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労働基準法

従業員が産前産後休業を申し出たときの手続きと注意点

Last Updated on 2023年9月5日 by

産前産後休業とは

「産前休業」と「産後休業」をあわせて「産前産後休業」といいます。短く「産休」ともいいます。

産前産後休業は、女性が出産前後に取得できる休業期間のことで、労働基準法第65条第1項、第2項で定められています。

産前産後休業は、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員・正社員等の雇用形態に関係なく、全ての女性従業員に適用されます。

産前休業

労働基準法第65条1項
使用者は6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した時にはその者を就業させてはならない。

産前休業は、出産予定日の6週間前(双子などの多胎妊娠の場合は14週間前)から取得できます。実際の出産日が予定日よりも遅れた場合はその遅れた日数分、休業期間が延長されます。つまり、出産日が予定日より早まった場合には、産前休暇は(予定した日数より)短くなりますが、予定日より遅くなった場合には産前休暇(予定した日数より)は長くなります。

産前休業は本人の請求が前提です。本人が休業を求めなければ、ぎりぎりまで就労できます。あくまでも本人の希望によります。会社側が産前休業の取得を遅らせるような働きかけをしてはいけません。

産後休業

労働基準法第65条2項
使用者は産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない 。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

産後休業は、出産の翌日から起算して8週間までの期間です。実際の出産が予定日より遅れても、産後休業は8週間取ることができます。

産後休業は、たとえ本人が希望しても就業させてはいけません。就業させた場合、使用者には6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金という重い罰則が規定されています。

産後休業は妊娠4ヶ月以上の分娩であれば、死産や流産、中絶の場合にも適用されます。所定の休業を与えるのは使用者の義務です。妊娠していることを知らない場合もあるかもしれませんが、聞いていた場合、察知していた場合に知らぬふりをするのは法律違反です。

ただし、産後6週間が経過すれば、本人が就労を求めて、医師が就労することに支障がないと認めた場合には就労できます。

産前産後休業以外の休業

産前6週間に入る前に、妊娠に伴う体調不良などで休業を希望する場合は、労働基準法の産前休業ではありませんが、当然に休ませなければなりません。

この場合、労働基準法に定める産前産後休業ではないので、出産手当金は支給されませんが、支給条件を満たせば傷病手当金が支給される可能性があります。

関連記事:傷病手当金の手続き

産後休暇取得後にそのまま続けて育児休業に入ることもできます。

関連記事:育児休業制度のあらまし

産前産後休業の手続き

社内的な手続き

会社に届を出してもらう必要があります。届け出用紙を作るときは、下記の項目を入れて作りましょう

□ 最終出社予定日
□ 休業中の連絡先・連絡方法
□ 出産予定日
□ 復帰予定日
□ 育児休業の取得希望
□ その他希望する事項

社会保険の手続き

出産手当金の手続き

産休・育休期間中に事業者が給料を支払う義務はないので一般的にはその期間給料は支払われません。

産前産後休業中の所得を補填するものとして健康保険の出産手当金があります。出産手当金は、健康保険に加入している従業員が、出産のために会社を休んだ場合に、標準報酬月額の3分の2に相当する金額を給付する制度です。

加入している保険者(協会けんぽなど)に「出産手当金支給申請書」を提出します。被保険者自身がする手続きですが、事業主記入欄があるので、会社が代わって手続きすることが多いです。

関連記事:子どもが生まれるときの社会保険手続き

社会保険料の免除手続き

日本年金機構に「産前産後休業取得者申出書」を提出します。産前産後休業期間中における給与が、有給・無給であるかは問いません。

「産前産後休業取得者申出書」の提出によって、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除をすることができます。逆に言えば、この書類の提出を忘れると免除されないので忘れないように注意しましょう。

保険料の徴収が免除される期間は、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までです。

産前産後休業というのは、(産前42日(双子などの多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)をいいます。

免除期間中も被保険者資格に変更はなく、将来、年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。

産後休業の終了日が当初の届け出と違った場合は、「産前産後休業取得者変更(終了)届」の提出が必要です。

関連記事:産後休業の終了時の手続き

なお、産前産後休業の保険料免除期間と育児休業の保険料免除期間が重複する場合は、産前産後休業期間中の保険料免除が適用されます。

標準報酬月額の改定について

産前産後休業のときは、報酬がゼロになっても標準報酬月額の改定は行いません。休業期間中の保険料は免除されるので、標準報酬月額を据え置いても、被保険者本人は不利益を受けません。

関連記事:産前産後休業終了時の報酬月額改定

雇用保険料について

雇用保険料は、賃金に雇用保険率を乗じて算出するため、休業中に支払った賃金額が0円のときは、雇用保険料も0円となるので、社会保険のような手続きはありません。

所得税等について

所得税は雇用保険と同様に賃金額がなければ発生しません。出産手当金には所得税がかかりません。

ただし、住民税は前年の所得に対して課税されるので産前産後休業中も納付すべき額が発生します。給与がゼロになる場合は、住民税の納付を自分でやってもらうか、期日までに会社に納付してもらうか、会社が立て替えて後払いで納付してもらうかなどの取扱方法を事前に決めておく必要があります。

就業規則に規定する

法律に定められた休業なので、就業規則に規定があるかどうかにかかわらず休業させなければなりませんが、就業規則に規定しておきましょう

関連記事:産前産後休業|就業規則

妊産婦に対する就業上の措置

妊婦に禁止されている業務に携わっている場合の軽易業務への転換はもちろん、妊婦検査時間の確保、医師の指導を受けた際に可能となる時差出勤など、男女雇用機会均等法等に基づく措置を実施しなければなりません。

関連記事:妊産婦に対する健康管理のための時間等

関連記事:妊産婦等の就業制限の業務

解雇などの禁止

使用者は、妊娠・出産・産前産後休業を取得したことなどを理由として、解雇などの差別的取り扱いをすることは禁止されています。

また、産前産後休業期間及びその後30日間の解雇は禁止されています。この解雇制限期間中は労働者に非違行為があっても解雇できません。

関連記事:解雇制限について


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