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取締役と監査役

役員退職金の決め方

Last Updated on 2023年10月11日 by

取締役の退職慰労金

役員退職金は役員退職慰労金ともいいます。役員退職金は、取締役や監査役などの役員が退任したとき、又は死亡したときに、従業員の退職金と同様の意味で支払う役員報酬の一つです。

中小企業では、流通性のない株式に多額の相続税がかかることがあり、相続税の原資として現金が必要になることから、オーナー社長の場合は、会社がかける生命保険とセットにした退職慰労金規程を定めるのが一般的です。

株主総会の決議が必要

役員退職慰労金を支給するには、株主総会の決議(普通決議)が必要です。その際、一般的には金額を示さず、「内規に従い、具体的金額、時期、支払い方法などを取締役会に一任」すると決議します。そのうえで、取締役会が「役員退職金規程」や前例に則って金額を算出します。

いくら支給するか

国税庁は、役員に支給する退職金の損金算入について「支給した退職金の額が、その役員が法人の業務に従事した期間や退職の事情、類似した法人の退職金の支給状況に照らして相当であると認められる金額を超える」かどうかという基準を示しています。

算定の仕方が合理的で、著しく世間通念を超えるものでない限り、通常は損金経理できます。

「算定の仕方が合理的」というのは、内規などで算定方式などを定めていることをいいます。「著しく世間通念を超えるものでない」というのは、同業他社と比較して立とうかどうかをいいますが、企業規模によっても判断が違ってきます。

一般的な計算式

最初に役員に就任した日から退任する日までの期間を通算して、最後の報酬月額をかける算出方法が一般的です。

退職時の報酬月額 × 通算役員在任年数 × 役位係数(最終役位)

各役位の在任期間の長短が無視されるので厳密さに欠けますが、計算しやすいため、広く採用されています。

在任期間を累積する計算式

社長になる場合、通常は取締役や専務などを経て社長に就任します。歴任した役位ごとに退職金を計算し、その合計を退職金とする計算方法です。


平取締役在任期間 〇年 × 平取締役としての最後の報酬月額 × 平取締役の役位係数
専務取締役在任期間 〇年 × 専務取締役としての最後の報酬月額 × 専務の役位係数
社長在任期間 〇年 × 社長としての最後の報酬月額 × 社長の役位係数

それぞれの金額を合計して退職慰労金の基礎金額とします。

報酬月額を実績ではなく現在の水準にする方法もあります。例えば、平取締役在任期間については、現在の平取締役の平均報酬月額を用います。この方法だと、一般的には若干支給額が多くなります。

役位別に定額を決める計算式

報酬に実績値を使わず、役位別に定額を決める算出方法です。これにも累積方式と通算方式があります。通算方式の場合は、つぎの算式になります。

定額(最終役位)× 通算役員在任年数 × 役位係数(最終役位)

シミュレーション

計算式を安易に決めて、いざとなったときに実情に合わないのに気づき、慌ててて内規を変更すると、税金逃れのために形だけ作ったとみなされて、損金算入が否認されることもあり得ます。

実際問題としては支給したい金額があるのが自然です。内規を決めるときにはシミュレーションを重ねて、納得性のある金額が導き出されるかどうか慎重に検討しましょう。

以下はシミュレーションの手順です。

退任時の月額報酬(役員賞与はいれません)と在任年数は予測によるものですが、何歳までやるかという見通しがたてばほぼ予測が立つでしょう。

最初は係数を「1」として試算してみましょう。

次に、設定した支給額になるように係数を動かしてみます。役位係数は功績倍率ともいいます。取締役の役位によって加算することです。代表取締役の場合で3倍程度、平取締役の場合で1~2倍程度までの水準に設定されているようです。

役位別の係数だけで想定範囲になれば良いのですが、会社の成長に大きく貢献した役員については、上記の計算額に加えて加算金が上乗せすることもめずらしくありません。上記の式による役員退職慰労金に30%~50%程度加算することが多いようです。

逆に、損害を与えたとみなされる場合には、内規に定めた額より減額し、又は不支給とする場合もあることを定めておきます。

監査役の退職慰労金

監査役の場合も、基本的には取締役に支給する場合と同様ですが、決め方に若干異なるところがあります。

監査役の退職慰労金(報酬等)は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定めことになっています。

取締役の場合は、金額を示さず「内規に従い、具体的金額、時期、支払い方法などを取締役会に一任」すると決議することが多いです。監査役の場合だと「監査役会にに一任」または「監査役の協議に一任」ということになります。監査役は独立性が認められているので、取締役会に一任させることはできません。

しかし、中小企業には監査役会が無く、しかも一人監査役の会社が多いので、結果的に一人に金額等を任せることになってしまいます。

これだと不都合があるということで、一人監査役の会社では、株主総会で退職慰労金の額等の詳細を決議することが多いようです。

弔慰金

役員が在任中に死亡したときには、退職慰労金とは別枠で弔慰金を支払う会社もあります。多めの香典のようなものですから、多額に過ぎなければ損金経理が認められます。ただし、内規等で退職慰労金との区分を明確にしておく必要があります。


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