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労働契約

降格させるときの注意点

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降格とは

降格とは、従業員を従来の役職より下位の役職にする人事発令です。正当な理由のない降格は、権利の濫用として無効になります。

降格には、懲戒処分としての降格と人事制度上の降格があります。このページでは、人事異動による降格について解説します。

懲戒処分による降格については次のページで解説しています。

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人事異動による降格

人事考課の結果や、職務遂行能力の不足、役職への適格性の欠如を理由として降格することは、原則として、使用者に裁量が認められています。

職能資格制度は、技能経験の積み重ねで職務遂行能力が上がっていくという制度で、いったん到達した職能資格は下がらない、というのが制度的前提です。

もし、職能資格制度において、一度は到達した職務遂行能力も、見直すことがあるとするのであれば、就業規則等に、その旨の規定がなければなりません。

問題のある降格

人事異動による降格であっても、権利濫用と認められる場合には無効となり、場合によっては不法行為と評価され損害賠償請求の対象になることがあります。

正当な権利行使に対抗する降格発令

妊娠、出産に伴う権利、例えば、育児休業の取得を契機とする降格は違法です。

(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
男女雇用機会均等法第9条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

e-Gov法令検索 2020/08/30

有給休暇の取得など、法律に定められた正当な権利行使を理由とする降格処分は、法律の権利行使を妨害すること自体が違法なので、当然に無効になります。

違法な降格発令は本人の円満な同意があっても違法とされます。

不当な動機がある降格発令

一般に、その人事発令が他の不当な動機、目的をもってなさる場合、例えば、退職に追い込むことを狙いに、実行するのであれば、人事権の濫用に該当します。

過度にダメージを与える降格発令

また、不当な動機がなかったとしても、その人事発令が、過酷なものであって、通常受忍すべき程度を著しく超えると判断されれば、人事権の濫用に該当する可能性が高くなります。

経済的な不利益が大きい降格発令

降格の結果であっても、減給する事は、重要な労働条件の不利益変更となるので、簡単に実施してはいけません。

まず、就業規則に人事考課の結果として降格があることと、それに伴なう減給がある旨の記載が必要です。その上で、給与規程などの定めに則って減給額を決めていくことになります。

尚、管理職から一般職への降格により役職手当が支給されなくなることについては、その降格そのものに問題がない限り、特に問題となることはありません。

病気を理由にした降格発令

病気を抱える従業員には配置転換などの負担軽減措置をとるべきです。これは、労働安全衛生法が求める安全配慮義務でもあります。責任を軽くするための役職の解任もその一つです。

しかし、本人への説明不足があると、無理やり降格されたというトラブルになることがあります。特にメンタル面での病気のときは、不安感も強くなっているので、コミュニケーションに気をつかう必要があります。

降格により減給になる場合

降格すれば結果的に減収になってしまうことが多いと思われます。

人事異動による降格による降格には、労働基準法第91条の減給の限度額の基準は適用されません。

ただし、紛争になれば、降格に伴う減給が問題になる可能性があります。

役職手当の減少

例えば、課長であった者が総務部付に転じた場合は、その任にあるときだけ支給することが就業規則に明確であれば、課長手当が無くなっても問題ないと考えられます。

基本給の減少

通常、基本給は、任じられている役職とは関係ない要素で決められています。その会社の賃金規程にもよりますが、降格の結果として基本給を減額させれば、労働条件の不利益変更に該当する可能性が髙いでしょう。

基本的には、たとえ労働者に不利益な変更であっても、合意があれば変更できますが、「対等の立場における合意」である必要があるのでハードルは高いです。

(労働契約の原則)
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

e-Gov法令検索 2020/08/30

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