カテゴリー: 育児介護

  • 育児休業は、夫婦同時に1年間継続してとることはできますか?

    女性が育児休業をとっているとき、同時に、その夫も育児休業をとることができるそうですが、例えば、出産後から子が1歳になるまでずっと夫婦で育児休業をとることはできますか?

    夫婦が育児休業を同時に1年間継続してとることは可能です。以下に解説します。

    夫婦共に育児休業を取得できる

    原則として子が1歳になるまで

    育児休業は、原則として子供が1歳の誕生日を迎える前日まで取得できます。これは男女ともに同じです。

    パパ・ママ育休プラスで延長

    両親がともに育児休業を取得する場合、育児休業を取得できる期間が子が1歳2か月に達するまでに延長されます。

    これは、父母それぞれが最長1年間(母親の場合は産後休業期間を含む)休業できるというもので、夫婦で育児を分担し、交代で休業することで切れ目なく育児に専念できるようにする制度です。

    出生時育児休業(産後パパ育休)

    これは通常の育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得できる制度です。分割して2回取得することも可能です。女性の産後休業期間に相当するものです。

    最長2歳まで延長

    保育園に申し込みをしているが入所できないなどの特定の理由がある場合は、子が1歳6か月まで、さらに2歳まで育児休業を延長することができます。この場合も、夫婦ともに延長可能です。

    夫婦共に育児休業給付金を受給できる

    両親ともに育児休業を取得し、それぞれの受給要件を満たしていれば、夫婦それぞれが、同一の子について、育児休業給付金を受給することができます。片方が給付金を受給していることが、もう一方の給付金額に影響を与えることはありません。

    現状の取得状況

    厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、育児休業の取得率は年々増加傾向にありますが、まだ男女間で大きな差があります。

    女性の育児休業取得率は約8割ですが、男性の育児休業取得率は2023年度に30.1%となり、初めて3割を超えた状況です。

    夫婦ともに育児休業を取得している家庭の正確なデータは公表されていませんが、男性の育児休業取得率が上がっていることから、夫婦ともに育児休業を取得する家庭は以前より増えていると考えられます。しかし、男性の取得期間が「1か月未満」が約6割を占めるなど、依然として短期間の取得が多いのが現状です。

    制度としては夫婦同時に休業でき、給付金も受け取れる環境が整ってきていますが、実際の取得には、職場の雰囲気や経済的な理由などが影響しているとされています。


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  • 育児休業中に英会話教室に行ったり旅行したりしてもよいですか?

    まもなく出産を控えています。育児休業制度を利用して会社を休みますが、同居している親が最大限面倒をみてくれると言っています。私としてはせっかくの機会なので、英会話教室に通ったり、友達と旅行したりしようと思うのですが、法律や就業規則に違反しているか心配です。どういう点に気をつければよいでしょうか?

    まず結論から申し上げますと、育児休業中に英会話教室に通ったり、旅行したりすること自体は、原則として法律や会社の就業規則に違反するものではありません。

    育児休業中の活動制限はない

    育児休業は、育児を行うために取得できる休業であり、その目的は「子の養育」です。しかし、育児・介護休業法には、育児休業中に育児以外の活動を行うことを禁止する規定はありません(育児休業中の就業を除く)。基本的には自由に利用することができます。

    ただし、いくつか注意すべき点がありますので、以下にご説明します。

    会社との関係

    就業規則

    多くの会社では、育児休業に関する独自の規定を設けています。特に、「育児休業中の過ごし方に関する規定」や「副業に関する規定」について確認することをお勧めします。

    英会話教室に通うことや旅行をすることは副業にはあたりませんが、例えば、旅行中に動画配信などの副業をしてしまうと、会社の副業禁止規定に抵触する可能性があります。

    上司や同僚との関係

    育児休業は「子の養育」を目的とするものです。したがって、あまりにも育児とはかけ離れた活動に終始していると、会社によっては問題視される可能性があります。

    会社の同僚や上司の中には、「育児休業中に旅行ばかりしていた」と知れば、快く思わない人もいるかもしれません。円満な人間関係を維持するためにも、復帰後のことを見据えて行動することが大切です。

    もちろん、会社から「育児をせずに遊んでいる」といった理由で不当な扱いを受けた場合は、ハラスメントに該当する可能性があります。しかし、そうしたトラブルを避けるためにも、バランスの取れた行動を心がけることが賢明です。

    育児休業給付金

    育児休業期間中には、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。この給付金は、「育児のために休業している」ことを前提に支給されるものです。

    英会話教室や旅行は、「育児のために休業している」範囲かどうか心配かもしれませんが、英会話教室や旅行に行ったとしても、育児休業給付金に影響することはありません。

    まとめ

    リフレッシュや自己研鑽も育児休業の有効な利用法の一つです。ぜひ、英会話や旅行を楽しんで、充実した時間を過ごしてください。


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  • 育児休業中に副業をしてもよいですか?

