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退職の事務

退職はどの段階で確定するのでしょうか

Last Updated on 2023年10月23日 by

退職が確定するとき

双方が合意したとき

従業員からの退職願の提出は、法的には「会社に対して雇用契約を解約する申し込み」です。この「願」に対して、会社が承諾すれば、合意した退職日において労働(雇用)契約の終了が確定します。

実務上は、退職届の記載日あるいは提出日ではなく「○日をもって退職いたしたく」と書いてあればその「○日」が労働契約終了の日で同時に退職日になります。「本日をもって」と書いてあれば提出日が退職日です。

就業規則に「退職願を提出後○日経過したとき」に退職とするという条項があれば、その就業規則に定められた日に退職が確定します。ただし、民法第627条第1項の規定により会社の承認がなくても、退職の申出をした日から起算して14日を経過したときは、原則として退職できることになっているので、従業員が主張すれば就業規則の「○日」が無効になるので、「1か月」などと書いてあっても、自動的に「14日を経過すれば」退職が確定します。

いずれの場合にも確かに退職の申込みがあったのかということが後々問題になることがあります。退職の申込みと承認を口頭でやるのはとても危険なことです。よく「話しはわかった、明日退職願を持ってきなさい」という上司がいますが間違いです。口頭で退職の申込みがあったらその場で退職願(届)書いてもらうべきです。記載日時と本人の署名があれば押印がなくても有効です。

就業規則の退職に該当したとき

就業規則には退職に関する規定があり、そこにはそのようなときに退職になるかが記載されています。

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上述したように法令に定めがあればその法令が優先しますが、法令に記載がない事項については就業規則の記載によって手続きをすることになります。なお、法令に明確な定めがない事項であっても、就業規則の定めが民法第90条の「公序良俗」に反するとして従業員からの訴えがあれば民事裁判で認められる可能性があります。就業規則も絶対ではないということです。

行方不明従業員の扱い

行方不明の場合は、例えば「無断欠勤14日」で懲戒解雇と決めている場合は、それを適用することもできるでしょう。ただし、行方不明の事情が明らかになっていない段階で懲戒解雇というのはいささか乱暴です。事故や事件など、本人に落ち度の無い事情で連絡がとれないこともあるので、上記就業規則例(5)を適用して普通退職、あるいは休職規定の適用が妥当でしょう。

上記の就業規則では、退職の意思表示があったものとみなすという「みなし」を規定していますが、解雇の場合には、相手方に解雇の意思表示が伝わる必要があるとされているので、解雇を確かなものにするためには、簡易裁判所に申立てを行い、官報への掲載などを経て、相手方に解雇の意思表示が到達したものとみなされるという手続きをふむ必要があります。

家族が代筆した退職願は有効か

家族から出された退職届は無効だと考えるべきでしょう。本人の真意が確認できないからです。家族から出された退職届に基づいて退職の手続きを行うと、後々問題になることがあります。

病気になり回復の見込みも薄いとして家族から退職願が出されることもありますが、この場合も、本人の真意が確認できればよいのですが、そうでない場合は、就業規則に定めてある休職退職の日まで待って、休職満了後退職を選択するべきです。

退職願の撤回

会社が承諾するまでは雇用契約の解約が確定していないので、会社が承諾する前なら撤回することができます。

退職届に「○日をもって」と書いた場合でも、○日までは撤回できるということではありません。提出し承認された段階で、退職日を指定した労働契約の解約が成立しているからです。会社が撤回に応じなければ、従業員が撤回を主張していてもその日がくれば退職になります。

翌日になって退職願の撤回を申し出た従業員が敗訴している裁判例があります。そのため「退職の申し入れに対して、人事権限のある者が承諾した場合には解約合意が成立し、これを後日取消することはできない」という扱いが定着しています。

逆に言えば、人事権がない上司の手元にある段階であれば撤回することができるということになります。

ただし、就業規則で退職の確定段階を定めている会社であれば、その就業規則によることになります。もし「社長が承認したとき」と書いてあれば、人事権がある部長等が承認したとしても社長が承認するまでは退職が確定しないということになります。

撤回が認められるケース

上述したとおり、退職の意思表示が人事権のある上司に到達すれば撤回できないのですが、退職意思を撤回してくるケースは少なくありません。

一つは、「錯誤」です。退職しなくてもよいのに、退職しなければならないと勘違いして退職届を出してしまったケースです。その事情によって撤回が認められることがあります。

次に「心裡留保」があります。退職する意思はないのに、反省を示すために退職願を出したら受理されてしまったというケースです。事情によっては撤回が認められることがあります。特に、上司が反省を示すために必要だなどと誘導したときは撤回を認められる可能性が高くなるようです。

また、強要されたり、騙されたりして意思に反して退職願を出したケースは、強要などの事実が認められれば撤回が認められるでしょう。

退職日の変更

転職先から早めの就業を求められている、雇用保険の基本手当を早く受給したい、などの理由から、従業員が退職願に記した退職日よりも早く退職したいと申し出ることがあります。逆に、転職や起業に時間がかかることになって退職願の退職日よりも遅く退職したいと申し出ることがあります。

いずれの場合も、退職の撤回と同様に、退職が確定している場合には、こうした従業員からの要求に応じる必要はありません。会社がこれに応じることは自由です。応じる場合は、口頭で処理せず、退職願の出し直しなどの文書による手続きをしておきましょう。


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