カテゴリー: 労働契約

  • 65歳まで雇用しなければならない?高齢者雇用確保措置を解説

    65歳までの雇用確保義務は、希望する従業員を65歳まで雇用し続けることを企業に義務付ける制度です。これは、高年齢者雇用安定法で定められています。

    65歳までの雇用確保措置の概要

    企業は、以下のいずれかの措置を講じることで、65歳までの雇用確保義務を果たすことができます。

    定年の引き上げ: 定年年齢を65歳以上に引き上げる方法です。

    継続雇用制度の導入: 定年後も希望者を再雇用する制度を導入する方法です。

    定年の廃止: 定年制度自体を撤廃し、年齢に関係なく働けるようにする方法です。

    現在、多くの企業が「継続雇用制度」を導入しており、定年を迎えた従業員を「嘱託社員」などで再雇用する形が一般的です。

    この義務は、法人・個人事業、企業の大小、業種を問わず全ての企業が対象となります。

    義務化の経緯

    この雇用確保義務は、段階的に進められてきました。

    2006年: 定年を65歳未満に定めている企業に対し、65歳までの雇用確保措置を講じることが義務化されました。

    2013年: 希望者全員を対象とすることが原則となり、企業が一方的に再雇用の対象者を絞り込むことはできなくなりました。

    2025年:2025年4月から、65歳までの雇用確保義務が完全な形になりました。企業が労使協定を締結することで、継続雇用の対象者を限定できるという経過措置が廃止されたのです。

    継続雇用と再雇用

    継続雇用制度と再雇用制度は同じではありません。

    継続雇用制度は、高年齢者雇用安定法に定められた、定年後も働き続けたいと希望する従業員の雇用を確保するための制度の総称です。この制度には、主に2つの種類があります。

    勤務延長制度

    勤務延長制度は、定年を迎えた従業員を退職させずに、そのまま引き続き雇用を延長する制度です。

    雇用形態: 原則として、定年前と同じ雇用形態(正社員など)が継続されます。

    退職金: 定年時に退職金は支払われず、延長期間が終了した時点で支払われるのが一般的です。

    この制度は、実質的に「定年を延長する」ことと同じです。

    再雇用制度

    再雇用制度は、定年を迎えた従業員を一度退職扱いにして、その後、新たに雇用契約を結び直す制度です。

    雇用形態: 多くの場合、正社員から嘱託社員や契約社員など、別の雇用形態に変更されます。

    退職金: 定年時に退職金が支払われます。

    多くの企業で採用されているのが、再雇用制度です。

    このように、再雇用制度は継続雇用制度の一つの種類であり、両者は同じものではありません。

    関連記事:定年後の再雇用制度について

    定年の廃止について

    厚生労働省の「令和6年高年齢者雇用状況等報告」によると、定年制を廃止している企業の割合は3.9%です。これは、65歳までの雇用確保措置を講じている企業のなかで、定年引き上げ(28.7%)や継続雇用制度の導入(67.4%)に比べて、非常に低い水準にとどまっています。

    定年廃止の導入率が低いのは、主に以下のような理由が挙げられます。

    人事制度の難しさ: 年齢にとらわれない評価制度や賃金制度を構築・運用するには、高度な専門知識と労力が必要です。

    新陳代謝の停滞: 定年廃止は、若手社員の昇進機会を減らし、組織の新陳代謝を滞らせるリスクがあります。

    人件費の増加: 従業員の高齢化が進むことで、人件費が増大する可能性があります。

    多くの企業は、リスクや負担が大きい定年廃止よりも、継続雇用制度、とりわけ再雇用制度という既存の枠組みを延長する形で高齢者の雇用確保義務に対応しています。

    65歳以降の雇用について

    65歳までの雇用確保が義務である一方、65歳以降70歳までの就業確保は努力義務となっています。企業は、70歳まで雇用するよう努めることが求められますが、義務ではありません。

    関連記事:70歳までの就業機会確保が企業の努力義務に、具体的にはどうなっている?


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  • これだけは押さえたい!労働基準法の主要項目と全体像ガイド

    はじめに

    労働基準法は、すべての働く人を守るために、労働条件の最低基準を定めた重要な法律です。正社員、アルバイト、パートといった雇用形態を問わず、すべての労働者に適用されます。

    この記事では、「労働基準法ってなんとなく聞いたことはあるけど、内容はよく知らない…」という方のために、これだけは押さえておきたい主要項目と、全体像をわかりやすく解説します。

    労働基準法って何のための法律?

