カテゴリー: 自動車事故対応

  • 安全運転管理者による酒気帯び確認

    酒気帯び確認の義務化

    2021年11月10日、「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布され、安全運転管理者の業務として、新たに下記の業務が追加されました。

    ・運転の前後に、運転者に対して目視およびアルコール検知器を使用して酒気帯びの有無を確認すること。
    ・目視およびアルコール検知器による確認の記録をデジタルデータや日誌等で1年間保存すること。
    ・正常に機能するアルコール検知器を常備すること。

    改正前
    運転しようとする運転者に対して点呼を行う等により、(中略)自動車の点検の実施及び 飲酒 、過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えること。

    2022年4月より
    運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認すること。
    前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を一年間保存すること。

    2023年12月より
    運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。
    前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を一年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。

    アルコール検知器は「常時有効に保持する」ことが求められているので、定期的に故障の有無を点検するとともに、故障等に備えて予備を備えると安心です。

    アルコールを検知して、原動機が始動できないようにする機能を有するものはアルコール検知器に含まれます。

    いつ確認するか

    「運転しようとする運転者」及び「運転を終了した運転者」に対して実施しなければなりません。朝の点呼などだけでなく、帰ってきたときにも必要です。運転中に飲酒するケースを防ぐための措置です。

    また、出入りする度に確認する必要はなく、業務の開始前や出勤時、業務の終了後や退勤時に行うことでよいとされています。一般的には、朝の点呼の際と、夕方に外回りから戻ったときに行うのが自然だと思われます。

    どのように確認するか

    目視等で確認する、となっています。これは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認するとされています。

    対面で検査するのが原則ですが、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよいとされています。

    これはやむを得ない場合はやらなくてもよいというのではありません。困難であっても何らかの方法で実施しなければならないということです。

    警察庁の通達によれば、

    例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する。

    あるいは、携帯電話、業務無線その他の運転者と直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法等の対面による確認と同視できるような方法で確認する、などが例示されています。

    誰が確認するか

    原則として安全運転管理者本人が確認しなければなりません。

    不在等に際して副安全運転管理者が行わせること、安全運転管理規程等で仕組みを作って業務を補佐するものを指定して不在等の際に代行させることは差し支えありません。

    ただし、酒気帯びによる重大事故がおきたときに酒気帯び確認がいい加減だということが判明すれば、企業も重大な損害を被る可能性があるので、安全運転管理者が常時自らチェックする体制を作るのが望ましいでしょう。

    運転者全員に目を配るには、安全運転管理者が他の業務に従事していたり、自ら配達に行ったりするような兼任体制では充分に職責を果たすことは困難です。安全運転管理者の専任化が進むと思われます。

    記録する内容

    記録しなければならないのは次の項目です。法定の様式は示されていないので項目を網羅していれば任意の様式で作成できます。なお、この記録は1年の法定保存義務があります。

    ・確認者名
    ・運転者
    ・運転者の業務に係る自動車のナンバーまたは識別できる記号番号等
    ・確認の日時
    ・確認の方法
    ・酒気帯びの有無
    ・指示事項
    ・その他必要な事項

    運転者が多ければ膨大な作業になります。プログラムをつくるか市販のソフトを活用するなど効率化につとめる必要があります。


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  • 借り上げ車両の管理

    私有車借上制度の検討

    うちの社員はほとんどマイカー通勤だという会社は、大都会は別として、よくあることだと思います。しかも、マイカー通勤を許可している場合は会社の敷地に置かせているケースも多いです。会社の敷地においてあるマイカー群を見ていると、会社で車を買うのはもったいない、日中は会社の敷地に置きっぱなしにしている、あの車を使えば良いのではないかという発想がでてくるのも自然なことです。

    そもそも、社員の自家用車を会社が借りて運行する、そうした契約自体に法律上の問題はありません。雇用契約とは別の、商取引のようなものですから、会社と個々の社員が同意すれば、基本的にはどのような契約も自由です。会社はどのような条件を提示することもできます。社員はいやなら応じなければよいのです。(会社が借り上げ制度を強制することはできません。)