    制度上の制限

    育児・介護休業法は、育児休業中に他社で就労したり、在宅副業をすることを想定していません。育児休業は、育児に専念するために休業する制度だからです。

    本来勤務している会社で育児休業中に働くことについては、育児介護休業法に時間制限等が設けられていますが、他社でパート・アルバイトをすることや在宅副業することについては、明確な禁止規定はありません。

    また、育児休業給付金については、本来勤務している会社から収入があれば、その額によっては育児休業給付金が減額・停止されます。他社でパート・アルバイトをした場合も、同様の扱いを受けることになっています。

    育児休業給付金を不正受給すると、給付金の返還を求められるだけでなく、厳しいペナルティが課される可能性があります。

    育児休業中の就業日数制限

    労使の話し合いにより合意すれば、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することができます。その場合、就労が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されます。

    収入による育児休業給付金の減額・停止

    1か月の収入が「休業開始前の賃金月額の13%以下」の場合:減額はありません。

    1か月の収入が「休業開始前の賃金月額の13%を超え、80%未満」の場合:(休業開始前の賃金月額の80%)− 収入額 が支給額となります。

    1か月の収入が「休業開始前の賃金月額の80%以上」の場合:給付金は支給停止となります。

    パート・アルバイト

    育児休業給付金

    育児休業給付金は、育児休業期間中に雇用している企業から賃金が支払われたときに、支払われた金額に応じて減額される仕組みになっています。ただし、この減額措置は、雇用保険の被保険者を雇用している企業、つまり、もともと働いていた企業からの賃金に適用されます。自社以外の企業で一時的・臨時的に副業していたとしても、育児休業給付金が減額されることはありません。

    一方、育児休業給付金の支給要件には、「1支給単位期間の就業日数が10日以下(または就業時間数が80時間以下)」という要件があります。ここでいう就労日数や時間数には、育児休業を取得している企業以外の就労、つまり、パート・アルバイトにより働いた就労日数や時間数もカウントされます。育児休業給付金の申請書に「就業日数」や「就業時間数」を記載する欄があるので、副業により働いた日数や時間数も正しく記載して、申告しなければなりません。

    パート・アルバイトで働く日数や時間数が多い場合、育児休業給付金の受給要件から外れて、受給できなくなる可能性があります。また、毎週特定の曜日に勤務したり、一定の時間数決まって働いていたりすると、恒常的・定期的に就労したとみなされ、育児休業をしていると認められないことがあります。こうした場合は、育児休業給付金が支給されない可能性があるので、注意が必要です。

    社会保険料

    育児休業期間中は健康保険・厚生年金保険の保険料の免除が受けられますが、被保険者であることには変わりません。したがって、パート・アルバイトとして他社で社会保険に加入するほどの働き方をすれば、健康保険・厚生年金保険の保険料に影響する可能性があります。

    就業規則

    育児休業中であっても、会社の従業員であることに変わりはありません。育児休業中にパート勤務やパート・アルバイトをする際は、まず会社の就業規則を確認しましょう。規則違反は懲戒処分の対象となる可能性もあります。

    在宅副業

    育児休業給付金

    育児休業給付金との関連では、前項同様に、育児休業給付金の減額措置は、雇用保険の被保険者を雇用している企業、つまり、もともと働いていた企業からの賃金に適用されます。そのため、在宅副業で収入を得ても、育児休業給付金が減額されることはありません。

    ただし、「1支給単位期間の就業日数が10日以下(または就業時間数が80時間以下)」という要件は考慮する必要があります。パート・アルバイトと違って明確な労働時間を算定できない要素はありますが、基本的には、その在宅副業でどのくらいの日数、時間働いたかを自主的に申告する必要があると考えられます。

    就業規則

    在宅での副業は、実態を会社が把握しにくいため、問題とならないこともあります。しかし、会社の就業規則に副業禁止・制限規定がある場合には、なんらかの事情で会社に副業が知れたときは問題になる可能性があります。