    労働基準法(昭和22年施行)は、働く人の生活と権利を守るために、次のような最低限のルールを定めています。

    働く時間は?

    休みは取れる?

    残業代はちゃんともらえる?

    解雇されるときはどうなる?

    といった、労働者と会社の関係における「ルールブック」といえるものです。

    そして、このルールは「最低限」なので、これより不利な条件はNG!となっています。

    労働基準法の4つの柱

    労働基準法の内容は、大きく次の4つに分類できます。

    ① 労働時間
    ② 賃金 賃金の支払方法や残業代
    ③ 解雇・退職
    ④ 安全・衛生 働く環境の安全確保

    労働時間・休憩・休日

    労働基準法では、労働時間は原則1日8時間、週40時間を超えてはならないと定められています(第32条)。法定労働時間といいます。

    法定労働時間を超えて働かせるには、使用者と労働者代表による「36協定(さぶろくきょうてい)」の締結が必要です。

    休憩時間も明記されており、「労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上」与える必要があります(第34条)。来客があれば対応しなければならない、電話があったらでなければならないという状態は休憩を与えられたことになりません。

    また、週1回以上の休日も必ず与えなければなりません(第35条)。

    賃金の支払いと残業代

    労働基準法は、賃金についても厳格なルールを設けています(第24条)。

    ① 通貨払い(現金)
    ② 全額払い(控除には制限)
    ③ 直接払い(家族への代払いは原則不可)
    ④ 毎月1回以上、一定期日での支払い

    また、法定労働時間を超えた労働(いわゆる「残業」)には、割増賃金の支払いが義務です。

    割増賃金は時間帯によって割増率が違います。

    時間外労働25% 1か月に60時間を超えた場合は50%
    深夜労働(22~5時) 25%
    休日労働 35%

    解雇・退職に関するルール

    労働基準法は労働者の解雇に制限をかけています(第20条など)。

    解雇する場合は30日前の予告または30日分以上の平均賃金の支払いが必要です(解雇予告手当)。

    さらに、業務上のケガや病気で休んでいる人を、一定期間内に解雇することは禁止されています(第19条)。

    ⚠️ 解雇理由があいまいだったり、一方的すぎる場合は、「解雇権の濫用」として無効になる可能性があります(これは労働契約法第16条に定められています)。

    安全・衛生の確保

    職場の安全にも配慮しなければなりません。

    危険な作業には資格者の配置や保護具の着用義務、長時間労働や過重労働による健康障害の防止、過労死・メンタルヘルス対策 などがあります。

    これらについては、労働安全衛生法にも定められています。

    労働基準法を守らないとどうなる?

    残業代を払わないなどの労働基準法違反に対しては、調査の上、是正勧告 という指導が行われます。 悪質であれば送検されることもあります。

    送検された場合、罰則(刑事罰)が科されることがあります。

    違反内容に応じて罰則が決められています。

    ・残業代の未払い:30万円以下の罰金
    ・解雇予告なしの解雇:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
    など

    「知らなかった」ではすまされないのが労働法です。

    まとめ

    労働基準法は労働条件の最低基準を定める法律です。

    特に重要な項目は「労働時間」「賃金」「解雇」「安全」です。

    違反すると罰則・監督指導の対象になります。

    曖昧な運用はトラブルの元です。記録・説明・合意がカギです。


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  • 労働基準法と労働契約法の違いは?総務担当者が理解すべきポイント

    労働契約法と労働基準法の違い

    「労働契約法」と「労働基準法」の違いについて、新人担当者と労務課長が会話する形式で解説しました。

    新人担当者(佐藤):課長、ちょっとお伺いしたいんですが、「労働契約法」と「労働基準法」って、どちらも労働関係の法律ですよね?どう違うんでしょうか?

    労務課長(田中):いい質問だね。確かにちらも労働者を守る法律だけど、目的や内容が違うんだよ。

    佐藤:そうなんですか?同じような法律かと思ってました。

    課長:じゃあ順を追って説明しよう。

    目的の違い

    課長:まず、「労働基準法」は、国が定めた労働条件の最低ラインを決めた法律だ。例えば、賃金の支払い方とか、一日の労働時間など、どんな会社でも絶対に守らなければならない基準が書かれている。

    佐藤:つまり、「これ以下はダメ」っていうラインを決めてるんですね。

    課長:そう。それに違反すると罰則もある。労働基準監督署が監督していて、是正勧告書という行政文書を発するし、悪質だと書類送検されることもあるよ。

    一方の「労働契約法」は、会社と従業員が交わす労働契約のルールを定めた法律なんだ。契約の「成立」「変更」「終了」に関する基本的な考え方が書かれている。

    佐藤:じゃあ、労働契約法は契約そのものの「中身」を重視する法律ですか?