    ということで、社員の私有車を会社の業務に使っている会社は多いようです。

    借上げ制度のメリット

    会社にとってのメリット

    1.自動車購入費や維持費等が節約できます。 ← 借上げ料金の設定次第ですが、通常は自社で買うより節約になる額を提示するはずです。

    2.車がきれいになり安全運転も期待できるかもしれません。 ← 自分の車だと特に大事にするものです。

    3.車の税金の支払い、車検などの事務的な手間が減ります。 ← 所有者である社員が行うわけですから。

    4.会社の車を減らせるので駐車スペースが少なくて済む。 ← 意外に大きなメリットです。

    社員にとってのメリット

    借上料という現金が手に入るのはうれしい。 ← 借り上げ制度があろうがなかろうが車は必要だから。

    ということで、双方が納得するのであればやってみたら、というこになるのですが、デメリットも検討しておきましょう。

    借上げ制度のデメリット

    会社にとってのデメリット

    1.業務使用と私用の区別が曖昧になりやすい ← 私用走行も業務だと偽られる可能性もあり

    2.車種やデザイン・カラーによっては取引先に会社のイメージを低下させることがある← 社内に置いてある私物も、モノによってはイメージが悪い

    3.交通事故を起こした場合、会社の責任範囲が広くなる場合があることがある ← この交通事故が一番問題かも

    社員の私有車であっても業務に使わせたときは、民法715条の「使用者責任」と自賠法第3条の「運行供用者責任」が生じます。契約書に「事故処理は本人の負担とする」と記載してあってもダメでしょう。業務中の事故に会社が無関係でいることはできません。また、業務と私用の境界があいまいな場合(この管理が特に重要)には、業務外の事故であっても会社に責任が発生する可能性があります。

    社員にとってのデメリット

    車両の損耗が大きくなる。 ← 私用走行よりは桁違いに走行距離が長くなるので。

    思わぬ税負担が発生することがある。 ← 会社から支給される借上料は雑所得として申告が必要。

    任意自動車保険料が上がる可能性がある。 ← 業務使用ということであれば保険料が違ってくる。

    借り上げ制度を実施するかどうかは、

    こうしたメリット・デメリットをよく理解した上で、制度導入の可否を検討しましょう。

    導入する場合には、規程を作ってしっかりと管理運営しましょう。

    車両借上規程のサンプル


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  • マイカー通勤について

    マイカー通勤の許可制度

    マイカーで通勤しているときの交通事故は基本的には会社に責任が及びません。

    しかし、そのマイカーを、仕事に使用させていることがあれば、会社に対して損害賠償請求を起こされる可能性があり、実際にそのような例があるようです。

    このマイカーの業務使用は、従業員が会社に無断でやっていたとしても、その状況によっては会社は責任を逃れられない可能性があります。例えば、会社としては一応は禁止するかたちにしながら、見て見ぬふりをしていたようなケースです。

    したがって、マイカー通勤を認める場合には、そうした便宜的な車両使用をしないことなど、遵守事項を定め、守ることを誓約させる必要があります。

    マイカーでの通勤は、以下のような条件を付した許可制度にするべきです。

    1.マイカーの業務使用はさせない
    2.自動車保険の内容に条件をつける
    3.駐車場所を指定する
    4.改造車は許可しない
    5.規程または許可書にマイカー通勤の許可取り消しもあることを明示する

    関連規程:マイカー通勤規程のサンプル

    マイカー通勤申請書のサンプル

    自家用車通勤許可申請書兼誓約書

    令和 年 月 日

    総務部長殿

    従業員氏名〇〇〇〇 印

    私は通勤に自家用車を使用したいので許可下さるよう申請いたします。

    通勤経路 別紙

    片道通勤距離  キロ
    片道所要時間  分

    車種・車両の名称・排気量・車両ナンバー

    添付書類
    自動車運転免許証(コピー)
    任意保険の保険証書(コピー)

    誓約書

    私は自家用車による通勤の許可がおりましたら次の事項を誓約します。

    1.私は自動車運転に関する法令を遵守し、安全運転を心がけます。
    2.私は会社の指示にしたがい十分な自動車保険に加入し、万が一にも失効することがないよう十分に注意いたします。
    3.私は自家用車を会社の業務に使用いたしません。
    4.私は車両の不法改造はいたしません。また、会社構内に乗り入れる車両であることを自覚し、洗車や車内の清掃を怠りません。
    5.万一事故を起こしたときは、私の責任において処理し会社に御迷惑をおかけいたしません。
    6.私がこの誓約に反し、あるいは自家用車通勤に関する会社の規程及び指示に違反したときは、この許可の停止または取消しの処分を受けても異議を申し立てません。

    マイカーの業務借上げ

    マイカーを会社の業務に使用させることのリスクはありますが、あえてマイカーを業務車両として借り上げる場合は、借上げに関する規程を整備して慎重に実施するようにしましょう。

    関連記事:借り上げ車両の管理

    自転車等による通勤

    自転車やバイクによる通勤もマイカー通勤と同じ規制をするべきです。自転車等であっても適切に管理された車両を用い、賠償保険を付与させるなどの条件を付し、許可制にしましょう。

