Last Updated on 2023年10月11日 by 勝
災害時の臨時対応
会社が労働者に対して時間外労働や休日労働を命じることができるのは次の2つの場合です。
1.労働基準法第36条に基づく労使協定を締結したとき
2.労働基準法第33条第1項に定められた、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の特例を適用するとき
33条の許可申請
時間外労働等の必要が生じたときは36協定によって対応するのが原則ですが、災害等により、臨時的に36協定の定めを上回る労働時間が発生する場合、36協定を締結していない場合に臨時的に法定労働時間等を上回る労働時間が発生するときは33条を適用して労働基準監督署長に許可を求めることができます。
労働基準法第33条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
この許可は事前にとるのが原則ですが、事後も認められています。労働基準法33条が想定している「非常災害」の性質上、事前に所轄労働基準監督署長の許可を取得できるケースはむしろ稀だと考えられているからです。
許可の基準
「災害その他避けることのできない事由によつて臨時の必要がある」かどうかの判断は、事前に労働基準監督署に問い合わせる時間があればよいのですが、そうでなければまず使用者において判断しなければなりません。
その際の参考になるのが、厚生労働省の通達「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正について」です。
ここでは次のような基準を示しています。
1.単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと。
2.地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認める。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれる。
3.事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めない。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれる。
4.上記の2及び3の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合には認める。
災害はもちろん、急病への対応、インフラ復旧への対応、大規模リコールへの対応、サーバーへの攻撃によるシステムダウンも認められます。
自分の所属する事業所だけでなく、他の事業所が被災した時の支援活動も認められます。
上限規制との関係
働き方改革による時間外労働の上限規制について、災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働は、上限規制の対象ではありません。
また、建設業等においては、災害時における復旧・復興の事業については、当分の間、別の扱いが適用されます。
健康障害の防止
あくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものなので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするように求めています。
また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることも求められています。
なお、時間外労働・休日労働や深夜労働をした時間について割増賃金を支払う必要があります。
不許可の場合
労働基準監督署長が届出を不適当と認めたときは、その働かせた時間に相当する休憩や休日を与えなければなりません。
労働基準法第33条2 前項ただし書の規定による届出があつた場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。
公務員の場合
公務員の場合は、第1項の「行政官庁の許可を受けて」という規定がありません。労働基準監督署長の許可はいりません。
労働基準法第33条3 公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる
就業規則の定め
第33条による許可申請は、就業規則に定めがあるかどうかを問いませんが、そういう場合があることを就業規則に定めておいた方がよいでしょう。