Last Updated on 2023年11月11日 by 勝
女性労働者の保護と支援
それぞれの労働者が自身の能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することは、性別にかかわらず重要なことですが、とりわけ、女性は、妊娠・出産・育児において負担が大きく、男女差別の問題も十分に解消されているとは言えません。そこで、法律においても差別解消や女性保護についてさまざまな規定されています。企業においては、それらの法律の求めているところを把握し、女性労働者を充分にサポートする体制を作ることが強く求められています。
妊娠中の女性など
妊娠中の女性、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性、産後8週間を経過しない女性、妊産婦の使い分けに注意してください。
妊産婦とは、妊娠している女性、または出産後1年を経過していない女性のことです。
禁止と請求した場合の違い
「就かせてはいけない」と規定されものは女性本人が希望しても禁止される事項です。違反があれば就かせた使用者が罰せられます。
「請求した場合には」と書いてあれば女性本人が希望すれば禁止が解かれます。ただし、「医師が認めた場合」という条件がつくことがあります。
労働基準法による規制
女性を雇用する場合には、母性保護の点を考慮しなければなりません。
坑内労働の禁止
使用者は、妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性を、坑内で行われる業務に就かせてはいけません。
有害業務の禁止
満18歳以上の女性を、坑内で行われる業務のうち、人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるものに就かせてはいけません。
妊産婦の就業制限業務(法第64条の3)
妊産婦を妊娠、出産、哺育などに有害な業務(重量物の取扱いや有害ガスを発散する場所における業務その他)に就かせてはいけません。
関連記事:妊産婦等の就業制限の業務
簡易作業への転換(労働基準法法第65条第3項)
妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な作業に転換させなければいけません。ただし、そのような仕事がない場合はやむを得ないとされています。
産前産後休業
労働基準法に、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間の産前産後休業の規定があります。
関連記事:従業員が産前産後休業を申し出たときの手続きと注意点
変形労働時間制の制限(法第66条第1項)
変形労働時間制がとられる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1日及び1週間の法定時間を超えて労働させることはできません。
時間外労働・休日労働・深夜業の制限(法第66条第2項及び第3項)
妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、又は深夜業をさせることはできません。
関連記事:女性の労働時間規制
育児期間(法第67条)
生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができます。4時間以内のパートについては、1日1回です。
関連記事:育児時間について
生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置
生理日の就業が著しく困難な女性が、休暇(半日、時間単位でもよい)を請求したときは、その者を就業させてはいけません。
解雇制限
使用者は、労働者の産前休業期間の6週間(双子以上は14週間)、産後休業期間の8週間、及びその後30日間は解雇してはなりません。また、男女雇用機会均等法により、妊娠中・産後1年以内の解雇は、「妊娠・出産・産前産後休業等による解雇でないこと」を事業主が証明しない限り無効となります。
関連記事:解雇制限について
男女同一賃金
労働基準法第4条は、男女同一賃金の原則を定めています。
関連記事:男女同一賃金の原則について
育児介護休業法
育児・介護休業法は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、育児や介護を行う人を支援して、仕事と家庭を両立することを目的にした法律です。
育児休業(第5条)、子の看護休暇(第16条の2)、介護休業(第11条)、介護休暇(第16条の5)、所定外労働の制限(第16の8、第16条の9)、時間外労働の制限(第17条、第18条)、深夜業務の制限(第19条、第20条)、短時間勤務制度(第23条)、転勤等への配慮(第26条)、再雇用特別措置等(第27条)などについて定めています。
関連記事:育児休業制度のあらまし
男女雇用均等法による規制
男女雇用機会均等法は、性差別の禁止、セクハラの防止、マタハラの防止、相談体制の整備、男女雇用機会均等推進者の選任、紛争解決の援助、などについて定めています。
関連記事:男女雇用機会均等法のあらまし
女性活躍推進法
女性活躍推進法は、正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。
仕事を続けていきたいと思っている女性の個性と能力が発揮され、活躍できる職場環境を整える義務があるという趣旨の法令です。
常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は、一般事業主行動計画を策定して、自社の状況を認識し、具体的な数値目標を設定し、公表する義務が課せられています。
関連記事:女性活躍推進法による一般事業主行動計画
労働安全衛生法
労働安全衛生法にもとづく、労働安全衛生規則衛生基準や事務所衛生基準規則では、トイレを男女別に設置することや、休養室室の男女別などを定めています。
関連記事:労働安全衛生規則衛生基準について
関連記事:事務所衛生基準規則について