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経理の事務

売掛金管理

Last Updated on 2021年7月28日 by

売掛金管理の重要性

「取引上の関係からあまり強い請求もできない」と、ズルズルと売掛金が膨らんでいませんか?きびしい環境の中でそんなことでは会社のお先が見えてきます。

これからは、お客様はみな神様という考えを捨てて、お客様を良い神様と悪い神様に分けて対処しなければなりません。儲けをいただけるお客様が良い神様であって、損をしょわせるお客様は、同じ神様でも貧乏神か疫病神です。

営業の現場から、「強く言うと取引を切られる」という声が上がってきたら、そういう取引先はわが社に儲けをもたらさないと割り切り、取引を縮小中止するチャンスだと捉えましょう。穏やかにスマートに手を切ってしまいましょう。

取引条件の管理

さて、良い取引先でも、こちらがルーズにしていると福の神が逃げてしまいます。

請求もれが発生しないように、しっかりと管理しましょう。

請求もれが発生する理由の一つは、取引条件がきちんと管理されていないことです。取引条件を「稟議」で決定する社内の仕組みをつくり、承認された稟議書をファイルしておきましょう。

請求書の管理

売掛金の全てが請求書が発行されている。そして、未請求についてはその理由が、誰が見ても明確に分かるように整理されている。この二つが肝心です。

請求事務のチェック

取引先ごとに、次のような表を作成します。

取引先名未請求請求済合計売掛残差額
 (A)(B)(A+B)(C)(C−(A+B))
 〇〇(株)     
      

差額が発生した場合は、徹底して調べましょう。請求間違いか相手のミスにより少なく入金になっていたり、紛失した請求書があるかもしれません。

最初は全ての取引先をこの表に記載して下さい。慣れてきたら3分の1のサンプル調査にして、3ヶ月で一巡するようにしても大丈夫でしょう。

滞留債権の洗い出し

次に、全ての請求書と未請求分を洗い出し、「最近の売上分」「二ヶ月前の売上分」「三ヶ月前の売上分」「それ以上古い売上分」に分類します。

取引条件によるので一概には言えないですが、「二ヶ月前の売上分」「三ヶ月前の売上分」はグレーゾーン売掛金、「それ以上古い売上分」は滞留売掛金として、そろぞれのリストを作成します。

このリストに基づき営業と経理の責任者が関与し、回収計画を立て、毎週、進捗状況をチェックしましょう。月に一回では遅すぎます。

売掛金が滞ってしまった場合、そのまま放っておくと時効で消滅してしまうことがあります。一般な債権、つまり貸付金に対する時効期間は10年ですが、商行為に基づく債権の時効は期間は5年間となっています。回収が滞って督促していなければ、5年で売掛金の権利は消滅してしまいます。

残高確認書の送付

公認会計士や監査法人が売掛金の監査を行うときは、主な取引先に対して残高確認書を直接送付し、会社ではなく公認会計士宛に返信してもらいます。その上で、差額について調査するのです。

会計士の監査が無い会社でここまでやるのは難しいかもしれませんが、可能な限り実施することをお薦めします。

残高確認書の送付が困難な相手先には、上司が挨拶を兼ねて訪問し、口頭で確認するくらいはしなければなりません。担当者任せはいけません。場合によっては、相手がすでに支払っているのに担当者が着服している場合もあるからです。

回収体制の強化が必要

事務的な不手際による請求洩れが見つかった場合、古いものだからと簡単にあきらめずに、相手先に事情を話し、粘り強く回収の努力をする必要があります。簡単に回収をあきらめることは、社内のモラル低下にもつながります。

逆に、明らかに回収不能な売掛金については、貸倒損失処理や債権放棄を税理士などの専門家と相談のうえ、早期に解消しましょう。

売掛金の回収不能が、人為的なミスや怠慢で発生したときには、責任の追求が必要です。会社に損害が発生しているのに、あいまいな処置で終わってはモラルの低下を招きます。だれが悪かったのか公平に判断して始末書、譴責くらいの処分は必要です。当然、管理の責任は会社にもあります。担当者の処分より重い、減給処分などを社長はじめ役員も自らに課す必要があるのではないでしょうか。

着服などの不正行為がからむ場合には、損害賠償を請求することもあります。ただし、会社の管理がルーズであった場合には、会社の責任と過失相殺されることもあるようです

売掛金管理に一番大事なのは経営者の姿勢です。代金が回収までが仕事だという認識を社内に徹底し、一部の取引先を失ってもよいという毅然とした姿勢で取り組まないと売掛金管理は成功しません。

与信管理との関係

このページでいう売掛金管理は、あくまでも事務がしっかりおこなわれているか、営業が回収に努力しているかの管理です。請求がしっかり行われていても、相手の倒産などで回収できなくなる場合もあります。それに対処するのが与信管理です。売掛金管理と与信管理は車の両輪にたとえられます。

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