Last Updated on 2024年11月1日 by 勝
原則
健康診断の費用は、原則として会社負担です。
一般健康診断(雇入時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者健康診断、海外派遣労働者健康診断、給食従業員の検便)と特殊健康診断、じん肺健康診断、歯科医師による健康診断は、労働安全衛生法等で実施が義務付けられています。
義務付けられているというのは、事業者が費用を負担して実施することが義務付けられているということです。
逆に言えば、健康診断の費用を会社が負担するのは、労働安全衛生法で事業者に義務づけられている健康診断のみです。
法定項目以外の検査
各健康診断には、それぞれ「法定受診項目」が決まっています。法令が義務付けていない項目を受診した場合は、会社に負担義務があるとは言えません。
法定項目以外の項目であっても、会社が命じて受診させたのであれば会社が負担しなければなりません。また、従業員の健康管理を目的として法定項目以外の受診を推奨している場合も、会社が負担するのが当然でしょう。
法定項目以外の受診について、選択が任意であり、選択した場合は本人負担であることを明示していれば、その部分について本人に負担させても問題はありません。
本人希望の医師等
事業者が指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しないで、他の医師又は歯科医師の行なう健康診断を受診してその結果を証明する書面を提出すれば、会社の健康診断を受けなくてもよいことになっています。
その場合の費用負担がどうなるかは、法令等での定めはありません。したがって、自己負担させたとしても違法ではないとされています。
ただし、定期健康診断の実施は事業者の義務であることや、結果の書面を提出させることを考慮して、他の従業員の健康診断費用を上限に実費を支給するという運用をしている会社もあります。
入社前の健康診断
雇入時健康診断は会社に実施義務がありますが、従業員が入社前に受診した健康診断結果を提出した場合には、雇入時健康診断を省略することができます。
この場合の費用についての法令等の規定はありませんが、雇入時健康診断が事業者の義務である以上、会社が通常の雇入時健康診断に要している費用の相当分を支給するのが妥当だと思われます。
自発的健康診断
労働安全衛生法第66条の2の規定により、深夜業に従事する労働者であって、自己の健康に不安を有する者が、自らの判断で受診した健康診断の結果を事業者に提出した場合に、事業者が事後措置等を講ずることを義務付けられています。
この自発的健康診断の費用負担について法令等の定めはありません。一般的には、任意の健康診断なので、事業主に負担義務はないとされています。
再検査等
健康診断の結果、再検査や精密検査等を指示されることがあります。この再検査費用の費用負担について法令等の定めはありません。
再検査に行くかどうかは従業員の判断に委ねられ、費用は自己負担としている会社が多いようです。
ただし、健康診断の法定項目の検査値を確定させるための再検査は健康診断の範囲内であるとして事業者が負担するべきだという意見もあります。
労働契約法にもとづく従業員への安全配慮義務を考慮すれば、再検査を受診させることが望ましいのは言うまでもありません。その観点から、再検査等の費用を会社が負担するのが望ましいと考えられます。
なお、健康診断の中でも、特殊健康診断については、有所見(異常あり)の場合は、費用を会社が負担して再検査を受けさせなければなりません。
労働時間
定期健康診断や雇入れ時の健康診断などの一般健康診断については、法令等に規定がありません。なので、パート等の時間給労働者の場合にその扱いが問題になることが多いようです。
厚生労働省は、受診時間の賃金は労使間の協議によって定めるべきとしつつ、「労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることと考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」としています。
つまり、法律上の義務ではありませんが、労働時間とすることが推奨されています。
なお、特殊健康診断について厚生労働省は、「事業の遂行にからんで当然実施しなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、実施に要する時間は労働時間と解されるので、時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること」としています。
特殊健康診断を受診する時間は労働時間としてカウントしなければなりません。
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