Last Updated on 2021年7月29日 by 勝
1年単位の変形労働時間制は、1ヶ月を超え1年以内の一定期間を平均して、1週間あたりの労働時間を40時間以下にすれば、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
1年単位の変形労働時間制とは
1年単位の変形労働時間制は、変形労働時間制の一つです。1ヶ月を超え1年以内の一定期間を平均して、1週間あたりの労働時間を40時間以下にすれば、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができます。
期間は「1ヶ月を超え1年以内の一定期間」です。つまり「1年単位」と表現していますが、必ずしも1年ではありません。3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月などにすることもできます。この期間のことを「対象期間」といいます。
1年単位の変形労働時間制導入効果
1年を通してみると、忙しい時期、忙しくない時期がはっきりしている職場に向いている制度です。
ただし、「1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる」のですが、1日の労働時間に10時間というと上限があります。1日の労働時間が10時間を超えることがある事業場では、1年単位の変形労働時間制を導入できません。
また、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で、従業員数が10人未満の事業所に適用されている1週間当たり44時間労働の特例が適用されている事業場が1年単位の変形労働時間制を利用すると、44時間労働の特例が使えなくなります。
実施手続き
1か月単位変形労働時間制などに比べ、若干要件がきびしくなっています。
就業規則の定めと労使協定の締結が条件になります。就業規則は改定時に、労使協定は協定を締結(更新)の都度、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。
厚生労働省の「スタートアップ労働条件」のサイトから作成支援ツールを利用できます。
労使協定と就業規則に定めるべき事項
1.対象となる労働者の範囲
2.対象期間(1か月を超え1年以内の期間)、およびその起算日
3.対象期間における労働日および当該労働日ごとの労働時間(ただし、区分期間を設ける場合は、最初の区分期間の労働日と各労働日ごとの労働時間、及び残りの区分期間についての各期間の総労働日数と総労働時間。)
4.特定期間(対象期間の中でも特に業務が繁忙な期間)
5.有効期間(1年以内)
就業規則への規定例→1年単位の変形労働時間制の規定例
労働時間・労働日数等の制限
1年単位の変形労働時間制では、対象期間の労働日数、1週間・1日の労働時間数、連続して労働させることのできる日数について、それぞれ限度が決められています。この限度を超えない範囲内で、対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を定めなければなりません。
・対象期間が3か月を超える場合は、年間労働日数は280日が限度
・1週間当たりの労働時間は52時間が限度
・1日あたりの労働時間は10時間が限度
・連続して労働させることのできる期間は原則6日
(対象期間中の特に業務が繁忙な期間=特定期間における連続労働日数は、労使協定で定めた場合は、1週間に1日の休日が確保できる日数。最長12日)
1年単位の変形労働時間制を採用して、週40時間労働制に適合するためには、1日の所定労働時間に応じて年間休日を確保することが必要です。
例えば、1日8時間の所定労働時間で1年単位の変形労働時間制を採用した場合、年間休日を105日以上としなければ週40時間労働制の枠内に収まらないことになります。
時間外労働について
1年単位の変形労働時間制を採用しても残業がなくなるわけではありません。次の労働時間に対しては割増賃金を支払う必要があります。時間外労働をさせるためには別途36協定が必要です。
【1日について】
所定労働時間が8時間を越える日は、所定労働時間を超えた時間
それ以外の日は、8時間を越えた時間
【1週間について】
所定労働時間が40時間を越える週は、所定労働時間を超えた時間
それ以外の週は、40時間を超えた時間
(1日についての計算で時間外労働となる時間を除く)
【変形期間の全期間について】
変形期間における法定労働時間の総枠(1週間の法定労働時間×(変形期間の日数÷7))を超えた時間(1日及び1週間の計算で時間外労働となる時間を除く)
中途採用者・中途退職者の扱い
1年単位の変形労働時間制は、原則として対象期間の途中で入社または退社した従業員にも適用されます。
だだし、途中入社や退職者、短期間勤務者のように、対象期間より短い期間しか勤務していない従業員に対しては、実際に労働させた期間を平均して週40時間を超えた労働時間について、その分の割増賃金の支払いが必要です。
実労働期間における実労働時間−40×(実労働期間の暦日数÷7)
対象者の制限
年少者(18歳未満の者)については、一定の場合を除き、労基法により時間外労働、休日労働やいわゆる変形労働時間制により労働させることはできません。また、原則として午後10時から翌日5時までの深夜時間帯に労働させることもできません。
妊産婦から請求があった場合は、時間外、休日及び深夜労働をさせることはできません。また、請求をし、又は請求により労働しなかったことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません。
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