Last Updated on 2025年6月23日 by 勝
出生時育児休業(産後パパ育休)は、育児休業とは別に、子の出生直後の時期(原則8週間以内)に柔軟に取得できることを目的とした休業制度です。特に男性労働者が子の養育に主体的に関わることを促進し、労働者が職業生活と家庭生活の両立を図り、退職せずに雇用を継続できるように支援することを目的としています。
出生時育児休業(産後パパ育休)の概要
定義と対象期間
出生時育児休業は、子の出生の日から8週間以内の期間に、最長4週間(28日)まで取得できる休業です。この期間は、1回または2回に分割して取得することが可能です。
期間の起算点
期間の起算点は次のようになっています。
□出産予定日より早く生まれた場合:子の出生の日から8週間以内
□出産予定日より遅く生まれた場合:出産予定日から8週間を経過する日の翌日まで
主な対象者
出生時育児休業は、出産後8週間以内の子を養育するために、産後休業をしていない労働者が取得することを原則とします。労働基準法により女性労働者は産後休業の取得が義務付けられているため、一般的には男性労働者が主な対象となります。
ただし、以下の場合は女性労働者も対象となり得ます。
□養子縁組等により子を養育する場合(出産を伴わないため)
□女性労働者が産後休業を取得していない特別な事情がある場合(ごく稀なケースですが、法令上は可能性が残されています)
対象労働者
原則として、日々雇用される労働者を除き、全ての労働者が対象となります。
期間の定めのない労働者(正社員、無期雇用のパートタイマーなど)は、基本的に全て対象です。
期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)については、以下の両方の要件を満たす場合に限り、申出が可能です。
□子の出生日または出産予定日(いずれか遅い方)から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと。
□労使協定の定めがないこと。
給付金と社会保険料免除
出生時育児休業期間中は、要件を満たすことで雇用保険から出生時育児休業給付金が支給されます。
また、この期間中は社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除されます。
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手続きについて
申出方法
出生時育児休業の申出は、以下の事項を事業主に対して明らかにすることで行わなければなりません。
□申出の年月日
□申出をする労働者の氏名
□申出に係る子の氏名、生年月日、労働者との続柄(子が未出生の場合は出産予定者の氏名、出産予定日、続柄。特別養子縁組等の場合はその事実)
□休業の開始予定日と終了予定日
□既に同じ子について出生時育児休業の申出がある場合はその旨
□既に撤回した出生時育児休業申出がある場合はその旨
□休業に係る子以外の、出生の日から8週間を経過しない子がいる場合はその子の情報
□子が養子の場合は養子縁組の効力発生日
□特定の事由(希望する日の1週間前までに申出をする場合の配偶者の死亡、負傷・疾病、同居しないこと、子の負傷・疾病など)が生じた場合はその事実
申出は、書面提出、ファクシミリ送信、または電子メール等の送信(事業主が適当と認める場合に限る)によって行われます。
申し出期限
原則として、休業開始予定日の2週間前までに事業主へ申し出る必要があります。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は、希望する日の1週間前までの申出が可能です。
□出産予定日より子が出生したのが早かった場合
□配偶者の死亡、負傷・疾病、同居しなくなった場合
□子が負傷・疾病等により2週間以上の世話が必要になった場合
事業主の義務と対応
事業主の対応義務
事業主は、原則として労働者からの出生時育児休業の申出を拒むことはできません。
ただし、労使協定により、以下の労働者を出生時育児休業の対象から除外することができます。
□引き続き雇用された期間が8週間未満の労働者
□週の所定労働日数が2日以下の労働者
これらの除外対象者は労使協定で明記されている場合にのみ適用されます。
開始予定日の指定
申出があった日から2週間以内に開始予定日がある場合、事業主は2週間経過日までの間のいずれかの日を開始予定日として指定できる場合があります。
申出の変更・撤回
労働者は、休業開始予定日の前日までであれば、休業期間の変更(繰り上げ、繰り下げ)や申出の撤回が可能です。
休業開始後は、原則として変更や撤回はできませんが、以下の「特別の事情」がある場合に限り、撤回や期間の変更が可能となります。
□子の死亡、他人の養子となる、または同居しなくなった場合
□配偶者が死亡した場合、または負傷、疾病、障害により子の養育が困難になった場合
□離婚などにより配偶者が子と同居しなくなった場合
□特別養子縁組の請求が不成立になった場合
□子が負傷、疾病、障害により2週間以上の世話が必要になった場合
休業期間中の就業(労使協定締結が必須)
出生時育児休業は原則として就業しない期間ですが、労使協定を締結している場合に限り、以下の要件に基づき休業期間中の就業が可能です。
労働者の申出と事業主の同意が必要です。事業主が一方的に就業を求めたり、労働者の意に反する取り扱いをしたりすることは認められません。
労働者は、就業可能な日、時間帯、その他の労働条件を具体的に事業主に申し出る必要があります。
就業の範囲には上限があり、以下のいずれも超えてはなりません。
□就業日数の合計が、休業期間中の所定労働日数の半分以下であること
□就業時間の合計が、休業期間中の所定労働時間の半分以下であること
□就業によって、休業が中断される日以外に、その日の午前0時から午後12時までの全ての時間において就業することとなる日がないこと
※ 就業日数が上限を超えたり、労働時間の上限を超えたりすると、給付金の支給対象外となる可能性があるため注意が必要です。
事業主の個別周知・意向確認義務
労働者から本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった場合、事業主は以下の事項を個別に周知し、就業に関する意向を確認する義務があります。
□出生時育児休業に関する制度
□出生時育児休業申出等の申出先
□出生時育児休業給付金および社会保険料免除に関すること
□その他、労働者が希望するキャリア形成や働き方に関する意向
この周知・意向確認は、面談、書面交付、FAX、電子メール等(記録を出力できるものに限る)のいずれかの方法で行う必要があります。取得を控えさせるような形で行ってはなりません。
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