Last Updated on 2023年9月25日 by 勝
支払いの遅れは法律違反
従業員の給与は、約束通りの金額を約束の期日(給料日)に支払わなければなりません。賃金支払いの遅延や一部不払いは、労働契約の不履行として支払うべき給料の全額に加えて損害遅延金の請求を受けることになります。また、労働基準法に定められた賃金の全額払い、一定期日払いに反することになるので、労働基準法違反で刑事罰の対象になることもあります。
労働基準法の定め
労働基準法第24条(抜粋) 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。
民法の定め
民法415条(抜粋) 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
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払わなかった金額が少ないとか、遅延した日数が少ないなどの理由で許されることではありません。また、賃金遅延の原因が天災地変にあったとしても遅延してはならないとされています。
東日本大震災のときの厚生労働省Q&Aより
【Q5-1】 今回の地震で、1.事業場の倒壊、2.資金繰りの悪化、3.金融機関の機能停止等が生じた場合、労働基準法第24条の賃金の支払義務が減免されることはあるでしょうか。
【A5-1】御質問については、労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の減免に関する規定はありません。
支払い遅延の手続き
従業員の生活に大きな影響を与えるため、できるだけ早く従業員に説明しなければなりません。
その際、遅延賃金の内訳を文書で示し、いつになれば支払うことができるかの見通し、できれば期日を明確に伝えなければなりません。なお、遅延した給与を支払う際は年利6%の遅延損害金を加算して支払わなければなりません。
事業が倒産状態にあるときは国の未払賃金立替払制度を利用することができます。
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賃金を放棄してもらえるか
賃金を支払えば会社が倒産してしまうなどの理由で、労働者の方から自発的に賃金の全部または一部の放棄が提案されることがあるかもしれません。
他者を害しないかぎり自分の権利を放棄することは原則として自由だとされています。したがって、自分が受け取るべき賃金を放棄することも自由であるはずです。
しかし、賃金は労働者の生活の糧であるため、実際問題として、労働者が自由意思で賃金債権を放棄するということは考えにくいことなので、たとえ文書による合意をとったとしても、後日、債権放棄を促す有形無形の圧力があったと見做されればそのような合意は簡単に無効になると考えられています。つまり、本当に自由な意思による提案であるかが決定的に大事なのです。当然ながら、使用者側からの放棄の働きかけは慎まなければなりません。
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