タグ: 健康診断

  • 労災保険による二次健康診断

    二次健康診断とは

    労災保険による二次健康診断は、健康診断の結果、脳血管疾患及び心臓疾患を発症する危険性が高いと判断された労働者が、二次健康診断及び予防を図るための特定保健指導を、受診者の負担なく受けることができる制度です。二次健康診断は1年に1回だけ受けることができます。特定保健指導も二次健康診断ごとに1回だけです。

    二次健康診断等給付は、一次健康診断の結果において、次のすべての検査に異常の所見があると診断された場合に受けることができます。
    1.血圧検査
    2.血中脂質検査
    3.血糖検査
    4.BMI(肥満度)の測定

    二次健康診断等給付を受けようとする労働者は、「二次健康診断等給付請求書」に、一次健康診断の結果の写しなどを添付して、健診給付病院等を経由して、所轄の都道府県労働局長に提出します。会社が代行してもかまいません。
    一次健康診断を受診した日から3ヶ月以内に請求する必要があります。3ヶ月を過ぎた場合は、原則として二次健康診断等給付を受給することはできません。

    労災保険の特別加入者は対象外です。

    特定保健指導

    特定保健指導は、二次健康診断の結果に基づき、脳・心臓疾患の発症の予防を図るため、医師または保健師の面接により行われる保健指導です。なお、特定保健指導は、二次健康診断の結果、脳・心臓疾患の症状を有していると診断された場合は実施されません。

    事業主の義務

    二次健康診断の受診は労働者の意思によるものですが、事業者としても、一次健康診断の結果に基づき、二次健康診断の対象となる労働者を把握して、二次健康診断の受診を勧奨する必要があるとされています。

    事業者は、労働者から二次健康診断の結果を証明する書面(異常の所見があると診断されたもの)が提出された場合(二次健康診断を受けた日から3ヶ月以内と定められています)は、2ヶ月以内に医師の意見を聴き、健康診断個人票に記載しなければなりません。

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  • 雇入時健康診断について

    雇入時健康診断とは

    雇入時に実施する者を雇入時(やといいれじ)健康診断といいます。定期健康診断と違って、所轄労働基準監督署長への報告は必要ありません。

    受診項目は定期健康診断と同じです。食堂・炊事場で給食の業務に従事する労働者には、「検便」の追加が必要です。

    対象者

    対象者は正社員だけではありません。法律では「常時使用する労働者」となっています。

    具体的には次の通りです。

    1.雇用期間の定めのない人
    2.雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上使用される予定の人
    3.雇用期間の定めはあるが、契約の更新により1年以上引き続き使用されている人

    上記のうち、特定業務従事者(深夜業、有機溶剤等有害業務従事者)は1年を6か月と読み替えます。

    パートタイマーやアルバイトであっても、1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上あるときは対象になります。

    なお、通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上である者も「常時使用する労働者」とみなし、雇い入れ時健康診断を行うことが望ましいとされています。

    以上の労働者を雇用したときは雇入れ時健康診断を実施しなければなりません。職種、事業規模を問わず全ての事業場において義務になっています。

    必要ない場合

    労働安全衛生法には「医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しないものを雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その項目についての健康診断をおこなわなくてよい」とあります。

    つまり、本人が受診した健康診断の書類を提出したときは、その健康診断が雇入れの前3か月以内に行われたものであれば、雇入れ時健康診断を省略できます。ただし、健診項目を満たしているかどうかのチェックが必要です。

    同様に、新卒採用の場合で学校から健康診断書が提出される場合に雇入れ時健康診断を省略することがあります。ただし、その健康診断の実施日によっては別途雇入れ時健康診断が必要です。また、健診項目を満たしているかどうかのチェックが必要です。

    実務的には、採用時点で定期健康診断の実施日が間近である場合は雇入れ時健康診断を省略することがあります。例えば、雇入れ時健康診断を受けさせてその翌月に定期健康診断を受けさせるのは合理的ではないと考えるからです。どれくらいの間隔が許容されるかの判断は難しいのですが、3か月以内の場合はまとめることが多いようです。

    健診結果で採用取り消しはできない

    かつては、採用予定者に健康診断を受診させて、その結果を採用の判断材料にしたり、採用する場合はその健康診断を雇入れ時健康診断としていたことがありました。

    平成5年労働省通知と平成13年厚生労働省通知では「雇い入れ時健康診断は、雇い入れた際における適正配置と入職後の健康管理のためのものであって、採用選考時に採用の可否の決定のための健診を行うことは適切を欠く」としています。

    雇入れ時健康診断の結果で採用取り消しなどをして争いになれば、ほとんどの場合、採用取消や解雇が無効とされ、損害賠償請求の対象となってしまいます。


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  • 定期健康診断について

    実施義務

    定期健康診断は、常時使用する労働者に対して年1回実施しなければなりません。

    定期健康診断は、雇用している人数にかかわらず全ての職場に実施義務があります。労働者には受診義務があります。派遣労働者については、派遣元が実施しなければなりません。

    対象者

    常時使用する労働者が対象です。具体的には、期間の定めのない契約により使用される者、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者が対象になります。

    パート労働者等の短時間労働者も、上記の雇用期間の条件に加えて、その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であれば対象になります。

    また、4分の3以上を満たせば義務になりますが、概ね2分の1以上である者に対しても実施するのが望ましいとされています。

    受診させる項目

    1 既往歴及び業務歴の調査
    2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
    3 身長、体重、腹囲(平成20年4月1日以降に追加)、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力)の検査
    4 胸部エックス線検査
    5 血圧の測定
    6 貧血検査(赤血球数、ヘモグロビン)
    7 肝機能検査(GOT、GPT、γ−GTP)
    8 血中脂質検査(HDLコレステロール、血清トリグリセライド、LDLコレステロール(従前は血清総コレステロール))
    9 血糖検査(ヘモグロビンA1c・空腹時血糖)
    10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無)
    11 心電図検査(安静時心電図検査)

