を果たしたことにはなりません。企業単位だけでなく、事業所単位や職種ごとに講じる措置の組み合わせを変えるなど、職場の実情を適切に反映させることが望ましいです。
Q12: テレワーク等の措置を導入する際に、事業主としてどのような配慮が求められますか?
夜間の勤務や長時間労働により心身の健康に不調が生じることがないよう配慮し、労働者自身による心身の健康保持を促すことが望ましいとされています。例えば、適切な労務管理、面談による健康状況の把握、勤務間インターバルの導入などが考えられます。
Q13: 既存の休暇制度を「養育両立支援休暇」として充当することは可能ですか?
はい、可能です。養育両立支援休暇の具体的な取得理由は、就業しつつ子を養育することに資するものであれば労働者に委ねられます。したがって、子を養育する目的以外の用途を含んだ休暇制度であっても、労働者が希望すれば養育両立支援休暇として年10日利用できることが担保されていれば、措置を講じたものとして差し支えありません。
Q14: これらの措置の利用を理由として、労働者に不利益な取扱いをすることは禁止されますか?
はい、禁止されます。柔軟な働き方を実現するための措置の利用を申し出たことや、妊娠・出産等の申出時、または子が3歳になる前の時期に聴取された労働者の仕事と育児の両立に関する意向の内容を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
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