    まとめ

    項目制限内容
    法律(育児・介護休業法)臨時的・一時的な就労のみ可。1か月の就労日数が10日(または80時間)を超えると育児休業とは認められない。
    就業規則会社によって副業が禁止されている場合がある。育児休業中であっても就業規則は適用されるため、事前に確認が必要。
    育児休業給付金収入額に応じて減額または支給停止。1か月の収入が「休業開始前の賃金月額の80%以上」で支給停止。就労日数が10日(または80時間)を超えると支給停止。

    基本的には、「育児に専念するための休業」という本来の趣旨から逸脱しない範囲の副業にとどめましょう。


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  • 介護休業の申請があったときに担当者がやるべきことを逐一解説

    中小企業の総務担当者です。これまで、育児休業をとる者は何人もいましたが、この度、初めて、介護休業の申込みがありました。介護休業規程はあるのですが、どういう順序で手を付けるべきかわからない状態です。アドバイスをいただけますか。

    ご苦労様です。育児休業とは異なる手続きや注意点があり、戸惑われるのは当然のことと存じます。以下に、介護休業の申込みがあった際の、会社として行うべきことを初歩から順を追ってご説明します。

    介護休業に会社が行うこと

    担当者が行う介護休業手続きは、以下のポイントごとに把握してください。

    1. 介護休業申出書の受理
    2. 休業期間の確認・調整
    3. 介護休業給付金の手続き
    4. 休業中の労働条件(給与、退職金など)の確認
    5. 社内関係部署への周知と業務引継ぎ
    6. 休業終了後の復職支援

    一つずつ丁寧に手続きを進めていけば、問題なく対応できるはずです。

    ステップ1:介護休業申出書の受理

    まず、従業員から提出された「介護休業申出書」を受理します。その際、以下の点を確認してください。

    • 申出書の書式: 会社が定めた書式で提出されているか。
    • 申出日: 申出書を提出した日付。休業開始予定日の2週間前までに書面等が提出されたか。遅れたことに正当な理由があり、かつ、会社の受け入れが可能であれば短縮可。
    • 氏名、所属: 申出を行った従業員の情報。
    • 労使協定による除外:労使協定を締結している場合に対象外となる労働者に該当していないか。
    • 有期雇用労働者の場合:取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
    • 対象家族の情報: 氏名、続柄、生年月日。介護休業の対象となる家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫に限られます。
    • 介護の状況: どのような介護が必要か。
    • 休業開始予定日と終了予定日: 休業期間が明記されているか。原則として、対象家族1人につき、通算93日まで取得可能です。3回まで分割して取得できます。
    • 押印(または署名): 申出書に本人の押印(または署名)があるか。

    ステップ2:休業期間の確認・調整

    従業員が希望する休業期間が、介護休業規程や法律の範囲内であるかを確認します。

    • 休業期間の上限: 対象家族1人につき通算93日まで。
    • 申出の期限: 休業開始予定日の2週間前までに申出を受けるのが原則です。もし直前での申出であった場合でも、可能な限り対応を検討し、従業員と相談しながら開始日を調整します。

    休業期間の「分割取得」と「再度の取得」について意向を確認します。

    介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分割して取得できます。 育児休業は原則として休業開始日から終了日まで連続して取得するのが基本ですが、介護は育児と異なり、急な状況変化が起こりやすいものです。

    例えば、当初は「1週間だけ休む」つもりでも、家族の状況が悪化して追加の介護が必要になることも十分に考えられます。この「分割取得」ができることを伝えておけば、従業員の方は今後の介護プランを立てやすくなります。また、93日を使い切った後でも、対象家族の要介護状態が続く場合は、介護休暇(年間5日) を取得できる可能性も説明しましょう。

    また、以下の点についても従業員と確認・調整を行います。

    • 復職の意思: 休業終了後、復職する意思があるか。
    • 連絡体制: 休業期間中の連絡方法(メール、電話など)や、定期的な状況報告の有無。

    ステップ3:介護休業給付金の手続き

    育児休業給付金と同様に、介護休業の場合も雇用保険から給付金が支給されます。 休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。給付金の支給要件や金額は育児休業とは異なります。

    この給付金は自動的に支給されるものではなく、会社がハローワークに申請手続きを行う必要があります。もし、この給付金の存在を従業員が知らず、申請手続きが行われなければ、休業中の収入がゼロになってしまいます。従業員の方の生活を守るためにも、この給付金の制度について丁寧に説明し、必要書類を準備してもらう必要があります。