    課長:その通り。民法の特別法として、労働者の保護を意識しつつ、契約の合理性も重視している。

    解雇に対する違い

    佐藤:たとえば「解雇」についてはどう違うんでしょうか?

    課長:良い質問だね。解雇については両方の法律に関係があるよ。

    労働基準法では、「解雇するなら少なくとも30日前に予告するか、30日分の給与を払うこと」と定めている。これが予告手当。

    そして、労働契約法の方では、「合理的な理由がない解雇は無効」と定めているんだ。

    佐藤:労働基準法では30日前にちゃんと予告すれば解雇してもいいとなっていますが、労働契約法ではそもそも解雇できない場合があると言っているんですね?

    課長:その通り。予告していても、「理由」が合理的でなければ解雇は無効になる可能性がある。つまり、

    労働基準法 ⇒ 解雇手続きの形式的ルール

    労働契約法 ⇒ 解雇の中身(理由や状況)を審査する

    という役割分担があるんだ。

    違反した場合の違い

    佐藤:労働契約法のルールを破ったら、やっぱり会社は罰則を受けるんですか?

    課長:そこがポイントでね。労働基準法は罰則がある法律だけど、労働契約法は民事ルールなんだ。だから、契約法に違反しても罰金や懲役はないけど、契約が無効になったり、損害賠償請求を受けるリスクがある。

    佐藤:なるほど…法律の性格自体が違うんですね。

    まとめ

    課長:現場ではこの2つをこう使い分けるといい。

    労働基準法:最低限守らなければならない「法的ライン」
    → これに違反すると法律違反

    労働契約法:個別契約や職場ルールを運用する上での「契約の原則」
    → 合理性や公平性が求められる

    佐藤:わかりました。つまり、労働基準法=絶対に守るライン、労働契約法=契約運用のガイドラインということですね!

    課長:その理解でいいだろう。両方を意識して、就業規則の整備や人事対応をしていけば、労務トラブルも防げるよ。

    佐藤:ありがとうございます!


    関連記事:労働契約法のあらまし

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  • 労働契約と法令、労働協約、就業規則の関係

    労働契約と法令の関係

    労働契約の場面では、一般的には使用者の立場が強いため、使用者の意向に沿った契約が締結される可能性があります。

    そこで、労働基準法等では、法律の基準に達しない労働契約はその部分について無効であることを定めています。

    法律が上です。

    労働基準法第13条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

    例えば、労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間を超えてはならない(一部例外があります)と規定しています。この規定が適用される事業場では、1日9時間という条件で、労働者も納得して採用されたとしても、法定の労働時間を超えた部分は無効なので、この労働条件は1日8時間に修正されます。また、使用者には罰則も適用されます。

    賃金については最低賃金法が賃金の最低基準を定めています。最低賃金法の手続きによって定められた最低賃金(当道府県別等に定められます)を下回る賃金を定めれば、下回る部分は無効になります。

    例えば、最低賃金が時給1000円と定められている都道府県で、仮に労働者から「私は年金があるので低い賃金で働きます」という申し出を受けて時給800円に決めたとすれば、最低賃金法が適用されて賃金は自動的に1000円に修正されます。また、使用者には最低賃金法違反の罰則が適用されます。

    労働契約と労働協約の関係

    労働組合と使用者が団体交渉をして締結した協定を労働協約と言います。

    労働協約と労働契約の関係については労働組合法に定められています。

    労働協約が上です。

    労働組合法第16条 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。

    労働協約は原則として組合員だけに適用されます。ただし、労働協約が同種の労働者の4分の3以上に適用されている場合は、組合員以外にもその労働協約が適用されます。

    労働協約よりも個々の労働契約が有利な内容であったとしても、労働協約の方が優先し、労働契約の有利な内容が引き下げられるというのが一般的な解釈です。労働者は労働組合を通じて労働条件を決定するという労働組合法の立場によるものです。

