Last Updated on 2021年7月29日 by 勝
与信管理とは
与信とは、いくらまでなら売ってよいという取引限度額、つまり、取引先ごとに会社が認めた売掛残高(手形債権を含む)です。
たとえば「100万円の与信を設定する」という事は、100万円までの「貸し」を認めるという事です。この「貸し」は、売掛残高+手形未決済残高です。
与信管理とは、与信を設定する手順を定めて実行することです。
社長1人で商売をやっている段階ならまだしも、社員を使うようになれば、与信額を示して営業させる必要がでてきます。任せきりでは、会社の体力を超えた取引を勝手に引き受けてくる危険性があります。
ところが、いざ与信を設定しようとしても、具体的にどこに対していいくらの与信額を設定すればよいか悩むことが多いものです。
機械的に与信額を決めたら、取引できる企業がなくなったという、笑うに笑えない話になるケースもあるくらい、中小企業の取引先は不安定なのが普通だからです。
しかし、だからといって何の基準もなく売掛金を増やしていては、連鎖倒産に巻き込まれるのは時間の問題となります。
そこで、企業規模にかかわらず、安全な会社の舵取りをするために、与信額を決め、定期的に見直しをする仕組みを作らなくてはなりません。
まず調査する
与信管理の具体的実務は、相手を調査することと、調査の結果よって相手の経営状態を判定することの二段階の作業です。
与信額を決める基準は、これまでいくら買ってもらったかではありません。往々にして中小企業はここで誤りを犯してしまうのですが、今までがどうだったかでなく、その会社は今どのような経営状態にあるかをつかむことが重要です。
経営状態を知るのに一番確実な方法は決算書の入手です。相手がスムーズに出してもらえるのであればぜひとも入手するべきです。
しかし、一般的には経営者は自分の台所事情を明らかにすることを嫌います。したがって、専門の調査会社に依頼することになります。
出入りしている営業担当者の観察力は重要です。人の出入りが多く人の動きに活気があるか、商品の出入りは順調であるか、トラブルを抱えているような様子はないか、あるいはその逆であるか。このようなことを把握できるのは実際に出入りしている担当者しかいません。そのような情報を、定期的に報告させることが、危険回避の第一の方策です。
調査をもとに判定する
調査が終われば、それに基づいて相手の経営状態を判定します。これから後の作業は、営業担当者でなく管理部門が行うべきです。
全ての得意先の状態を「良・可・不可」の三段階に判定し区分します。
「良」の基準は、風評に問題がなく、決算が良好であるもの。
「不可」は、赤字企業で回復の見込みがないと思われるもの。あるいは当社に対する支払が滞りがちであるもの。
「可」は良・不可の中間的な状態をいいます。取引開始から2年くらいは、用心深く接するため、優良企業にみえるときもこの分類にします。赤字企業は、原則として「不可」になりますが、内容分析によってはこの分類に入ることもあります。
与信額を決定する
判定が決まれば、次のように処置します。
「良」の場合はこれまでの債権残高を基準とし、更に次の条件により設定額を決めます。
1、見込まれる売掛残の〇倍を超えない
2、相手先の年間売上高の〇%を超えない。設備投資であるときは相手の財務状態による
3、1つの取引先で、当社売上の〇%を超えない
「可」の場合には、これまでの取引を維持する与信を与えるか、減じていくかを慎重に検討し、A「取引の増加に○円まで対応する」、B「現在の残高を増やさない」、C「〇円まで残高を減じていく」のいづれかを決定します。
新規に取引を検討する相手が、「可」ランクのときは「良」の基準により算定した金額を半減して適用します。
「不可」の場合には速やかに取引を減少させ、売掛残高を0にする計画を立て実行なければなりません。
相手方が倒産等により、支払不能になった場合、その時点の「貸し」が当社にとって損害になります。そこで、与信は、相手が払えるであろう金額と、もし払われなくなっても当方にとって致命的ではない金額という、2つの基準で決める必要があります。
与信管理規程
与信管理規程のサンプルです。