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賃金

通勤手当について

Last Updated on 2023年4月11日 by

通勤手当とは

通勤手当とは、通勤の費用の全部または一部を会社が負担する制度です。

法律上は会社に通勤手当の支給を義務付ける規定はありませんが、多くの会社で通勤手当を支払っています。

法律上の定めは無い手当なので、上限の設定、通勤距離や通勤手段ごとの支給額の違いなどは会社が就業規則等で決めることができます。

清算のルールを明確にする

交通費の値上がりや通勤手段の変更があったときのルールを就業規則等で明確にしておきましょう。

□ 給与計算期間の途中で変更があったときは、日単位で清算するか月単位で清算するか
□ 申請の遅延があったときのさかのぼり期間の限度を決めておくか

通勤手当の清算は支給額増加だけではありません。経路の変更等により過剰に支払っていたときの清算も考慮して決めなければなりません。

通勤手当の非課税枠

通勤手当には、一定金額までは所得税がかかりません。

バス・電車等、有料道路を利用する人に支給する通勤手当又は定期乗車券に対する通勤手当は、1ヶ月当たりの合理的な運賃等の額とされていて、150,000円までが非課税です。

自家用車その他の交通用具を使用して通勤している人に支給する通勤手当は、次の距離数に対応する金額までが非課税です。

通勤距離の片道が非課税枠
55km以上31,600円
45km以上55km未満28,000円
35km以上45km未満24,400円
25km以上35km未満18,700円
15km以上25km未満12,900円
10km以上15km未満7,100円
2km以上10km未満4,200円
2km未満全額課税
平成28年1月1日以後

交通機関、有料道路を利用するほか、自家用車等の交通用具も使用している場合は、合計額を計算し、限度額の150,000円までの分が非課税です。

取扱いがときどき変わるので、念のため、国税庁のホームページを確認して下さい。

なお、この通勤手当を非課税枠をそのまま通勤手当として支給している会社が多くみられますが、枠を超えた通勤手当を支給しても全く問題ありません。給与計算の際に、課税部分があれば課税すればよいだけです。

社会保険等の扱い

社会保険や労働保険では所得税とは異なり、通勤手当の全額を保険料の計算の基礎に算入しなければなりません。

割増賃金の対象から除外できる

通勤手当は、割増賃金の計算上は給料から除外できます。

この場合の通勤費の定義は「労働者が職場まで通勤する距離に応じて定められる金銭あるいはその交通費実費」です。「距離に応じて」ですから、定額で支給する通勤手当は、名称が通勤手当であっても割増賃金の対象から除外できません。

また、所得税の計算上は金額によって非課税・課税の別がありますが、割増賃金の場合は、「距離に応じて」支給されているものであれば、金額に制限がありません。

定期券の交付

通勤手当も、労働の対価として支払われるものですから、労働基準法上の賃金であり、当然、通貨払いの原則の適用を受けるので、現金で(給料に含めて)支払うのが原則です。

通勤手当の支給にかえて会社が定期券を購入して従業員に交付している会社もあります。非課税の枠は、定期券で支給しても同じです。

なお、定期券の支給は現物支給ですから「労働協約が必要」です。「労働者の過半数を代表する者との協定」ではなく「労働協約」です。労働組合がない会社は定期券の現物支給はできません。

通勤手当の日割り支給

通勤手当の日割り支給は、就業規則または賃金規程に「出勤した日のみ通勤手当を支給する」旨の規定を定めたときに有効になります。

この規定があれば、欠勤だけでなく有給休暇等の法定休暇・休業によって出勤しない日の分の通勤手当を控除できます。

その旨の定めが就業規則に無い場合は、休みを取った日の分の通勤手当を一方的にカットすることはできません。

通勤手当の規定の例

通勤手当の支給については、法定の事項ではないので、通勤手当の額や支給条件などは会社によって自由に設計することができます。

通勤手当|就業規則

距離をごまかしたり、通勤手段をごまかして不正に受給するものが出ないように注意が必要です。

会社にとって、金銭的な損害よりもモラル低下が心配です。通勤経路図の提出などほんの少しの確認で不正が防止できます。

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