団体交渉の応諾義務と誠実交渉義務

Last Updated on 2021年11月23日 by

応諾義務

使用者が、労働組合法に適合する労働組合から申し込まれた団体交渉を正当な理由がなく拒否することは不当労働行為にあたります。

(不当労働行為)
労働組合法第7条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一(略)
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

誠実交渉義務

団体交渉は、単に開催すればよいというものではなく、労働組合法第7条第2号の主旨は労使間の円滑な団体交渉関係の樹立を目的としていることから、使用者には誠実に団体交渉にあたる義務があります。これを「誠実団体交渉義務」と言います。

例えば、最初から合意達成の意思がないことを表明したり、合理性のある説明(例えば資料を開示することで人事・経営管理上の不都合がある、会社が被る有形・無形の損害が発生する等)や具体的資料の提示を行わず、自己の拒否回答に固執して、実質的な交渉が尽くされていない中で団体交渉を打ち切るなどは、不誠実団体交渉として不当労働行為になる場合があります。

なお、団体交渉を拒否できる正当な理由に当たるか否かは、個別・具体的な事情によりますが、これまでの判例等から一定の基準を読み取ることができるので以下に例示しました。ただし、個別状況の違いが大きいので、この例示だけで判断するべきではないことにご留意ください。

団体交渉を拒否できない例

要求が過大すぎる場合

到底実現不可能な要求を出された場合でも、そのことをもって直ちに団体交渉を拒否する理由にはならないと考えられています。

組合の要求内容が過大すぎるなど、議論に値しないと受け止めた場合でも、その要求がなぜ受け入れられないかの理由や論拠を客観的・具体的に団体交渉の場で説明することが必要とされています。

雇用関係がない場合

すでに退職した労働者とは雇用関係がありませんが、基本的には団体交渉への応諾義務があると考えられています。

会社から解雇された労働者が、ユニオン等に加入し、解雇撤回等を要求する団体交渉を求める場合がありますが、この場合、争いになっていることが労働契約があったときに起因していて、団体交渉申し入れの時期が、雇用関係終了後、社会通念上合理的といえる期間内に行われたのであれば、使用者はこれに応じる必要があるとされています。

組合員名簿を提出しない

ユニオンなどの会社外の労働組合から団体交渉を申し込まれた場合、当該組合の実態や交渉相手となり得るかを確認するため、組合規約や加入する組合員の名簿を求める場合があります。この場合、交渉担当者等、関係する者について一定の事項が開示されれば足り、名簿等の不提出をもって団体交渉を拒否することはできないとされています。

唯一交渉団体条項がある

特定の労働組合との労働協約に、当該労働組合を唯一の交渉相手として認めるといった「唯一交渉団体条項」を設けている場合であっても、その条項を理由に他の労働組合との団体交渉を拒否できないとされています。

訴訟中または争議中

当該組合と団体交渉事項について訴訟中であったとしても、自主的な解決に向けて交渉を行うことは差し支えないため、これを理由に団体交渉を拒否することはできないとされています。

また、争議行為中であっても、同様の理由で団体交渉を拒否することはできないとされています。

団体交渉を拒否できる例

暴力行為があったとき

団体交渉の場で暴力行為があった場合には、今後、そのような行為が行われないよう再発防止を講ずることがない限り、団体交渉を拒否することは差し支えないとされています。

いかなる場合においても、暴力の行使は労働組合の正当な行為とは解釈されてはならない【労働組合法第1 条第2 項】。

二重交渉を回避するため

上部団体や下部組織(支部・分会など)が単位組合とは別に団体交渉を行う場合や労働者が二つの組合に所属(二重在籍)している場合などは、同一の交渉事項について二重交渉のおそれが生じます。

二重交渉のおそれがある場合、使用者は二重交渉を回避するために、両組合間で交渉権限が調整・統一されるまで一時的に交渉を拒否できるとされています。

団体交渉が行き詰まったとき

会社が誠意をもって団体交渉義務を尽くしたものの、労使の意見が対立し続け、もはや交渉の余地がなくなったために団体交渉を拒否したことは正当な理由がないとはいえないとされた判例があります。

ただし、当該団体交渉の打ち切りが不当労働行為に当たらないと会社が判断したとしても、争議行為や労働委員会への救済申立て、労働委員会へのあっせん申請等に発展する可能性が高まります。

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