Last Updated on 2023年9月24日 by 勝
1か月単位の変形労働時間制とは
1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の一定期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えなければ、特定された日又は特定された週に1日8時間又は1週40時間を超えて労働させる変形労働時間制です。
1か月単位の変形労働時間制を採用した場合には、月ごとに労働日や労働時間を事前に設定して労働者に通知しなければなりません。突発的な残業が多く見込まれる職場にはお勧めできない制度です。
1か月単位の変形労働時間制の導入効果
1か月単位の変形労働時間制のメリットの一つとして、業務の繁閑の差に合わせた時間配分ができることがあげられるます。
忙しい日を長めの労働時間に設定し、そうでない日は短めの労働時間に設定することでメリハリのある働き方ができるようになります。結果として残業手当を減少させることになります。
実施手続き
以下の定めるべき事項を、労使協定又は就業規則(10人未満の事業場でも就業規則に準じる規程が必要になります)に定め、労働基準監督署に届け出る必要があります。
就業規則により実施する場合は、労使協定はいりません。就業規則の変更を労働基準監督署に届出ます。
労使協定により実施する場合は、更新の都度、労使協定を労働基準監督署へ届出します。ただし、就業上の義務を課すのは就業規則なので、就業規則にも記載しなければなりません。一般的には、就業規則による方法が使われています。
就業規則または労使協定に定めるべき事項
以下の事項を決めます。
1.対象となる労働者の範囲
どのような人が対象になるのか明記してください。
2.対象となる期間と起算日
期間は1ヶ月ちょうどでなくても、例えば2週間・4週間などが可能です。
3.労働日と労働日ごとの労働時間
1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えないように対象期間の各労働日の始業・終業時刻、労働時間を決めるを予め決めなければなりません。
4.労使協定の有効期間
労使協定自体の有効期間はその変形労働時間制の対象期間より長い期間を設定します。ただ、あまりにも長く設定するのではなく3年程度を限度にしてください。
各月の上限労働時間
1か月以内の一定期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間を超えない範囲内で決める必要があります。
変形期間の法定労働時間の上限は次の式により計算できます。
40時間×変形期間の暦日数÷7
変形期間を1か月とする場合は、月の法定労働時間の総枠は変動します。
31日の月の法定労働時間の総枠は177.1時間
30日の月の法定労働時間の総枠は171.4時間
29日の月の法定労働時間の総枠は165.7時間
28日の月の法定労働時間の総枠は160.0時間
変形期間を4週間とする場合は、月の法定労働時間の総枠は160時間で固定します。←この方が事務的に楽です。
会社は、この時間の範囲内で 、労働日数と労働時間を割り振り、勤務シフト表を作成します。
上述のように、1か月が30日の場合の法定労働時間の総枠は、171.4時間なので、8時間労働の場合は、171.4÷8で、21.4日が限界です。
30日の月で休みが8日であれば、労働日が22日になるので違反になってしまいます。この場合、特定の日の労働時間を少なくする、休日を増やすなどの調整が必要になります。
なお、規模10人未満の商業、映画、演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業場(特例対象事業場)については、法定労働時間が週44時間とされているため、上記計算式の「40時間」を「44時間」として計算します。
時間外労働について
1か月単位の変形労働時間制を導入した場合でも、時間外労働は発生します。時間外労働をさせるためには36協定が必要です。
関連記事:時間外労働をさせる手続き
妊産婦が請求した場合は、1か月単位変形労働時間制が適用されている場合でも、週40時間、1日8時間を超えて労働させてはいけません。
【1日について】
就業規則または労使協定などで1日8時間を越える時間を定めた日はその時間、それ以外の場合は8時間を超えて労働した時間が時間外労働になります。
【1週間について】
就業規則または労使協定などで1週間40時間を越える時間を定めた日はその時間、それ以外の場合は1週間40時間を超えて労働した時間(1日について時間外労働になる時間を除く)が時間外労働になります。ただし、1日について超えた時間とは重複させません。
【変形期間の全期間について】
変形期間の法定労働時間の総枠を越えて労働した時間(1日または1週間について時間外労働になる時間を除く)が時間外労働になります。ただし、1日及び1週間について超えた時間とは重複させません。
関連記事:一か月単位の変形労働時間制の規定例
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