    労働契約と就業規則の関係

    就業規則とは、職場内で守られるべき規律や共通の労働条件など職場での統一的なルールを定めたものです。

    就業規則と労働契約の関係については労働契約法に定められています。

    就業規則が上です。

    労働契約法第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

    ただし、労働契約が有利な部分については労働契約が適用されます。

    例えば、就業規則に休憩1時間と規定されていれば、その就業規則が適用される労働者に対して、労働契約で30分とすることはできず、その契約は自動的に休憩1時間に修正されます。

    また、就業規則に定年制の定めがあったとしても、その労働者に対して「定年制を適用しない」という労働契約があれば、労働契約のほうが有利なので、労働契約の内容が適用されます。


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  • 労働契約法のあらまし

    労働契約法とは

    労働契約法は、労働契約に関する基本ルールを定め、労働者と使用者の対等な立場での合意と信頼関係に基づく労使関係の形成を目的とした法律です。

    2008年に施行され、従来の労働基準法や裁判例(判例)で認められていたルールを明文化・体系化したものです。

    法律の構成

    第1条~第5条:基本原則(総論)

    第6条以降:契約の成立、変更、終了など具体的ルール(各論)

    各条文の要点と実務上の留意点

    第1条(目的)

    労働契約の適正な締結・履行・変更・終了により、労働者の保護と事業の健全な発展の調和を図ることを目的とします。

    第2条(定義)

    労働者:使用者に使用され、賃金を支払われる者

    使用者:労働者に賃金を支払う者

    📌一般的な雇用関係と同義です。

    関連記事:労働者とは 使用者とは

    第3条(労働契約の原則)

    5つの原則を明文化しています:

    ① 労使対等の原則
    ② 均衡考慮の原則(公正な処遇)
    ③ ワーク・ライフ・バランスへの配慮
    ④ 信義誠実の原則
    ⑤ 権利濫用の禁止

    📌 単に契約を守るだけでなく、公平性や誠実性が求められることを理解する。

    第4条(内容の理解促進・書面確認)

    使用者は契約内容について労働者の理解を促進する努力義務がある。

    労使双方は契約内容をできる限り書面で確認すべきとされている(義務ではないが強く推奨)。

    関連記事:雇用契約書を締結しましょう

    第5条(安全配慮義務)

    使用者は労働者が生命・身体の安全を確保しつつ働けるよう必要な配慮をしなければならない。

    📌 「安全配慮義務」には職場でのメンタルヘルス対応、長時間労働防止なども含まれます。

    関連記事:安全配慮義務

    第6条(労働契約の成立)

    労働者と使用者が「労働」と「賃金」について合意すれば契約は成立します。

    📌口頭でも成立する点に注意(例:採用内定)

    📌採用内定=「始期付解約権留保付労働契約」が成立
    → 無効にするには合理性・相当性が必要(解雇と同様)

    第7条(就業規則と契約の内容)

    合意がなくても、周知された就業規則が合理的であれば、その内容が労働契約に組み込まれます。

    📌 契約書に明記していなくても、就業規則が内容を補う可能性がある。

    第8条(契約内容の変更)

    労使の合意により変更可能

    一方的な変更は原則として無効

    関連記事:労働条件を変更するときの注意点

    第9条・第10条(就業規則による不利益変更)

    就業規則の変更によって労働者に不利益な変更をするには合意が必要(第9条)

    ただし、第10条では、例外として「合理的で社会的に相当と認められる場合」に限り、合意なしでも変更可能

    📌 判断基準:

    ① 就業規則の内容の合理性
    ② 労働者への影響の程度
    ③ 手続の適正性 など

    関連記事:就業規則改定による不利益変更

    第11条(就業規則の変更手続)

    労基法第89条・90条に基づく手続が必要
    → 労働者の意見聴取、監督署への届け出

    関連記事:従業員が10人になったら就業規則を作らなければならない

    関連記事:従業員代表の意見を聴く

    第12条(就業規則と労働契約の関係)

    労働契約が就業規則に違反して労働者に不利益な場合は無効

    就業規則より有利な契約条件は有効

    関連記事:労働契約と法令、労働協約、就業規則の関係

    第13条(法令・労働協約との関係)

    就業規則が法令や労働協約に反する場合、そちらが優先される

    関連記事:労働契約と法令、労働協約、就業規則の関係

    第14条(出向)

    出向命令が権利の濫用と認められると無効になる

    📌 実務上:本人の同意、事情の合理性が必要

    関連記事:出向させるときの注意点

    第15条(懲戒)

    客観的合理性と社会的相当性がない懲戒処分は無効

    📌 管理職による懲戒指導は慎重に。感情的な処分は無効リスク。

    関連記事:懲戒処分をするときの注意点

    第16条(解雇)

    解雇も同様に、合理性・相当性がなければ無効

    関連記事:解雇するときの注意点

    第17条(有期契約期間中の解雇)

    契約期間中はやむを得ない事由がない限り解雇不可

    関連記事:パートは契約期間の途中で辞めることができないのですか?