    ステップ4:休業中の労働条件の確認

    給与

    介護休業期間中は、原則として無給となります。会社の規程によっては、一部を支給する場合もあります。

    退職金

    休業期間を勤続年数に算入するかどうか退職金規程を確認します。

    賞与

    算定期間に休業期間が含まれる場合の取り扱いについて、賞与規程を確認します。

    社会保険料

    従業員が介護休業を取得している間、給与が支払われない場合でも、社会保険料は発生します。

    • 従業員負担分: 給与から天引きできないため、復職後にまとめて徴収したり、休業期間中に会社へ振り込んでもらうなど、事前に支払い方法を決めておく必要があります。
    • 会社負担分: 会社も通常通り保険料を負担しなければなりません。

    この点は、特に注意が必要です。給与がない上に、社会保険料の自己負担分を支払わなければならないことを忘れずに伝えなければなりません。

    一方で、雇用保険料については、給与が支払われない場合は発生しません。 これは、雇用保険料が給与額に保険料率をかけて算出されるためです。

    住民税

    住民税は無給でも毎月発生します。 住民税は、前年の所得に基づき6月〜翌年5月まで毎月支払う仕組みになっているからです。

    住民税も社会保険料と同様に、一旦会社が立て替えて、銀行振込や復帰後に徴収する方法もありますが、長期休職の場合は普通徴収に切り替えるのが一般的です。

    なお、いずれの方法にするかは従業員本人と相談しましょう。

    ステップ5:社内関係部署への周知と業務引継ぎ

    • 関係部署への周知: 直属の上司、人事担当者、経理担当者など、関係部署に介護休業を取得する旨、日数等を共有します。
    • 業務の引継ぎ: 従業員が休業に入る前に、担当業務の引継ぎをしっかり行ってもらいます。引継ぎリストを作成し、後任者がスムーズに業務を遂行できるようにサポートします。

    ステップ6:休業終了後の復職支援

    • 復職日の最終確認: 休業終了予定日が近づいたら、従業員と連絡を取り、復職日を最終確認します。
    • 延長の手続き:休業終了予定日の2週間前までに申し出ることで、1回の申出ごとの休業につき、1回に限り事由を問わず休業終了予定日を繰下げ変更できます。
    • 職場復帰のサポート: 復職後、スムーズに業務に戻れるように、休業中の変更点や情報共有を行い、無理のない範囲で業務を割り当てていきます。

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  • 「育児時短就業給付」で子育て社員の働き方をサポート!

    育児時短就業給付とは?

    育児時短就業給付は、2025年4月に新しく創設された給付金制度です。

    これは、育児休業給付金を受給していた従業員が、育児休業から職場に復帰した後、育児のために労働時間を短縮して働き続ける場合に支給されます。

    この制度の目的は、育児休業から復帰したものの、フルタイム勤務が難しい従業員の生活を経済的に支援し、育児と仕事の両立を後押しすることで、優秀な人材の離職を防ぐことにあります。従業員にとっては心強いサポートとなり、会社にとっては人材の定着に繋がる、大変重要な制度です。

    受給できる条件は?

    従業員が育児時短就業給付を受給するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

    ① 育児休業をしていたこと

    この給付は、育児休業給付金を受給できる育児休業をしていたことが前提となります。

    ② 育児休業を終了し、実際に会社に復帰したこと

    育児休業を終え、事業主に雇用されて働く状態にあることが必要です。

    ③ 育児のため所定労働時間を短縮していること

    育児休業開始前の所定労働時間よりも短縮された労働時間で勤務していることが条件です。

    各支給対象期間中に、1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月であることが必要です。

    ④ 各支給対象期間中に、育児休業終了前の事業主に雇用されていること

    引き続き、元の会社で雇用保険の被保険者として働いていることが必要です。

    ⑤ 子が2歳未満であること

    給付は、対象となる子が2歳に達するまで(2歳の誕生日の前々日まで)の期間が対象です。

    ⑥ 支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の100%未満であるこ

    育児時短就業開始前の賃金水準と比較して、賃金が低下している場合に支給対象となります。

    受給金額はいくら?

    育児時短就業給付の支給額は、以下の計算式で算出されます。

    1.支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合

    支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 10%

    2.支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満の場合

    支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 調整後の支給率

    調整後の支給率は、賃金の低下割合に応じて計算されます。

    いつからいつまで受給できるの?