    関連記事:自転車通勤について


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  • 事故ゼロを目指す!安全運転管理と車両管理の実践的なノウハウ

    安全運転管理について

    安全運転管理の業務としては、安全運転管理者の選任、運行計画の作成、点呼と日常点検、アルコールチェック、運転日誌の備え付けと記録、安全運転の指導などがあります。

    安全運転管理者を選任する

    一定の台数以上の自動車を使用している場合は、安全運転管理者を選任して公安委員会に届けなければなりません。

    1.5台以上の自動車を使用(バイク等は0.5台と計算する)
    2.乗車定員11名以上の自動車を使用

    20台以上の自家用車を保有する場合は、副安全運転管理者の選任も必要になります。その後、20台増えるごとに1人ずつ追加で選任する必要があります。

    安全運転管理者は、運転者の健康状態の把握から、車両の状態、天候への対応にいたるまで、安全運転にかかわること全てを取り扱います。また、安全運転のためであれば、乗務禁止を命じるなどの権限を行使することもできます。

    関連記事:安全運転管理者になるには資格要件がありますか?

    酒気帯び確認

    2021年11月10日、「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布され、安全運転管理者の業務として、運転者に対して酒気帯びのチェックをする業務が追加されました。

    関連記事:安全運転管理者による酒気帯び確認

    運転者教育

    いったん会社を出れば、どのような運転をしているかわかりません。運転者が自主的に安全運転をするように、日常の教育が重要です。

    会社の研修体系に、安全運転を組み入れましょう。運転業務に従事する者には年1回は安全運転講習を義務付けましょう。

    一定の人数がまとまれば自動車学校等に依頼して、専門の講師による安全教育を実施することもできます。人数が少ない場合は 自動車学校などがやっている安全運転教習を利用しましょう。

    事故を起こしてしまったときの対応についても日頃から指導しておきましょう。

    関連記事:交通事故を起こしてしまったときの対応

    表彰制度

    安全運転についての意識を継続させるために、1年間無事故の職場単位表彰、5年間無事故の個人単位表彰など、個人単位や職場単位の表彰制度を採用している会社もあります。

    関連記事:安全運転を表彰する制度について(実施要綱付き)

    関連記事:交通事故を起こした従業員を対象にした罰金制度を作ることの問題点について

    運転記録証明書による指導等

    運転記録証明書を入手することで、運転者一人ひとりの過去の交通事故・違反歴を確認できます。これを活用することで、安全運転意識の向上や、交通事故・違反の抑止効果が期待できます。

    会社が従業員の運転記録証明書を入手して安全運転管理に利用できますか?

    安全運転誓約書

    安全運転についての意識をもたせるために安全運転誓約書を提出してもらう会社が多いとおもいますが、ほとんどが一度きりで形がい化しています。安全運転意識を継続させるために、毎年一回定期的更新提出させている会社もあります。

    誓約書の例:安全運転に関する誓約書のサンプル

    安全運転管理規程

    安全運転管理者を選任するときは、安全運転管理規程を制定して、安全運転管理者が職務を行いやすい体制を整えましょう。

    社内規程例:安全運転管理規程

    車両管理について

    車両管理の業務としては、車両台帳の作成・管理(車種、ナンバー、登録日、車検日、保険情報など)、車検や定期点検、日常点検の実施と記録、自動車税や自動車保険の手続き、ガソリン代などのコスト管理などがあります。

    自動車保険に加入する

    必要にして充分な自動車保険に加入する必要があります。
    1.保険の漏れがないように定期的に点検する
    2.事故処理だけでなく安全運転管理にも協力的な代理店を選定する

    支払保険料の節約を考えがちですが、他の経費と違って、万一に備えたものなので、できるだけ補償の質が高い自動車保険を選ぶべきです。

    点検整備をする

    始業点検、車検や法定定期点検を確実に実施しましょう。

    始業点検を実施する

    会社の車両は、毎日運転前に点検を実施させましょう。やる前は面倒そうに感じますが、習慣になればなんということはありません。

    関連記事:見落としがちなポイントも解説!車両の始業点検マニュアル

    メンテナンス込みのカーリースが便利

    複数台を管理する会社等では、カーリースがよいでしょう。 メンテナンス、車検、自動車保険、自動車税を含めることで支払先を統一し、保険のかけ忘れや車検の失念などの心配がなくなります。

