預り金 勘定科目

経理の事務

預り金とは

預り金勘定は、何かの目的でお金を預かる時に使用する勘定科目です。将来的には現金等(資産)が減少するものであるため負債に分類されます。また、長く預かる性質のものではないので、1年以内に支払いが終わる流動負債に分類されます。

給与計算のときに使われることの多い勘定科目です。

社内旅行積立金などのように、1年を超えて預かることが予定されている場合は固定負債に分類します。

預り金の仕訳

例1:給与支払時の仕訳(控除額を預り金として計上)

従業員に給与を支払う際、支給総額(人件費)から控除した分を「預り金」として負債に計上します。

日付勘定科目借方(費用発生)勘定科目貸方(負債発生/資産減少)摘要
X/15給料手当500,000預り金80,000源泉税、社保料、住民税の控除額
普通預金420,000差引手取り額の支払い

例2:預り金を納付した時の仕訳(負債の減少)

給与から預かった金銭を、後日、税務署や保険組合に納付した時点で負債を解消します。

日付勘定科目借方(負債減少)勘定科目貸方(資産減少)摘要
Y/10預り金80,000普通預金80,0005月分源泉税等を納付

注意点

預り金勘定がマイナスになることもある

従業員から預かった雇用保険料は労働保険料として納付します。労働保険料の支払いは通常は年1回です。従業員からの雇用保険料は毎月差し引くので、労働保険料の納付前には預り金勘定がマイナスになる場合があります。

年末調整で税金の過不足を精算したときに、預かっている所得税より本人に還付すべき金額が多くなった場合にも預り金勘定がマイナスとなります。この場合、本来は税務署に手続きすれば戻ってくるお金なので未収入金という勘定科目に振り替えます。ただし、実務的には税務署から返金してもらうのではなく、翌年1月以降に税務署に納付する源泉所得税額から差し引いて減額納付するのが一般的です。

預り金勘定のマイナスは事務ミスによる場合もあります。給与天引きを忘れたり、勘定科目違いなどの場合です。プラスにしてもマイナスにしても差異の内訳が把握できていれば良いのですが、漫然と処理していると事務ミスが紛れ込んでいることがあるので注意しましょう。

預り金の納付

預り金の納付時期を忘れないようにしましょう。納付が遅れると延滞金がかかることがあります。納付日を忘れないようにスケジュール管理し(なるべく自動引落などを利用し)、支払い後には預り金勘定で不整合がないか確認しましょう。

源泉所得税や住民税は、原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。 ただし、給与の支給人員が常時10人未満の場合は、源泉徴収した所得税等を、半年分まとめて納めることができる特例があります。

また、健康保険や厚生年金保険の保険料については、毎月の給料及び賞与から従業員負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分の保険料と併せて、翌月の末日までに納付しなければなりません。

納付状況をすばやく把握するために「社会保険料預り金」、「預り源泉所得税」、「預り住民税」などと預り金勘定に補助科目を設定することもあります。

類似の勘定科目

預り金と混同しやすい、あるいは人件費の支払い時にセットで使われる勘定科目を以下に示します。

A. 未払金・未払費用との違い

勘定科目負債の相手支払の対象
預り金従業員(本人に代わって預かっている)最終的に第三者へ納付する義務
未払金取引先営業活動外で、商品・サービス自体の代金が未払い(例:備品購入費の未払い)
未払費用債権者継続的なサービスの代金が未払い(例:未払いの利息、未払いの通信料)

B. 立替金との違い

勘定科目処理内容会計上の区分
預り金企業が預かり、後日納付する金銭負債(将来の支払義務)
立替金企業が従業員等の代わりに一時的に支払い、後日本人から回収する金銭資産(後日回収できる権利)

(例:従業員の資格試験費用を会社が立て替えて支払い、後日給与から差し引く場合は「立替金」となります。)