    育児時短就業給付の支給期間は、原則として以下の通りです。

    支給開始日: 育児時短就業を開始した日の属する月

    支給終了日:

    対象となる子が2歳に達するまで(2歳の誕生日の前々日まで)

    または、短縮された労働時間での就業を終了した日の属する月

    つまり、育児休業が終了し、育児のために短縮した労働時間で働き始めた日から、原則として子が2歳になるまでが支給期間となります。

    手続きはどうすればいいの?

    育児時短就業給付の手続きは、原則として会社がハローワークに対して行います。従業員が直接ハローワークに行く必要はありません。

    人事担当者様が行う手続きの主な流れは以下の通りです。

    ① 従業員からの申請

    従業員が育児時短就業給付の受給を希望する場合、会社にその旨を申し出ます。

    ② 必要書類の準備

    会社がハローワークに提出するための書類を準備します。主な提出書類は以下の通りです。

    育児時短就業給付金支給申請書

    ハローワークから様式をダウンロードできます。

    従業員本人に記入・押印してもらう箇所もあります。

    賃金台帳や出勤簿(タイムカード等)

    短縮後の労働時間や賃金が確認できる書類です。

    育児休業開始前の賃金も確認できるものが必要です。

    母子手帳の写しなど、子の生年月日が確認できる書類

    従業員から預かり、写しを提出します。

    その他、ハローワークから指示された書類

    個別の状況に応じて追加で提出を求められる場合があります。

    ③ ハローワークへの提出

    必要書類を揃え、会社の所在地を管轄するハローワークに提出します。

    申請は原則として2ヶ月ごとに、2ヶ月分をまとめて行います。

    ④ 支給決定・入金:

    ハローワークで審査が行われ、支給が決定すると、従業員の指定口座に給付金が振り込まれます。会社には、支給決定通知書が送付されます。

    まだ始まったばかりの制度なので、不明な点はハローワークに積極的に確認するようにしましょう。


    関連記事:育児のための短時間勤務制度

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  • 管理監督者も介護休業は取れる!でも短時間勤務は?知っておくべきポイント

    実は介護休業に関する法律においては、通常の社員と管理監督者で適用が異なる部分があります。今回は、管理監督者の介護休業について、「所定労働時間の短縮措置」に焦点を当てて、管理監督者の労働時間に関するルールも交えながら解説していきます。

    そもそも「管理監督者」とは?

    まず、労働基準法でいう「管理監督者」について簡単におさらいしましょう。

    「管理監督者」とは、労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の規定が適用されない、経営者と一体的な立場にある重要な職務の者を指します。

    具体的には、

    職務内容、権限、責任が経営者のそれに近いか

    勤務態様が労働時間の規制になじまない(出退勤の自由があるなど)

    賃金がその地位にふさわしい待遇を受けているか

    といった実態に基づいて判断されます。単に「部長」や「課長」という肩書が付いているだけでは管理監督者にはあたりません。

    つまり、労働基準法に言う「管理監督者」に当たらない普通の「管理職」は労働時間に関して通常の労働者と同様だということです。

    管理監督者の「労働時間」に関する特別なルール

    管理監督者の最大の特性は、労働基準法上の労働時間、休憩、休日に関する規定の適用が除外される点です。

    これは、彼らが自身の裁量で仕事を進めることが多く、通常の社員のように厳密な労働時間管理になじまないためです。

    具体的には、以下の規定が適用されません。

    所定外労働の制限(法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働時間の制限)

    時間外労働の制限(36協定による残業時間の上限規制など)

    休日労働の制限(週1回の法定休日の確保など)

    ただし、これは「いくらでも働かせ放題」という意味ではありません。後述しますが、深夜労働や安全配慮義務に関しては適用されます。

    関連記事:管理監督者の労働時間

    育児・介護休業法はどんなことを定めているか

    育児・介護休業法は、従業員が、仕事と家族の介護を両立しながら働き続けることを支援するための制度を定めています。

    具体的には、介護休業、介護休暇、介護のための所定労働時間の短縮等の措置、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限が定められています。

    介護休業は、家族の介護のために、一定期間会社を休むことができる制度です。対象家族や取得期間(対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限)などの要件を満たせば取得が可能です。

    介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護や世話をするために、対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は年10日まで取得する休暇をいいます。

    管理監督者も「介護休業」は取得できる!