    安全運転管理と車両管理の関係

    安全運転管理と車両管理は、どちらも企業の自動車運用に関わる業務ですが、その役割には違いがあります。

    安全運転管理は、「人(ドライバー)」の安全運転に特化した、道路交通法に基づく専門性の高い業務です。運転者の状態管理や安全教育といったソフト面が中心となります。

    車両管理は、「物(車両)」の管理に加え、「人(ドライバー)」の情報やコスト管理など、より広範な業務を指します。車両の維持管理やコスト最適化といったハード面とソフト面の両方をカバーします。

    安全運転管理者の業務は、車両管理業務の一部に含まれることが多く、両者は密接に連携しています。安全運転管理者が行う運転日誌の管理やアルコールチェックの記録などは、車両管理台帳の一部として活用されます。

    多くの企業では、車両管理を円滑に行うために、車両管理システムを導入し、台帳管理や点検記録、アルコールチェックの結果などを一元管理しています。これにより、安全運転管理者と車両管理担当者の業務負担を軽減し、より確実な管理を実現しています。

    交通事故の会社の責任

    使用者責任と運行供用者責任

    社員が交通事故を起こしたときは、社員の不注意によるものだとしても、雇用主である会社も、相手方に対する損害賠償を負わなければならない場合があります。

    もちろん、不注意で事故を起こした事故は、当事者である社員に責任があるのですが、法律上、会社にも責任があり、一般的には、資力のある会社が賠償責任を求められます。

    会社が負う責任には、民法上の「使用者責任」と、自動車損害賠償保障法上の「運行供用者責任」です。どちらも、社員が仕事の上で第三者に与えた損害は会社に賠償の責任があるとする規定です。

    関連記事:従業員が事故を起こしたら?経営者が知っておきたい「使用者責任」と「運行供用者責任」

    社用車の無断運転も会社に責任が

    会社に無断で、私用のために社有車を運転して事故を起こしてしまった場合はどうでしょうか。

    無断で社有車を運転した事情がどのようなものであるか。つまり、勤務中なのか、勤務時間外なのか、そういうことがひんぱんにあったのか、会社がしっかりと私用運転を禁止して、それが守られていたか、などの事情が考慮されます。

    ただし、裁判例では、会社にほとんど落ち度が認められないケースでも、被害者の救済という観点から、会社に運行供用者責任を認める傾向にあります。

    借り上げ車両のリスク

    マイカーを業務に使用させるときは、十分に検討し、規程に基づいて運用しましょう。

    関連記事:借上げ車両の管理

    通勤中の事故について

    マイカー通勤は許可制にして安全教育を実施しましょう。

    関連記事:マイカー通勤について

    自転車であっても重大事故を起こすことがあります。自転車通勤を許可制にして、安全教育を実施しましょう。

    関連記事:自転車通勤について

    通勤中の事故は労災保険の給付を受けられます。

    関連記事:労災保険における通勤災害とは


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  • 交通事故の調停と裁判

    目次
    1. 調停
    2. 裁判

    調停

    調停とは、一口に言えば第三者が入った話し合いです。裁判所の中で行いますが、裁判ではなくあくまでも話し合いです。

    調停の窓口は簡易裁判所です。調停は原則として相手方の住所を所轄する簡易裁判所に申し立てます。

    調停は、被害者だけではなく加害者側からも申し立てが可能です。被害者からの要求があまりにも理不尽と思えるときは、調停も一つの手段です。

    調停の申し立ては、所定の調停申立書に、申立人と相手方の住所・氏名・連絡先、申し立ての趣旨、交通事故の内容や損害額などを記入して行います。

    申立書や申立手数料については、裁判所ホームページに詳細が掲載されています。

    申立書が受理されれば、調停日時の決定のため裁判所から連絡が来ます。

    日時が決定すれば、相手に呼出状が送付されます。

    調停の日には、原則として当事者が別々に調停室に入り、調停委員に対して自分の主張を述べることになります。調停委員は内容を整理し、解決策を提示します。

    ここで合意できれば、調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同じ効果があるので、合意内容を履行しない場合には強制執行手続きの申請が可能になります。

    相手方は調停をボイコットすることはできませんが、解決案を拒否することはできます。拒否されると、調停不調といって、その時点で終わってしまいます。その場合には、裁判ということになります。

    裁判

    裁判は、交通事故の損害賠償問題解決における最終手段です。

    訴訟で争って問題解決を図るのは、簡単なことではありません。

    勝てば示談より高い賠償金をとれるかもしれません。しかし、思うような判決が出るとは限りません。示談で示された金額よりも減額されたり、まったく取れなくなることもあり得るのです。

