Last Updated on 2025年5月18日 by 勝
社会保険労務士: 田中社長、本日は先般お話しておりました、職場における熱中症対策の強化についてご説明させていただきます。
田中社長: ああ、山田先生。昨年の猛暑は本当に堪えましたからね。うちの従業員も何人か体調を崩しかけて何度も心配していました。
社会保険労務士: はい。近年、なぜか暑さが厳しくなっていることもあって、労働者の健康を守るための対策がより一層重要になっています。実は、来年2025年4月に安全衛生規則が改正されて、6月1日から施行されることになっています。
田中社長: そうなんですね。具体的にどのような点が変更になるんでしょうか?
社会保険労務士: 大きく変わるのは、一定の高温環境下での作業に対する事業者の義務が明確化された点です。具体的には、WBGT(湿球黒球温度)が28度以上、または気温が31度以上の環境下で、継続して1時間以上、あるいは1日あたり4時間を超える作業が対象となります。
田中社長: WBGTですか。あまり聞き慣れない言葉ですが、気温とは違うんですね。
社会保険労務士: その通りです。WBGTは、気温、湿度、輻射熱、風速を取り入れた暑さの指標で、より熱中症のリスクを正確に評価できるとされています。
田中社長: なるほど。それで、具体的にどのような対策を講じる必要があるんですか?
社会保険労務士: 主に二つの柱があります。一つ目は、作業者が熱中症の兆候を報告するための体制を整えることです。例えば、「熱中症の自覚症状がある作業者」や「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」が、誰に、どのように連絡すれば良いのかを明確にして、全作業員に周知する必要があります。連絡先や担当者を事業場ごとに定めていただくことになります。
田中社長: 報告体制の整備ですね。確かに、誰に言えばいいか分からなければ、手遅れになる可能性もありますからね。
社会保険労務士: はい。そして二つ目は、熱中症のリスクがある作業を行う際の具体的な対策です。具体的には、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察や処置を受けさせることが義務付けられます。
田中社長: 作業からの離脱や冷却は当然だと思いますが、医師の診察や処置まで事業者が責任を持つ必要があるんですね。
社会保険労務士: その通りです。また、事業場内での緊急連絡網、救急搬送先の連絡先や所在地など、熱中症の症状が悪化するのを防ぐために必要な措置に関する内容や手順をあらかじめ定め、これも作業員に周知する必要があります。
田中社長: 緊急連絡網や搬送先の確認は、改めて徹底しないといけませんね。もし、これらの対策を怠った場合はどうなるんでしょうか?
社会保険労務士: 義務化された熱中症対策を怠った場合、罰則も設けられています。6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性もありますので、十分にご注意いただく必要があります。
田中社長: それは大変ですね。山田先生、色々とご説明いただきありがとうございます。早速、社内で検討を始め、必要な対策をしっかりと講じていきたいと思います。
会社事務入門>このページ