    まず、育児介護休業法に基づく「介護休業」と「介護休暇」は管理監督者であっても取得することができます。

    これは、労働基準法のうち、管理監督者に適用されないのは、あくまで「労働時間」、「休憩」、「休日」に関する規定だけだからです。例えば、有給休暇は管理監督者も一般労働者と同様に取得することができます。

    同様に、介護休業・介護休暇については、管理監督者であっても、他の労働者と同様に取得することができます。

    しかし!「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」は適用されません

    ここが今回の重要なポイントであり、誤解が生じやすい部分です。

    管理監督者も介護休業は取れますが、「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」、原則として管理監督者には適用されません。

    なぜでしょうか?

    それは、管理監督者は、労働基準法上の労働時間、休憩、休日の規定の適用を受けないため、「所定労働時間」という概念自体がなじまない、という考え方に基づいています。

    「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」は、次の中から会社が選択することとされており、会社によって利用できる制度が異なります。

    ・短時間勤務の制度(1日、週または月の所定労働時間を短縮する制度、従業員が個々に勤務しない日または時間を請求することを認める制度)

    ・フレックスタイムの制度

    ・始業・終業の時刻を繰り上げ・繰り下げる制度(時差出勤の制度)

    ・従業員が利用する介護サービスの費用の助成(その他これに準ずる制度)

    管理監督者は労働基準法の労働時間規制の枠外にいるため、これらの制度の適用対象にならないのです。

    では、管理監督者はどうすればいいの?

    介護休業は取れるけど、短時間勤務などはできないなんて、結局仕事と介護の両立が難しいのでは?と感じるかもしれません。

    確かに法律上の義務としての短時間勤務制度は適用されませんが、できないということではありません。

    そもそも勤務時間が自由です

    そもそも、自分が会社にいる時間を自分で自由に決めれるのが管理監督者です。そのため、家族の介護のために遅く出勤したり、早く帰ったとしても会社の就業規則に違反するわけではありません。

    労働基準法上の管理監督者は、短時間勤務などの申請をせずとも、自身の裁量で短時間勤務(フレックスタイム制度や時差出勤制度なども同様)を行うことができると解されるのです。

    個別の柔軟な対応も考えられます

    また、勤務自由という管理監督者の権限を使うことに心理的抵抗があることも考えられので、法律上の義務はなくとも、会社独自の判断で、例えば「一定期間は通常より早く退社することを容認する」「出勤時間をずらすことを柔軟に認める」といった、実態に合わせた柔軟な対応をすることができます。

    忙しくて勤務時間を調整できない状態であれば、一時的に業務量を調整するなど、管理監督者の負担を軽減する措置を検討することも有効です。業務内容が許すのであれば、テレワーク制度を積極的に活用することで、介護との両立がしやすくなる場合があります。

    深夜労働は別です

    「深夜業の制限」とは、要介護状態にある対象家族を介護する従業員が、その家族を介護するために申請をした場合、会社は深夜の時間帯(午後10時から午前5時まで)について労働をさせてはならないことになっています。管理監督者について労働基準法のうち適用されないのは、あくまで「労働時間」、「休憩」、「休日」に関する規定だけなので、管理監督者であっても深夜業の制限を求めることは可能であると解されます。

    会社の「安全配慮義務」は免除されません

    管理監督者だからといって、会社が管理監督者の健康を守る義務がなくなるわけではありません。労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務」は、管理監督者に対しても適用されます。 つまり、会社は管理監督者に対しても、長時間労働による健康障害や精神的な不調が生じないよう、適切な措置を講じる義務があります。

    会社が管理監督者の介護離職を防ぐために

    管理監督者は、企業の重要な人材であり、その離職は会社にとって大きな損失となります。介護を理由とした離職は、本人のキャリアだけでなく、会社全体の生産性やノウハウの継承にも影響を与えます。

    法律上の義務はないとしても、管理監督者に対しても、個別の状況に応じた柔軟な対応やサポートを検討することは、優秀な人材の定着、ひいては企業価値の向上につながります。

    「管理監督者だから、法律で短時間勤務の義務はない」と杓子定規に考えるのではなく、人材を大切にする視点、そして企業の安全配慮義務の観点からも、どのようなサポートができるか、ぜひ考えてみてください。

    介護離職ゼロを目指す企業にとって、管理監督者への配慮もまた、重要な経営課題の一つと言えるでしょう。


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