    年齢によって省略できる項目があります。また、医師の判断によって一部の受診項目を省略できます。ただし、省略の基準が定められています。

    健康診断の事後措置

    報告等

    ① 本人に健診結果を通知する
    ② 健康診断個人票を作って5年間保存する
    ③ 労働者数が50人以上であれば労働基準監督署に結果報告書を提出(令和4年10月より、法定の定期歯科健康診断については使用する労働者数にかかわらず、結果報告書の提出が必要です。)

    結果報告書は、厚生労働省のウェブサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」で作成することができます。

    医師の所見


    医師の所見が記載されている人については、

    ① 必要な措置について医師から意見を聴く
    ② 必要に応じて、本人に医師や保健師等による保健指導を受けさせる
    ③ 衛生委員会に医師の意見を報告する
    ④ 必要に応じて(作業の転換、労働時間の短縮等の)就業上の措置を講じる

    脳・心臓疾患に関連する健診項目(血圧・血中資質・血糖・腹囲または肥満度)のすべてに所見が認められた場合に、二次健康診断および特定保健指導を受けられます(労災保険の給付なので本人負担はありません)


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  • 健康情報管理規程のサンプル

    健康情報等取扱規程

    (目的)
    第1条  ◯◯株式会社ににおける業務上知り得た健康情報等は、本規程に則り適切に取り扱う。

    (健康情報等)
    第2条 健康情報等は 別表1の内容を指す。

    (健康情報等の取扱い)
    第3条 「健康情報等の取扱い」とは、健康情報等に係る収集から保管、使用(第三者提供を含む。)、消去までの一連の措置を指す。

    (責任者と取扱者)
    第4条 健康情報等を取り扱う者を次の通り区分する。

    (1)健康情報等を取り扱う責任者(以下「責任者」という。)は本社◯◯部長とする。
    (2)健康情報等を取り扱う者(以下「取扱者」という)は、責任者が指名した者と産業医とする。取扱者は原則として全ての健康情報にアクセスできる。

    2 責任者と取扱者以外のものは、健康情報を取扱ってはならない。ただし、特に必要を認められて責任者の許可を得た者を除く。

    3 責任者と取扱者、許可を得て取り扱った者は、職務を通じて知りえた従業員の健康情報等を他人に漏らしてはならない。

    第5条 本規程における健康情報とは次のものをいう

    1.産業保健スタッフが労働者の健康管理を通じて得た情報
    2.健康診断の結果
    3.長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導の結果
    4.健康診断や面接指導の結果に基づく医師から聴取した意見や就業上の措置の内容
    5.保健指導の内容
    6.健康測定の結果
    7.欠勤や休職の際に労働者から提出された診断書
    8.上記のほか、従業員などから提供された本人の病歴、健康に関する情報 など

    (本人同意)
    第6条 健康情報等を取り扱う場合には、あらかじめその利用目的・取扱方法を労働者本人に通知又は公表する。ただし、法令に基づき収集する場合を除く。

    (管理の方法)
    第7条 健康情報等の漏えい・滅失・改ざん等を防止するため、組織的、人的、物理的、技術的に適切な措置を講ずる。

    2 健康情報等を含む文書(磁気媒体を含む。)は施錠できる場所に保管する。健康情報はその内容が容易に部外者の目にふれない場所で取り扱わなければならない。産業医以外の者は責任者の許可を得た場合を除き健康情報を社外に持ち出してはならない

    3 健康情報等を情報システムで保管活用する場合は、責任者と取扱者、許可を得て取り扱った者のみがアクセスできるものとし、厳格にパスワードを管理しなければならない。また、情報システムに外部らの不正アクセス等により情報が漏えい等することがないように措置を講じなければならない。

    4 健康情報等は、法令又は社内規程に定める保存期間に従い保管し、保管期間を満了した健康情報等は廃棄又は消去するよう努める。

    5 健康情報等の取扱いを委託する場合は、委託先において当該健康情報等の安全管理措置が適切に講じられるよう、委託先に対して必要かつ適切な監督を行う。

    (開示等)
    第8条 従業員本人より当該本人の健康情報等の開示請求を受けた場合、本人に対し遅滞なく開示する。ただし、開示することにより、従業員本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合や、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合等には、開示請求を受けた情報の全部又は一部を開示しないことができる。

    2 従業員本人より当該本人の健康情報等について訂正、追加、削除、使用停止(第三者への提供の停止を含む。以下「訂正等」といの請求を受けた場合で、その請求が適正であると認められる場合には、訂正等を行う。

    (第三者からの提供)
    第9条 第三者から健康情報等の提供を受ける場合には、個人情報保護法に則り、必要な事項について確認するとともに、記録を作成・保存する。

    (組織変更等に伴う引継ぎ)
    第10条 合併、分社化、事業譲渡等により他の事業者から事業を承継することに伴って健康情報等を取得する場合、安全管理措置を講じた上で、適正な管理の下、情報を引き継ぐ。

    (苦情の処理)
    第11条 健康情報等の取扱いに関する苦情は◯◯課が担当する。

    (周知)
    第12条 本取扱規程は当社のWEB掲示板に掲載することにより周知する。

    (附則)
    本規程は、令和◯年◯月◯日より実施する。

    厚生労働省のサンプル

    このページに掲載しているサンプルは厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」を参考に簡素化した規定例です。原文は次の資料をごらんください。


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