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賃金

従業員の給与を差し押さえられたら

Last Updated on 2022年2月17日 by

差し押さえ命令

突然、裁判所から「債権差押通知書」が届くことがあります。読むと「従業員の給与を差し押さえる」ことが書いてあります。

最初だと驚きますが、法律にもとづく裁判所の手続きなので適切に対応しなければなりません。

まず、差押命令の仕組みを理解しましょう。

金融業者などに返済を怠った場合、債権者は裁判所に「支払督促」し、債務者から異議申立てが無ければ、仮執行宣言の申立て手続きがされ、給与を含む財産の差し押さえに進みます。

裁判所から差押命令が送られてきたときは、会社はそれを放置することはできません。

まず、本人にこのような通知がきたことを知らせます。本人が給料からの返済に抵抗したとしても、それは本人が裁判所や債権者に手続きするべきことで、会社としては裁判所の命令に従わなければなりません。

なお、

裁判所等からではなく、消費者金融等から会社に電話や訪問で賃金からの天引きを求められても支払ってはいけません。そのような取り立ては通常違法ですし、応じれば、賃金の直接払いの原則に違反するので、会社が従業員に賠償しなければならなくなります。

直接払いの例外

労働基準法第24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とあります。給与から何らかの控除をするのは原則として違法です。

民事訴訟の手続きにもとづく差し押さえは、指定の相手に払っても直接払いの原則に反しません。

また、裁判所からの通知で差し引くのであれば、賃金控除の労使協定は不要です。

差し押えの限度額

差押えできる限度額が民事執行法で定められています。

賃金の4分の3に相当する部分は社員の生活に必要な費用として、差押えが禁止されています。つまり、4分の1までが、差押えの対象になります。

ただし、これは債務者の保護のために設けられた規定なので、賃金の4分の3の金額が33万円を超える場合には、33万円を超える部分については全額差押えが可能です。

仮に、100万円の借金があり、仮に、給料の金額が24万円であれば、1ヶ月に差し押さえができる金額は6万円です。この6万円を100万円に達するまで、毎月、差し引いて、債権者に支払うことになります。

ここでいう給料とは、総支給額から所得税や住民税、社会保険料、通勤手当を控除した後の金額です。貸付金返済や積立金等の私的な契約に基づくものは控除できません。

賞与や退職金も差押えの対象となります。賞与については賃金と同じ取扱いです。退職金については、その金額に関係なく、4分の1に相当する部分が差押えの対象です。

なお、「債権差押通知」には、滞納の総額が記載されていますが、毎月の差し押さえ金額は指定されていません。会社が毎月給与からの差し押さえ可能額を算出し、従業員の給与や賞与から継続して差し押さえを行う必要があります。

国税徴収法や地方税法により差し押さえ可能額は別な算出基準によります。通知書に記載してあります。

陳述書

差押命令と一緒に陳述書が同封されていることがあります。この場合は届いた日から2週間以内に回答をしなければなりません。

内容は、賃金債権の有無や種類、金額、差押えに応じる意思の有無等です。

もしも、差押えより優先して相殺すべき債権がある場合は、その主張をすることができます。ただし、債権者がこれを認めないときは、裁判所に取立訴訟を提起しなければなりません。

供託

差押え命令が1件の場合は、会社は差し押さえられた金額を直接債権者に支払うことができます。法務局に供託することもできます。

差押え命令が2件以上になると、直接債権者に支払うことはできません。この場合は供託しなければなりません。

供託は法務局に行います。慣れない場合は、費用はかかりますが、弁護士や司法書士にお願いするのがよいでしょう。

会社の債権との関係

会社が従業員に給料の前貸しや住宅資金の貸付をしている場合があります。この場合、従業員との貸借契約の内容によっては金融業者等の差し押さえが優先します。

会社の債権を優先させるためには、貸付金契約書等に「労働者の賃金や退職金について差押えを受けたときは労働者は会社に対して期間の利益を失い全額一括変換義務を負い、直ちに給料や退職金で相殺して支払う」旨の条項が必要です。

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