Last Updated on 2020年7月24日 by 勝
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直接払いの例外
賃金は、原則として本人に直接支払わなけばなりませんが、賃金が国税徴収法の規定に基づいて差し押さえられたときや、民事訴訟の手続きで差押えられたときは、それぞれ指定の相手に払っても直接払いの原則に反しません。
差し押さえ命令
金融業者などに返済を怠った場合、債権者は裁判所に「支払督促」し、債務者から異議申立てが無ければ、仮執行宣言の申立て手続きがされ、給与を含む財産の差し押さえに進みます。
消費者金融等から会社に電話や訪問で賃金からの天引きを求められても支払ってはいけません。そのような取り立ては通常違法ですし、応じれば会社も、賃金の直接払いの原則に違反するので、従業員に賠償しなければならなくなります。
裁判所から差押命令が送られきたときは、会社はそれを放置することはできません。本人が給料からの返済に抵抗するとしても、それは本人が裁判所に手続きするべきことで、会社としては裁判所の命令に従わなければなりません。
税務署や裁判所の命令で差し引くのであれば、賃金控除の労使協定は不要です。
差し押えの限度額
差押えできる限度額が民事執行法で定められています。
賃金の4分の3に相当する部分は社員の生活に必要な費用として、差押えが禁止されています。つまり、4分の1までが、差押えの対象になります。
ただし、4分の3の金額が33万円を超える場合には、超える分の全額が差押の対象となります。
仮に、100万円の借金があるとし、仮に、税金等を控除した後の給料の金額が24万円であれば、1ヶ月に差し押さえができる金額は6万円です。この6万円を100万円に達するまで、毎月、差し引いて、債権者に支払うことになります。
ここでいう賃金とは、所得税や住民税、社会保険料、通勤手当を控除した後の金額です。賃金から天引きされていても貸付金返済や積立金等の私的な契約に基づくものは控除できません。
賞与や退職金も差押えの対象となります。賞与については賃金と同じ取扱いです。退職金については、その金額に関係なく、4分の1に相当する部分が差押えの対象です。
陳述書
差押命令と一緒に陳述書が同封されていることがあります。この場合は届いた日から2週間以内に回答をしなければなりません。
内容は、賃金債権の有無や種類、金額、差押えに応じる意思の有無等です。
もしも、差押えより優先して相殺すべき債権がある場合は、その主張をすることができます。ただし、債権者がこれを認めないときは、裁判所に取立訴訟を提起しなければなりません。
供託
差押え命令が1件の場合は、会社は差し押さえられた金額を直接債権者に支払うことができます。法務局に供託することもできます。
差押え命令が2件以上になり競合する場合は、直接債権者に支払うことはできません。この場合は供託しなければなりません。
供託の場合は法務局に行います。慣れない場合は、費用はかかりますが、弁護士や司法書士にお願いするのがよいでしょう。