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株式会社設立の要!出資金の払い込みと払込証明書作成の手順

Last Updated on 2025年6月19日 by

定款の認証が終わったら、次に会社の資本金となる出資金を払い込む手続きに進みます。会社設立にとって非常に重要なステップですので、一つずつ見ていきましょう。

出資金とは?

出資金は原則として現金で払い込みますが、現物出資という形も可能です。

現金出資

最も一般的な方法です。文字通り、お金を払い込みます。

現物出資

株式や自動車、土地、パソコンなど、現金以外の財産を会社の資本とする方法です。

この場合、定款にその旨を記載するだけでなく、その現物の価値を客観的に評価する手続きが必要になります。原則として、裁判所が選任する検査役による調査が必要ですが、一定の要件を満たせば不要になるケースもあります(例:価額が500万円以下の場合、弁護士・税理士などの証明がある場合など)。現物出資を検討する場合は、専門家(司法書士など)に相談することをお勧めします。

払い込み先は「発起人個人の口座」

ここが、会社設立前の特徴的な点です。

会社設立前なので、会社の銀行口座はまだありません。そのため、資本金を払い込む先は、発起人個人の銀行口座になります。発起人が複数いる場合は代表者の発起人(通常は代表取締役になる予定の人)の個人口座を使用するのが一般的です。

普通預金口座でOKです。既存の普段使っている口座でOKです。特別な口座を用意する必要はありません。普段使いの口座だと残高などが人に見られる可能性があるため、気になる場合は新たに口座を開設する人もいます。

ネット銀行は注意が必要です。ネット銀行は通帳(紙媒体)が存在しないため、後述する通帳のコピーが物理的に用意できない場合があります。もしネット銀行の口座を使用する場合は、取引明細を印刷できるか、またそれが会社の設立登記の添付書類として認められるかを事前に管轄の法務局や司法書士に確認しておくのが安全です。

出資金の「振り込み」方法

非常に重要なポイントです!

「預け入れ」ではなく「振り込み」です。銀行の窓口やATMで現金で「預け入れ」するのではなく、必ず「振り込み」の形式をとってください。

預け入れだと、誰がいつ、いくら入金したのかが通帳に明確に記載されないことがあります。しかし、「振り込み」であれば、振り込んだ人の氏名が通帳に記帳されるため、各発起人が確かに払い込んだことを証明できます。

複数発起人がいる場合、各発起人がそれぞれの氏名で振り込むのが理想的です。代表発起人が他の発起人から現金を受け取り、代表発起人の名前でまとめて振り込む形でも認められることがありますが、確実に証明するためには個々の発起人からの振り込みが望ましいです。

振り込み日

振り込み日が定款認証日よりも後の日付であることが鉄則です。

定款認証が完了して初めて、資本金の払い込みが可能になるからです。もし定款認証日より前に振り込まれていると、法務局での登記申請時に補正(やり直し)を求められます。

通帳のコピー

振り込みが完了したら通帳をコピーします。

必要なページ

必要なページは、通帳の表紙と表紙の裏(開いてすぐのページ)、そして出資金の振り込みが記載されているページです。

通帳の表紙で銀行名や口座名義が分かります。

表紙の裏(開いてすぐのページ)には支店名、口座番号、口座名義人の情報などが記載されています。

出資金の振り込みが記帳されているページは、各発起人からの振り込み記録が全員分分かるようにコピーします。

コピーの形式

会社設立登記の他の添付書類と同様に、A4サイズでコピーします。

振り込んだ発起人の名前と金額の部分にマーカーで印をつけておくと、後で確認する際や法務局での審査時に分かりやすくなります。

払込証明書を作成する

出資金の払い込みが完了したことを証明する書類です。登記の添付書類になります。

パソコンなどで作成します。インターネット上に多くの見本(テンプレート)がありますので、それを参考に作成しましょう。

記載内容

「払込があった金額の総額」「払込があった株数」は定款に記載した通りの数字を記載します。

「1株の払込額」は「払込があった金額の総額」を「払込があった株数」で割った数字を記載します。

「日付」は資本金が振り込まれた最も遅い日以降の日付です。例えば、1月5日にAさんが、1月10日にBさんが振り込んだ場合、1月10日以降の日付を記載します。

「本店所在地」「会社名(商号)」は登記する予定の情報を正確に記載します。

払込証明書の左上と、代表取締役の氏名の右横に会社代表印(法人実印)を押印します。

「登記前なのに会社の実印?」と疑問に思うかもしれませんが、これは設立登記の申請書に押す「会社の実印」と同じ印鑑です。まだ会社は存在しないものの、設立手続きの書類としては会社として作成する形式をとるためです。個人の実印ではないので注意しましょう。

払込証明書は2通作成します。1通は登記申請の際に法務局へ提出します。もう1通は会社設立後、自社で大切に保管します。

通帳コピーと払込証明書の製本

最後に、これらの書類を綴じて一つの書類としてまとめます。

順番

綴じ込む順番は次のとおりです。

払込証明書(一番上)
通帳コピー(表紙)
通帳コピー(表紙裏)
通帳コピー(振り込み内容が記載されているページ)

綴じ方

ホッチキスで綴じるのが一般的です。

割り印: 綴じた書類の各ページの境目(書類が重なっている部分)に、会社代表印で割り印を押します。

割り印は、書類が連続していること、そして途中で書類の差し替えなどが行われていないことを証明する役割があります。書類の枚数が多い場合は、最初のページと最後のページ、または各ページの綴じ目に押す形でも問題ありません。

完成

これらの手続きを経て作成された「払込証明書」は、会社設立登記の際に法務局に提出する重要な添付書類となります。一つ一つの手順を正確に行うことで、スムーズな会社設立につながります。


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