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株主総会

株主総会の招集手続き

Last Updated on 2025年6月17日 by

株主総会の招集手続きについて

株主総会を開催する際は、原則として株主へ招集通知を送る必要があります。しかし、会社のタイプや状況によって、そのルールにはいくつかの例外や細かい違いがあります。

招集通知が不要な場合もある

原則としては株主総会を開くためには必ず株主に通知しなければなりませんが、以下のような例外もあります。

株主全員の同意がある場合: 株主全員が総会の開催に同意し、かつ書面投票や電子投票を採用しない場合は、招集通知を出さずに株主総会を開催できます。全員が直接参加するため、通知は不要というわけです。

非公開会社で取締役会がない会社の場合: ここでいう非公開会社とは、全ての株式に譲渡制限が付いている会社を指します(株式が公開されている「公開会社」とは逆の意味です)。 もし貴社が非公開会社で、かつ取締役会を設置していない場合、書面投票や電子投票を採用しないのであれば、招集通知の方法に法的な制限はありません。そのため、メールや電話などで通知することも可能です。

招集通知を送る期限は会社によって違う

招集通知を発送する期限は、会社のタイプによって異なります。

    公開会社: 株主総会の2週間前までに招集通知を発送する必要があります。

    非公開会社(取締役会設置会社):

    書面投票や電子投票を採用する場合: 総会の2週間前までに通知を発送します。

    書面投票や電子投票を採用しない場合: 総会の1週間前までに通知を発送します。

    非公開会社(取締役会非設置会社):

    書面投票や電子投票を採用する場合: 総会の2週間前までに通知を発送します。

    書面投票や電子投票を採用しない場合: 総会の1週間前までに通知を発送します(定款でさらに期間を短縮することも可能です)。

    期間の数え方について

    会社法では、招集通知の期間計算に「発信主義」を採用しています。これは「株主に通知が到達した日」ではなく、「会社が招集通知を発信した日」を基準とするという意味です。

    また、期間には「発信日」と「総会開催日」は含めません。例えば、株主総会が6月30日に開催される場合、2週間前であれば6月15日、1週間前であれば6月22日、またはそれ以前に招集通知を発送する必要があります。つまり、「発信日」と「総会開催日」の間に、規定の期間(2週間または1週間)がまるまる空いている必要がある、ということです。

    招集通知の形式と内容

    形式

    招集通知は、一部の例外を除き、書面で発送するか、株主の同意を得て電磁的方法(メールなど)で送ります。用紙のサイズや形状に法的な制約はありませんが、一般的にはA4用紙などで作成されます。

    記載事項

    株主総会の招集通知には、以下の情報を正確に記載する必要があります。

    発信日付: 招集通知を発信する日付を記載します。この発信日は、株主提案権の行使期限(原則として総会開催日の8週間前)を過ぎた日である必要があります。

    宛名: 「株主各位」と記載するのが一般的です。

    標題: 「第〇回定時株主総会招集ご通知」「第〇期定時株主総会招集ご通知」「臨時株主総会招集ご通知」など、総会の種類に応じて記載します。

    開催日時・場所: 株主総会がいつ、どこで開催されるかを明記します。

    議題・提出議案: 総会で話し合われる内容や、決議を求める議案を具体的に記載します。例えば、「利益処分案承認の件」「退任取締役に対する退職慰労金贈呈の件」などです。

    議案の「要領」記載が必要な事項

    特に重要な事項については、単に「議題」のタイトルだけでなく、その議案がどのような内容で、どのように決めようとしているのかを具体的に示す「議案の要領」を記載する必要があります。主な事項は以下の通りです。

    役員等の選任・報酬

    募集株式・募集新株予約権を引き受ける者の募集

    事業譲渡等

    定款の変更

    合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転など組織再編に関する事項

    アクセス情報: 総会開催場所の住所だけでなく、案内図や交通機関の案内を載せることで、株主が会場にスムーズにたどり着けるように配慮します。

    添付書類:

    取締役会設置会社: 取締役会の承認を受けた計算書類と事業報告を添付する必要があります。

    取締役会非設置会社: これらは添付不要です。

    議決権行使書を用いる場合: 株主総会参考書類を添付する必要があります。

    ウェブ開示制度の活用

    現在の会社法では、招集通知に記載する一部の事項を会社のウェブサイトに掲載し、そのアドレスを株主に通知することで、当該事項を株主に提供したものとみなす「ウェブ開示制度」があります。

    2021年3月1日施行の改正会社法により、原則として、上場会社に対しては招集通知以外の株主総会資料の電子提供が義務化されました(定款への定めが必要です)。上場会社以外の一般企業にとっては任意となりますが、こちらも定款に定めることで電子提供が可能になります。書面での資料提供を希望する株主に対しては、別途書面を交付する義務があります。これにより、郵送費用や印刷コストの削減、迅速な情報提供が可能になりました。

    議決権行使について

    議決権行使書

    株主総会に出席できない株主のために、書面で議決権を行使できる「議決権行使書」を送付する制度があります。

    株主数が1,000名以上の会社では、議決権行使書の採用が義務付けられています

    1,000名未満の会社でも、任意で書面投票制度を採用することができます。

    最近では、インターネットを用いて議決権行使を可能にする会社も増えています。その場合、議決権行使書の書面にIDやパスワードを記載して通知します。

    委任状

    株主は、代理人を通して議決権を行使することもできます。代理人が議決権を行使する際には、「委任状」が必要です。

    定款で代理人の資格を「株主に限定する」と定めている会社もあります。

    ただし、法人が株主で、その法人の従業員が代理人として出席する場合、その従業員が個人として株主である必要はありません。

    会社が株主に送付する委任状用紙で作成された委任状を提出するのが一般的ですが、株主が私的に作成した委任状であっても、会社が内容を確認できる場合は有効とされます。

    代理人が出席する場合、議決権行使書を持参するだけでは不十分で、委任状も必要となるのが一般的です。

    議決権の代理行使があった場合、会社は総会終了後3ヶ月間、委任状を本店に備え置かなければならず、株主からの閲覧・謄写請求に応じる必要があります。

    送付後にミスが見つかった場合

    招集通知や添付書類(計算書類、事業報告など)を発送した後に間違いに気づいた場合、会社のウェブサイトなどで修正内容を知らせることができます。ただし、そのためには、招集通知の段階で、修正があった場合の周知方法を記載しておく必要があります


    株主総会の招集手続きは、会社の規模や種類によって適用されるルールが異なります。貴社の状況に合わせて、適切な手続きを確実に踏むことが大切です。


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