取締役とは?

取締役と監査役

株式会社の取締役(とりしまりやく)は、会社経営の舵取り役であり、会社法によって定められた非常に重要な役職です。簡単に言えば、会社の重要なことを決め、その業務が適切に行われているかを監督する責任を負う人たちです。

取締役の主な役割

取締役は、主に以下の3つの大きな役割を担っています。

会社の意思決定(決定機能)

会社の将来に関わる重要な方針を決めます。

  • 経営戦略の策定
  • 大規模な投資や借入の判断
  • 重要な組織変更の決定
  • 代表取締役の選定・解職(取締役会設置会社の場合)

取締役会を設置している会社では、取締役が集まって行う取締役会でこれらの意思決定を行います。

業務執行の監督(監督機能)

代表取締役やその他の役員による日々の業務執行が、法令や決められた方針に従って正しく行われているかをチェックし、監視します。これは、不正や独断的な経営を防ぐ上で非常に重要です。

株主の利益を守る

株式会社は株主のものです。取締役は、株主から会社経営を任された者として、会社の価値を向上させ、株主の利益を最大化する責任を負っています。

代表取締役との違い

取締役の中でも、会社を代表する権限を持つのが代表取締役です。

役職役割
取締役会社経営の意思決定監督を行うメンバー(複数いることが多い)
代表取締役取締役の中から選ばれ、対外的に会社を代表し、日常的な業務執行の中心を担う人(一般的に「社長」と呼ばれることが多い)

全ての会社に代表取締役がいますが、代表権を持たない取締役もいます。

取締役には重い責任があります

取締役は大きな権限を持つ分、会社や第三者に対して重い責任を負っています。

会社に対する責任

会社経営を任された者として、以下の義務を負います。

  • 善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ): 善良な管理者として、取締役という地位にふさわしい高いレベルの注意を払って職務を行う義務。
  • 忠実義務(ちゅうじつぎむ): 法令、定款(会社のルール)、株主総会の決議を守り、会社のために忠実に職務を行う義務。

これらの義務を怠って会社に損害を与えた場合、会社に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

第三者に対する責任

取締役が職務を行う際に悪意または重大な過失があり、それによって第三者(取引先や債権者など)に損害を与えた場合にも、その第三者に対して損害賠償責任を負うことがあります。

取締役になるために「資格」は必要ですか?

取締役になるために必要な資格(免許)はありません。

  • 学歴や実務経験の制限はなし:
    • 弁護士や公認会計士のような国家資格は必要ありません。
    • 未成年者でも(親権者の同意があれば)取締役になれると解釈されています。
    • 破産者も、現在は欠格事由から外されており、取締役になることが禁止されているわけではありません。
  • 求められるのは「能力」と「選任」:
    • 実際には、会社経営の重い責任を果たすため、経営判断能力、業務執行能力、マネジメント能力などが求められます。
    • 最終的には、株主総会で取締役として選任されることが必要です。

取締役になれない人(欠格事由)がいます

会社法では、会社経営を任せるのが適切ではないとされる、以下の人や団体を欠格事由として定めています。これらに該当する人は、取締役になることができません。

欠格事由詳細
法人会社などの団体は、取締役という個人の職務を担うことはできません。
成年被後見人・被保佐人精神上の障害により判断能力が不十分であるとして、家庭裁判所の審判を受けた人。
特定の法律に違反し、刑罰を受けた者会社法、金融商品取引法、破産法など、会社経営に関わる特定の法律に違反し、刑(罰金刑以上)の執行が終わってから2年を経過していない者。
上記以外の罪で実刑中の者上記以外の法律に違反し、禁錮(きんこ)以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わるまでの者。(ただし、執行猶予中の者は欠格事由に含まれません)

取締役の任期は?

取締役の任期は、会社の種類によって異なります。原則として、2年ですが、多くの中小企業が該当する非公開会社では、任期を最長10年まで延長できます。

会社の区分任期の原則定款で任期を延長できる最長期間
公開会社2年以内延長不可(2年が上限)
非公開会社2年以内10年以内まで延長可能

詳しく解説します。

公開会社の場合(原則)

  • 任期は最長2年です。
  • 公開会社とは、株式の譲渡に会社の承認を必要とする定款の定めを設けていない会社を指します。(株式を上場しているかどうかは関係ありません。)
  • 株主が多く、ガバナンス(企業統治)を強化する必要があるため、任期を短くして定期的に株主の意思を反映させる仕組みになっています。

非公開会社の場合(特例)

  • 任期は定款で最長10年まで延長可能です。
  • 非公開会社とは、全ての株式の譲渡に会社の承認を必要とする定款の定めを設けている会社を指します。中小企業のほとんどがこれに該当します。
  • 経営の安定性を優先し、役員変更に伴う登記の手間や費用を減らすため、定款で定めることにより任期を長くすることが認められています。

任期の数え方

取締役の任期は、単に「2年間」や「10年間」というわけではありません。

原則として、「選任後2年以内(または定款で定めた期間内)に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会の終結の時」までと定められています。

簡単に言えば、その任期期間内に行われる最後の定時株主総会が終わるまでが任期となります。任期が満了すると、同じ人が引き続き取締役になる場合でも、再任(重任)の手続きと登記が必要です。