証憑の保管とは?紙ベースの保管と電子データでの保管について解説

経理の事務

証憑とは

証憑(しょうひょう)というのは、納品書や領収書・請求書など、その取引が本当に行われたのかどうか、税務署等に対して証明するための書類のことです。

事業主は決算が終わると税金の確定申告をしなければなりませんが、その申告内容が正しいかどうか調査するために税務調査が入ることがあります。このときに証憑が整っていないと、経費処理が否認され、追加で課税されることがあります。

納品書の保管

証憑の一つに納品書があります。注文した品物には納品書が同封されてきます。荷物が到着したら、この納品書を用いて、現物の内容、数量等を確認します。

この確認作業を「検収」または「検品」といいます。品違い、数量違いもよくあるので、自分の注文したものが正しく入っているか、自分の注文書の控えと、相手方の納品書、現物の品物の三つが一致しているかチェックします。

検収の結果問題がなければ、仕入帳に品名や金額を記帳します。パソコンを用いているときはデータ入力をします。

記帳が終わったら納品書を保管します。穿孔器を用いて2穴をあけ、日付順に綴じ紐で綴ってファイルを作ります。取引が多い相手の場合は、その取引先専用のファイルを作ります。

領収書の保管

領収書はもっとも重要な証憑です。

領収書を保管するところ

保管は、スクラップブックを用い、日付順に糊付けすると良いでしょう。全部が見えるように貼るのでなく、少しずつずらすことでスペースを節約できます。スクラップブックはドットガイド付を用いるときれいに整理できます。

領収書が無い場合

経費を処理する場合、原則として領収書が必要です。しかし、どうしても領収書がもらえない場合があります。例えば、慶弔費、交通費等ですが、これらの場合は、領収書以外の別の証拠を残して経費処理をしましょう。

バスなどの交通費については、利用した本人が何月何日、どこからどこへ、何のために利用したかを記載した伝票、メモなどを添付してもらいます。 慶弔費については、結婚式の案内状を残し、それにその相手方との業務上のつながりなどをメモしておくと良いでしょう。

請求書の保管

品物を購入すると、請求書が送られてきます。送られてきた請求書は必ずチェックしなければなりません。

請求書は、到着した順に速やかにチェックします。間違いがあった場合の相手との交渉は早い方が良いからです。

チェックが終わり、支払い金額が確定した請求書には、支払う金額、支払日、支払い方法などをメモした付箋をホチキスで貼り付け、支払日別のフォルダに整理します。

支払いの作業を円滑にするために、締め切り日と支払日などの支払い条件を相手先と決める際に、請求書の到着期限についても取り決めをしておきます。例えば、月末支払いについては25日までに到着した請求書を対象とするなどと決めるのです。実務的には、少しくらい遅れたからといって、その次の月に回すというのは乱暴かもしれません。数日遅れたら数日遅れて払うというくらいの対応が無難です。

支払いが終わったら、請求書に何月何日支払い済みと朱書きします。その後、納品書と同じように綴じて保管します。綴じたファイルは年度ごとにまとめて、専用の保管箱に収納して倉庫などにしまうと、後で探し出すときに便利です。

証憑保管の電子化

取引先から受け取る領収書や請求書などの証憑(しょうひょう)を電子データで保存する方法があります。これは「電子帳簿保存法」という法律に基づく必要があります。

スクラップブックに糊付けして保管されていた紙の証憑を電子化する方法は、電子帳簿保存法の保存区分のうち「スキャナ保存」に該当します。

証憑の電子化(スキャナ保存)の概要

紙で受け取った領収書や請求書などをスキャナやスマートフォンなどで読み取り、画像データとして保存する方法です。この方法を採用することで、紙の原本は原則として廃棄できます。

ただし、電子保存するデータが証拠力を持つために、電子帳簿保存法で定められた一定の要件を満たす必要があります。

スキャナ保存の主な要件

スキャナ保存を行う際は、主に以下の「真実性の確保」「可視性の確保」に関する要件を満たす必要があります。

真実性の確保(改ざん防止対策)

スキャンしたデータが改ざんされていないことを証明するための要件です。以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

  • タイムスタンプの付与
    • スキャンしたデータに速やかに(またはその業務の処理に係る通常の期間を経過した後速やかに)タイムスタンプを付与する。
  • 訂正・削除の履歴が残るシステムまたは訂正・削除ができないシステムでの保存
    • データの訂正や削除を行った場合に、その履歴が残るシステム、またはそもそも訂正・削除ができないシステムを利用して保存する。
  • 事務処理規程の策定・遵守
    • 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用し、備え付ける。

可視性の確保(データの見やすさ・検索性)

必要なデータをすぐに確認・利用できるようにするための要件です。

  • 解像度・階調
    • 一定水準以上の解像度(200dpi以上)で読み取る。
    • カラー画像による読み取り(重要書類の場合)。
  • 関連情報の保存
    • スキャンした画像と帳簿との相互関連性を確保すること(重要書類の場合。一般書類は不要)。
  • 検索機能の確保
    • 取引年月日、取引金額、取引先を検索の条件として設定できること。

電子化の具体的な方法

これらの要件を満たすためには、以下のような方法が考えられます。

  1. 専用のシステム(会計ソフトや経費精算システム)の導入
    • 最も一般的で、要件への対応がスムーズな方法です。多くのシステムには、タイムスタンプ付与機能や検索機能が標準で備わっています。
    • スマートフォンで領収書を撮影し、そのまま電子化・経費精算まで行えるサービスも多くあります。
  2. 既存の環境と事務処理規程による対応
    • コストを抑えたい場合は、事務処理規程を策定・運用し、ファイル名に日付・金額・取引先などを含めるなどの工夫をして、検索可能な状態で保存する方法も考えられます。ただし、この場合も真実性の確保(例:訂正・削除防止の体制)が求められます。

注意点

  • スキャナ保存は任意
    • 紙で受け取った書類は、スキャナ保存をせずに紙のまま保存し続けても問題ありません。
  • 電子取引は原則義務
    • メールやインターネットを介して電子データで受け取った領収書や請求書(PDFなど)は、「電子取引データ保存」の要件に従い、電子データのまま保存することが原則義務付けられています。

まずは、お使いの会計システムや経費精算システムが電子帳簿保存法に対応しているか確認し、「スキャナ保存」の要件を満たすための具体的な手順を検討されることをお勧めします。