    裁判になってしまった以上は、何としても勝たなければ意味がありません。弁護士を雇い、全力で裁判に臨みましょう。

    一般の人は、裁判を起こすにはどうすればよいか、あまり知識をもっていません。ネットなどで勉強することはできますが、やってみないと分からないことが多いものです。そこで、専門家である弁護士に依頼するのが一般的です。

    ですから、まずは弁護士を探します。弁護士が少ない地方ではやむを得ませんが、できるだけ、交通事故に強い弁護士を探すことが大切です。

    弁護士には報酬を払わなければなりません。裁判に勝つ前であっても、引き受けてもらうには着手金という前金のようなものを払います。また、実費もすぐに発生します。

    委任契約の前に、遠慮することなくお金の話しをしておきましょう。これは依頼者、弁護士双方にとって大事なことです。

    弁護士と契約し、委任状に判を押し、事故状況を説明し、持っている関係書類を預ければ、あとは弁護士が前に進めてくれます。

    裁判の進み方や、裁判所に払う費用については、裁判所ホームページに詳細が掲載されています。

    交通事故の場合、判決を下す前に和解を勧告することが多いようですが、当事者が応じるかどうかは自由です。弁護士と相談して決めましょう。訴訟を起こしたうえでの和解調書は、確定判決と同じ効果があるので、合意内容を履行しない場合には強制執行手続きの申請が可能になります。


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  • 交通事故の過失割合

    過失割合とは

    交通事故の過失割合とは、交通事故に対する責任の割合のことです。通常は当事者が契約している保険会社の担当者が話合い、過失割合を決定します。

    一般的にいえば、被害者は、加害者に対し、損害賠償請求することができます。しかし、被害者側にも不注意、過失などの落ち度があるときは、損害のすべてを加害者に負担させることができません。

    過失割合によって賠償額が決まります

    例えば、被害者が受けた損害の総額が100万円だったとした場合、一見して加害者が全面的に悪いと見えるような事故であっても、加害者と被害者の過失割合が80:20に決まれば、被害者は、損害の80%、80万円しか加害者に請求できません。残りの20万円は自己負担になります。

    もし、この決定前に、治療費全額を保険会社が病院に支払っていると、過失割合によっては過払いになり、その分を被害者から回収しなければならないことになります。

    実際は、慰謝料などもあるので、治療費も出ないということは少ないと思われますが、全部相手の負担になるわけではないことに留意が必要です。

    過失割合の決まり方

    過失割合の決まり方は過去の裁判例の蓄積等を踏まえてマニュアル化されています。

    裁判所や弁護士などの実務家の間で広く利用されているのは、判例タイムズ社という会社が発行している「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」です。

    これには、自動車と自動車の事故、自動車と二輪車の事故、自動車と歩行者の事故など事故の当事者ごとに場合分けされていて、事故の態様に応じてそれぞれの当事者の過失割合の基準が書かれています。

    保険会社では、これに沿って相手方と交渉し過失割合を決めます。

    例えば、こんな内容です。

    信号機のない、見通しがきかない交差点で自動車同士が出合い頭に衝突した場合。

    一般的には交差点では左方車が優先です。ところが、左右の見通しがきかない交差点であって、交差する道路の幅員が同じ場合は、両車ともに徐行義務があります。この場合、両車が同程度の速度だった場合の基本割合は、左方車:右方車=4:6となります。

    これにどちらが減速したか、あるいはしなかったか、などいろいろな要素が加味され、場合によっては、優先道路であっても、過失割合が逆転することがあります。

    交差する道路の幅員が違う場合は、広い道路を走行:狭い道路を走行=3:7となります。

    一方があきらかな優先道路、例えば小路から一般道に飛び出した場合、基本の割合は、1:9となります。100%ではないのです。

    停車中の車に、自動車が追突した場合、双方の過失割合は原則、追突した方が0:10となります。

    しかし、前方自動車が走行中に突然不必要な急ブレーキをかけた結果、後方自動車が追突した場合には、3:7となります。不必要でない急ブレーキの場合は別です。

    過失割合に不満なとき

    上述したように、双方が走行中であれば、100%をとるのはなかなか困難です。

    事実に即した過失割合を決めてもらうためには、実況見分の際、事故の状況を正確に説明し、実況見分調書に正確に反映してもらうことが重要です。

    言葉だけで主張しても通りにくいでしょう。客観的な証拠に基づいて主張する必要があります。ドライブレコーダーや目撃者の証言ははとても有効です。

    どうしても保険会社の主張する過失割合に納得がいかない場合は、弁護士に相談しましょう。


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