    第18条(無期転換ルール)

    有期契約が通算5年超継続した場合、労働者の申し込みにより無期契約に転換

    関連記事:無期労働契約への転換

    第19条(雇止めの制限)

    有期契約でも、反復更新・期待があるときなど、雇止めが無効になる場合がある

    関連記事:雇い止めのルール

    適用除外

    国家公務員・地方公務員、同居親族のみを使用する事業
    → 労働契約法の適用外

    労働契約法と労働基準法の関係

    労使の合意と信頼関係のルール 労働条件の最低基準
    民事的性格(罰則なし) 行政的性格(罰則あり)
    判例や慣行を法文化 国が定めた義務的基準

    関連記事:労働基準法と労働契約法の違いは?事務担当者が理解すべきポイント


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  • 合併後の労働条件変更、新しい就業規則を作るときの注意点

    合併後も労働契約は引き継がれる

    合併したときは、新設合併であっても吸収合併であっても、消滅する会社と労働者との労働契約は、新設された会社又は吸収した会社に包括的に承継されます。

    つまり、個々の労働者の労働条件は変更されません。

    もし、合併契約等で労働契約を承継しない旨を定めても無効になります。

    結果的に合併後は異なる労働条件が存在することになります。

    当然、このままでは何かと不都合なので、合併後はそれを解消するための施策が実施されるのが普通です。

    合併により労働条件を引き下げる必要が生じた場合、その変更は労働者の同意または就業規則の変更が必要です。

    個別合意による労働条件の変更

    会社が個々の労働者と交渉し、変更後の労働条件について同意を得た場合は、労働条件が変更されます。この同意は、書面で確認することが一般的です。

    この場合、会社は、労働者に対して、変更内容や不利益の程度、変更の必要性などを十分に説明し、労働者が納得した上で同意を得る必要があります。形式的な同意ではなく、労働者の自由な意思に基づく同意でなければ、無効とみなされる可能性があります。

    就業規則の変更による労働条件の変更

    合併直後の就業規則

    合併前の各会社の従業員は、合併後も、合併前の会社の就業規則の適用が継続されます。そのため、合併後の新会社または存続会社には、合併前の会社の数だけ就業規則が存在することになります。

    合併後、旧B社の従業員は引き続き旧B社の就業規則が適用され、旧A社の従業員には旧A社の就業規則が適用されます。

    就業規則の統一

    合併後の会社は、円滑な事業運営や公平性の観点から、就業規則の統一を目指します。この統一は、以下の手順で行われます。

    1. 就業規則の新規作成または既存規則の変更: 複数の就業規則の内容を比較検討し、新しい統一的な就業規則を作成するか、存続会社の就業規則を改定します。
    2. 労働者の意見聴取: いずれの場合でも、労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴取します。
    3. 労働基準監督署への届出: 新しい就業規則を労働基準監督署に届け出ます。

    就業規則の不利益変更

    就業規則が統一されたことにより、一部の労働者の労働条件が下がることがあります。このような不利益になる変更が有効と認められるには、労働契約法第10条に定める以下の要件を満たす必要があります。

    • 変更の必要性: 労働条件の変更が、合併後の経営状況や事業の円滑な運営に合理的に必要であること。
    • 労働者が受ける不利益の程度: 変更により労働者が被る不利益がどの程度であるか。
    • 変更内容の相当性: 変更後の就業規則の内容が、変更の必要性や不利益の程度に比べて妥当であること。
    • 労働組合等との交渉状況: 労働組合がある場合、変更について十分に協議が行われたか。

    これらの要素を総合的に考慮して、変更の合理性が認められる場合に限り、就業規則の変更による労働条件の引き下げが可能となります。

    関連記事:就業規則改定による不利益変更

    合併後の人事異動

    また、合併後の経営合理化のために行われる配置転換や出向なども、合併という事情だけで会社が一方的に行うことはできず、通常の配置転換や出向などで求められる対処が必要になります。

    関連記事:配転命令の注意点

    関連記事:出向させるときの注意点


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