会社が定める規程等を一貫したルールに基づいて適切に作成、制定、改正、周知、そして改廃・管理するために、規程作りのルールを規程にすることは非常に重要です。
規程等管理規程が必要な理由
規程等管理規程が必要な主な理由は、以下の通りです。
- 業務の標準化と効率化
- 社内ルール(規程)の作成・運用に関するプロセスを統一することで、各部門が独自の方法で規程を作成・管理することによる手間や非効率性を排除します。
- 最新版の規程がどれか、どこに保管されているかが明確になり、探す時間や誤った情報を使用するリスクを減らします。
- 法令遵守(コンプライアンス)とリスク管理の強化
- 規程の制定・改正プロセスに法務部門などのチェックを組み込むことで、法令や社会情勢の変化に合わせた内容になっているかを確実にし、法令違反のリスクを低減します。
- 全従業員への周知徹底のルールを定めることで、「ルールを知らなかった」という理由での規程違反やトラブルを未然に防ぎます。
- 内部統制システムの基盤となり、企業の健全な運営を支えます。
- 規程間の整合性の確保
- 多岐にわたる規程(例:就業規則、旅費規程、情報セキュリティ規程など)が、相互に矛盾しないように、階層や関係性を明確にします。
- 「上位の規程に反する下位の細則は無効」といった原則を定めることで、組織全体として一貫したルールを維持できます。
- 説明責任(アカウンタビリティ)の履行
- いつ、誰が、どのような手続きで規程を制定・変更したかという履歴(バージョン管理)を明確にすることで、社外の関係者(監査法人、当局など)や従業員に対し、企業としての公式なルールであることを客観的に説明できます。
規程等管理規程に盛り込むべき項目と説明
規程等管理規程に一般的に盛り込まれるべき主要な項目を列記し、それぞれについて説明します。
項目 | 説明 |
---|---|
目的 (第1条) | この規程を定める理由を明確にします。(例:規程類の体系化、適正な制定・改廃、管理、周知徹底を図り、業務の円滑な運営に資すること) |
定義・適用範囲 | この規程でいう「規程等」が具体的に何を指すかを定義します。適用する対象者(全従業員、役員など)や文書の範囲(規程、規則、要綱、マニュアルなど)を定めます。 |
規程等の体系・種類 | 社内規程の階層(ヒエラルキー)や種類を定め、他の規程との関係性(例:就業規則が上位、その下に細則やマニュアルが位置づけられるなど)を明確にします。 |
所管部署・責任者 | 規程等の作成・制定・改廃の責任を負う部署(例:総務部、人事部など)や管理責任者を明確にします。 |
制定・改廃の手続 | 新しい規程を制定、または既存の規程を改正・廃止する際の具体的なプロセスを定めます。以下の事項を含みます。 |
・起案:原案作成の担当部署、必要事項(改正理由、新旧対照表など) | |
・審査・承認:部門責任者、法務部門、経営層(取締役会など)のどの段階で審査・承認を得るか | |
・施行期日:いつから効力が発生するか | |
管理 | 制定された規程等の日常的な管理方法を定めます。 |
・文書管理:原本の保管場所、電子データの管理方法(ファイル名、フォルダ構造など) | |
・台帳管理:規程名、制定日、最新改定日、所管部署、履歴などを一覧で記録する「規程等管理台帳」の作成・維持に関するルール | |
・バージョン管理:改定履歴を明確にし、最新版を識別するためのルール(例:版数、改定記号など) | |
周知徹底 | 制定・改廃された規程等を、いかにして全従業員に知らせるかのルールを定めます。(例:社内イントラネットへの掲載、メール通知、紙文書での掲示、説明会の実施など) |
監査・見直し | 規程等が現状の業務や法規に合っているかを定期的にチェックし、必要に応じて見直すためのルールを定めます。(例:最低1年に1回の点検、法改正時の臨時見直しなど) |
その他 | 補足的な事項を定めます。(例:様式、付則、施行日など) |
用紙サイズと文体に関する提案
規程等管理規程に盛り込むべき、用紙サイズと文体に関する一つの提案を示します。
用紙サイズに関する提案
規程文書の作成・管理・印刷に関する標準を定めます。
項目 | 提案内容 | 理由と効果 |
標準用紙サイズ | A4(原則)とする。 | 企業で最も一般的に使用されるサイズであり、印刷・保管・ファイリングの際に統一性が保たれます。特別な理由(例:図面、掲示物)がある場合のみ、A3など他のサイズの使用を許可します。 |
印刷 | 片面印刷、または両面印刷のどちらかを標準として指定する。 | 用紙使用量や保管場所の節約(両面の場合)と、改訂時の差し替えや閲覧のしやすさ(片面の場合)を考慮し、組織の方針で統一します。 |
余白 | 上下左右の余白サイズ(例:上30mm、下25mm、左右25mm)を統一する。 | 統一的な見栄えを確保し、特に左側や上側の余白を広めに取ることで、ファイリング時の穴開けや製本に支障が出ないようにします。 |
文体・表現に関する提案
内容の正確な伝達と、規程文書としての権威・統一感を保つためのルールを定めます。
項目 | 提案内容 | 理由と効果 |
文体 | 「である」調(断定的な常体)を原則とする。 | 規程は企業が従業員に順守を求めるルールであり、断定的な文体を使用することで公式文書としての権威性とルールの明確性を高めます。 |
用語の統一 | 専門用語や略語(例:部門名、職名)の使用は、規程内で必ず定義し、それ以降は統一した表現を用いる。 | 読み手による解釈のブレを防ぎ、文書全体の一貫性を確保します。 |
数字の表記 | 原則としてアラビア数字(1, 2, 3…)を使用し、単位(例:円、時間)も統一する。 | 数量や日付などの情報の視認性と正確性を向上させます。 |
条文構成 | 「条」「項」「号」「細別」の順で構成することを標準とする。 | 法令文書と同じ体系を用いることで、規程間の参照や構造の把握を容易にし、論理的な構造を維持します。 |
フォント | 使用するフォント(例:明朝体、ゴシック体)とサイズ(例:本文10.5pt、見出し14pt)を統一する。 | 企業の文書としての統一的なイメージを確立し、可読性を確保します。 |
規程管理規程を定める
上述した、規程ごとの担当部門と決裁者、様式について文書化した規程管理規程を作成します。