Last Updated on 2023年3月5日 by 勝
会社はチェックできる
会社は、従業員の業務メールをチェックすることができます。ただし、プライバシーなどへの注意が必要です。
チェックできる根拠
1.会社は業務を間違いなく実施していくために従業員の行動等を統制することができます。会社が定めた作業手順に従って仕事をさせることなどがそれに当たります。その場合、単に守れと言うだけでなく現実に守っているかどうかチェックすることもできます。
2.メールの送受信も会社で行う仕事の一つですから、正しく行われるように、つまり、従業員の作成した文面が相手に失礼なものでないか、内容が間違っていないか、相手先を間違えて送信していないかなどの間違いが起こらないように指導しなければなりませんし、指導が守られているかチェックしなければなりません。現実に一々メールをチェックするかどうかは別として、そういう原則で会社は動いています。
3.従業員は労働契約上、職務に専念しなければならないという義務があります。従業員が常態的に私用メールを受発信することは仕事をおろそかにしてことになるので、そうしたメールがないかチェックするのも会社の正当な権利です。
4.私用メールの受発信が、会社の業務用パソコンや、業務に必要で貸与している携帯等で行われることがあれば、少し大げさに言えば会社財産の目的外使用ということですから、当然に禁止する権利があります。(個人所有のスマホ等を会社がチェックする権利はありません。したがって、個人のスマホ等を業務に利用させることはリスクが伴うので避けなければなりません。)
以上のように、会社が会社秩序を維持するために従業員のメールをチェックすることは裁判例でも認められています。(東京地方裁判所平成13年12月3日判決)
トラブルにならないように
しかし、会社に権利があると言っても、無制限な権利ではありません。
例えば、私用メールが業務用パソコン等で行われていたとしても、その内容は当該従業員のプライバシーですから、その内容を不用意に他人に示せば違法となるおそれがあります。
また、業務メールであったとしてもそれを逐一チェックされることは、従業員にとって心理的負担になるので、不平不満につながりかねません。
そこで、会社でメールチェックをする場合には次の点について注意が必要です。
根拠を規程に定める
メールチェックをすることを規程に明示しておきましょう。やっているかどうか分からない、スパイのようなことをしてはいけません。
関連規程:パソコン等使用規程のサンプル
どのようにチェックするか
業務上のメールは、上司や関係者にcc等で送信するかたちで情報の共有とともにメール内容のチェックができます。また、重要な送信については、事前に上司や関係者に文案を送って了解をとることも一般的に行われていると思います。一般的なメールチェエックはこうした業務の流れのなかで行われます。
ライバル会社に営業秘密をもらすなどの、就業規則に違反する不正行為が疑われるような場合は、上述したように、基本的には会社にメールチェックの権利があるために、その従業員の同意なくメールの内容等をモニタリングすることができます。一般的には当該従業員が手元のメールを削除したとしてもメールサーバーには残っています。
私用メールについては、ちょっと家族や友人に連絡する程度ならあまり目くじら立てることはないと思われますが、程度を超えるときは注意が必要です。ただし、疑われるのは不愉快なことですし、冤罪の場合もあるので高圧的なやり方は避けましょう。まずは、一般的な注意として、パソコン等を私用でつかってはいけないことを伝え、「そういうことはないだろうね」と確認するだけでほとんどは解決するはずです。
まとめ
従業員のメールをチェックすることはできます。ただし、無条件ということではなく、なぜやるかという一定の根拠が必要で、上司など一定の権限がある人の承認のもとに行い、得た情報についての取扱に注意しなければならないことが前提です。
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